神戸から、おはようございます。このニュースレターを始めてから、偶然か必然か、ここ数日X年ぶりにご連絡を頂ける方が多くて(小学校の時に隣の家に住んでいた同級生とか)、不思議なご縁を感じています。ありがたいことで。
さて今回は、「やたらと強い言葉や姿勢を使って相手や聴衆を煽るのはちょっと…」って話を、さっとしたいと思います。興味がなければ読みとばして、「✏️読んだ/読んでいる」に移って頂ければ。
元々WSJやワシントンポストなどの記者として活躍し、現在もテック業界の名物ジャーナリストのカーラ・スウィッシャー(Kara Swisher)さんがホストとしてNew York Times上で運営しているPodcast、”Sway”をたまに聴いています。最新回のテーマは「Uber Eatsはレストランを殺すか?(原題:Food Delivery Is Keeping Uber Alive. Will It Kill Restaurants?)」で、Uber CEOのダラ・コスロシャヒさんに対してインタビューをしています。(さすが豪華)
カーラさんが「レストランから手数料取り過ぎやろ」「運転手の医療保険どうなってんねん」「脅しの経済に加担している自覚あんの?」みたいな質問でガンガン攻め入っていく一方で、Uberのダラさんが「うちらは雇用作ってんねん。おたくらNew York Times、どんだけ従業員減らしてるんや」と聴いたら「しりませーん。君たちみたいにVCマネー使えないんだもーん」とかわしたりしています。(調べてみると2005年に12,000人いたNYT社員は2019年には4,500人にまで減っている)
聴いていて、野党議員の代表質問みたいだな、と感じました。「あなた、悪いことしてますよね」って前提で質問をぶつけていく様子が、なんというかなぁ、という感じで、正直あまり好きなコミュニケーションのあり方ではありません。こういう話し方や姿勢を、私は”煽り”だと思っています。強い言葉や姿勢を相手にぶつけることで、相手がヒートアップしてくれて、ぽろっとこぼした言葉を拾い上げ、また強い言葉として相手にぶつけ続ける。それを繰り返すと、聴いている人や観ている人も、感情が高まりますし。注目を浴びるために有効な方法の一つなんだとは思います。
しかし、これが聞き手の扇動(とそれに紐付く聴取人数・広告収入増)以外に意味があるんだろうか、と考えると、はてなが浮かびます。RedditやSNSを覗くと、このエピソードを聴いた人が「やっぱりUberはあかんわ」「3分聴いたけど不快で消した」「Amazon、Airbnbも同罪だ」みたいなコメントが並んでいました。このインタビューを契機にUberの経営幹部が心変わりをすることもなさそうだし、社会変革に繋がる新しい事実がわかったわけでもないし。(感情の高まりが閾値を超えて社会運動化する、みたいなことはあるかもしれないけど)
フランスの社会学者、ロジェ・カイヨワは、その著書の中で、戦争と祭りを類似の構造で捉えました。「戦争と祭りはともに社会の痙攣」である、戦争や祭りの中で人は「自己を超えた真の偉大さを獲得し自らの運命に合致した自由」を見出す。その自由の行使によりもたらされる陶酔感や恍惚感は他では得がたいもので、それこそが戦争が(あるいは祭りが)人間を惹きつけるのだと。
私が煽りを受け付けないのは、それが小さな(時には大きな)戦争や対立を生むからで、さらにはその周囲に漂う無責任な陶酔感や恍惚感に我慢がならないからでもあります。浸透圧の高い言葉をつかえば、対話する相手を圧倒することも容易なのかもしれないですが、少なくとも私はそういう環境にはいれないな、と思ったりします。
とはいえここで「こんなPodcastあかん!」と私一人がピヨピヨすることの価値もないわけで、私は私として、ここや他の場でアンビエントなニュースをしっぽりとお届けしつつ、「より静かで豊かな社会になりますように」という祈りを、人と話したり、ものを書いたりするあらゆる場面で個としての姿勢を通じて捧げていきたいなと思っています。(先週友人からもらった、「Newsletterよかったよ、アマチュアっぽくて」というメッセージがとてもうれしかったです)
