晩夏雑感(9月8日)
長月。まだまだ暑いですね。神戸は今週半ばから少しずつ涼しくなっていくようです。
今週の話:我が家の冷蔵庫、1年ぶりの献血、「想像力と説明能力と美学」感想。
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先週わが家の冷蔵庫が新しくなった。1人暮らし容量の冷蔵庫で7年ほどやってきたのだけれど、大きくかつ最新モデルになり、冷凍庫にたっぷりロジクール保冷剤を入れられるようになった。残暑のテニス熱中症対策もばっちり。冷蔵庫も広くなり、自炊も捗っている。今井真美さんの常備菜レシピを愛用している。おいしくて簡単なレシピのお裾分けです。つくって食べて、生活の基本に充実を取りもどそう。
焼き豚:レンジオーブンで100度90分焼いて漬けるだけ。おいしい。
レンジ蒸しなす:正確には焼き浸し。この1ヶ月で5回ほどつくった。
こんにゃくチリチリ:初めてつくったときは塩辛くなってしまった。再挑戦。
きゅうりの水漬け:5分でつくれて3日間幸せになれる食卓のお友達。
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当社Cobe Associeの第8期(気づけば!)が始まったこともあり、奉納の意味を込めて1年ぶりの献血にいってきた。ぶっとい針で血小板/血漿のみ取りだし、残った血液は体に戻してくれるやつ。ベテラン感ある看護師さんに通常の倍・20単位もらえます?ときかれ「そうですね、減るものでもないですしどうぞ」と答えたらポカンとされた。抜いてるんだからそら一時的にはなくなるんだけどどうせ直ぐ再生するし…の意でした。時間は90分くらい。読みたかった業界・企業レポートを熟読していたら一瞬で過ぎました。街に落ちている社会貢献感なので積極的に拾っていきたい。
待合室にはいろんな方がいた。仕事の合間に来ました感のあるスーツの男性、お母さんと一緒に来ている若い女性、採決後景品を念入りに選んでいるおっちゃん、定期的に訪れている様子のおばちゃん。「人間が利己的なら献血って成立しないよな…そもそもどんな経緯でできあがったんだ?」と歴史を調べてみると、戦前の売血問題を受けて設立された東京血液銀行が根底にあり、初期の献血は「あなたや家族に輸血が必要になったら献血手帳で輸血が受けられますよ」という”預血”コンセプトで成り立っていたことを知る。経済学部学部生の卒論テーマになりそうだ。もしこの令和社会に献血がないとして「献血で起業します!」という若者がいたら背中を押してあげられるだろうか。一緒に営業してあげるおじさんになろう。
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週末、”想像力と説明能力と美学”というブログ記事を読んだ。すべて備えている人が理想なのはその通りですね、と同時に「全部ない人よりも、どれか一つだけが突出して存在している人の方が面倒くさいな」とも思う。想像力と説明能力なき圧倒的美学(狂信一匹狼)、説明能力と美学なき圧倒的想像力(被害妄想暴走)、想像力と美学なき圧倒的説明能力(哀しきアイヒマン)、、、ちょっとSNSを旅すれば巷にたくさんいることに気づく。特に美学の欠如。あらゆる人にその人なりの美学があると信じて仕事をしているのだけれど、その信念が揺らぐぐらい「絶望的な美学の欠如」を感じるシーンが多い。彼/彼女はどういう信念・美観に照らしてこれ(製品、サービス、アウトプット、文面、会話…etc)を仕事とみなしているんだろう?となる。しょうがないことなのかもしれない。今週読んだ本『第七問』の表現を借りるなら”That's life”である。
この3年ずっと話題の生成AI。根本的には確率過程(と組み込まれた揺らぎ・Temperature)最適化の産物なので、受け手が感じる想像力と説明能力は当然高くなる。しかし美学はどうだろう。美学は倫理と深く繋がったものであり、ここが人間に残された頑張り処の一つのはずだ。美学は一日にしてならず。10年後の美学のために今日から歩みをはじめるべきである。美学に唯一解はない。
<お便りをお待ちしています>
💼心惹かれたもの
自然観察特化型カメラ・Nehold Cam-1:動物の自動種検出機能を備えており、首からかけて自動撮影をしてくれるカメラ。山登りやハイキングをする人と相性が良さそう。タグラインも素敵。今月中にKickstarterでプロジェクトローンチ予定。1-2年後、買った人のレビューを楽しみにしてる。 (link)
