Cobe Associe代表の田中志です。このニュースレターはいま385名の方が登録してくださっています、いつもありがとうございます。
今月初に大好きなニュースレター・Lobsterr vol.236を読んでいたら、著者Y.Sさんが語る集中力のあげ方が目に入ってきました。
難しい仕事に取り掛かる前には、好きな文章を数百字程度、写経するかのようにタイピングする。内容は何でも良いけれど、何となく自分が好きな文章を選ぶ。なぜそんなことが起きるのか説明できないのだけど、キーボードを叩く指先の刺激と、スクリーン上に現れる文字列を見ることで、集中力も増し生産性が上がる、ということに数年前に気づいた。
自分にとって「書く」とは、実は創造的で前のめりの行為ではく、指先から生まれた文字の連なりをもとに自分の深い意識との対話を呼び覚ます、受動と能動のあわいの行為なのかも知れない。そして「書く」と同じように、インプットのための行為とされがちな「読む」も似たような双方向性を持つ行為のように思う。
好きな文章をタイピング写経。素敵な習慣だなと思って以来、私もひっそり真似しています。マルクス・アウレリウス・アントニヌス『自省録』を口に出しながら5分ほど写経すると、背筋も伸びるし、仕事にすっと入っていくことが出来るようになりました。
若松英輔さんが創造的想像力について書いていた日経連載でも、同じように、書くことと読むこと、更には話すことと聞くことについて書かれていました。
「話す」ことから「書く」ことへと移行するあいだに行われているのは、意識と無意識の均衡を整えることなのである。ただ、ここでいう無意識は、茫漠(ぼうばく)とした心のありようではない。創造的無意識とでもいうべきもので、芸術家たちが創作において働かせているのもこの無意識である。無意識という言葉に抵抗があるなら創造的想像力といってもよい。
じつはビジネスの世界においても創造的想像力は重要なはたらきを担っている。だが、残念なことのように思われるのだが、多くの人たちはこのちからを眠らせたまま文章を「直す」ような精神態度で、仕事における多くの時間を費やしている。効率の追求は必ずしも創造的な何かを生まない。だが創造的な営みは、いたずらな効率の追求ではけっして達成しえない価値と意味を生むことがある。
「話す」ことは意識的行為であるが、「聞く」ことは必ずしもそうではない。人の話を深いところで受け止めるとき、「聞く」という行為のなかでも創造的想像力が働き始める。
何年か同じ職務に取り組むと、無意識を上手く使ったときによい成果が生まれる(≒意識と目に見える論理を追っているだけではたいした仕事はできない)と気づきます。Y.Sさんは読むことに、若松さんは聞くことの中に、自らの奥にある無意識との対話のきっかけを見出している。一度、受け身というか、流れに身を委ねる時間がないと、良い成果を生むことは出来ないのでしょう。
昨日、神戸マラソンを走ってきました。無心で歩みを進める時間は、動きとしては能動ながら、感じ方はまさに「流れに身を任せる」がぴったりくる表現でした。無練習の素人にとって、効率を追求しようと頭でもがくには42kmが長すぎただけかもしれません。
今年1年、どれくらい人の話を聞きましたか?どれくらいのものを読みましたか?それらと、どの程度真剣に向き合いましたか?もしこれらの質問に対してまともな答えが出来ないなら、自分の仕事との向き合い方を真剣に見直さないといけないのかもしれません。今年も残り1ヶ月と少しになりました。振り返りをするならぜひ早めにやりましょう。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
NBA/バスケットボールはかつてないほど難しくなっている:リーグ全体のお金の巡りも良くなり、トレーニング/ケア環境の改善により選手のパフォーマンスが上がる一方、急加速・急減速・方向転換に高いジャンプによる怪我の増加も同時に増えています。ポイント獲得の洗浄が3ptラインの外に広がりゴール下でのエルボー合戦が減ったからといって、選手が楽をしていることにはならんのだと。いやいや、レイカーズ/八村選手の活躍なんかをみていると、ゴール下も相当激しいわけですが。それにしても、スパーズのドラ1・ウェンバンヤマ選手はとんでもない選手ですね。。 (The Atlantic, link)
キャンセル文化をどうキャンセルするか:今や世界中の左派の多数は、普遍的価値観や言論の自由といった基本的なリベラルの概念を否定し、自らの教義やアイデンティティ政治を受け入れない人々に対して不寛容になった。左派=リベラル、ではないのが現代。右派も左派も敵対勢力への嫌悪を原動力にしているという意味で、お互いを必要とする相互依存的存在。一生野党の共産党と同じ構図。イーロン・マスクが”Wokeはゴミ”といいたくなる気持ちもわかる。 (The Economist, link)
中国のZ世代が楽しむ「極上の貧困」:食品や消費財ではめちゃくちゃ節約をして、逆にグループ購買でブランド品・高級品を買うのが世代の特徴とされていました。「所得に余裕があるDINKSがブランド品を…」みたいな安直ペルソナではなくて、こういう外れ値的兆候が未来をつくると信じています。 (Jing Today, link)
脱・インフルエンサー/deinfluencingの嘘:広告や消費者マーケの領域、お仕事でも普段の生活でも、できる限り遠ざけて生きていきたい。それで売られている製品にも、広告・マーケに協力する個人・企業も、それらを買っている生活者にも、どこからも公正さや誠実さ、それらがないにしても、ユーモアさえ感じない。 (Vox, link)
