1千万円、最高の使い途を見つけた。
故障続きの自宅マンション、ニチレイ・システム障害、神戸の世界品質ハードコート、関西ジュニア、FIREへの所感。東京で訪れたうまい店。
ここ数ヶ月、マンション共用部の各箇所が立て続けにぶっ壊れている。エレベーター前ディスプレイが割れ、駐車場前シャッターも開きっぱなしで、しまいには建物に出入りする自動ドアが閉まらなくなった。自宅の玄関を開ける前に必ず何かしらの故障を目にすることになる。ディスプレイをたたき割った人は不明のままで、自動ドアを動かすモーターは調達の目処が立っていないらしい。困ったものだけど、それが物理のものである以上なんともならない。まぁ、そういうものなのだろう。
困りごとは、常に現実世界で起きる。仮想世界の課題・問題はしょせん空想のものであって、私たちは常に目線を現実世界に向けるべきである。『システム障害』というとき、システムそのものは困っている主体ではない。問題とは、ケンタッキーフライドチキンやあずきバーが食べられなくなることであり、冷凍倉庫で三連休すべてを投じて在庫を手計算することであって、システムを直すことはその解決手段にすぎない。
「リモートワークをデフォルトにすべき」と甘えたことを言っている人がいるが、リモートに溺れた人は「大事なことは全て現実に属し、それは常に物理的空間で起きる」ということを忘れがちである。デフォルト値は常にオンサイトでなくてはいけない。
この夏、手金の1千万円を使って工事をした。神戸・北区にあるテニスコート1面を世界品質のハードコート改修である。土台を特殊溶剤で固め、全豪オープン会場と同じグリーンセット素材を何層も塗り重ねていく。
1千万円。大金だ。しかし現実の形をかえるのには金がかかる。生成AIはシステム開発費用を1/100に減らしてくれるかもしれないけれど、ボールの跳ね方や滑り具合を変えてはくれない。大事なことをするための費用は簡単には下がらない。しかし現実のみが、金と時間をかけるに値する対象である。
「世界で戦えるレベルのテニス選手が出てこないのは、日本の練習環境が”砂入り人工芝”ばかりだからだ」と語るトッププロがいる。ウィンブルドンなどで有名な世界の四大大会はハード・クレー・天然芝の3種類。しかし、日本にあるコートの半分以上が、『雨に強く維持費が安い』の謳い文句で整備された砂入り人工芝コートである。
私のコンサルティングスタイルは、くその役にも立たない悪しきサプライヤーロジックの排除を起点にしている。仕事とはお金をもらったからするものではない。時にはお金を払ってでも主義を通さなくてはいけないときがある。あるべき現実を阻む空想論理を滅することで稼いできた金を、別の空想論理を撲滅するために使うのは、コンサル冥利に尽きる。
先週、このハードコートで日々練習している中学生が関西大会で優勝した。2つ年上の高校まで対象の大会で、酷暑の中戦いきった。高く跳ねたボールをフォアハンドで高い打点からかちこむ、かっこいいテニスをする少年である。半年前、有名な指導者に「猪突猛進、うまいのに勿体ない」と伝えられていた彼。完成直後のこのコートで練習した後「ここでは頭を使わないと点が取れない。だから頭を使わないといけない」と話してくれた。優れた環境、優れたシステムは考える人をつくる。考える人は強い人であり、強い人は結果を生むのだ。いい面構えの中学生、ぜひ応援してあげてください。
16歳以下シングルスは佐藤謙信(兵庫/TASU-Club)と髙島南奈(兵庫/園田学園高等学校)が優勝
いろんなお金の使い方がある。百貨店でブランドものを買うのもいい。オルカンだS&Pの投資信託を手に入れるのもいいだろう。私は、未来ある人を鍛え、強くする何かに使うのが好きだ。そしてその対象は必ず物理的な何かを含む。
どうせ私たち日本人はおおよそ1,600万円もの金を残して死を迎えるのだ。今のうちに、目についた現実の問題を解決しよう。あらゆるものが金融化するこの時代に、同じ思想で金を使ってくれる人が10%でも増えれば、世界は多少マシなものになるはずである。
倹約して貯めたお金をオルカン投資して早めにFIRE?そんなくだらねぇことを目指してどうする。思えば、私が尊敬するBCG上司の口癖は “make it happen“だった。
お便りをお待ちしています。
💼美味かった
東京出張で訪れた最高の店たちです
焼鳥 KITA@池尻大橋:串のクオリティがずば抜けているのはもちろん、地元・長野の銘酒・大信州がたくさん並んでいる。 link
初場所 中目黒:私の名前でキンミヤ焼酎のボトルがあります。飲んでね。早く空にして、次のボトルを入れておいてください。 link
