今週はバンコクからお届けします。
神戸からおはようございます。このニュースレターはいま380名の方が登録してくださっています。いつもありがとうございます。
先月末で当社・Cobe Associeの5期目が終わりました。某所某データによると、中小企業が創立後5年で生き残る確率は40%ほど。なんとか幸運な半分の方に残ることができた安堵と、10年生存する6%(!)の企業になるために頭を使いたいなと、春頃に"よっしゃいっちょ充電名目で海外いくか"と勢いで予約した航空券を使っています。航空券予約後にたまたまタイでお仕事会議の相談を頂いたり、つくづく恵まれています。今週はバンコク滞在、Regus・メンバーシップをフル活用予定です。
イランでも感じたことですが、ここバンコクでも、なんというか街にエネルギーがあります。生き残るぞ!みたいなエネルギー。気を抜いたら事故るやろなの大通り、とってきたものそのまま並べてますの果物屋さん、24時間営業のスターバックス、口論溢れる夜の屋台。俺はこうして生きていく、がぶつかり合う街。「結局こざかしいアイディアや工夫よりもエネルギー量・熱量の勝負でいろんなことが決まるな」と感じている昨今、こういうアジア都市がいっそう好きになっています。
思えば、最近ぐっときた書籍『純粋な人間たち』『シェルフ・ライフ』も、先月末に発売されたPS5版アーマードコア新作(AC6)も、内容の素晴らしさもさることながら、なによりその熱量に圧倒される作品でした。AC6製作元・フロム・ソフトウェアは、死にゲーのつくり手であり、そこかしこで「作りたいものを作る」「価値のあるものを作る」と発信している求道者集団。プロダクトアウト志向をどこまでも突き詰める姿勢。「顧客志向」なんていう安易なゴミコンセプトに媚びない姿勢というか、まっすぐに物事に向き合う強いスタンスが大好きです。
新規事業支援の仕事をしていると、「デザイン思考」「ユーザー視点」のように、誰かの視点や考えから出発すべきと標榜する人と多く会うことになります。売上・利益を最大化するために蓄積されてきた先人の知恵なのでしょう、それもいい。それでも、『誰がなんていったって』から始まる、熱量たっぷりのプロダクトアウト思想から遠ざかってしまったら、薄っぺらい自分と向き合うことになるんじゃないかと私なら怖くなってしまいそうです。99%のコンサルタントが人間的に軽薄で、忌避される存在になってしまう背景にあるメカニズムと同じ軌跡にあるのでは。
ノーベル文学賞を受賞したポーランドの作家、オルガ・トカルチュクは『優しい語り手』の中で、"多数の人のために書く作家は多くを失うかもしれない"といいます。より多くの読者に届けるために自国言語ではなく英語で書き、ラテン語の引用を避け、具体的な文学作品への言及を避ける(夏目漱石?三島由紀夫?誰?とならないように)ことは、果たして望ましいのだろうかと。
私は熱量とは愛の問題であり、それは人生を受動から能動へと切り替えることなんだとも感じます。突然なんやねん、と思うかもしれませんが、それでも、最近触れたいろんな出来事からそう思います。エーリッヒ・フロムも
愛は能動的な活動であり受動的な感情ではない。
そのなかに「落ちる」ものではなく「みずから踏みこむ」ものである。
愛は何よりも与えることであり、もらうことではない。
たくさん持っている人が豊かなのではなく、たくさん与える人が豊かなのだ。(エーリッヒ・フロム『愛するということ』紀伊國屋書店)
というように。そしてオルガ・トカルチュクは愛の最も慎ましい形は優しさだといいます。聖歌や聖書には登場せず、表象もされない形の愛。自発的で、無欲で、類似と同一性に基づき、受容性と繋がることで生まれる愛が優しさなのだと。
微笑みの国、といわれるタイで慈愛を学び、熱量・エネルギーを取り戻そうと思います。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
100 things I know:先人の知恵が詰まった生活ライフハック集、好きです。 (Mari Andrew, link)
料理をするならまず野菜を美味しく食べられるレシピを
忙しくても歯医者に通うこと
飛行機搭乗は一番最後に。慌てて列に並ぶ必要はない
汗をかいたときには手足だけでも洗うとすっきりする
どんなに慣れた場所・シーンでも、いつでも初心者としての習慣を守る
スマホの代わりに目覚まし時計を
