神戸からおはようございます。このニュースレターはいま307名の方が登録してくださっています。いつもありがとうございます。
今年もあと10日ほど。年末が近づくとすることの一つに、本棚の整理があります。1年間けっこうな量の紙本を買う一方で自宅の本棚は小さく、一定の本とは区切りをつけてお別れすることになります。(『書籍購入費は利用可能な本棚スペースが埋まりきるまで拡大していく』という書籍版パーキンソンの法則を強く支持していますが、電子書籍によってスペース制約が取っ払われました。つまり…??)
この選別プロセスは意外と有益で、何年かこれを繰り返すと、 “田中志選著”=本棚になります。人にお勧め本を聞かれたときには、本棚から1冊取り出してそのタイトルを薦めるようにしています。クスッとした笑いが足りない人には『ないもの、あります』を、仕事で使える論理的思考を身につけたい人には『ザ・ゴール』を、長い旅とスリルを求める人には『シャンタラム』を。
もう読み返すことはないけれど、捨てられない本の一つが大学院のときの教科書です。十年以上前ですが、こんな私も経済学の研究者になるんだと意気込み、ミクロ経済学や計量経済学を分厚い英書で学んでいました。悲しくも(本当に悲しくも)実力不足でその夢は破れたのですが、いまも大事にしている『不確かさの中で最良を目指す科学的知性・姿勢』と『確実かつ完全性を謳う人への健全な不信』、そして『葛藤と向き合う体力・耐性』を身につけたのは、間違いなくこの時期でした。
今年読んで本棚入りした書籍のいくつかは、先々週のニュースレターでも取り上げたカルロ・ロヴェッリの著作です。彼は元々学生運動やヒッピー文化とも関わりを持ちつつもいまは物理学の研究者としてのキャリアを歩んでいることについて、↓のように語っています。
革命の夢はじきに息絶え、秩序があらためて優位に立った。世界はそう簡単には変わらない。[…] こうしてわたしは、自分でも気づかないうちに、「文化革命」から「思考の革命」に心変わりしていた。 […] したがって、科学の道に進むことは私にとって、一種の妥協の産物だった。変革と冒険への欲求は手放したくない。考える自由は捨てたくない。いまの自分は裏切りたくない。それでも、まわりの世界と極端に対立することなく、むしろ、世界から好意的に受けとめられるような仕事をしながら、生きていく術はないだろうか。
思うに、知的または芸術的な仕事の多くは、こうした葛藤から生まれてくる。それは、潜在的な社会不適合者にとっての、一種の避難所なのだ。
(カルロ・ロヴェッリ著・栗原俊秀訳『カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か』 p.258 )
あぁそうだ、自分がやっているCobe Associeも、学者の夢に破れ、大きくて立派な会社で偉くなることも叶わず、それでも何かしたい、何かを探求したいと思う潜在的社会不適合者である自分にとっての避難所だったんだと。そしてそんな組織だからこそ、いろんな葛藤を持つ人たちにとっての避難所としてひらかれ、同時に知的・芸術的な仕事を生み出していかなくてはいけないんだと改めて感じます。「憧れて小説家になったのではない。それ以外、道は残されてなかった」という星新一の言葉を、悲観だけではない感情でいま受けとめています。
いま自宅にある本棚には、私の知性と葛藤が凝縮されています。(ますます強くなる自我や偏屈さと反比例して)減衰する知性を補うように、本棚を「私には知性があるんだ」と自分や他人に言い聞かせる道具にするのがいいのかもしれません。が私は、過去の葛藤と失われた夢を象徴する経済学書をまだ捨てられそうにありません。やぶれた夢と葛藤こそが前進するためのエネルギーなので。
✏️書いた/読んだ/読んでる
🖌️書いた
2020年読んで良かった30冊:1.5万字になりました。過去10年分もここから飛べます。 (link)
📃記事
Google/恒例のYear in Search:Wordleがグローバル急上昇ワード1位。日本だと4位にスプラトゥーンがいる。「月を綺麗に撮る 方法」が方法分野の3位にあってほっこり。すずめの戸締まり、年末公開なのに分野急上昇1位すごいな。 (Google Trends, link)
7/70:7歳の時にに夢見た道を自信と勇気を持って歩むこと。同時に、70歳の自分が振り返って感謝したくなる行動を取ること。私も、これを行動指針にしたい。The First Slam Dunkを観にいったので、7は先週/今週の最重要数値です。 (hulry, link)
メンタルモデル/望む結果の真反対を想像する勇気:ドイツの数学者カール・ヤコビもこの発想を大事していたと。逆から反対から後ろから物事を眺めることが前進をもたらします。 (James Clear, link)
リモートワークで人気の5都市:エディンバラ、ダブリン、ドバイ、バルセロナ、ロンドン。2023年はこのどこかに数週間滞在して仕事がしたいなぁ。 (Positive News, link)
インドへの年間送金額が1千億ドルを超えた:国外で働くインド人は18百万人、GDP全体の3%が海外からの送金で生まれているとのこと。メキシコやフィリピン、中国などを押さえて世界最大の送金受領国となっています。2023年はいよいよインドの都市。 (Quartz, link)
