事業コンサルティング会社・Cobe Associe代表の田中志です。このニュースレターはいま368名の方が登録してくださっています。
来月新居への引っ越しが控えているのですが、現居のぬいぐるみは増え続けています。姫路の方に車を走らせる予定があり、道中の明石SAに寄ったらあまりにかわいいタコのぬいぐるみがあったので迷わず買いました。私の中には、強い「かわいいぬいぐるみ囲い込み欲」があり、調達すべき段ボール量に貢献しています。
人の心には、広大な宇宙のように様々な欲が広がっていて、この欲には有限のものと無限のものがあります。上限といった方がいいかもしれません。食べていれば自然と満たされる食欲や、寝れば自然と消失する睡眠欲などが有限欲で、日常生活の中で自然に生まれ、自然に消えていく。サイクル欲ですね。
一方で無限欲は、その性質上、人間を飲み込んでしまうことがあります。例えば、ギャンブル欲。例えば、承認欲。例えば、名誉欲。どれも際限なく拡大していきます。サイクルというより、らせんを駆け上がるように果てしなく欲求自体が膨張します。
いろんな人が、この無限欲を増幅させる製品・サービスを提供しています。カジノはギャンブルの場をオンライン環境にまで広げ、SNSは承認や名誉を可視化し、この無限欲を煽ります。有限欲に対するアプローチはおいしい食事やふかふかの布団などで欲求を「質高く満たす」ことに焦点を当てるわけですが、無限欲を前提にする事業・サービスは、欲求自体を拡大させるインセンティブを持ち、現にそういう構造を持っています。(この構造をユーザー体験/UXということばで覆い隠そうともする)
欲求自体は人間にとって自然なもの(仏陀でさえ欲求/煩悩はぶっちゃけ消せないよねと言っている)で、大切なのは向き合い方です。食欲や睡眠欲は、向き合い方を間違えてもせいぜい有限の範囲内で収まるわけで、大して問題にはなりません。さて、無限欲はどうだろうか。欲求拡大のらせんに取り込まれている人はどんな在り方になるのか。
「世界一貧しい大統領」として日本のメディアでもたくさん取り上げられていたウルグアイのムスカ・元大統領は、
貧乏な人とは、少ししか持っていない人ではなく、無限に欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。 (link)
という言葉を残しています。中国の古いことわざにも、
世之欲悪無窮、人之精力有限。以有限与無窮闘、則物之勝人、不啻千万、奈之何不病且死也
世の中の悪しき欲望には限りがなく、人の精力には限りがある。限りある精力で無限の欲望と闘えば、欲望が勝つこと幾千万だけでなく、挙句の果てに病気にかかり死に至る。 (link)
とあるように、無限の欲求を戒める言葉は無限に出てきます。そうですね、そう生きていたいものです。実際に出来るかどうかは別にして。
闇雲にぬいぐるみを増やすのではなく、目の前にいるぬいぐるみたちとの生活をまずは楽しみたいと思います。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
145カ国合意の条約が発効しても森林破壊は続く:World Resources Instituteの分析では2022年に世界で失われた熱帯林は前年比で10%以上増加。ブラジル(昨年の熱帯林伐採の40%以上を占めた)や中米で減少著しいと。ガーナやアンゴラでも急速に破壊が進んでいます。 (Vox, link)
黒人女性にとっての「ウェルネス」とは:ルルレモンのヨガウェアと200ドルのヨガマット、Apple Watchとスムージーで人は精神的健康をえられるのか。いまこの世に流通する多くのウェルネスは極めて資本主義的で、やること/買うことにフォーカスが当たりすぎているのでは? この指摘はめちゃまっとう。>「数十億ドル規模のウェルネス産業は、これを飲め、サプリメントを飲め、ヨガの複雑なポーズをとれ、と言う」 (Vox, link)
米国の抗がん剤不足はサプライチェーンの問題なのか:昨年末にインタスファーマなどに監査が入り製造停止になって以降、シスプラチンなどが不足して現場は混乱。薬品品質を監査する機能が働いておらず、ジェネリック供給の問題は容易に解決しない。小林化工や日医工をはじめ、2021年以降9社が業務停止命令を受けている日本でも同じ事は起きうるわけで。 (The Atlantic, link)
AIとの関わり方アンケート・希望と恐怖:The Vergeが米国の成人2千人を対象に行った、AIとの関わり方や今後への期待リサーチレポート。今後に対する恐怖や不安はあるものの、個別の活動は支援してくれているんだよなぁ。 (The Verge, link)
新研究】イルカも『赤ちゃん語』を使う:おもしろい!
