神戸からおはようございます。このニュースレターはいま364名の方が登録してくださっています。いつもありがとうございます。
ここ最近、神戸で新しい家探しをしています。いよいよ賃貸生活を脱するときが近づいてきました。
ちっちゃな企業の経営者/自営業者は住宅ローン審査が通りにくいことでよく知られていますが、ご多分にもれず、私も金融機関審査でそこそこのハードルに直面しています(私は経営者/自営どちらにあてはまるのだろう)。自身が100%所有権を持つ法人口座から自身の私口座に給与としてお金を移して「私は怪しいものではございません。これからも稼ぎ続けるよ」と通帳+確定申告書に語ってもらうように努力してきたのですが、提示された住宅ローンの金額・金利をみると、金融機関からの信頼は一日(実質的には3年)にしてならずを実感します。
本のコーナーでも紹介する平川克美著『21世紀の楕円幻想論』は、人間関係の基本モデルの構成要素として"負債"を取り上げています。ニーチェや言語学者・バンヴェニスト、宗教史研究者・シャルル・マラムーの言葉をひきつつ、負債とは単なる物的・金銭的な貸借関係を示す言葉ではなく、もっと根源的な人間と人間の関係を規定する言葉だと。言語学ラジオの直近回で取り上げられていた『ゾミア 脱国家の世界史』でも、人間同士の関係に上下を持ち込まないために、負債(広くは「貸し借り」全般)という考え方そのものを拒否する民族事例が紹介されています。
平川さん自身も、自身が経営/代表を務めてきた事業をいくつかたたむ中で、「なんとかして負債を完済しきって達成感が湧いてくるかと思ったら、なんとなくやる気が失せてしまった」と過去を振り返っています。負債がある種の緊張感と関係性を生み、人間活動の原動力、原初的なモラルという心的な概念を生む装置として機能していたんだと。そもそも債務のなかに、務める、ってのが入ってますね。一方で債権で、あくまで権利でしかない。張りの実感には非対称性がありそうです。
先週まで訪れていた札幌、ふらっと入った室蘭焼き鳥のお店。後ろの席でお金の貸し借り話がされていて思わず聞き耳を立ててしまいました。借りようとしているのはお医者さんで何店舗目かの新クリニックをつくりたい、貸し手(候補)はたぶん先輩のお医者さん+金融機関の人。見るからに、金を借りようとしている人が一番エネルギッシュで魅力的でした。霜降り明星・粗品の借金ストーリーがYoutubeで人気があるのをみても、債務者が放つエネルギーっちゅーのがあるのでしょうか。
2018年に独立直前、経営者の先輩から「借りられる金の規模が経営者の器だよ」と言われたことを思い出します。会社としては数千万単位の借金を気軽に出来る立場になったのですが、個人として同じ規模を借りるには人間としての器が足りないようです。精進あるのみ。すべての住宅ローン利用者を羨み、同時に尊敬しています。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
意識の問題にしない:「チームで協力して仕事をする・完了させる、という意識に変えるためにはどうしたらよいですか?」という質問に対して、アジャイルコーチのRyutaro YOSHIBAさんが『いやいや、意識の問題に矮小化させてはダメだよ』と。仕事柄いろんなチームとプロジェクトをご一緒するのですが、「こんな意識では…」といいたくなるシーンが多いことはわかります。が、この記事にもあるように、それは"本当の問題を表していないことがほとんど"です。 (Ryuzee.com, link)
ライダーの感情を可視化した地図アプリ:ヤマハや横浜国立大学などが共同開発・研究。ベルトやウェアに装着したセンサーから得た心電データだけを用いて人間の感情を推定し、それを通じて「この道を走っていたときは爽快だった/緊張していた」等をマップ上に可視化するんだと。なにこれめっちゃほしい。神戸周辺、気持ち良い道が多くて最高です。 (ナゾロジー, link)
ゴビ砂漠の太陽光発電所で150万世帯分をカバーする:中国政府は西部の乾燥地帯に再生可能エネルギーの発電施設を続々と建てようとしています。2026年までに100ギガワットが目標。同国再生可能エネルギーの設備容量はこの1-3月も拡大を続け4740万kWに達し、前年同期比86.5%増となっています。 (Good News Network, link)
a16zの欺瞞:記事原題の直訳は「未来はa16zを置き去りにしたのか?」多くのスタートアップ・ユニコーンを輩出してきたアンドリーセン・ウォロウィッツ。自社のポートフォリオ企業を大々的に宣伝する「メディア型VC(あるいは投資機能付きメディア企業)」として成功を収めてきたが、金利抑制+技術懐疑の時代にこのモデルは持続的なのかと疑問が呈されています。好景気時代に有効なプレイスタイルが、不況下/常時有効とは限らないわけで。 (Verge, link)
実際に使える『新卒のみんなへのアドバイス』:アメリカの若者たちに届けられた9つのアドバイス。 "仕事は決して自分を愛してくれない"、"計画が変更されることを受け入れる"、"大きな目標を小さな目標に分割する"、、、私も大切にします。 (Vox, link)
ビジネス会食完全攻略マニュアル:これはすべての若手にとって有用な記事。お店選びは寝かせてはいかん。ロジを制するものは若手社会人生活を制する。何より大事なことは、この能力は職場や環境を選ばない、ポータブルなもの。 (note, link)
"Think Day"をつくろう:ビル・ゲイツが1980年代にはじめた「山小屋に籠もって読書や思索にふける1週間をつくる」週間を現代にカスタマイズして、毎月/四半期のうち1日を『業務上の要求を離れて"価値ある仕事"とは何かを改めて考える』ことに費やそうではないかと。物理的・精神的隔離、電子デバイスOFF、外出対応をした上で徹底的に読書とジャーナリングに励む。考える時には、↓の質問を参考に。 (Sahil Bloom, link)
What are your strongest beliefs? What would it take for you to change your mind on them? /あなたが持つ最も強い信念は?それを変えるには何が必要?