米国の億万長者からの寄付は共和党に寄っている:今年の中間選挙でビリオネアたちが寄付した総額は約9億ドル、うち3/4がトップ20名によるもの。うち14名は共和党推しでした。 (Quartz, link)
エイズ抑制のための無料注射器・注射針配布はオピオイド問題とどう繋がったのか:1980年代からNPOがひっそりとはじめたこのプログラムは、注射器共有によるHIVなど血液を媒介とする病気の拡大を防ぐのに有効です。2014年の分析では、注射器交換に1ドル支出することで連邦政府が支出するHIV関連医療費が7ドル節約されます。しかし、オピオイド依存を加速させたかもしれないとする論者もいます。 (The Economist, link)
経済的混乱は新しい取り組みをもたらす:ロンドン地下鉄のストライキを通じて市民が新たな通勤手段を発明し、なんとより早く職場に着くことが可能になったように、今年・来年に予想される厳しい経済状況下でこそ、企業は新たなイノベーションと向き合うことが出来るんだと。 (Eerry, link)
睡眠は絶対7時間以上。40億のデータがそう言っている:Fitbitデータを解析して判明。6時間未満は徹夜と同じなのです。> "睡眠時間が長くなると深い睡眠とレム睡眠が増えるものの、この2つの睡眠ステージを合わせた時間が占める割合は、睡眠7〜8時間の際に最も高くなる。7時間以下の睡眠は、全体の睡眠時間に占める深い睡眠とレム睡眠の割合を低下させる" (gizmodo, link)
同じ情報でも「口頭」と「書面」では反応が異なる:英・エクセター大学の研究。たとえ同じ内容の情報や質問であっても、口で伝えられる場合には直感的な判断、書面で伝えられた場合には分析的な判断が行われやすくなる。なるほど、私は書面で情報をもらうのが好きだ。 (nazology, link)
藻類がもたらす革命:諸刃の剣ですが。バイオ燃料やメタン排出削減などの環境効果や、浄水・創薬への効果も確認されています。研究、楽しいだろうなぁ。 (National Geographic, link)
ChatGPTを使って忠勤罰金を回避する:いままで見た中で最高のユースケースです。 (notes by Lex, link)
今日から簡単にはじめられる偉大な習慣1選:ネタバレ】散歩です。キルケゴールもソローも、みんな大好きスティーブ・ジョブズも散歩愛好家でした。アクティブな早歩きも、ゆっくり街を楽しむパッシブウォークも。 (Sahil Bloom, link)
2年以上の育休から復帰したエンジニアのその後:これが全てなんや。 > "仕事復帰を控える方は心配しなくても大丈夫ですし、迎える側の皆さんは温かい目で見守っていただけるとありがたいなあと思います。" (zenn, link)
📙本
時間は存在しない:この冬はカルロ・ロヴェッリに浸る季節にしました。私とあなたは異なる時間を生きているだけではなく、頭と足も違う時間を生きている。私の無知が、私の時間認識をつくっているのか。世界が一変してしまった。 (Amazon, link)
世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論:「世界はモノではなくコトで繋がっている」は、比喩ではなく事実だったのかと。 (Amazon, link)
星新一 一〇〇一話をつくった人:お父さんもぶっ飛んでるし、ご本人もぶっ飛んでる。波瀾万丈の人生。配られたカードで精一杯勝負するのが人生なんだなを実感しています。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
ooh!directory:1千を超えるブログをカテゴリごとに紹介してくれるポータル。往年のYahoo!だ! (link)
THE FIRST SLAM DUNK:久しぶりの映画館。サンキュータツオさんが『100点満点で7億点』と表現されていたのがいまならわかる。私は小暮のファンです。指揮官としては田岡茂一になりたい。 (link)
Cycling Illustrations by Jason Brooks:影の描き方が抜群に美しいです。 (link)
🧩感じた/感じている
観た映画の感想を言いたくなる相手こそ人生のパートナー、真の友人にすべきでは。
今週は、自身にとっての"勝ち"と"価値"に拘りたい。
バイクに合わせてライフスタイルを見直しているので革製品の購買が捗る。
AIフル活用(文章:Lex、カレンダー/タスク管理:Motion、画像生成:DreamStudio)で仕事が更に楽しく、充実してきた。
積極的に使う必要はないが、起きてしまった怒りは原動力にしよう。
🍵今の関心事
来年のバイク旅旅程/2月@九州一週の予定が仕事で怪しくなってきました。
来年1月から始まる王将戦7番勝負、どの対局を現地観戦するか。
🥑活動報告
お仕事は、案件獲得も実プロジェクトでも、来年に向けた助走をはじめました。
B2Bマーケ文脈でTwitter発信をがんばった1年だったのですが、来年に向けてLinkedinもがんばることにしました。Typefullyさんが対応するまではTaplioにお世話になります。
京都でいった3つの展示『アンディ・ウォーホル・キョウト』『大乙嫁語り展@京都国際マンガミュージアム』『芭蕉と蕪村と若冲@嵯峨嵐山文華館』がいずれも最高でした。
今週も、Happy Weekを:-)