工夫への意志。
『良い仕事の定義は何か』を考え続けてきたこの5年だったのですがやっと端緒というかとっかかりが見えてきた気がします。先人の工夫への敬意、現在・未来の工夫への意志両方を持ち合わせた人のみが良い仕事をする。
田中志/たなかのぞみ。経営コンサル兼ラケットスポーツアパレル屋の店主。
毎週月曜朝に読んだものや観たもの、考えたことなどを紹介しています。
有料購読者・サポーター募集中。コメント・フィードバックをお待ちしています。
いい仕事には工夫がある。過去先人が積み上げてきた工夫の上に、自分なりの工夫を載せて、人が工夫をしてもらうことを前提にしてモノやサービスを届ける。先人の工夫の集積が定石やマニュアルとなり、それにまっすぐ従うだけでもそこそこの仕事は出来るんだけど、「お、これはいい仕事だな」と感じさせるものにはその人なりの工夫がある。そして、優れた定石やマニュアルには、個々の工夫に対してひらかれたものである。
工夫は意志の産物である。世の中は「個々人が工夫をしなくてもなんとかなる」ことを進化・進展と呼んでいて、「私/これに従っていれば大丈夫!」と言い切る人やマニュアルが評価される(マニュアルにないことをすると怒られる)のが常である。標準化は大切だ。マニュアルを通じてムリ・ムラ・ムダを最小化することも尊ばれるべきである。自分なりの工夫は、常に標準工程からの逸脱を意味する。逸脱は意志の産物である。
工夫に対する意志を持たない人にとって、あらゆる失敗は不運に帰着する。たまたまマニュアルが適用できない事例だった。たまたま間違った指示に従ってしまった。たまたま想定を上回ってしまった。次の失敗を防ぐために何か工夫をする、という選択肢は存在しない。不運を嘆き、他人の工夫の少なさを嘆くのが彼らの仕事である。
仕事に運はつきものだ。運に左右されない仕事はない。それでも、不出来の向こうに工夫の余地を探し、自分なりの工夫を載せることからはじめる意志を持つ人がいる。履歴書・職務経歴書を彩るどんなスキルよりも、この意志は得がたいものである。批評家・評論家きどりのビジネスパーソンが蔓延る組織において、工夫への意志を持つ人を見つけ、育み、日の当たるところに引っ張り出すのが私の仕事である。この仕事をもっとうまくできないか、今週もたくさんの工夫を試みたいと思う。そのほとんどが誰の耳目に止まらないものだけど。
<お便りをお待ちしています>
💼心惹かれたもの
ALTRA:ソールがVibramブランドのトレランシューズ。「自然な走り方を実現させるシューズブランド」秋になったら買ってみよう。 (link)
なすの焼き浸し:フライパンでさっと作れる。ニチレイさん公開のレシピに従って、生姜たっぷりでつくると最高の仕上がりになった。 (link)
NFCタグカード:スマホでピッとかざすだけでいろんなことができる。ECサイト案内をぱぱっとやるのに有用なのでは?とおもい(QRコード読んでください、より圧倒的に早いはず)1年前に買ったctunk製品を設定。3分で設定できた。これは便利だ。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
スーダンの壊滅的な内戦が象徴するもの:歴史家・ジャーナリストであるアン・アッペルバウムが綴る、内戦下にあるスーダンへの現地取材に基づく凄惨な実態のルポルタージュ。砲撃される住宅街、井戸から引き上げられる遺体、レイプされた母娘、負傷した子供たちで溢れる病院。ウクライナとガザを合わせたよりも多い1400万人が国内避難民となり、人口の半分にあたる2500万人が飢餓に直面、そして統計には表し難い虚無感と諦めが蔓延している。権力、民族、資源の問題が絡み合い、更にはサウジやトルコ、イランなど周辺中堅国の代理戦争場となっているスーダンの地に平和の兆しはない。これは単なるアフリカ国家の混乱を超えて”リベラルな世界秩序の終わりを象徴する多層的で破滅的な危機”なのだ。 (The Atlantic, link)
アメリカの住宅市場が危機的状況にある:住宅供給の抑制、建設業の崩壊、コロナ禍や急速なインフレによる経済混乱。結果、「価格は高すぎ、ローンも高すぎ、売りに出される家も少なすぎ」という三重苦状態に。初めての住宅購入平均年齢は28歳→38歳に (Derek Thompson, link)
「神話」でアメリカ史を読み解く:米国を貫く"自由"の神話。建国期には宗教や圧政からの自由、続いて産業の自由やアメリカン・ドリームとしての自由が来て、現代はテクノロジーを基盤とするFreedom to Scale(スケールする自由)が神話を支えてきた。しかしその崩壊も近い。 (Product Lost by @hipcityreg, link)
米国における婚姻状況の変化:より長く独身でいるようになり、結婚する年齢は遅くなり、配偶者と死別する年齢は高くなっている。1930年代にはその中央値が男性が24歳、女性が21歳だった初婚年齢は、2023年には男性30歳、女性28歳になった (Flowing Data, link)
