神戸から、おはようございます。
個人的に、何か新しいことをはじめたときに4回目を迎えられるかどうか、は相当に大きな分水嶺で(それだけ1~3回のうちのどこかでやめてしまうことが多い)、今回無事に4回目をお届けできて良かったな、と思っています。
先週末、「サピエンス全史」や「ホモデウス」などの著者としても有名な歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリさんが、2017年にクリス・アンダーソンと行った対談動画を改めて見てみました。この動画の中で彼は、なぜ国家主義・ナショナリズムがこれからの時代において有効なフレームではないのかを、インターネットを中国の黄河に例えながら説明しています。少し長いですが、引用してみます。動画で言うと8分過ぎあたりからです。
何世紀、何千年もの間、愛国主義はとても上手くいっていました。もちろん戦争などが起こりましたが、愛国主義にはとても多くのプラスの面もあり、それが持つ力により、とても多くの人々が互いに助け合い、共感し合い、団結することができました。
人類史で初めて国が興された頃にさかのぼりましょう。それは数千年前のこと。中国の黄河沿いに住む人々は 実に多くの部族から成り、誰もが生存と繁栄を川に依存していました。どの部族も周期的に起こる洪水や干ばつの被害を被っていましたが、どの部族にもそれを防ぐ手立てなどありませんでした。各部族はそれぞれほんのわずかな流域にしか手が及ばなかったからです。
その後長く複雑な過程を経て部族たちは合体し、中国という国を建国し、黄河の全流域を制御するに至り、何十万という人々を集結させる力を備え、ダムや運河の建設や治水を行い、最悪の洪水や干ばつを防いで全ての人々にとっての繁栄のレベルを高めていったのです。同じようなやり方が世界の多くの場所で成功しました。
しかし21世紀に入り、技術によって全てが根本から変わりつつあります。現在では世界中の人々は ネットという名の共通の河川沿いに住み、どの国をとってみても自らの力ではこの河川を制御できません。我々は皆1つの惑星に住み自らの行動による脅威にさらされています。世界規模の協力が何らかの形でなければ、国家主義に可能な規模では、とにかく問題に対処するには不十分なのです それが気候変動でも技術がもたらす混乱でも同じです。
なるほど、ネットは国家を超えて流れる河なのか。そう考えると、インターネットとの関わり合い方について、アナロジーとして、いくつかの示唆が出そうだなと感じました。(本論の主旨からはあえて大きく誤読しています)
一つには、恵みをしっかりと受け取ること。自分の村の外から流れてくる水には、いろんな成分が含まれている。そしてその河は、他の村へと続く道にもなる。その恩恵にあずからせて頂くことは大切にしたいなと思います。一方で、この川を汚さないことも忘れずに。自分が活動する中で出てくるゴミや負なもろもろをインターネットに垂れ流すことは、下流にいる方に迷惑をかけることになるので。
さらには、その変化におびえないこと。自分で流れをコントロールできない大きな河は時に災害を生むし、時には誰かが河から攻めてくるかもしれないけれど、それに過度におびえないこと。数年前から、自分のなかで大切にしている言葉の一つが「たゆたえども沈まず」で、これは16世紀から続くパリ市の紋章に刻まれた言葉なんですが「どんなに強い風が吹いても、揺れるだけで沈みはしない」という、水運を中心地として栄えたパリの船乗りの標語でもありました。この心構えは、インターネットという河を渡っていく上でも大切にしたいなと感じています。
たぶんですが、この河、今後も太く、長く、大きくなっていきそうなので、つかず離れず、いい関係を気づきたいなと考えています。
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それにしても、インターネットを河に例えて物事を考えられるような頭の構造を、どんな風にしてつくっていけばいいのでしょうか。いまの私が関心を持つ、一つのテーマです。この対談中、ユヴァル・ノア・ハラリはキレッキレで、
