Cobe Associe代表の田中志です。このニュースレターはいま392名の方に登録いただいています、いつもありがとうございます。400名までもう少し。周りにおすすめ、お願いします!
東証プライム上場企業から創業2年目のスタートアップまで、いろんなクライアントと一緒に新規事業支援のお仕事をしています。この12月にもたくさん引き合いを頂いて、今年(なんなら来年も)も無事に年を越すことが出来そうです。ありがたいことですわ。
伺うどの現場でも「ターゲット顧客のバーニングニーズが…」「ターゲット市場のTAM/SAM/SOMを考えると…」みたいな概念議論が耳に入ります。事業成長期の戦略立案プロジェクトならまだしも、まだアイディア段階で事業の影も形もないのに。(今月参加した某大企業の社内新規事業発表回でも質疑応答の95%はふわっとした概念話でした)いつももやっと違和感を感じつつ、代わりとなるロジックを持ち合わせない無力な私は、まぁそういうもんかと受け入れてきたのが今年の秋まででした。
今年秋から『エフェクチュエーション : 市場創造の実効理論』を読み始め、感じていた違和感がきれいに言語化されました。原著2008年出版、翻訳版2015年初版の学術書(決してビジネスポエムではない)のこちら、現代にも通じる名著です。
曰く、私たちは分析・予測を前提にした"コーゼーション/Causation"偏重の論理で事業創造/スタートアップを捉えているが、熟達した起業家は全く異なる論理をそのうちに持つのだと。彼らは各種マーケットリサーチを信用せず、自分が出来ること/手段に焦点をあてて事業を立ち上げる。市場や事業機会は発見されるものではなく、起業家が自分の人生や価値観を通じて"紡ぎ出す"ものとして描くのがエフェクチュエーション/Effectuationの論理です。
…ここで、論理(ロジック)とは、「 世界で行為するための明確な基盤となる内的に一貫した考え」を意味するが、コーゼーションの論理 (causal logic) の前提は、「未来を予測できる範囲において、われわれは未来をコントロール (制御)することができる」というものである。一方、エフェクチュエーショ ンの論理の前提は、「未来をコントロール (制御) できる範囲において、われわれはそれを予測する必要がない」 というものである。
エフェクチュエーションの論理で描かれる5つの原則(『「許容可能な損失」の原則』など)は↑のようなもの。事業創造の各プロセスにおける適用は、
熟達した起業家は、「自分が誰であるのか (who they are)」、「何を知っているのか (what they know)」、「誰を知っているのか (whom they know)」からスタートし、すぐに行動を起こし、他の人々と相互作用をしようとする。
彼らは、自分ができることにフォーカスして、実行する。何をすべきかについては、思い悩まない。
彼らが交流する人々の一部が、自発的にその取組にコミット・プロセスに参画する。
上記のコミットメントの1つひとつは、新たな手段と目的をそのベンチャーにもたらす。所与の目的を果たすための手段として機能することに留まらない。
ネットワークの拡大により各種リソースが蓄積されるにつれ、制約条件が徐々に付与される。その制約条件は、将来の目的変更の可能性を減じ、誰が関与者のネットワークに入って良いか/良くないかを制限する。
関与者が増えるプロセスが時期尚早に停止しない限りは、ゴールやネットワークは、新しい市場や企業へと同時発生的に収束する。
のようにまとめられます。手段の目的化は悪ではなく、むしろ自然である、と。
エフェクチュエーションをテーマにした最近の論文も読み始めました。2024年のお仕事の流儀は、「目標より手段」「利益より損失」「統制より対応」「予測より紡ぎ出し」でいこうと思います。どんどんレベルアップするぞ。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
ヒコロヒー「直感的社会論」:日々働いてばかり、なのかどうなのか?:揺らぎの中に確信がある素敵な内容でした。なので、単独イベントのグッズを買って貢いでおきました。 (brutus, link)
ささいなことに疲れてもう全て投げ出して遠い島にでも行ってしまおうと思う日もあれば、疲れていてもこのような毎日を送ることができてとても幸せだと噛み締める日もある。そうしてやっぱり、粛々と働いている。これらを働いてばかりの日々だと思うことは簡単だけれど、どんな日も、いろんな日である。この身体で、この感受性で、さまざまな時間を過ごしている日々だ、と述べることが真実であり適切なのかもしれないと、ふと考える。
働いてばかりであるという簡単な不幸に流されるのではなく、実はいろんな日々を過ごしていて豊かばかりであるという真実の幸福の旗を握っていたい、と、今日はたまたま思える日であり、明日はどうだか知る由もない。しかしそれもまた日々である、と、なぜだかそう考えた今日の日のことを、あの旗がするすると飛んで行かぬようにと慌てて綴っておくのである。
渡辺明先生の芸術:山本博志先生のnoteはどれも素晴らしい。"渡辺先生の「堅い、攻めてる、切れない、勝ち。」は芸術的なのだ。"「切れない」がいかに難しいか。真似してみてわかる芸術性です。みんな一緒に将棋やろうよ! (note, link)
