Cobe Associe代表の田中志です。このニュースレターはいま384名の方が登録してくださっています、いつもありがとうございます。
20世紀を代表する人類学者の1人、マーガレット・ミードは「文明化した人類社会の最古の兆候は何か」と聴かれたときに、折れた大腿骨の治療跡、と答えたことがある。火や石器などの道具、壁画や土人形などの芸術要素ではなく、太もも部分の骨折の治療痕こそがそれにあたると。
大腿骨骨折の経験がある人ならわかると思いますが(いないことを祈ります)、大腿骨は折れたら"まずい"骨の代表格。股関節と膝関節をつなぐ最も長い骨で、現在でもその治療は3~6ヶ月ほどの期間が必要です。折れていたら、たいていの場合、痛みがひどくて歩くこともままなりません。
ミードは、文明化以前の野生社会では、大腿骨の骨折は死刑宣告だったと考えました。満足に歩くことも出来ない、集団にとって価値のない負傷者は、飢えるか食べられるかするために放置されるのが自然の摂理のはず。しかし「治療痕の残る大腿骨」が発見されたことは、このような摂理を超えて、その人が他者によってケアをうけたことを示しています。彼女はこれこそが文明社会の証だといいます。合理性を超えて、繋がりや愛、協力やサポートに対する人間の欲求・志向が、文明社会への端緒になったのだと。
先週から、長く積ん読にしていた医学書院の「ケアをひらく」シリーズの何冊かをいよいよ読み始めました。昨年亡くなった中井久夫先生の『こんなとき私はどうしてきたか』を読み進めているときに、はたと、ここに書かれていることは精神科治療の文明化なんだなと思い至りました。病気を病気として認めること。病気は治療すべきということ。その当たり前を超えて、ケアの根っこの部分を見つめたときに、ふつうの医療者であっても理解し実践の出来る精神医学が実現するんだと。(本書帯に書かれた「希望を失わない力」は、読後改めて見つめるとたいへん力強く響く言葉です)
自分が普段している経営コンサルティング、あるいはリサーチの仕事は、理を追求する仕事です。いまこの瞬間に個人/組織にはどのような選択肢があり、依頼者が最も便益を最大化できる選択肢は何かを考え提示することで、毎月の家賃を支払っています。もし古代の部族集団をクライアントに持ったのなら、迷わずに「大腿骨骨折者ですか?捨て置きましょう」と言えるのが良いコンサルタントなのかもしれません。或いは他になにを言えるでしょうか。なにが出来るのでしょうか。
上で紹介したマーガレット・ミードのお話を提供してくれたニュースレター記事では、テクノロジーによって失われたケアの関係を取り戻し、孤立を解消するために、会話の技術と科学を再発見しようといいます。よし、そうか。一方で中井先生は、日々患者さんと挨拶を交わすことを「病棟を耕す」と表現されていました。うん、こちらの方が座りが良い気がしています。
お仕事の順調さとは裏腹に、迷いと悩みばかりが増える秋ですが、自らと環境を地道に耕していこうと思います。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
飛行機の副操縦士はAIに:MITが、パイロットの操縦をサポートするAIシステム “Air-Guardian”の開発を発表。副操縦士として機体に搭載され、人間では気づけない危険情報を察知し、機長と協力しながら、より安全な空の旅を実現すると。単なるサポートを超えて、愚痴を聞いたり、ジョークをいったり、↑でいうところのケアを実現してほしい。機長は孤独なので。 (Nazology, link)
自閉症の人は傍観者効果の影響を受けにくい:ヨーク大学の研究。「精神疾患や発達障害などの特性を持つニューロ・ダイバージェントな人々を雇うことの利点を強調」なるほど、そういうメッセージに繋がるのか、確かに。 (gigazine, link)
「傍観者効果」と呼ばれる心理学的仮説は、他者が周りにいる場合、困難な状況に置かれた人物を見ても介入して助ける傾向が低くなるというものです。傍観者効果は事件や事故といった緊急性の高い場面でみられるだけでなく、会社などでもみられるとのこと。
「雨になってしまいすいません」自分に責任のない問題への謝罪が信頼性を高める:日本全国、今週からぐっと寒くなるようです。私のせいです。すみません。 (Nazology, link)
「他人にやり直しをさせること」が自分の仕事だと思っている、めんどくせえ人たち:良いアウトプットをつくるのが仕事。黙っているのが一番大事になるシーンが、仕事においてもたくさんある。変な欲を出したらあかんねん。えらくなればなるほど、頭を垂れて生きましょう。 (Books&Apps, link)
微積分の学習から私たちはなにを学ぶのか:「困難なことをやり遂げられるという証拠は、自分に与えられる最も強力な贈り物のひとつ」そういうこと。 (Nat Eliason's Newsletter, link)
製品開発をトライアスロンで捉える:あらゆるもの作り/サービス作りに関わる方へ。いいアナロジーでした。自転車に乗ったまま泳ごうとしてはいけない。 (medium, link)
テクノロジーは生活を楽にしない。ただ速くするだけ:自動車、コンピュータ、AI、、テクノロジーを信じつつも「本当にそれで生活が良くなるのか」を疑う気持ちを忘れずに。利便性という名の"蜃気楼"/Convenience as a mirage。素敵な表現だ。 (Altered States of Monetary Consciousness, link)
Okay, but why?:感じていた自身の思考変革要素を言語化してもらえた。この問い(に近い内省文句)を発するようになってから3年くらい。いろんなことが楽に、そして毎日が充実するようになった。ニュースだったり、いろんなトレンドだったり、、、自分に何が必要であっているのか冷静に問い直すと、食卓やSNSで愚痴を吐くことが減り、プロアクティブな自分を取り戻せる。 (hulry, link)
最近この「読んだ/読んでいる」に国際情勢系の記事を記載しなくなっているのは、この問いと向き合い続けた一つの帰結です。
夢のライフサイクル:仕事を夢に見て、何年何十年とスキルや人脈を築いたあとに「私は本当にこの夢を追い求めたいのか?この夢はどこから来たのか?私の夢なのか?」と自問する。そして一度夢を捨て、再出発する。このエッセイに出てくる2つのquotes、 “If the path before you is clear, you’re probably on someone else’s.”と “we should never jump into a relationship just because we feel insecure being single.”はどちらも心に刻みつけておきたい。 (The Middle Path, link)
今後1年間で5年分の目標を達成するなら?:直感に無理だ!といわせる前に、真剣に↓の質問と向き合おう。 (Sahil Bloom, link)
どうしてもというなら、できる?