国家主義者は気候変動を否定する、なぜなら国家は気候変動に対処する手段を持たないから(否定しないと認知的不協和が起きるから)だ
人間の愚かさを過小評価してはいけない
政治家は、自ら生み出せる改善は限定的だが社会に及ぼせる不利益は無限大
ホモサピエンスが役割を担って演じるべき宇宙規模の壮大なドラマなどない
みたいな名言連発です。わからないときにわからないと明確に言う姿勢も大好き。日本語字幕もあるので、ぜひこのニュースレターを購読されているような方には、動画ごとまるっと見て頂きたいなと思う次第です。
サピエンス全史は、著名人を含めて多くの方が良著として取り上げていて、私も同様にそう思います。上下巻あって長いので、もし読書が得意じゃなかったりそもそも時間がないという方は、最近出た漫画版か図解スライドなんかはどうでしょうか。おすすめです。
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ここからは、私が今週観たものや聴いたものなんかを紹介していきます。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
空の上司、雨のデザイナー:空雨傘フレームワーク、使えるだけで資料作成も会議も最高になれる。記事にあるように、個人が楽しいと感じたり価値を出すポイントで使うのは初めて見たけど、有効そうで、私は雨部分が好き(Link)
Apple Watchの心電図アプリが使用可能に:塩と砂糖の消費量が全国一位、年間4千人が心血管疾患で亡くなる我がふるさと、長野の方々、ぜひ(Link)
CES 2021に登場した医療系デバイスたち:マスク系が活況。ゲーマー向け製品で知られるRazerのやつは他のところでも話題になってました。寝るときに抱きしめるロボットもちょっと欲しい。分野別のよさげ製品紹介はImpact Labのこちらをどうぞ。(Link)
COVID-19ワクチンを接種してもらうためのコミュニケーションチートシート:米国の事例。「家族のために…」が最も有効な説得方法だと。その他細かい言葉遣いのDo’s/Dont’sがあって面白い(PDF)
HIV治療、毎日服用→月1回の注射へ:FDAがCabenuva(cabotegravirとrilpivirineの組み合わせ)を認可。9割の治験参加患者が、毎日の錠剤服用よりも月1回の通院で住むこの治療法を支持(Link)
集中治療室のスタッフのメンタルケアを:King's College Londonによる調査結果。ICUに勤務する医療スタッフの約半数にPTSDの危険あり(Link)
感情にもフィットネスが必要:「心のためのジム」Coaを立ち上げた心理学博士、Dr. Emily Anhaltのインタビュー英語記事。7つの要素「自己認識、共感、マインドフルネス、好奇心、レジリエンス、コミュニケーション、そして遊び」を意識して日常に取り入れようと思いました(Link)
マタタビ反応はネコが蚊を忌避するための行動:京大の研究。マタタビに含まれるネペタラクトールが蚊の忌避活性を有し、ネペタラクトールの濾紙に対しても猫は体を擦り付ける(Link)
インターネットくす玉:最高だった(Link)
米国のコンサルファームランキング:さすがです、マッキンゼー先生。
アフリカ農家を救うハイブリッド・コーンのイノベーション:干ばつのような気候条件に対応するために開発した品種、SAWA。クルミ農家の収穫法改善も記事になっていました。植物の水分ストレス検知器か。技術は人を救っている(Link)
トランプ大統領、最後の日:The Atlanticのホワイトハウス担当によるレポート。「米国の歴史の中で、議会に対する暴動を扇動した唯一の大統領」だと記憶されるのか、大変だな。(Link)
📙本
伊藤亜紗『記憶する体』:ここ半年読んだ本の中でもトップクラスに良かったです。人には人のローカル・ルールがある。(Link)
柳田国男『事実の時代に』:事実という言葉を、主体的にモノを見ようとする目や意志を放棄することの隠れ蓑にしていないか、と考えるきっかけになりました(Link)