What are a few things that you know now that you wish you knew 5 years ago? /5年前に知っておければ…と感じることは?
How can you do less, but better? /やることを減らしてより良く出来ないか?
Are you hunting antelope or field mice? /投資に見合う成果を目指しているか?
What actions were you engaged in 5 years ago that you cringe at today? What actions are you engaged in today that you will cringe at in 5 years? /5年前にやっていたがいま考えるとゾッとする&いまやっていて5年後にゾッとするだろうことは?
What would your 80-year-old self say about your decisions today? /80歳の自分自身はいま目の前の意志決定についてなんという?
📙本
言語学バーリ・トゥード:川添愛さんファンなのに見逃していた本書。最近のLLMやAIに関心がある人は『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』『自動人形の城』を読むべきだし、その後にこの言語学バーリ・トゥードに触れて一緒に川添さんを推そう。小島よしおの「そんなの関係ねぇ」誕生話はなんかわくわくしました。 (Amazon, link)
食べること考えること:「ちゃぶだい」の伊藤亜紗さんとの対談、更にはこの本を読んですっかり藤原先生のファンになりました。あっさりしたタイトルに骨太の内容で大好きなトーン。最初に展開されるフードコート論には膝を打ちました。 (Amazon, link)
要するに、食べものとは、叩いたり刻んだり炙ったりした生きものの死骸の塊なのである。
読者の食欲を減退させることがここでの目的ではない。目的は違うところにある。食べものは、祈りにも似た物語がなければ美味しく食べられない、という事実を確認するためだ。わたしたちは「食べもの」という幻想を食べて生きている。ただ、やっかいな のは、幻想であるがゆえに物語が肥大化することだ。
21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学:中心が一つだと正円になるが、二つになると楕円を描く。なんでも一筋縄でいかないし、1つの正論に落ち着かないのが世の常なんだから、楕円の関係で生きていこうと。自分と相手。上と下。右と左。楕円の中に世界がある。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
言語学ラジオ『山の民はなぜ自らを野蛮化するのか?』:脱国家とイモを結びつける思考、参考にしたい。標題の"負債"話とも繋がって、理解が立体になりました。 (link)
水曜日のカンパネラ『金剛力士像』:なんとなく口ずさんでまう。 (link)
🧩感じた/感じている
アイザック・アシモフの言葉が素晴らしかった。
“The saddest aspect of life right now is that science gathers knowledge faster than society gathers wisdom.”
我々の生きる世界の悲しみは、科学が知識を集穫する速度が、社会が智慧を紡ぎ出す速さを遥かに超えてしまうことにある。
ゼルダの新作が素晴らしい。Vergeの初期分析記事にもあるように、「物事には必ず複数のやり方がある」みたいな教訓を教えてくれる、最高のコンテンツ。hakさんのTweetにも大共感。
「世界を変えよう!」といいながら実態としては中小企業オーナー化や上場ゴールを通じて金融資産最大化を目指すスタートアップ代表、相当数いそうだ。 (link)
感覚を常にアップデートしていきたい。クライアントに「ご自身の感覚修正する機会になって良かったですね」と言えるくらい自身の分析に自信を持ちたい。 (link)
和裁リユースの着物パンツを買いたい。
🍵今の関心事
ポッドキャストの対面収録環境、どこでどんな風に構築するか。たぶん東京のどこかで小さなスタジオを持つか、移動スタジオを作る。
なぜ自分はこんなにもゼルダの伝説を楽しめるのか。ゲームやると9割方「これなら将棋と麻雀のほうがええやん」となるのに。WIRED記事の「想像通りのモノをつくれない……でも楽しい」の感覚が最も近い。何かをクリアする、唯一解を求めるだけではなく、試行錯誤そのものに没頭できる。DIYであり禅でもある。
売上の5%をどこかにR&D投資しなくてはいけないが、どこに投下するか。 (link)
観る将の聖地「駒テラス西参道」にいついくか。北海道・新広島のF Village/エスコンフィールドを観にいって感じるモノがたくさんあり、この感覚を失わないうちにいろんな場に触れたい。 (link)
🥑活動報告
先週4日間札幌に滞在、中島公園や真駒内公園をお散歩したり、サッポロビールを浴びたりしました。神戸で今後お会いする方に、北海道土産をお渡しする儀式をやります。
気を抜いていたらいろんな機会が飛び込んでくるもので、今週から1件、来週からもう1件新しいお仕事が始まりそうです。BCG時代の先輩からのご紹介で大変感謝。インターン生も紹介経由での採用が多く、頭が下がるばかりです。
プロフィール画像を現実に合わせて更新しました。
今年11月の神戸マラソン、抽選に申し込みました。当たれ!
今週も、Happy Weekを:-)