Bistro Occi 五反田:肉がうまい。「同僚にカーボベルデ人がいてW杯GKと友達らしいんですよ」から始まる最高のストーリーを聞きながら、SORACHIを楽しみました。 link
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
壊れたロシアがもたらす不安定な世界:これまでプーチン政権と中立の立場をとり続けてきたオリガルヒの1人アンドレイ・メルニチェンコが英The Economistの50時間にも及ぶインタビューに答えた。戦争は悪意を持った個人や政権が始めるものではなく、外交・安全保障システムが壊れた結果として現れる一つの帰結であり、各種制裁や相互の道徳的非難はその壊れた状況をより深刻化させ、不安定を長期化させる誤った対応と説く。このままロシアを締め上げた先にどんな世界が待っているのか。ヴェルサイユ条約後のドイツのような復讐主義に傾倒する新政権が誕生したとき、誰がその責任を負うのだろうか。考えることの多い記事だった。 link
米病院がフィリピン人看護師を遠隔雇用する:日本でも医療クラークを採用して医師や看護師の負担を軽減する取組は進んでいるが、米国の病院はフィリピンの看護師を遠隔クラークとして活用し始めている。人手不足で給与も高いオンサイト採用の代わりに、時給5-10ドルで働いてくれるミンダナオ島のスタッフが患者のモニタリングや記録を担う。一見効率的なアウトソーシングだが、国境と画面をまたいで行われる医療行為の中で責任は曖昧になり、同時に送り出す側のフィリピンでも医療者不足が深刻化しつつある。技術がもたらす裁定取引の裏で、責任だけがぽっかりと宙に浮かんでいる。 link
スマホを裁判にかける若者たち:普段ショート動画やSNSを楽しんでいるスマホを囲んで模擬裁判にかけ、有罪を宣告して電源を落とす。そんな奇妙なフェスにZ世代が集まっている。彼らは生まれた時からディスプレイと共に成長してきた世代だ。技術そのものが嫌いなのではない。誰に時間と注意を握られるか、それを主体的に取り返そうとしているのだ。しかしこのような大げさな行為をしなくてはならないほど個人とデバイスが結びついており、もちろんその関係を完全に断ち切ることは能わず、フェスの最中に制限つきで使い続ける矛盾まで、正直に描かれている記事。link
パン焼き機が使われないこの世界でSaaSは生き続けるだろう:最近のホームベーカリーは優秀で、材料を入れるだけで安価でおいしいパンが焼ける。しかし現実には、機具を買ったはいいもののキッチンで眠ったままで、家近くのおいしいパン屋さんに足繁く通う人が大半である。なぜこんなことが起きるのか?5000年前に人類が分業を始めて以来、ちょっとした利便性が常に勝利を収めてきた。生成AIがあらゆるソフトウェアサービスを自律的に制作・運用し始めているいま、著者はこの事実をSaaS不要論への反論に使っている。コードを書く道具がどれだけ賢くなっても、信頼性もコンプライアンスも保守の重さも消えず、月数百円払えばまとめて第三者に押しつけられる利便性は何者にも代えがたい、と言うのだ。つくれることとつくることだけでなく、つくることとつくり続ける事も明確に異なるのだ。私たちは怠惰な有機物である。 link
京大が育てた「アホ」の科学:関西人の言う”アホ”とは、常識やマジメの対立概念だ。まっすぐ最短距離を進むのが賢さだとすれば、わざと寄り道して酔ったように歩く酔歩にも意味がある。ムダは角に最適化された脆弱性リスクに対する保険であり、想定外に対する汎用性・冗長性である。KPIを愚直に追えばいい組織になると思っていませんか?アホがいない組織は簡単に崩壊する。アホが真剣に生きる街・集団は長く生き残る。 link
CEOとの年収格差、数百倍でも問題ない:経営陣とスタッフの間に480倍もの収入差があれば普通なら怒り湧くはずだ。ところが、従業員が「経営陣と自分ってなんか似ているな」と少しでも感じてもらえれば、格差への不満は静かに後退していくことが研究で明らかになりつつある。経営陣が明かす出身地への愛や若いときの苦労話、社会問題に向ける価値観は、そんな対立不満解消のためのコミュニケーション戦略の発露かもしれない。似ていると思わせるほど格差が正当化される確率は高まっていく。不平等は数字ではなく物語で受け入れられる。今週、高給取りの経営者が振りまく親近感を少しうがった目で眺めてみよう。 link
議論で相手を打ち負かすことに意味はある?:あるエンジニアが、人と議論するのをやめた。正しさを勝ち取っても、得られるものが驚くほど少ないと気づいたからだ。相手を言い負かす代わりに、相手の成長と自分の改善に時間を回すほうがよほど合理的である。より良くなった相手と自分、2人が協力すれば、議論するだけでは得られなかったものが手に入ることがおおい。正論や空論は使い所を間違えないこと。 link
