小説・エッセイ両方書く作家さんの作品は、そのどちらかだけ好きになることが多い。森博嗣のエッセイは好きだが『すべてがFになる』など小説はいまいち楽しめないし、黒木亮の経済小説は大好物(『巨大投資銀行』『島のエアライン』が特におすすめ)なのにエッセイはどうも頭に入ってこない。エッセイから垣間見える私生活や思想に「ただ小説を楽しませてくれればいいのになぜそんな部分を開陳するのか」と憤ったり、安易なストーリー展開に「エッセイから垣間見える骨太な思想はどこに行った」と残念がったりしている。我ながら、理不尽だと思う。小説・エッセイ両方を楽しめる数少ない作家は柞刈湯葉くらいだ。
私にとっての村上春樹は、小説家というよりもエッセイストである。大学時代に読んだ『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』に始まり、『職業としての小…
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