神戸からおはようございます。このニュースレターはいま336名の方が登録してくださっています。いつもありがとうございます。
昨年からゆっくり読み続けている本『編集とは何か』は、ほぼ日刊イトイ新聞で編集を務める奥野武範さんが、様々な媒体に"編集者"として関わる14名にインタビューした内容をまとめたものです。新書ながら700ページ以上あり、小分けにして、じっくり楽しんでいます。(星海社新書には良い本がたくさんある)
そこに登場する『たくさんのふしぎ』の編集者・石田栄吾さんが、新聞を愛するあまり隅から隅まで読んでしまい、忙しさもあって少しずつ貯まり、インタビュー当時は3年以上前の新聞を読んでいる、と答えていてびっくりしました。インタビューが2021年の7月で、そのときに読んでいたのが2018年5月の東京新聞。
石田 いろんな思いが去来します。このころはコロナもなくて、志村けんさんもお元気だったなぁ、とか。(本書 p64)
ここ数年、「ニュースを読むのをやめよう」という論旨のエッセイを目にすることが増えました。昨日起きたことで知っておかなくていけないこととはどの程度あるのか?その代わりに時間を掛けてつくられてきた本やブログ、ポッドキャストを聴く方が良い時間を過ごせるのではないか。何年も前にニュースを一切見ることをやめたニュースレターライターのCalvin Rosserは、日々届けられるニュースのほとんどは「恐怖に駆られ、近視眼的で、自分のコントロールの及ばないものだった」と言います。
情報社会だVUCAだなんだとうるさい世の中ですが、そんなに急がなくてもいいのかもしれません。ゆっくりとじっくりと。
光文社で翻訳編集部編集長の中町さんが書いた、「古典は手にしたときが"新刊"」というエッセイが素晴らしかったです。大型書店に表紙見せで並べられた新刊もいいのかもしれませんが、たとえそれが古典だったとしても、あなたにとってのそれは新刊であるはずです。
…なぜ古典を読むのか。教養が身につく、ためになるとか世間的にはいろいろ言われますが、ひと言でいえば「おもしろい」からです。「おもしろい」という言葉にはいろいろな意味があります。物語の展開にワクワク、ドキドキする。主人公の言動に共感も反発も含めて感情が揺さぶられる。スケールの大きな物語の世界に触れられる。時代や社会の状況は異なるけれど、人間を描いているのは現代の小説と同じですから、自分に合った小説が必ず見つかるはずです。(中略)
百年以上前から世界中で多くの人が、時代や社会的背景が異なっても“自分かもしれない"主人公や登場人物に想いを寄せ、自分自身を考える、見つめる、そういうきっかけを与えてきたのが文豪の古典です。だからこそ、いま読んでも新鮮なのです。
古典新訳文庫は、「いま、息をしている言葉で、もう一度古典を」というモットーに2006年9月に創刊されました。いわゆる教養としての古典、ありがたいものとしての古典ではなく、同時代の作品と同じように楽しんでもらいたい。読み進めるうえで躓かないよう、当時の社会の仕組みや地名ほか歴史上の固有名詞、また背景の知識として訳注を付けているのも、そういう配慮です。
昨年末よんだとある起業家の文章で、「スケジュールを30分・1時間単位で区切るのはマネージャー。もの作りをしたいなら『午前・午後』の2つくらいで考えなくては、良いものはつくれない」という文章を見て、唸った記憶があります。たくさんの予定が細切れに入っているとなんとなく仕事をした気になりますが、それではいかんのだと。
サグラダ・ファミリアの建設にやたらと時間がかかることで批判を浴びたガウディは、「工事はゆっくり進む。私のクライアントは別に急がないからね」と返したのですが、それは『神は完成を急がない』と意訳されることになります。おしゃれ。神仏の悠久の時を思えば一分一秒を争うことに本質的意味などないのでしょう。
今年の目標の一つ。急がず、腰を据えて、じっくりものごとと向き合うことにします。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
Does My Son Know You?:副題を邦訳すると"父であること、癌、そして最も重要なこと"。息子が生まれるのとほぼ同時に末期癌の宣告を受けた著者の記事です。書いた方は昨年の年末に亡くなっており、それを感じながら読んだ最後のパラグラフは涙でした。自分がいなくなることを前提に子どもの人生を慮ること。偉大だ。 (The Ringer, link)
2023年・16のメタトレンド:自身を"quantitative futurist"と表現するMatt Kleinが毎年公開するメタトレンドレポートが今年も公開されました。正しく未来を洞察するために必要なのは責任感と想像力。私もそう思います。Green to Blackか、象徴的だ。 (Zine, link)
Youtubeで大学の単位を取る:アリゾナ州立大等と連携してStudy Hallプログラムを開始。大学数学やコミュニケーション入門など、まだ4科目しかないんですが、25年1月までに12科目まで広げる予定とのこと。1科目25ドルで履修でき、大学単位化には別途400ドル必要。大学生のキャリア支援の幅が広がるのはいいことやなぁと眺めています。 (youtube, link)
