神戸から、おはようございます。
「選択肢は多ければ多いほど良い」は、学部で学ぶ経済学の初歩の初歩です。選択肢が多ければ多いほど、自分にとって最適な商品や職業を見つけるための幅が広がるはずです。近くの商店より大型スーパー、大型スーパーよりもAmazon・楽天、というように。
しかし実際には、選択肢の多さが人を圧倒することもあります。次の週末の旅行先を選ぶとき、パートナーが選択肢を100個持ってきたら、ちょっとむっとしませんか?例え精度がいまいちでも、考え抜かれた3つの選択肢を提示された方が、なんとなくいい意志決定が出来るような気がしてきます。
選択肢の多さは、決める人、決断する人にとっての重荷となる。
これは社会人になって改めて実感した、一つの真理です。
東京大学の平成25年度卒業式総長告辞で当時学長の濱田純一総長は、エーリッヒ・フロムの著作・自由からの逃走とその中で取り上げられた「自由の逆説」をテーマにお話をされています。自由の逆説とは、1900年代前半のドイツにおいて「近代化によって自由というものを手に入れたはずの人々が、なぜナチズム、ファシズムというような自由の価値とは正反対のイデオロギーを受け入れてしまうのか 」という問いと向き合ったときにフロムが至った一つの仮説で、
かつて熱望されていた自由がいったん保証されるようになると人々はその自由の重みに耐えられず、そこから逃走し新たな権威への依存と服従を求めるようになる
という現象のこと。曰く、自由とは重荷であると。
自由は近代人に独立と合理性とをあたえたが、一方個人を孤独におとしいれ、そのため個人を不安な無力なものにした。この孤独はたえがたいものである。かれは自由の重荷からのがれて新しい依存と従属を求めるか、あるいは人間の独自性と個性とにもとづいた積極的な自由の完全な実現に進むかの二者択一に迫られる。
世界中のあらゆるシーンで、自由を求める声が挙がっています。スペイン・カタルーニャやスコットランドの独立運動、ジェンダーや身体性に依らない機会の公正を求める社会運動はますます盛り上がっていますし、発言の自由、職業選択の自由が認められない時には、多くの人が立ち上がります。
私は一人の経済学徒として、自由の価値を信じていますし、自由を追求することは基本的に善であると考えています。一方で、とある自由を追求したときに、多くの人は新しく得られた自由に押しつぶされてしまうのかもしれない、または別の権威に身を寄せ、元の状況よりよっぽど悪い状態に陥ってしまうかもしれない、ということも起きうると思っています。
「制約がないと方程式が解けない」そんな環境に慣らされた私は、自由や公正の追求がそのまま幸せに繋がるということを信じられなくなっているのかもしれません。だからといて、差別や不自由、不公正を放置していいわけはないんですが。
世界は今日も難しいです。
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ここからは、私が今週観たものや聴いたものなんかを紹介していきます。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
アタマが悪いんじゃなくたぶん使い方が下手なだけ:大好きなブログ「タイム・コンサルタントの日誌から」より。 “わたし達が上手にできない身体技法は、もともと力量や素質がないことよりも、ムダな力の入れ方、下手な使い方をしていて、バランスやつながりが良くないことから生じる” というのは本当にその通りだと思う。 (Link)
行動経済学は悪用できる、あなたもその対象:リチャード・セイラーのノーベル経済学賞受賞などで注目を浴びるナッジの概念は、企業の手にかかればいくらでも悪用が出来ます。そうしないように、そうされないように。 (Link)
私たちヒトがコアラを愛する理由:人間の赤ちゃんに似ているから?という仮説もあるようで。『天地創造デザイン部』を読むとちょっとあれな気持ちになるんですが、結局コアラ好きです。 (Link)
死後サービスの先進国・日本:お葬式がオンラインで行われる時代に。日本はそんな時代の先進国になれるか。 (Link)
一歩目を踏み出すエネルギーが一番大きい:「静止摩擦力が動摩擦力よりも高いのは人の行動においても言える」本当にその通りで、どんなに小さくても、まずは動かしてみる、始めてみるのがおすすめ。 (Link)
若年層のメンタルヘルスが大きく悪化している:昨年来、日本の中高生の自殺数が増加していることについて報道がされていますが、その動きは世界的なもの。2020年秋時点で全米の大学生の約半数に抑うつor不安症状が見られるという研究も出ていました。 (Link)
ビデオゲームにハマる少年は鬱になりにくいという研究:11歳の時にゲームをたっぷりやっていた少年は14歳の時の鬱発症率が低かったようで。裏側で、11歳の時にSNSにどっぷり使っていた少女は鬱傾向を示しやすかったとのこと (Link)
スペイン・カタルーニャ州議会選、分離独立派が過半数議席:極右政党も躍進。欧州はどこに向かっていくのか。EUとして統合に向かっていった過去数十年の反動か。それとも多様化を煽る世相の反映か (Link)
テキサス大丈夫か:記録的寒波により大停電に見舞われている米国、テキサス州。水不足も深刻。電力復旧が進む中、人災ではとの批判も。荒れている。 (Link)