そのためには何が必要?
人生の他の領域でどんな犠牲を払わなくてはいけない?
周囲にどのような変更を加える?
どのような思考パターンを壊さなければならない?
「スタイル」を一貫した制約にしよう:この記事を読んでから、私も、自分のための「スタイルガイドライン50選」を作りました(項目出しを手伝ってくれたChatGPTさんありがとう)。不安定な世界だからこそ、一貫したスタイルは、安心して還ってこられる場所になるはず。自分なりの色は別のところで出したらいいですからね。↓はこの記事著者のスタイル例。同じ感じた。 (Steph Ango, link)
ロゴのない単色の服を着る
YYYY-MM-DDの日付を使う
タグやフォルダー名を複数形に(#person → #people)
すべてにプレーンテキストファイルを使う
毎年年末に40の質問を自分に投げかける
毎週お弁当の下ごしらえをする
週に2回頭を剃る
📙本
こんなとき私はどうしてきたか:冒頭書いた通り、素晴らしい本。孤独なときほど独り言を口からだそう。先回りの言い訳はぐっと飲み込もう。「引き潮と満ち潮」「追い風と向かい風」セットで心に含んでおこう。あいさつを通じて場を耕そう。全員が、自分の荷物が一番重い、と感じていると思っておこう。「もし・・・だったら・・・だろうね」構文を使おう。ケアする人間であろう。 (Amazon, link)
書こうとするな、ただ書け──ブコウスキー書簡集:暴力的なイメージと生々しい言葉遣いが特徴の、チャールズ・ブコウスキーが残した手紙を集めた本。イメージそのままに、米国社会の底辺にある人々の生活がそのままに残っています。自室でガラス破片を踏んで流血したシーン、思わずウッって声が出ました・・・ (Amazon, link)
夢の叶え方を知っていますか?:原理に立ち返って思考する人が好きです。なので、森博嗣は小説よりもエッセイが好きです。決して憧れないけど。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
Workspace of Kirk Mihelakos:理想のお仕事環境だ。私もこれに近い形にしたい。 (link)
🧩感じた/感じている
早さ・速さはわかりやすく価値に転換できるが、スローであっても価値が出せる人こそ本筋である。
この考え方、死ぬまで守っていきたい。>「本はな、一行でも読むところがあったら躊躇なく買うんだよ。」 (link)
生成AI、私の仕事と学業・学習を圧倒的に加速させてくれている。
定期的にmedium内記事を探検して、最近やっと最高のプロンプトと出会えた。
公開されている試行錯誤の量が英語>>>>日本語なので、こういうときに英語ソースに抵抗なくアプローチできるかどうか。初動がすべて。
よっしゃこれで完成だ!と思ったとき、「自分が尊敬する人/企業なら、これでOKとするか?」を自分に問いかけよう。デザイナーならApple、コンサルタントならマッキンゼー。ロールモデルの活用意義はここにある。 (link)
毎日の歩みこそが重要で、賭けによる大進歩を期待してはいけない。その毎日の歩みとは、つくることで達成される。
是非、なにか自分なりのものを作ろう、と考えて、あなた自身を幸せにしてみよう。作るものはなんでも良い。あなたの手で、あなたの時間で、あなたの頭で生み出すものは、必ず、あなたの価値を教えてくれる。
(森博嗣「夢の叶え方を知っていますか?」より)
🍵今の関心事
GPT Storeを活用してどんなものをつくるか。次の事業をどうひねり出すか。そのためにいつまでに採用活動を終わらせるか。
生成AI使い慣れしている30歳前後くらいのストラテジストを採用してCOO/CSOとしてがつがつとチャレンジして欲しい。
Technologyの本丸には触らず、事業・企業の現場で技術→価値に変換する部分に集中して事業をやりたい。わたし(たち)なら出来る。
自社でも人材紹介業をやっているが、外部のヘッドハンターに頼ろう。
年末年始に向けて、、、、忘年会・新年会を誰といつするか(できるだけたくさんやりたい)、誰に年賀状を送るか(今年は試しにたくさんの方におくりたい)、1年の振り返りをいつするか(できるだけじっくりやりたい)
ステッカー屋さんをいつどのようにはじめるか。すてきな言葉をすてきなデザインで描いたステッカーを企画中です。
🥑活動報告
昨日のテニス大会で、久しぶりに優勝できました。またトレーニングして、次の山目指してがんばります。
今週末、神戸マラソン開催です。一切トレーニングしていない。。さて、走りきれるでしょうか。乞うご期待。。
先々週いった舞台・ケムリ研究室no.3「眠くなっちゃった」にグッときたので、自分のアンテナを探りに、12月にもう一つ演劇舞台を、さらに来年2月にはミュージカルを見に行くことにしました。自身のアンテナ探りはいつも楽しい。
今週も、Happy Weekを:-)