出張中はスキマ時間がたくさんできて、結果、読書が捗る。
マンガ『神田ごくら町職人ばなし』が素晴らしかった。江戸時代の神田を舞台に、桶職人、刀鍛冶、紺屋、畳刺し、左官の手仕事を描いている。友禅染が大流行する中、藍染の意匠に悩む職人。大蔵と茶屋、まったく異なる空間に挑む左官職人。登場人物がみなかっこいい。文字と概念図ばかりつくり3ヶ月に1回は「自分の仕事は結局何をしているんだ?」と考えてしまう私の弱い部分をどかんと刺激してきます。何より、仕事風景の描写が丁寧で繊細。刀を打つシーンからははっきりと音が聞こえます。
同じ本を同時に読んで感想を語り合うポッドキャストを数年続けている。次の課題本『世界からバナナがなくなるまえに』も読み進めることができた。柔らかいタイトルながら、アイルランドのジャガイモ飢饉や20世紀のキャッサバ・カカオ作物危機など、食料生産が工業化した社会を語る真剣な書籍(でも読みやすい)。第9章「包囲線」では、ヒトラーの軍隊に包囲されたロシア・レニングラード(現サンクトペテルブルク)で、種子コレクションを守るために研究所の建物を閉鎖しその中で餓死していった研究者の話が出てくる。種子コレクションの中には、6千を超える品種のジャガイモの種芋も含まれていたが、戦後それらは手つかずで発見されたといいます。なんという執念でしょうか。
コロナ禍に入ってから楽しむことの増えたラジオ。ANN0水曜の番組本『ラジオパーソナリティ佐久間の話したりない毎日』を帰りの飛行機で読んだ。出世したくない、制作を続けたいからテレビ東京をやめて、毎週水曜深夜27時から生放送をする日々を暮らす佐久間さん。こだわりで仕事をする方だ。大好きです。
先々週観にいった映画『舟を編む』しかり、こだわりを持って仕事をする人にぐっとくることが増えた。仕事を"こなす""いなす"ものだと思って取り組む(なんならそれを「効率が良い」と誇らしく語る)人を見る度、こうはなりたくないと思う。何がFIREだと。一回でも意地と執念で仕事したことあんのかと。
週末読んだ"The soul of software"というエッセイも、「自分の作ったものに命を吹き込むことはとてもとてもとても大事だぞ」と私に語りかけてきた。作り手が心をこめて作らなければ、高い品質や魂を持つことはできないと。たとえ自分の仕事がデスクワークだったとしても、スクリーンの向こう側にあるものを想像して、そこに最大限拘らなければいけない。
これを書いているのが日曜の夜で、月曜朝、みなさんと同じように私の所にもこのレターが届くはずです。改めて褌を締め直して、意地と執念を捨てず、こだわりを持って腕を磨く1週間にします。
💼心惹かれたもの
先週の東京出張であった方からおすすめされた本たちです。
ヤクザときどきピアノ:ちょうど私もアコギをやりたいと思っています。音楽をやる人への憧れをどこかで消化・昇華しないと。 (link)
反脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方:誰よりも仕事に拘るBCG時代の先輩にお勧めされたので、これは読まないと。頑強・ロバストであることよりも、脆弱でないことを大切に。Books&Appsにあった『「試行錯誤が苦にならない」人は、それだけで大きなアドバンテージを持っている』と同じ根っこの思想だ。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
富を築くための代数:集中、ストイックさ、時間、分散化の掛け算が富に繋がる。"重要なことに集中する。誘惑に直面してもストイックであれ。時間を有効に使え。投資を分散せよ"。そして一番重かったことば、"人は集中力の欠如を才能の欠如と混同する"が最高でした。 (No Mercy No Malice, link)
「偽通勤」を朝の日課にしよう:リモートで自宅から働くとしても、朝しっかり着替えて、数十分散歩する。気持ちを切り替えるために、少しの時間新聞や文庫本を読む。いまの私にぐさっとくる最高の習慣提案でした。 (Chris Bailey, link)
「クールケーション」がいま熱い:北極圏のような寒冷地での夏休みが人気を集めている。夏の休暇を過ごす先として地中海沿いではなくノルウェーやアイスランドの人気が高まっている。英国旅行会社によると、23年の北極圏旅行の人気は前年比235%増加。不動産需要にも影響か。 (Axios, link)
国別「世界経済への信頼感」:「去年と比べて、2024年の世界経済は強靱になっているか?」にYesと答えた人の割合はインドや中国で8割超え。米国では45%、わたしたち日本はアジアはもちろん世界的にも最低水準で30%とのこと。インドネシアやフィリピンがこんなに前向きだなんて。景気が良いのかしら。 (Visual Capitalist)
人は音楽を身体のどこで感じているのか?:フィンランド発の面白い研究。様々な曲を聴いてどこで感じたかを報告してもらったデータを統計的に処理し身体感覚マップ(BSM)として視覚化。優しい曲や悲しい曲は胸部や頭部で、不気味な曲は腹部で感じたとのこと。 (Nazology, link)