ほとんどのテクノロジーはあなたの注意を奪おうと躍起になります。
私たちのテクノロジーは、あなたの注意を野生に返します。矢沢農園 フルーツ会員:桃や梨、リンゴなどを旬のタイミングで頂くよう、今年も申し込んでみました。お裾分けすると大変喜ばれます。さっそく届いた桃と梨、最高でした。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
棋士の統括:今年6月まで将棋連盟の常務理事を務められた西尾先生。どんなところにもそれ独特の組織運営の苦難がある。ジレンマのやりくりを生業にするマネージャー、何とか世界中に広がっていかないかしら。 (西尾明@note, link)
公文書分析から見えてきた「中国が真に求めているもの」:一般的な見方では中国はアメリカの次の覇権国家を目指しているとされるものの、習近平国家主席の演説や1.2万件の記事などを分析すると中国は自国の体制の安定を最優先関心事とする現状維持国家であり、その行動原理がより防衛的かつ内向きであるとする。↓3つが重要な目標事項だと認識した方が、正しい行動理解に繋がるはず。 (MIT Press Direct, link)
国境:インドや東シナ海、南シナ海における未解決の国境問題
国家主権:国家の主権、特に台湾・香港・チベット・新疆
対外経済関係:自国の経済的利益を守り、発展させるための対外関係
CIAが秘密裏にスターウォーズのファンサイトを運営していた:スター・ウォーズのファンが持つ分析的思考やテクノロジーへの関心が諜報機関の求めるスキルと一致するのではとの仮説で、SFや未来技術に興味を持つ優秀な人材、特に若い世代をリクルートするのが最大の目的だったらしい。ただし設計の甘さが致命的で、IPアドレスが連続的に割り当てられていたことや、複数サイト群の相関性から、イランや中国の対諜報当局にネットワーク構造が割れてしまうことに。 (404media, link)
インドが抱える電子廃棄物リサイクル問題の深刻さ:インドは毎年300万トン以上の電子ゴミを排出しておりその規模は中国、米国に次ぐ世界第3位。スマホ普及や安価な電子機器の短寿命化により廃棄物が積み上がる速度は高まるばかり。リサイクルの90%以上を非公式の零細業者が担っており、手作業での電子機器分解や鉛、水銀、カドミウムといった有害な重金属や、ダイオキシンなどの有毒ガスの不適切処理で環境・健康被害にも繋がっている。記事中にあるAttero社など技術面で先行する正規業者が台頭し政府も規制を進めるものの、非正規業者が既に産業として確立してしまっており現実はなかなか厳しい。 (Rest of World, link)
シリカゲルが世界を席巻した理由:独特の多孔質な微細構造により、小さなビーズ1gでサッカーコート1面以上の表面積を持つシリカゲル。単に湿気を吸収するだけではなく周囲の湿度を一定に保つバッファリング効果も持つ。乾燥剤として世界中に広がり、食品や衣類の保存だけではなく電子機器輸送や軍事・宇宙開発にも活躍の場を広げている。目立たない存在こそが世界を支えている、「縁の下の力持ち」を象徴する存在である。 (Scope of Work, link)
フォードの歴史:モデルTの誕生と効率化サイクルの確立:フォード社がT型フォードを製造する過程で、いかに大量生産システムを確立し「効率化のエンジン」とも呼べる好循環を生み出したか。フォードはまずモデルNで低価格×大量販売の道筋をつけ、部品の製造精度向上、アセンブリラインや輸送ラインの最適化、在庫の抑制を進めて300ドル台でのT型フォード販売を現実にした。「部品高精度等の工夫 → 信頼性が高く安価な車 → 爆発的な需要 → さらなる大量生産 → 専用機械や新工場への投資 → さらなるコストダウン → さらなる需要増大」この好循環。長いストーリーと良い循環は経営・事業の必須要素。(Construction Physics, link)
クラブナイト企画が全てを教えてくれる:昔は学生が主催するような小規模で雑多なクラブイベントがたくさんあったが、今は金のない若者のためのDIY文化的空間が失われ、、音楽やファッションすべてが似たり寄ったりなものになっている。自らイベントを企画することで自身の中にあるカルチャーと向き合い、サブカルチャーがサブカルチャーたる所以を実感する場になるはず。知人が劇場・小屋を持ちたいとずっと言っているんだけど、そういうことなんだと思う。 (New Methods For Women, link)