その他にも…
📙本
資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界:偉大な理論家であり思想家だったのだ。マルクスとアローの間で生きた偉人の苦悩と葛藤。第二の故郷・米国が二酸化炭素排出規制を盛大に無視し始めたいまを、宇沢先生ならどう見るのだろうか。 link
岩波 世界 2026/8月号:時期柄当然のように平和特集。それら全部を無視して、京都大学吉田寮をテーマに自治を考える岩手県立大・杉谷先生の『不完全な自治のすすめ』、自分の考えとフィットする政党が見つからない(のに自民党が圧勝する構図)を描く社会学者・大澤先生の『推し活という政治』をじっくり読みました。黒鳥社・若林さんの連載もいい。 link
プロフェッショナルの条件 いかに成果を上げ、成長するか:知識労働の基本がすべて書いてある。なぜそれが必要であり、それをうまくやる上でリーダーシップやコミュニケーションというものをどう取り扱うべきなのか。 link
成果をあげることは一つの習慣である。習慣的な能力の集積である。そして習慣的な能力は、常に修得に努めることが必要である。習慣的な能力は単純である。あきれるほどに単純である。七歳の子供でも理解できる。掛け算の九九を習ったときのように、練習による修得が必要となるだけである。「六、六、三六」が、何も考えずに言える条件反射として身につかなければならない。習慣になるまで、いやになるほど反復しなければならない。
📻観た/聴いた
勉強人『「溝口勇児」を勉強する』:リアルバリューやSNSごたごたのことがよくわかりました。マフィア・家族の構造は強い。プロレスをしている間は「これはプロレスです」をせんげんしてはいけない。千鳥と粗品の笑いの違い。勉強させていただきました。 link
🧩感じた/感じている
本を読むこと、文を書くこと、テニスをすること。その全てが私にとっては練習であり鍛錬です。思い通りにならないことがたくさんあるけれど、これこそが鍛錬。
技術が脚光を浴び続けてきたこの100年、道具がボトルネックであることはほとんどなく、ほとんどの場合、努力がそれだった。皆が努力を重ねた先にあるのが人間らしさの咲き乱れだと思っている。
歴史の大半において、何かを生み出す際のボトルネックはアイデアではなく、地道な努力だった。つまり、長年のスキルを習得し、資金を集め、チームを編成し、許可を得ることだったのだ。そのため、多くの人の最高のアイデアは、実現されることなく、心の中で消えていった。
このボトルネックを取り除くと、何が作られるかを決めるのは、ベンチャーキャピタルからの資金調達や企業レベルの設備投資を正当化できるかどうかではなく、誰が発言力を持っているかになる。あなたの最も人間らしい特徴は、もはや個人的な癖ではなくなり、重要なポイントとなるのだ。
私は口が悪い人間なのだから、もっとそれが伝わる文章を書こう。おれ、コンサルぶった奴が書く、おもってもいない綺麗事を小賢しい文体でまとめた文章が嫌いだったはずだ。思っていることをまっすぐな汚れた形で出すニュースレターにする。
🍵関心事
2020年の選挙不正を滔々と語った(自身が当選した2016・2024年の不正には一切触れなかった)現職大統領は、11月の中間選挙で何を試みるのだろうか。「流石に変なことはしないだろう」という常識に基づく期待はこれまで、何十回と裏切られてきている。
イランは今、中国・ロシアと裏でどんな交渉をしているのだろうか。自分が中露の軍事担当者だったら、絶対に見つからないように、IGGCに大量の武器・情報を供与することを考える。そして自衛隊の情報関連部門の人は、どの戦争・紛争現場を見に行っているのだろうか。
週末心斎橋に集ういろんな人種は、どこからあんな巨大な自尊心を運んでくるんだろうか。
🥑活動報告
神戸に戻り、また粛々とホワイトボードと向き合っています。いろんな縁をありがとうございました。秋頃にまた江戸参府します。
2027年の取り組みを考え始めています。「自分の人生の長さを超えて残るものを」をテーマに、なにが出来るかを改めて考え、試してみようと思います。
お便りをお待ちしています。




テニスコートの改修おめでとう御座います。自分は資産運用をそれなりに好んでしている一方、最近は虚しさを感じていたので、素敵でとても意義あるお金の使い方だと思いました。物理、手触りがある事、大事にしていきたいですね。