AIを操る「プロンプトエンジニア」がAIによって駆逐されつつある:プロンプト自体もAIに考えさせる方が良いアウトプットに繋がったとの調査。去年の今頃は「プロンプトエンジニアは年収XX千万円!未来の仕事!」くらい持て囃されていたのに。Claude3のパフォーマンスをみていると、人間が行うちょっとした工夫くらいならAIでほぼほぼ代替できる感じがします。 (gigazine, link)
あなたの仕事を奪うのはAIではない:デロイトの調査。企業幹部たちのほぼ半数は生成AIに対応した従業員教育を強化。AI自体があなたの仕事を奪うのではなく、AIとAIの効果的な使い方を知っている人があなたの仕事を奪うんだと。対アルゴリズムでびくびくするよりも、勉強して活かす方が楽しいよ?何歳になっても学び、実践しましょう。 (quartz, link)
ハイチの危機:知らんうちにほんまの世紀末都市になっていた。800万人以上が避難しているスーダンしかり。ウクライナやパレスチナだけではない。 (The Atlantic, link)
時は金なり(時=金)ではなく時>金:金は稼げば良いが、時間は取り戻すことができない希少資源。おっきな会社では金を使うためにたいへんな稟議があるのに、会議や電話など、会社の時間を奪う行為は野放しになっている。 (boz, link)
日常をよりよくする、ダライ・ラマの5つの教え:とにかく実践。おいしいお茶を出す、笑顔の素敵なおっさんになるぞ。 (The Atlantic, link)
家族や周りの人にお茶を出す
歯を見せるほど、本物の笑顔をつくる
思い切って生活や仕事の場所を変える
「感じる」ことに流されず、真剣に「考える」
迷わず手放す(特に自身を傷つけるものなら)
📙本
こいわずらわしい:一緒にポッドキャストをやっているみきさんから紹介されて、続編の奇貨と合わせて読みました。感情をエネルギーに変換する力と、勢いを文章に落とし込む力に圧倒されました。フェアさを大切にすること、ユーモアを愛することが大事な私にとって、特に2冊目・奇貨を読むのがしんどかったのですが、良い読書体験になりました。 (link)
ラジオパーソナリティ佐久間の話したりない毎日:ANN0水曜・佐久間宣行さん担当のラジオ本、東京行きの飛行機で一気に読了。さらば森田さんやアルピーとの対談はもちろん、過去フリートークの文字起こしも最高でした。結婚式回では不覚にもほろっときてしまった。「本当にかっこいいものは、その人でしかかっこよく見えないから、かっこいいんじゃないか」「誰かに話せるエピソードがたくさんある人生は楽しい」が心に残っています。すてきな噺ができるおっさんになろう。 (link)
戦略の要諦:本当によい本。 (link)
📻観た/聴いた
中島みゆき『歌会 vol.1』:圧倒的声量。『銀の龍の背に乗って』『地上の星』に大感動です。母音"e"を歌うときのみゆきさんの迫力たるや。セトリもMCも自由度MAX、好き放題やっている感じを楽しませて頂きました。もう一度行きたいライブランキング、トップかもしれません。 (link)
———みゆきさんの歌が,人の心の琴線に触れるのは何故でしょうか。人の心を癒し,励ましてくれるからと思うのですが。
人の生き方の指針を示すとか啓蒙するとか,そういうえらい歌を歌う能力はないので。せめて,そうねぇ,寒いならお隣にいて体温だけでも差し上げましょうか,くらいのね,そういう気持ちで寄り添いたい。それくらいしかできないんだけど,そういう歌を書いていきたいですね。 (link)
ミュージカル『Without You』:ミュージカル・RENTでマーク役を務めたアンソニー・ラップによる、お世話になったプロデューサーと、母への愛を存分に綴った自伝を舞台化したワンマン作品。全編英語ながら両脇の女性はどちらも号泣。最前列で鑑賞させて頂き、舞台両脇に表示されていた日本語字幕もほぼ見えない位置だったのに、ここまで観衆を引き込むとは。
舟を編む:2013年の映画、改めて映画館で観てきました。三浦しをんの原作小説も、松田龍平や宮崎あおいが演じきる映画もどちらも最高。この込み入った社会を泰然と渡っていくために、自分のことばで舟を編んでいきたい。船じゃなくて舟、いうところまで含めて、気遣いを感じて大好きです。 (link)
🧩感じた/感じている
誰かに話せるエピソードがたくさんある人生は楽しい。本当にその通りだ。
確定申告を終えて、還付でそこそこの金額が戻ってきた。嬉しい。
仕事もテニスもフットワークが大事。
🍵今の関心事
needで紹介されるような仕事空間をいつどうつくるか。
明後日予定されているスーパー小学生とのテニス対決、どう無事に生還するか。
🥑活動報告
3冊目書籍の執筆を始めました。スムーズに進めば来年の春発売です。
今週・来週が金額の大きい請求書をたくさん出すタイミング。月次ベースで行くと、創業以来、今月が最も売上がたつ月になりそうです。失敗がないよう丁寧にやります。