Popular Scienceが選ぶ"The 50 greatest innovations of 2023":米国初の市販避妊薬、炭素回収とグリーン水素製造プラント、給湯データサーバーなどなど、面白い例がたくさん。Heata社の分散型データサーバーの事例が個人的ヒット。EufyのMach V1 Ultraもちょっとほしいぞ。 (Popular Science, link)
収入が高くなると自尊心が高まるが、自尊心が高まっても収入は高くならない:オランダで4千人を対象に4年間の縦断データを用いて研究。雇用状況をコントロールした分析でもこの結論はロバストで、性別、年齢、学歴を超えて一般化できたとのこと。あなたの自尊心はどこから来ている? (Psychological Science, link)
楽観思考をすすめると経済的成功からは遠ざかる:英国・バース大の研究。幸福、健康、長寿の鍵として自己啓発で大人気のポジティブシンキングだが、過剰な楽観主義は言語力や各種推論力、認知能力の低さと関連。多くの判断を誤り、経済的失敗リスクが高まることになる。どんな感情も手放してはいかんぜよ。 (bath.ac.uk, link)
感受性が衰えていく人と豊かになっていく人の違い:"潔く気持ちを切り替えて、感受性の畑に種をまき、芽を育て、広々とした気持ちのいい草原と豊かな森を育て、素敵な中年に変態しよう。" (note, link)
自閉症を持つ私から見た日常:「みんな違ってみんないい」じゃねえんだよと。痛みと弱さ抱えて、苦しみながら生きていこうな。 (全国小・中学校作文コンクール, link)
人の気持ちを読み取るアンテナが通常なら5本立っているならば、私は1本しか立っていないからだ。私は自分の気持ちも分からない。心を自分に感じない。だけど、相手を泣かせた時は、私の目から涙が出てくる。悲しい気持ちだと教わるけれど、なかなかつかむことが出来ないでいる。
📙本
プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?:先週お送りしたレターがデグレしてダミーテキストのまま配信されてしまったのが悲しい。これもすべてイカのせいだ。呼子のイカが食べたい。さてこの文章を読むあなたの脳ではどんな反応が起きている?それを考えるための本です。 (Amazon, link)
鬼:個人Web掲載のショートショート。お気に入りです。暴力の話であり、摂理の話でした。ひとつ前の作品「眠らない犬」もお気に入りです。これもまた暴力の話であり、摂理の話だからです。 (YouKoseki, link)
カフカ 《Classics in Comics》:英語版が今年出版され、海外メディアの"Must Read"リストに入っていたのをきっかけに手に取りました。代表作『変身』の奥行きを感じ、『ジャッカルとアラビア人』『田舎医者』『断食芸人』からは不条理さと迫力を感じました。先々週『ねじまき鳥クロニクル』の舞台を見て以来、暴力と不条理、その中で生きている/生かされている人間について考えています。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
Marius kindler (インダストリアルデザイナー):スケッチの様子を数多く投稿してくれています。フォロワー20万人超も納得。双眼鏡のスケッチが好みでした。 (link)
Workdesk/Felix Teichgraber :ドイツのコミュニケーションデザイナー、そのデスク。理想型の一つです。 (link)
“My Way” by Frank Sinatra:名曲。今週80回くらい聴きました。布施明の日本語バージョンも最高。 “I did it my way”と言える日々を送ろう。
🧩感じた/感じている
物事がすてきかつ平穏に進んでいるとき、少し立ち止まって、そして声に出して言ってみましょう。「これが素敵でないなら、なにを素敵といえるだろう?」と。
もし自分が小説を書くことがあるなら、ペンネームは「田中二群」にする。
相手のテンションを気にすることなく、どんな場でも自分から、いつも気持ち良く挨拶から始めたい。
Minimal Social Interactions and Life Satisfaction: The Role of Greeting, Thanking, and Conversing (link)
結局、真剣にやった量と質の掛け算。「できるだけのことをする」は、なにも言っていないに等しい。
🍵今の関心事
きゅうり、なすに続いて、次は何を糠床に漬けるか。
自社組織・事業を、いかに「健全な宗教」にするか。
なぜみんなそんなに政治に興味があるのか。
キノコの美味しい調理法や、ひざを痛めない歩き方のほうが平和で有意義な考えごとなのに。どんな観点・視点で今年を振り返り、来年の展望を描くか。
🥑活動報告
来年8月までの決算期で会社を動かしているのですが、既に見えているお仕事だけで前期の年間売上を超える見込み。いろんな運と縁に恵まれています。来年年明け早々に西宮戎に御礼にいこうと思います。独立して仕事をしていると、神仏に祈る時間が増えます。
自宅作業環境のキーボードをHHKB Studioに切り替えています。新卒から数年続いた激向きをLenovo赤ポチと一緒に乗り切った私、生産性爆増の兆しです。
勢いで生ハム原木を買いました。勢いで生きています。
神戸マラソン直後は「二度とランニングなどするまい」と思っていたのですが例によって記憶が上書きされ、まったりじっくり走るのも悪くないやんとランニングシューズをOnで新調しました。
今週も、Happy Weekを:-)