>母親が子イルカに呼びかけるとき、ちょうど人間が赤ちゃんに話しかけるときのように、特徴的な口笛のピッチを上げたり広げたりすることを明らかになった (The Atlantic, link)
投擲・射撃から考える人類史「なぜチンパンジーは野球が出来ないか」:私たちの倍近い筋肉をもつチンパンジーはどんなにがんばっても35km/h程度の物体しか投げられない。人間の肩とそして脳は、投擲と射撃に最適化されたものなのではと。 (The Garden of Forking Paths, link)
オゼンピックの時代は終わった:このニュースレターでも何度か取り上げてきた肥満症治療/オゼンピックのトレンド。今年の米国糖尿病学会で、オゼンピックより優れた肥満症治療アプローチが相次いで発表。セマグルチド経口薬やレタトルチドなど。いずれもGLP-1の受容体を活性化させることで食欲抑制・インスリン分泌に効き、オゼンピックとは異なる機序だと。処方規準が非白人に不利では?というThe Economist記事も面白かったです。 (The Atlantic, link)
Z世代だってGoogle検索/マップで調べごとをする:AI店舗支援SaaSを運営するmov社が約1千名対象に行った調査。"若者はInstagram/Tiktokで店探しや情報検索をするよ!"とまことしやかに言われていますが、実態はやっぱり違いますね。 (AMP, link)
10年ぶりにMLBで完全試合が生まれた:ヤンキースのドミンゴ・ジェルマンが先々週のアスレチックス戦で。平均出塁率から考えると完全試合の発生確率は約1.5万分の1。大記録です。野球そのものへの愛が垣間見える素敵なニュース/エッセイでした。こういうスポーツ記事が読みたいんだよ私は。 (The Atlantic, link)
毎年330億トン利用されるコンクリートという人工物:セメントをつくるためには相当の温室効果ガスが排出されます。過去100年製造コストがほとんど上がっていないセメントは新興国に大きな恩恵をもたらしていて、「セメントの生産・消費量は世界銀行の開発指標とほぼ完全な相関関係がある」とのこと。ここにも歴史があった。 (NOEMA, link)
📙本
哲学の先生と人生の話をしよう:「暇と退屈の倫理学」著者の國分功一郎先生が雑誌PLANETSで連載していた人生相談コーナーをまとめた書籍。10年前、約38歳のときにこの粒度で相談と向き合っていたのか、と知って、自分もこれから3年間めちゃんこがんばらなあかんわと褌を締め直しています。 (Amazon, link)
…私たちは時折、重大な選択を迫られます。それらは徐々に行われることもあれば、突然に行われることもありますが、いずれにせよ、常に意図せざる仕方で行われるとフィンガレットは言います。というのも、決断はあれこれと計算した結果としてなされるものではないからです。意図せずに行われていた逡巡と熟考の末に、「ああ、これがなすべきことだった」という仕方で、既に決心ができている自分に気付くのです。フィンガレットは、決断とは受動的なものだとも言っています。安冨歩の巧みな説明を用いて言い換えれば、人間は「こうしよう!」という形で決断するのではなく、「そうなってしまう……」という形で決断するのです。 (本書p.12)
📻観た/聴いた
FF16:前回も書きましたが、ファイナルファンタジーはもう映像作品です。"スクエニ渾身の新タイトル『FF16』は“観る”大作、一部ユーザーの賛否は割れる"のコメントにも納得
君と宇宙を歩くために:ドロップアウト気味のヤンキー高校生とちょっと風変わりな(たぶん発達障害のこどもを意識して描かれている)転校生が主人公のマンガなんですが、第1話から最高でした。真剣に生きていく様はいつも美しい。 (link)
宇宙望遠鏡が捉えた土星:きれいだ。世界には揺るがない美しさがある。 (link)
🧩感じた/感じている
本音とは"漏れる"ものであって、「本音が言い合える場所/職場/飲み会にしよう!」という号令の元で発されることはない。 (link)
東京大学、大学概要の「前文」が素晴らしい。國分功一郎さんの書籍で一部引用されていて、はじめてじっくり読んだんですが、これ高校のときに読んでいたら何浪してでも東大を受けたかもしれない。当時は絶対読み解けなかっただろうけど。 (link)
国籍、民族、言語等のあらゆる境を超えた人類普遍の真理と真実を追究し、世界の平和と人類の福祉、人類と自然の共存、安全な環境の創造、諸地域の均衡のとれた持続的な発展、科学・技術の進歩、および文化の批判的継承と創造に、その教育・研究を通じて貢献することを、あらためて決意する。
ラケットのグリップテープを巻き直す時間、最高の禅。
オンライン会議が終わった直後に、SlackやTeamsで「ちょっといいですか?」とつついてくる人はたいがい仕事が出来ない。仕事が出来る人は、会議中に発言するか、事後で伝えてくるとしても初手で内容(少なくとも内容のさわり)を記載してくれるはずなので。
🍵今の関心事
マラソンとテニス、それぞれのパフォーマンスを高めるための肉体改造。
週末のテニス・シングルス大会で久しぶりに優勝できました。嬉しいです。
🥑活動報告
7/24-27で東京出張予定です。新卒同期会で、米国に旅立ったり家業を継ぐなり、新しい世界に飛び出すみんなを祝います。
今月から12月まで大きなプロジェクトをやることになりました。なので、9月の世界一周中も普通にお仕事です。グローバルノマドへの道を歩み始めました。ニュースレターも更新します。
メンタルモデル発信に特化したニュースレター配信もしたいなと思っています。コンテンツ企画進行中。
今週も、Happy Weekを:-)