もう一つ、こんな感じで火だるまにされるとわかっているのにPodcastに出演するUber CEOも、「わたしも正直、AmazonやUber Eats使ってまうねん」と告白しているカーラさんも、正直でまっすぐだと思いました。隠れる・隠すよりも表に出すこと。この姿勢を見習いたいな、そんな姿勢を示す機会を頂けますように、と祈る1月です。
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ここからは、私が今週観たものや聴いたものなんかを紹介していきます。(今週から、最後にわたし自身の活動報告も入れてみました)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
仕事の礎=まず「国語力」:話者の意図を正確に理解すること、正確な言葉を適切に使って表現すること、語彙の豊富さの3つが国語力だと。仕事だけではなくて、考えることの根底にこの国語力があるなと感じる日々。
今こそAI倫理に仏教思想を:仏教では、自己修養、つまりトレーニングを人に課すと。書いたのはタイの王立チュラロンコン大の先生でした->「すべての人の苦痛を和らげることを目標にすべきであり、直接AIと関わる人だけに限定すべきではない」
ネットフリックスは2021年、最低でも“毎週”新映画をリリース予定:ディズニーの予定は年間22本に対し、Netflixは70本。苦境が続く映画業界で唯一成長を続ける。
そんなネットフリックスが出すインクルージョン報告書:2013年から求人ページでインクルージョン情報を出している同社。いま女性比率は47.1%で部長以上のクラスでも47.8%。人種/民族多様性も追求。これから“inclusion health”も測るですって。
生きた細胞がデジタルデータの保存場所になる未来:1グラムのDNAで2億1500万ギガバイトものデータを保存できるですって。なんですって。
「老化細胞」を死滅させる薬:東大の研究。グルタミン代謝酵素GLS1を阻害する薬をマウスに投与したところ、筋肉組織や臓器の機能が改善したとのこと。未来。
Telegramは民主化と極右運動、それぞれの苗床:香港の民主化運動などで注目を浴びたメッセージアプリ・Telegram上で、ナチス的な運動も起きている。ジャーナリズムここにありで、リンク先のRest of Worldは本当にいいメディア。
知的であるために守るべき5つの態度:異なる意見を尊重し、わからないことを認めかつ学び、自分の教える力を磨き続け、あらゆる知識を大切にし、批判を相手を高めるための道具に使う。この態度でいこう。
1日1分のプランクが体を変える:体幹は全ての基本。「強い体幹はより強い個人をつくる(a strong core will only help you become a stronger individual)」ですって。やります。
📙本
小松左京『復活の日』:日本3大SF作家の一人、小松左京先生が1964年に発表した作品で、「感染症が世界中に蔓延する」というシナリオ背景が取り上げられ、昨年のコロナ禍で話題になりました。
小川さやか『「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 』:著者は、第8回 河合隼雄学芸賞を受賞した『チョンキンマンションのボスは知っている』を書いた小川さやか先生。明日のために今日を犠牲にし続けるの、やめましょ。そんなメッセージがグッときました。
Number 1018号「藤井聡太と将棋の冒険」:永瀬王座のインタビューがとても良かったです。小学校や中学校時代の思い出を語る部分と、最後に「将棋とは?」という質問に答えるシーンがハイライト。過去どこかでいじめを経験したり、つらい経験をした人は、勇気がもらえる内容なのではないでしょうか。
柳田国男『事実の時代に』:読み始め。来週しっかり書きたいんですがとても良い本だなと感じています。
🎥観た/観ている
ホンダ「Rebel1100」のプロモーションムービー:バイクを買い換えたいなと思っていて。トライアンフのT100/T120もいいですよね。
要するに全ては「愛と想像力の欠如」という、考え方:職場で、なんやスキルだ成果だ、とあるけど、基本にあるのは愛と想像力だよねと。そう思う。
Netflix Sowing the Seeds:上のインクルージョンレポートの動画版。10分の中に、これまでの取り組みと、これからの未来が描かれていて、さすがプロ、となります。