都市の歩きやすさは住民の健康に超重要:歩きやすい街づくり・建築環境が、人々の身体活動量を直接的に増やすという因果関係を、米国全土の大規模な自然実験で頑健に証明した研究。歩きやすさが低い都市(下位1/4水準)から高い都市(上位1/4水準)に移ると、同じ個人でもそれだけで1日あたり歩数が平均で1,100歩増加。ずいぶんな差分。スマホの健康管理アプリ・Azumio Argusの利用者データと国内1,609都市間の引っ越しデータを掛合せすることで自然実験化したメソドロジーが面白い。(nature, link)
いまの仕事にしがみつく「ジョブ・ハギング」:コンサル会社コーン・フェリーが定義したこの言葉は、労働者が必死に現在の仕事に”しがみつく”行動を指している。数年前に多くの人が自発的に職を辞めた”大退職時代”があったとは信じられないほど、不況の足音きこえるいまは、労働市場の動きが停滞し”大在職時代”とも言える状況。自発的離職率は2016年並の2%前後まで低迷、労働市場に澱がたまっている。 (CNBC, link)
お膳立てされずに勝手にやる:お膳立てされないとやれなくなることを恐れるべきである。自発性を失った人生ほどむなしいものはない。 (Konifar’s ZATSU, link)
📙本
第七問:タスマニア生まれの作家・活動家リチャード・フラナガンが2023年に書き下ろしたノンフィクション。原爆や収容所体験、H.G.ウェルズやレオ・シラードのような歴史上の人物と自身がどう折り重なるのかを描く。ド散文で、読みやすさを高めるために中身を損じない、読者に媚びないいい本だった。タイトルはチェーホフ作品「神経衰弱」から。 (link)
チェーホフは、答えを提示するのではなく必要な問いを投げかけるのが文学の役割であると言うことを信条としていた。チェーホフ最初期の短編の一つに、学童に出す暗算の問題のパロディがあり、その中の第七問が好例である————
1881年6月17日水曜日、ある列車が、A駅を午前3時に出発してB駅に午後11時に到着する予定でしたが、出発直前になって、午後7時までにB駅に到着せよとの指示がありました。より長く愛するのは誰でしょう、男でしょうか、それとも女でしょうか。 (p28)生きる言葉:最近亡くなった知人が俵万智さんの大ファンだった。彼女が短歌に凝っていた背景が見える気がする。生きる言葉を愛し、死んだ人を想う。 (link)
ここで素晴らしいなと思うのは、和歌というものの凝縮力と喚起力だ。いまわの際に「あの日あんなことがあって、その頃はこんなふうな態度で云々」などと言わずとも「嘆きつつ……」というたった一首が、二人の恋愛の日々のすべてを心に呼び覚ます。時間を閉じ込め、そして時間を再現する。同じ一首が心にあることで、記憶や感情を共有することができるのだ。 (kindle no. 1,746)
野中郁次郎 ビジュアル講義 第二次世界大戦:『失敗の本質』を読んだ全ての人に。いかにしてフランスがパリを失い、日本の真珠湾攻撃が大成功であると同時に大失敗だったのか。歴史は最高の教科書です。 (link)
📻観た/聴いた
全米オープン前にジョコビッチが語ったこと:30代後半で準決勝までいくその体力・技術・精神性。心に残る2時間。
あなたは退屈すべきだ:Harvard Business Reviewの記事著者が直接話すYoutubeコンテンツ。「暇と退屈の倫理学」ど真ん中の内容でした。
🧩感じた/感じている
秋が近い。
同じ日本語をしゃべっているからといって、意思疎通が出来ているとは限らない。
嘘をつく人、根拠のないはったりをかます人に対して耳を閉じなければといけない。仕事であれ私生活であれ、大事なパートナーを選ぶときには、いっていることをすべて無視してやっていることのみを観察すべきである。
🍵関心事
「工夫への意志を持たない人」が生まれる背景、その人の自己認知、変化の可能性。
結果と過程と努力の関係性をどう中学生に説明するか。結果がすべてと語る人がいるが、結果はコントロールの外にある。結果は過程の積み重ねであり、自らの力で影響を及ぼせるのはこの過程の一部である。結果には拘るべきだが、最中にあって、重要なのは過程への影響に自身の心技体をすべて振り向けることである。
🥑活動報告
ラケットスポーツEC・Tramlines、取扱ブランドが3→6に増えました。スウェーデン・米国・スペインに加え、新たにポルトガル・英国のブランドを追加。まだ神戸での手渡し限定、この冬から本格ECとして事業を出来るように粛々準備しています。
<お便りをお待ちしています>