セルフケアよりもコミュニティケアを大事にする。家族、地域、同僚。その方が効果が持続する
私たちが野球・メジャーリーグから学べること:野球は分厚いルールブックで知られる競技ですが、米国MLBは毎年のように細かくルール変更を行っています(ベースのサイズ、ピッチクロック、守備位置指定など)。全ては観客と選手、球団、その他いろんなステークホルダーの間での最適なバランスを探るため。政治や経済の運営についても、言い訳せずにMLBから学んでは?と。野球と同じくらい人気が低迷しているわけですから。 (Vox, link)
米国の学校は銃ではなく「カバン」を規制する:手荷物持ち込み検査を義務づける学区が増える中、もう一歩進んで「透明なバックパック」を義務づける学校も出始めていると。銃規制は高度に政治的なテーマになり得る中で、規制は明後日の方向に進んでいるようです。 (quartz, link)
新疆ウイグルの綿花は流通し続けている:21年強制労働による綿花・アパレルの米国市場参入を禁止する米国法案が可決。しかし、22年になっても独・仏の主要ブランドで新疆綿が発見、米国でも事情は同様か。複雑に絡み合ったサプライチェーンをほぐすには、法規制では不十分。 (quartz, link)
エジプトの新首都建設プロジェクト:人口集中・渋滞・不法居住など様々な問題から離れ、カイロから東に45kmいったところに建設されてつつある新首都。カイロにある現代書店Diwanを舞台にした手記『シェルフ・ライフ』をちょうど読んだいま、中東・アフリカに思いを馳せています。 (The Atlantic, link)
時間の代わりに「エネルギー」を管理すべき:体力だけではなくて集中力もどんどん減っていきます。↓を実践しよう。 (medium, link)
会議や面談を5~15分短く切り上げる
高負荷仕事を思い切って後回しする
各時間のエネルギーレベルを記録する(特に午後)
📙本
優しい語り手:2019年にノーベル文学賞を受賞したポーランド人作家、オルガ・トカルチュクの受賞記念講演が本になりました。一人称(あるいは四人称)で語ること、文章を書くことの意味を深く、どこまでも深く考えさせられました。↓の本と相まって、インプレッションを生むためにやたらと強いことばが溢れるこの世界で、自らのために書く・語ることを大切にしなければと感じています。 (Amazon, link)
さみしい夜にはペンを持て:著者・古賀史健さんの"美文よりもまずは正文"の姿勢を見習っている私です。新著も読ませて頂きました。おすすめ。「感じたこと」と「書いた文章」の間にギャップがあるのは“答えを決めるのが早すぎるから” なるほどと膝を打ちました。ことばの色鉛筆を増やす、スローモーションで眺める、消しゴムを使う、手紙のようにメモを書く、、覚えておきたいコンセプトがたくさんありました。 (Amazon, link)
幼年期の終わり:始めて数年になる読後感想戦ポッドキャスト “Cobe.fm”の次の課題本に、アーサー・C・クラークの名作を選びました。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
世界中のネットカフェを巡る:大好きなRest of worldの特集。2000年代にあれだけ盛り上がったネカフェは、スマホやWifiの普及によって衰退の道をたどりつつある。この特集のタイトルも「世界最後のネカフェ」。ウガンダ、ネパール、ナイジェリアなど、電力不足などの問題に直面する国を巡っています。 (link)
🧩感じた/感じている
〆切を延ばすのは自由。自ら宣言した〆切を守らないのは悪。
秋〜冬にかけて楽しみなイベントがたくさんある。
財津啓司オフィレジデンスOCCミーティンガー2023
恵比寿ルルティモ寄席 2023
笑福亭鶴瓶落語会
ケムリ研究室no.3
SHISHAMO 10th Anniversary Tour「恋を知っているすべてのあなたへ」
このシャツを当社のユニフォームにします。(link)
🍵今の関心事
向こう2週間の海外移動中、各種会議をどう乗り切るか。バンコク滞在先のWifi、300mbps出ています。高速、深謝です。
🥑活動報告
2冊目書籍『仕事がデキる人のたたき台のキホン』をいろんなメディアで取り上げて頂き、月刊「広報会議」10月号のおすすめ書籍にも選んで頂きました。重版もかかっています。創業当初はこんなことまでできると思っていなかったので、前向きに驚いています。