AIの遺伝子:マンガ。22世紀、ヒトと、AIが生み出した電脳と人工身体出構成されたヒューマノイドと、ロボットとが混在する世界で、ヒューマノイド専門の医師として活動する主人公の日常もろもろを描いています。ハードSFテーマなのに、短編ですっきり読める。そして人間ってなんだろう、考えるって何だろう、恋ってなんだろう、みたいに、思考を揺さぶられる。好きです(Link)
ドラフトキング:マンガ。選手を見る目は確かなのにチームプレイが苦手なプロ野球スカウトマンに焦点があたっています。今上手いことと、プロに行くべきかどうかは別の話。そうだそうだ(Link)
🎥観た/観ている
ナショナリズムとグローバリズム:このレターの冒頭に取り上げたノヴァル・ユア・ハラリのインタビュー動画。聞き手はTED創始者のクリス・アンダーソン。1時間、ちょっと長いですが日本語字幕もあるのでぜひ(Link)
Exprole.org:動物や風景のライブ映像配信サイト。猫、犬、パンダの赤ちゃん、オーロラ、魚、、、、米国の退役軍人支援のNPOが運営。ずっと見ちゃう(Link)
📻聴いた/聴いている
Jorja Smith & OG Keemo - Blue Lights x 216 ft. WDR Funkhausorchester:いろんなテイストの音楽が混ざり合うこの感じ(Link)
読書・作業・集中するときのためのジャズピアノ:プレイリスト。がつっと集中して何かしたいときにはこれ。向こう2ヶ月はめっちゃ使いそう(Link)
クリストファー・マロニーが謳うThe Rose:「愛は、かよわい葦を沈めてしまう川だと、人は言う」から始まる大好きな歌です。冒頭の川の文脈と、この歌がTBSドラマ『アルジャーノンに花束を』の主題歌だった文脈で。インターネットは愛でもありました。そしてカミソリでも、種でもある。(Link)
🧩感じた/感じている
うちで働いてくれているインターンの子たちの成長が著しく、あらゆる人は、常に昨日よりよくなることができる。
向こう3月末まで忙しさがぐっと増しそうだが、淡々としたライフスタイルを守っていきたい。
行動を促し、観察を促し、言語化を促すことが上手い人になりたい。
生産性向上のテクニック、突き詰めればGTDとポモドーロに行き着く。
心身の健康のために重要なものを個人的重要度に応じて並べると、睡眠>食事>雑談>運動
🍵今の関心事
自分の脳のバックアップを取れるサービスがあったとして、どんな条件ならそれを利用しようと思うか
今期の将棋・A級順位戦はどこに落ち着くのか
目でどれだけ豊かな表情をつくれるか
人の職場での振る舞いが変化したときに、それは個として成長をしたのではなく、家庭や生活の中で何かや誰かを犠牲にしリソース配分を変えただけ、というシーンがあるのではないか
(再掲)インターネットを河に例えて物事を考えられるような頭の構造をどのようにして自分の中につくっていくか
記事タイトルにURLを埋め込み見えなくするのと、別途(Link)のような形式でリンクがあることを明示するのは、どちらが読み手に優しいのか
🥑活動報告
だいたい3ヶ月毎に出している「ライフスタイル変化の兆候を読む:社会変化兆候調査 vol.4」を公開しました。今回は海外の兆候多めです(Link)
1/27 (水)19:00-22:00で、コンサルティングファームへの就職を目指す学生さんに向けた講座の講師をします(Link)
2/12 (金)09:00-12:00で、情報収集・活用に関するセミナーに登壇します(Link)
近々、ライブアンケートを行うWebサービスβ版をリリースします(To be Updated)
近々、人材紹介の業許可を取得予定です(To be Updated)
近々、書籍が出る予定です。発売は4月以降を予定しています(To be Updated)
年度末3月までにこれを!なんとか!的なご依頼多めでばたばたしています、が、愉しいです。(To be Continued)
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