📻聴いた/聴いている
「8時間勤務中ずっとGet Wild退勤」プレイリスト:テンション上げて作業したいときに最高。
TRANSIT VOICE 旅するポッドキャスト:序盤の棒読み感からの、濃い内容。第2回のスパイステーマ回を聞いてみてください。クローブの木の生い茂っている山のイメージを頭に浮かべると、一気にスパイスの香りに包まれるはず。
どこか奇妙な米連邦議会乱入事件(2021年1月8日収録):1/6、米連邦議会にドナルド・トランプ大統領の支持者たちが突入。日本のメディアで語られるトーンと米国メディアが報じるトーン(The AtlanticやBBC、New York Times、THE CUTなどみてました)の差に改めていろいろ考えていました。The Atlanticなんかは911と同じように1/6を忘れるな、といっていますし。このPodcastを聞いて、理解が立体的になりました。
The Argument:New York Timesが運営するポッドキャスト。あえて、政治思想がまったく異なる人たちに同じ問いかけを投げてみて、そこに巻き起こる議論を見てみよう、な番組。「あいつらは間違っている、と思っています?相手方もそう思っていますよ」と。エコーチェンバーが叫ばれる世の中だからこそ触れがいのあるメディア。(Ground newsのGoogle拡張機能を使うと、読んでいるメディアの政治的ポジションが表示されます、おすすめ)
Rebuild:2016年とかの古いエピソードを聞き直しはじめました。非エンジニアのわたしでも聴いていて楽しい。
🧩感じた/感じている
最近行ったFFS(Five Factors and Stress)で「受容・弁別」に個人特性傾向があるとでて、納得しています。拡散性が文字通り最低なのもその通り。ストレングスファインダーやMBTIよりも意志決定や行動に結びつけやすくて、わたしは好きです。
樹木に思考があるとすると、葉っぱと枝と幹と根っこで考えていることは違って、「樹木全体として考えていることは何か?」という問い自体が有効ではない(少なくとも良い答えが得られない)気がする。これは人間でも一緒で、脳の思考と手の思考、肝臓の思考はそれぞれ違うはず。人の思考=脳の思考、ではない。
試してみることに失敗はない。
事実と客観的事実は違う。そして他の人からして「客観的にみると~だと思うよ」というとき、それは客観ではなくその人の主観のフィルターのみ通過している。
学ぶとは世界が変わることであり、学びたいという思いは世界を変えたいというときに生まれる。
雑草という名の草はない。
🍵今の関心事
目元でうまく笑顔を表現するために出来る工夫は何か
今年の夏を気持ちよく過ごすためにいまから準備できることは何か
自分は、いつ、どこで、何の博士号を取るか
米国の経済政策はこれからどこに向かい、その兆候はどこに見えるか
今年の4月頭、トランプおじちゃんはどこで何をしているのか
🥑活動報告
1/19 (火)16:00-17:00で、壁打ち×市場調査を掛け合わせてプロジェクトを進めていくことをテーマに、経営企画・事業企画系の方向けに講演します(Link)
1/27 (水)19:00-22:00で、コンサルティングファームへの就職を目指す学生さんに向けた講座の講師をします(Link)
2/12 (金)09:00-12:00で、情報収集・活用に関するセミナーに登壇します(Link)
ポッドキャスト・Cobe.fmで、「フォークの歯はなぜ4本になったのか」を取り上げてお話し・収録しました。近々アップされます(Link)
近々、ライブアンケートを行うWebサービスβ版をリリースします(To be Updated)
近々、人材紹介の業許可を取得予定です(To be Updated)
近々、書籍が出る予定です。発売は4月以降を予定しています(To be Updated)
その他、企業の市場調査支援(3案件)、エグゼクティブコーチング、事業立ち上げ支援(3件)などを併行してやっています。愉しいです。(To be Continued)
みなさんの、読んで面白かったものや考えていることなんかも、ぜひコメントやメール、SNSなんかで教えてください。
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