先週の日曜日、こまつ座の『太鼓たたいて笛ふいて』を観てきました。井上ひさしが生み出した金字塔的な戯曲で、昭和初期に活躍したベストセラー作家・林芙美子を大竹しのぶさんが演じる、約10年ぶりの再演作です。今年観た舞台の中でも屈指の印象深さで、心をぐっと掴まれる体験でした。
舞台は、1935年の日中戦争前夜から第二次世界大戦、そして戦後1951年に急逝するまでの16年間を通し、「放浪記」で華々しく文壇に躍り出た林芙美子の軌跡をたどります。新たな時代の空気に染まり始める昭和十年前後、彼女の描く物語は、世界を見据える眼差しや海外への憧憬とともに、多くの読者を惹きつけていく。しかし同時に、戦意高揚を求める世論や内閣情報部、陸軍部からの派遣先で体験する異境の地。その中で、芙美子は「太鼓たたいて笛ふいて」、巧みに時代を…
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