最近、空き時間があれば裁判での戦い方に関するコラムを読んでいる。私本人はもちろん、知人友人が巻き込まれているわけではない。近くの図書館でフランシス・ウェルマン著『反対尋問 (ちくま学芸文庫)』を手に取ったことがきっかけで、興味をそそられている。
100年以上前に原著が書かれた本書は、米国の名弁護士らが用いた当時の尋問技術を紹介する本。紹介されているテクニックは、現代の会議に強いコンサルタント/ビジネスマンももれなく活用しているもので、全く古びていなかった。どのような手順で質問を組み立てるか、証拠を提示するか。沈黙を武器にすべき尋問の場をどう見極めるか、(陪審員が信じたくなるような)偽り・誤りの証言をどう正すか、証言の蓋然性をどう制御するか、など。言葉を扱うすべての職業にとって、会議は小さな戦場である。
反対尋問の仕方は、弁護士によって色々です。説教をしたり、感情的に相手側証人を責める尋問をする弁護士もいますが、私はあまり感心しません。私の目標とするところは、証人に気づかれないように外堀から順に内堀を埋めて、最終目的の尋問に迫り、こちらに有利な証言を引き出すことです。私の経験では、インテリの証人は意外と崩れやすいと言うことです。やはり、嘘を付くことに抵抗があり、理論的に責めるとその理論を理解できるだけに自分の証言の矛盾に気づき、ぼろを出しやすいのです。 (『反対尋問で勝訴を勝ち取る醍醐味』, link)
本書冒頭に、法廷弁護士/バリスターと事務弁護士/ソリシターを区別する記述がある。反対尋問の技術が必要とされるのは前者の法廷弁護士で、後者の事務弁護士は「そんな面倒くさいことをせずに証拠を集めてさ…」と机にかじりついているんだと。私はこの部分を、「多くの人が考える優れたコンサルタントは後者ながら、クライアントから信頼されるのは前者なんだよな」と思いながら読んだ。
今の就職活動では、戦略・経営コンサルタントは人気職種らしい。学生が想像するコンサルタント職の面白さは、事務弁護士的なものを想像していると思う。クライアントや外部調査を通じて獲得した情報をフレームワークに従って分析し、資料化し、プレゼンテーションをして価値を出す。しかし思うに、コンサルタント職の面白さのほとんどは法廷弁護士的なものであるはずだ。会議でクライアント担当者を議論で打ち負かすみたいな話ではない。よりよく考え、行動する・してもらうために、物事の手順を考え、コミュニケーションの工夫をし、言語化されていない情報を引き出し、意志決定に貢献する。優れたコンサルタントはみな、尋問が上手い。
私も、優れた法廷弁護士的な人でありたい。街場のコンサルタントとしての矜持を持って仕事をしよう。
そのためには、たいへん高度な才智、論理的に物を考える習慣、知覚の鋭敏さ、無限の 忍耐と自制力、他人の心を直観的に読みとり、顔から性格を判断し、動機を理解する能力、 力強く正確な行動力、当面する問題そのものの細部にまでわたる知識、細心の注意、そし てとりわけ、尋問中の証人の弱点を見抜く直観が要求される。
個人的魅力というものが、おそらく、良い公判弁護士のあらゆる属性中最も重要なものなのであろう。
💼心惹かれたもの
foot the coacher /フット ザ コーチャーのブーツ:ブルータスのお買い物特集で取り上げられていたやつを勢いで買ってみたら最高でした。ワークブーツとして履きつぶす気でいます。 (link)
Denby Studio Blue アクセントラージマグ:長く使っていたサーモスの保温マグカップからDenbyの陶器マグに切り替えたら、コーヒーの味が全然違う。。日々を豊かにする素敵なお買い物でした。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
良い文章はどこにある:村上春樹さんが書いた小澤征爾さんへの追悼文は本当に良かった。それをありがたく感じてしまうほど、良くない文章が蔓延している。良い文章をかく人を見つけて、丹念に追いかけていきたい。そして、私もいつか良い文章を紡ぐ人間になりたい。 (youkoseki, link)
良い文章を書くのは難しいので、良くない文章が蔓延することは仕方がないかもしれない。問題は、大谷は見るからに強打者で、それは何球か試してみればすぐに分かることだが、文章を書く能力というのはなかなか一目には分からないし、書いた文章が良いか悪いかも自分ではなかなか判断がつかないということである。文章力がないと文章力がないということが分からない。
30代以降の友情を考える:友情とは本来、摩擦のことだと著者はいいます。プライバシーを共有して、たまに喧嘩もしたり、不都合な予定変更もあったり、留守中に助け合ったり。確かに嫌なことを避けて生きているうちは、真の友達を作るのは難しいのかもしれない。 (What do we do now that we’re here, link)
アンチエイジングの不都合な真実:どんな手段をとってでも若く美しくありたいという気持ちと、そんなことをするのは精神性に反するという気持ちと。矛盾と葛藤に溢れたエッセイで最高でした。 (The Guardian, link)
悪い秘密を打ち明けても相手は思ったほど気にしない:秘密の共有がもたらす親密感が大事ってでしょうか。>『被験者の秘密の内容は「実は自転車に乗れない」といったものから「浮気をしたことがある」といったものまで様々でしたが、...その秘密がどのような内容でも被験者の想像より実際の評価の方が良くなっていた』 (ナゾロジー, link)
