若い人たちの情熱は、山で試練をうける。愛するものによって、こんなにも大きな試練をうけることを、実は一歩一歩汗をたらしながらも満足し、秘かに悦んでいるのである。 それがたとえどれほど低い山であっても、それはそれなりに、また高い山であればそれもそれなりに、苦しい一歩一歩が、めいめいの内部で彩られ、生命の力として蓄えられて行く。…
山への情熱は、解放の時が到るまではじっくりと構え、自分の一切を他の力や智慧をそこに集め、周到に慎重にその身を運ぶ。これが山での行為の尊さである。これが山で経験する人間の厚みであり深さである。
詩人、哲学者、随筆家でもある串田孫一氏の山に関する随筆集。山の魅力を派手に描くものでもなければ、難山への挑戦と克服を描くものでもない。山を歩く、山で暮らす中での小さな心の動…
Keep reading with a 7-day free trial
Subscribe to こーべ通信:田中志 Letters from Cobe to keep reading this post and get 7 days of free access to the full post archives.