3Dプリンターでステーキをつくる:以前のニュースレターで骨素材をつくる3Dプリンティング技術を紹介しましたが、今後はリブアイステーキをつくる試み。イスラエル工科大学とAleph Farmsが共同で取り組んでいます (Link)
テスラ、株価だけじゃなく車体も浮かせる?:ホバリングする車を目指して。 (Link)
セブンティーンアイスの謎:「ライバル商品がいないところで、なおかつ人がたくさん集まる場所に置こう」の結果がボウリング場であり、スイミングスクールだった。場所を見つけるのも(むしろそれこそ)イノベーションだ。 (Link)
日本文化を表すピクトグラム:日本デザインセンターさんの、Experience Japan Pictograms。いい。 (Link)
📙本
チャヴ 弱者を敵視する社会:少し前のニュースレターで取り上げたマンガ・紛争でしたら八田までの中で取り上げられた、イギリスのCHAV。“生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級” 外敵をつくって自分の意義や存在を見いだしたい人間心理について考えさせられる良著でした。ハフ・ポストに掲載されたこちらの書評もどうぞ。 (Link)
暇と退屈の倫理学: 忙しい忙しい、といいたくなる時にこそ再読したくなりました。 “生きているという感覚の欠如、生きていることの意味の不在、何をしてもいいが何もすることがないという欠落感、そうした中に生きているとき、人は「打ち込む」こと、「没頭する」ことを渇望する。” 近年のウェルビーイングブームは、生きている感覚の欠如から生まれているのかもなと思いました。 (Link)
郝景芳「人之彼岸」:先々週からゆっくり読み出した中国発SF。 (Link)
(ここからマンガです。先週取り上げたBADONの作者、オノ・ナツメさんにハマっています)
ACCA13区監察課:BADONの前にこれを読んでおくと、どんな世界観で描かれているのかの前提が掴みやすそう。ハチクマのケーキ、私も食べたい (Link)
リストランテ・パラディーゾ:素敵おじさまで溢れたレストラン、私も通い詰めてしまいそう。↓の絵の感じが好き。素敵なおじさんになりたい。私の理想はおじトラチャンネルさんです。 (Link)
🎥観た/観ている
火星探査車 “Perseverance”、着陸成功:2020年7月30日にフロリダから打ち上げられ約7カ月半にわたり火星への旅を続けてきたPerseveranceが日本時間2月19日早朝に火星に着陸。この動画の1:40:40あたりでわぉとなります。カラー付き写真も送られてきました。 “Linuxが火星に降り立った!”と盛り上がる声も。 (Link)
Oculus Questで行うメンタルヘルス改善サービス:VR動画を通じてメンタルヘルス改善を目指すTRIPPの紹介動画。どこか怪しげだけど、本当ならすごい。 ヘッドバンド×VRで不安軽減を行うHealiumも注目してます。 (Link)
大坂なおみさんのAO優勝後インタビュー: 素敵な空気感の、いいお話でした。 (Link)
テニス サーブのスローモーション動画:苦手を克服したい (Link)
📻聴いた/聴いている
Sade: Top tracks:ずーっと仕事をした後に息を抜きたいとき、シャーデーの声がとても良いです。 (Link)
Rebuild 297: Too Hot To Handle:最後にお話しされている将棋AIが示す勝率のお話は本質的で、AIと人間の認知の違いだったり、確率というものについて考えさせられるお話でした。今月からサポーターになりました、楽しいです。 (Link)
コテンラジオ 第1次世界大戦回:こちらも今月から月額サポーターになりました。まとめ聴きできるのがうれしいです。 (Link)
🧩感じた/感じている
睡眠トラッキングをしてみようとOura ringを買ってみました。届くのが楽しみ。Apple Watchをもっていたら、集中力ブースト+睡眠導入のEndelもやってみたいのですが。
自分で考えるんだ、という決意を持つのが最初。その決意があるかどうかで、教えてもらう人との向き合い方も変わるし、日々目にするメディア記事との関わり方も変わる。
朝起きて、昼に動いて、夜は寝る。人間の基本。
わかることが増えれば増えるほど、それ以上の速度でわからないことが増えていく。わからないことにどれだけ耐えられるか、わからないことが爆発的に増える中でどれくらいわかろうという姿勢を保てるか、が勝負をわける。
人間の愚かさを過小評価してはいけない。
🍵今の関心事
2100年の人間の自意識の中に、国民という意識は残っているのか
ジェンダー観点での平等・公正が仮に担保されたとして、その次に攻撃のターゲットになる権威や既成概念はなにか
社会における自由の総量は変化するか、それとも不変か
身体感覚は移植できるか
🥑活動報告
先週はお仕事をだいぶ頑張りまして、3月末までなんとか走り切れそうな感じがしてきました。そろそろ4月以降や、会社の次の期に目を向けていこうと思います。
ここ1ヶ月、コーチングのPCCマーカーを毎日見返す、というのを続けています。コミュニケーションのレベルが上がった気がしています。PCCはコーチング、PFCは前頭前野。
今週、人材紹介業の業許可が取れるかどうかの連絡が来る予定です。楽しみにしています。
通っているテニススクールで所属するクラスのレベルが1つ上がりそうです。うれしいです。
みなさんの、読んで面白かったものや考えていることなんかも、ぜひコメントやメール、SNSなんかで教えてください。