ロレックス×ドミノピザのコラボ時計:1970年代にドミノ・ピザの創業者トム・モナハン氏が始めた、社員向けのインセンティブプログラムの報償として提供されていたこの時計。非売品で限定生産のため希少価値が非常に高く高値で取引されている。 (Esquire, link)
子どもに木登りをさせよう:お高い学習塾に通わせなくてもやってあげられることはたくさんある。自然はいつでもそこにいる先生である。 (The Athletic, link)
2025年のいま、自撮りを考える:”Selfie/自撮り”がオックスフォード辞典が選ぶ『今年を象徴する言葉』に選ばれたのは2013年のこと。わずか10年で自撮りはテキストメッセージのように自然なコミュニケーション素材となり完全に日常に馴染んだといっていい。政治家は自己アピールのための自撮りを過剰にSNSに供給し、美術館は自撮り棒に頭を悩ませている。もうすぐ発売予定のiPhon17では内側カメラが大幅に強化される予定。さて、自撮りの未来はどこに向かうのか。 (Hyperallergic, link)
人はソーシャルメディアを『卒業』することができるのか?:ある種の社会インフラとして機能しはじめ、さらには世代ごとの分化も進むために簡単には足を洗えなくなっている。常に注目を浴びようとする積極的参加者から、特定の分野のみ知るより受動的な観察者に変化するべし。 (link in bio, link)
女子サッカーが象徴するDIY精神とファン主導の創造性:商業主義最前線の男子サッカーとは異なる文化。女子サッカーが持つ、よりオープンで、多様性があり、包括的な価値観が、新しいデザインやファッションのインスピレーション源に。記事で紹介されるコモFC、生観戦してみたい。 (It’s nice that, link)
体重と健康の関係を再考すべきときがきた:BMI基準での”標準”が必ずしも健康を意味しないことが徐々に研究で明らかになり、体重の大小と安易に健康を結びつけることの危険性も指摘されている。 (BMJ, link)
経営における『執筆と編集』モードの違いと使い分け:『社外取締役は機能するか:日本経済新聞』を読んで改めて考えていた。視座・視点がない編集者ほど不要な存在もない。執筆者たる営業マンやオペレーターは編集者にモノ・アイディアをぶつけるべきだ。 >”取締役会の役割は、編集することであり、書くことではない””AIの支配的な役割は編集であって、執筆ではない””戦略アドバイザーの適切な役割は、編集者として、経営チームが戦略を形成し、導き、磨き、洗練するのを助けること”" (Roger Martin, link)
「書くことは、考えることである」という大原則:AIによる完全な執筆代行に抵抗しよう。説明責任を自ら抱え、背景にある思考をぶつけよう。科学論文をテーマにした論考だけど、ビジネス文章も同じだよ (nature, link)
📙本
人生のレールを外れる衝動のみつけかた:原動力として作動する”衝動”、その端緒となる偏愛の傾向と強さ。一般に思うよりも衝動、天職とは多様なものであり一意には定まらない。欲望の強さよりも深さに目を向けること。自分の偏愛と衝動を語る、自分なりの言葉を発明すること。他人の目的と距離を置くこと。実験的に試行錯誤すること。真剣かつユーモアを持って事に当たること。 (link)
君は君の人生の主役になれ:中学生〜高校生あたりをターゲットにした本ですが、職場や家庭で感じる理不尽とうまく向き合うヒントをいろんな人にもたらしそうな本。宿題や授業進行にみえる悪しき平等主義、社会的包摂・マイノリティ対応という新たな支配構造、良き人の中にこそある迷いと揺らぎ。辛いときこそ本を手に取ろう。 (link)
ケインとアベル:「百万ドルをとり返せ!」のジェフリー・アーチャー第三作を読み始めました。読みたい文庫本がどんどん貯まっていく。 (link)
📻観た/聴いた
ビル・アックマンが語る”アクティビスト”:還暦間近でプロのテニス競技にトライするなど頭がぶっ飛んでいる投資家である彼がLex Friedmanとともに語ったポッドキャスト。こういう人類、みな眼力が飛び抜けて強い。声にも迫力がある。こうありたい。
🧩感じた/感じている
神戸、一気に涼しくなった。髪も切って快適。
健康的な食生活をおくりたいなら自炊の回数を増やすのが王道かつ最短距離。油や塩・砂糖の消費量が減るし、視覚・嗅覚を通じて食事体験全体の満足感が増す。そして何より楽しい。
国宝。観るべき!という気持ちと、観なくてもいいか。という気持ちが、両方そこそこの質量かつ同程度で存在している。
🍵関心事
秋になってからどこに旅に行こうか。先週末から自家用車が新しくなり、乗り心地がガラッと変わった新車にわくわくしています。
サイズギリギリの機械式駐車場にきれいに車を入れる方法。パレットぴったりさいずの車をどうスムーズに収納するか、頭をひねって技能を磨きます。
🥑活動報告
当社・Cobe Associeはお盆期間中も休まず営業しています。周りのけっこうな人がお盆期間で心身を休めているなか、私はむしろ忙しさが増している。目の前のプロジェクトへのコミットメントを深めつつ新たなリサーチ案件の設計と、新事業進出補助金の口頭審査準備も進めています。
<お便りをお待ちしています>