テスラ「おもちゃの車」技術、トヨタ採用で脚光:おもちゃ製造方法を参照したギガキャスト方式、話題のイーロン・マスク自伝でもたっぷり取り上げられていました。おもちゃの作り方原理に立ち戻って、ばかやろう指数を追いかけて、、、、第一原理に立ち戻る重要性を教えてくれる良著でした。 (bloomberg, link)
脳インプラントが思考そのままのコミュニケーションを可能にするかもしれない:デューク大の研究で『Nature Communications』誌に掲載。ALS等の患者さんの脳に、256個の微細な脳センサーを詰め込んだ切手大のインプラントを埋め込み音声抽出を実施。精度はまだ40%。これからの技術ながら、実現できたことだから、もっとよく出来るはず。 (Duke University, link)
Fintechスタートアップが倒産するまでの道のり:19年に立上り1千万ドルを調達しながら23年9月に倒産した決済スタートアップ・Braid創業者が語った現実。リアリティたっぷり。事業の成否はアイディアの質云々とは関係ないんだぞ、ってことがよくわかる。失敗こそ科学し、そこから学ぶべきなんや。 (Every, link)
アーリーアダプターは詐欺常習者・犯罪者だらけ
資金調達はタイミングがすべて
規制対応は最悪
アマゾンがGPT-4の2倍のパラメータで訓練したAIを準備中:オリンパス、という名前のLLMを開発中と報道。パラメータ数は2兆。今年初めAIスタートアップAnthropicに40億ドルを投資しており、そのノウハウと巨大なコンピューティングリソース・インフラを使って一気に業界覇権を取りに来るのでは。 (Futurism, link)
真実は常に細部でできている:ほんまにそうやな。> 「細部に好奇心を持ち続けること。ノイズを構成する音、都市部の公園に住まう生き物たちや素材、意見を構成する仮定、希望、真実の主張など。単純な葉っぱやサッカーの試合を見ているつもりでも、すべては細部にまで及んでいるのだ」 (raptitude, link)
自然には信頼が生まれない世界で、私たちはどのように信頼関係を築くことができるだろうか?:「私たちには生まれつきの理性がないことを知った。私たちは何よりもまず部族的な存在なのだ」音楽やスポーツは集団意識を強め、人の中にある信頼への希求を呼び起こす。 (Richard Gingras, link)
📙本
本質を見通す100の講義:森博嗣のエッセイ集。『常識にとらわれない100の講義』『「思考」を育てる100の講義』など5つのシリーズものをまとめ買いしたのですが、コンサルたるもの本質からやろ、でこれです。民主主義や政治に対する見立て、正しさと感情の関係性などなど、自分の見立て自体を見つける良い読書時間になっています。来週の冒頭カバーストーリーはこれきっかけで書くつもりでいます。 (Amazon, link)
…歴史を振り返ってみても、過去に今よりも良い社会があっただろうか。局所的、一時的にはあったかもしれないが、もっと大きなものが犠牲になっていて、つまりトータルとしては、けっして昔は良くはなかった。
みんなで話し合い、妥協点を探そうとしている。それは、良くなる方向を見つけようとしているからだ。 この「みんなで」とか「話し合う」という部分だけでも、非常に価値がある状況だし、つい最近実現したこと、実現しつつあることなのであるい。
📻観た/聴いた
Deville "Everyone I’ve Met":バンクーバー拠点のアーティスト。印象的でユニークだった1千人超を描いていくプロジェクト。勢いのままに作品を買っちゃいました、到着が楽しみ。 (instagram, link)
松山千春『恋』:先週末のさらば青春の光ラジオで流れていて、以来ヘビロテです。名曲。 (link)
🧩感じた/感じている
仕事もスポーツも、調子が悪い・上がらないときはフットワークから見直すのが吉。
不平を言わない。とあることが自分のコントロールできる範囲にあるのなら、自分で何とかすること。もしそのことが自分の手に負えないことなら、文句を言うのはエネルギーの無駄遣い、そんなことをしてはいけない。
工芸デザイナー・Fenglin Gaoさんの瞑想用チェアがいい感じ。(link)
🍵今の関心事
大手メディアが関心を失ってしまった(ようにみえる)大事件のいま。新型コロナ5類引き下げ、ウクライナ、フランスの定年引き上げデモ、ビッグモーター、ニジェール等アフリカ国家でのクーデター、、、
年末に時間をとってじっくり振り返りたい。
1年単位だけではなく、5年、10年、20年まで射程を広げること。
社会学を学ぶ大学4年生で卒業論文テーマの特定に困っている人がいたら、どぶろっくのネタ「○○な女」で語られたことの相関性研究に取り組んで欲しい。
相関と因果の違いを理解する、最適な研究方法を選ぶロジックを考えるために素敵なテーマが揃っています。
🥑活動報告
昨日の神戸マラソンなんとか完走できました。ゼロ練習の割にはなんとかなったほうかしら。向こう50年もう走らんでいい。
お仕事、だいぶ忙しくなってきました。
毎年年末・年度末はお仕事でバタバタするので、通信制大学での学びを巻きで進めています。年明けの期末試験を無事にのりこえられれば、心理学学士になります。
「2023年 読んで良かった本リスト」の準備を始めました。何回かあとのこーべ通信でリストを共有してから、noteで記事化しようと思います。過去版→ 2022年、2021年、2020年
今週も、Happy Weekを:-)