高級ブランドは激動の時代にも底堅い…??:LVMHが1月末に発表した22年決算、売上862億ドル、利益211億ドルと前年比23%アップ。ロシアから撤退したものの欧米・日本で売上が大幅に増加したとのこと。現在2億人と推定される高級品消費者は、10年後までに5億人に増加する(特にインドでは3.5倍に!!)と予想されており、今後も力強く成長していくと考えられています。 (quartz, link)
深圳は一日にしてならず:サプライチェーンを築くことの大変さ、つまり米国企業などが中国・台湾依存を減らすことの難しさを教えてくれます。向こう何年かで台湾有事が訪れる見立てが高まっていますが、果たして。 (Digit to Dollars, link)
EU経済を図にしてみる:ドイツの大きさが圧倒的。全豪オープン男子S決勝はセルビアvsギリシャでしたが、見事に右下ですね。日本も経済力が落ちてからの方が、むしろグローバルスポーツで活躍する選手が出てくるのかもしれない。 (Visual Capitalist, link)
入力したテキストから自動で作曲するAI:GoogleからMusicLMの名前で登場。28万時間分の音楽データセットでトレーニングしており、リンク先にいくつかモデル曲があるんですが、どれもそれっぽい…権利関係や倫理的問題から一般公開がされておらず、まだ研究段階。これからいろんな制度整備が進むんだろうな。 (gigazine, link)
肥満治療薬の奇跡と実際:ノボノルディスクのセマグルチドは元々Ⅱ型糖尿病の治療薬でしたが、肥満症治療の文脈で、服用した若年層患者の体重が年間平均16キロ近く減少したとする研究がNatureに報告されています。現状米国だと1ヶ月で約1千ドル負担とのことですが、払う人はいくらでもいるでしょう。贅沢薬だ。 (the Atlantic, link)
クジラ、そのずば抜けた炭素貯蔵能力:シロナガスクジラは1日に約3.6トンの餌を食べ、結果として生じる排泄物、更にそれを餌にするプランクトンを通じて大規模な炭素循環サイクルを作り上げていると。研究チームは、クジラの個体群保護が結果として気候変動対策になるんだと主張しています。ナショジオを見ていたら大西洋の火山群島・アゾレス諸島に素敵なホエールウォッチングスポットがあるようで、行ってみたい先の一つです。 (gigazine, link)
人生、次の5-10年を考えるための問い:「オデッセイ計画」のフレームワークでは、以下3つの質問をきっかけに考えをはじめるとのこと。何歳になっても5年後を考えたい。 (Sahil Bloom, link)
今の道を進み続けた場合、5年後のあなたの人生はどうなっているのでしょうか?
もし↑のプランが消えて、別の全く違う道を歩むとしたら、5年後のあなたの人生はどうなっているでしょうか?
お金や時間などの制約がないとしたら、5年後のあなたの人生はどうなっているのでしょうか?
理不尽な怒りをぶつけられた時の対処法:"最大の復習は相手のようにならないことだ"って言葉が好きなんですが、記事内に出てくる「こんな人間になったらおしまいだ」という視点を持つのも同じ地平にあります。 (Books&Apps, link)
垂直型コミュニティの功罪:以前コミュニティとは地域のことを言ったのだ、しかし今は思想や人種・アイデンティティまでがその対象になる。インターネットはコミュニティを垂直型に変え、地域やアイデンティティの呪縛から人を解放したが、しかし警察や消防、祭りなどの公共財はローカルで提供されており、これが社会の分裂を悪化させているのでは?と。インフラ・公共財の未来がどうなるか誰もまだ答えを知りません。 (Noahpinion, link)
📙本
ステータス・ゲームの心理学: なぜ人は他者より優位に立ちたいのか:引き続き紙の本でじっくり読んでいます。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
地球ドラマチック「コロッセオ~古代ローマ帝国の至宝~」:やはりNHKは良い。 (link)
人類が作り上げてきた美しい橋たち:イランのAllahverdi Khan Bridge、水面含めてキレイだ… (link)
🧩感じた/感じている
読書の大切さを謳う記事にあったこの言葉に深く肯いた。 > "You could fill a book with all I know, but with all I don’t know, you could fill a library."
結局スタンディングデスクが一番仕事しやすい。
忙しくなると如実にスケジューリングのミスが増える。気をつけなければ。
光通信かキーエンスで営業をやっていた人を当社で採用したい。
🍵今の関心事
先週受講した大学期末試験の結果。
自意識と給料水準が肥大化してしまった実力不足な若者の矯正法。
🥑活動報告
今年8-9月の2ヶ月間、長めの充電休暇・サバティカルを取ることにしました。自分探しと言うより、自我を海外に捨ててきます。
新しいぬいぐるみ友達・うさぎさんが家に来ました。かわいいです。
今週も、Happy Weekを:-)