休み休み働こう:生産性研究、経営科学化の文脈で有名なフレデリック・テイラーの研究において、400%もの生産性改善を果たした労働者は勤務時間の半分以上を休息にあてていたという。活動することと休むことはセットであって、個人だけではなく組織においても意図して休息を組み込んでおくことが大事。 (タイム・コンサルタントの日誌から, link)
B2Bセールスは通常の営業とどう異なるのか?:コピーライティングや多くのセールスハック、クロージング技術もB2B営業では役に立たない。営業相手もそれらを知っていて、安易にそれらを使う人からものを買おうとはしないから。結局、能力と誠実さがものを言う。 (Jakob Greenfeld, link)
「書き続ける」ための10のコツ:メキシコ在住の女性ライターが語る、文章を書く上で気をつけていること。スクワットをすること、小さな机を使うこと、誰かがいる空間で書くこと、はまる音楽を聴くこと。どれもぐっとくる。書くことに苦手意識があるけど書かなくてはいけない私のような人のために。 (Out of the Blue, link)
もしあなたが私のように、特に文章を書くのが得意というわけではなく、ただ必要に駆られて、自分の考えていることを把握するために文章を書くある人なら、これらのうちのいくつかは役に立つかもしれない。
自尊心を取り戻す:離婚を経て、自分を見つめ直した33歳女性のエッセイ。 (moxie, link)
結婚生活が終わったことで、私は多くのものを得た。それは、型にはまらない人生を送る能力とそれをつくりあげる必要性、自己免疫疾患、運動中毒、普段使いするエルメスの陶磁器セット、深みのある友情、方向感覚、ときたま不眠症、無条件の愛についての理解、会計士をつける必要性、生きる力、判断を脇に置いて他人の話を聞き理解する能力などである。
戦略要素かどうかを見極める問い「反対にすると"愚か"になるのか?」:愚かになる問いならば、単にベンチマークすればよく戦略的意志決定に繋がる問いではない。逆に、逆さにして愚かにならない(=逆の意志決定にも一定の妥当性がある)ならば、それは戦略上の重要な意志決定になりうる。質問そのものの性質を考える、面白い観点でした。 (Roger Martin, link)
📙本
海と山のオムレツ:「アフター6ジャンクション2」で池澤春菜算が紹介されていた本。イタリアの土地に根付いた文化と食事のお話し。長野で食べるえご、神戸で食べるキビナゴの魅力。料理は風土とともにある。 (Amazon, link)
意味への意志:「夜と霧」で有名なV・E・フランクルの講演録。「無から始まり無に返る」すべての人間にとって、意味を作り出すのは人間の意志であって、その意味をつくり出そうとする活動こそ善なのだと。 (Amazon, link)
戦略の要諦:「良い戦略 悪い戦略」イメルトの新著。理想や計画は戦略ではないのだと口酸っぱく言い続けていこう。 (Amazon, link)
課題を診断したうえで解決を考え抜くことこそ、戦略を立てる最善の方法である。課題を分析すると同時に手持ちのリソースを点検し、最大の難所を乗り越える方法を練る。今日では役に立つ分析ツールが豊富に存在するし、シミュレーションや問題解決のためのノウハウ(他の状況との類比、視点の転換、成功した方法の応用など) も潤沢にある。だがこれらはあくまできっかけや刺激となるにすぎない。用意されたリストから戦略を選ぶということはできない。戦略はあなたが考え出すものだ。診断に基づいて解決策をあなたが何通りか考え、その中から最善と判断したものをあなたが選ぶ。そして具体的で一貫性のある行動計画に落とし込んでいく。
けっしてゴールから、つまり目標設定からスタートしてはならない。いま何が問題なのかを理解するところから始め、成否を決するポイントを見きわめることが戦略策定の王道である。
📻観た/聴いた
夜明けのすべて:昨年末に見ていた元テレ東・佐久間さんのYoutubeで取り上げられていた作品で、公開からすぐに映画館に駆け込んでみてきました。主演の松村さん、上白石さんのあまりに自然な演技と、舞台となっている小さな会社に漂う雰囲気の素晴らしさよ。変に愛だ恋だを謳わないのが心地よく、出張プラネタリウムのシーンでの語りには一気に引き込まれます。万人に、特に過去身体的・精神的に辛い時期を過ごしたことがある方におすすめ。公転・自転を続ける人生を一緒に生きていきましょう。 (link)
人工物のマクロ写真:ドイツのmacro photographer、@macrofyingの作品。ボールペンとマッチの接写、興味引かれる。 (link)
きただにひろし - ウィーアー! / THE FIRST TAKE:私にとってのワンピースはこれ。しっかり声を出すって大事。
🧩感じた/感じている
H3の打ち上げ成功すばらしい。
炎舞炊きの炊飯器で炊いたお米、ここまでおいしくなるとは。驚き。
体調管理は大事。これから半年どんどん忙しくなりそうなので、早めに環境を整えないといけない。
🍵今の関心事
いつから人間ドック通いを始めるか。とりあえず来月の神戸市検診を予約。
今期・来期の利益をどこに投資していくか。
🥑活動報告
前回のニュースレター冒頭のお気に入りのもの🤟特集が好評だったので、「今週の気になったもの」の欄を近々追加しようかと思います。
先週胃腸炎になりまして、ご飯を食べられないしんどさを久しぶりに体感しました。みなさんも、お体第一でやっていきましょう。
今週も、Happy Weekを:-)