サラリーマン・独立のハーフ&ハーフ🍺
私はサラリーマン生活7年ののち独立、会社にして、その会社がつい先日7周年を迎えた。今思うと不遜なのだけど、独立する直前は「サラリーマンするってだいたいこんな感じか」とわかった気になっていた。懲りることなくいまは「これをやっておけば&変なことをしなければ(少なくともうちの)会社は回っていくだろう」と思っている。なんじゃこらってこともたまにはあるけれど、大失敗しないためのざっくりしたことを知るための時間として7年は十分なのかもしれない。
びったれが集うSNSでは『JTCサラリーマン継続 or 独立、どちらが得か』の議論が喧しい。一方は「サラリーマンの方が住宅ローン限度額が高く、信用が高いから副業資金が引っ張りやすい」といい、もう一方は「税金や社保負担が大きいサラリーマンより独立して自ら稼ぐ方が吉」という。両方の経験者、かつその経験がちょうど半分ずつの”キャリアケンタウロス(あるいはミノタウロス)”として強く言いたいのは「どっちの方がいいとか特にないぞ」である。(両方も経験がもっと長いケンタウロスもいると思うのだけど、15年ずつ経験するとその人はもう50歳で、経済的損得を超えた存在になっていることが多い)身も蓋もない話しではあるのだけれど、サラリーマンとして優秀な人は独立しても結果を残しているし、逆もまた然りである。仕事ができないやつほど会社にしがみつけ!という人もいるけど、仕事ができない割に普通にメシを食っている独立ワーカーも日常的にみかける。所属がどうあれ、人はみな落ち着くところに落ち着くのだとおもう。
もしいまサラリーマンとしての不遇を感じているのなら、独立の損得計算よりも、目の前の仕事でより良い成果をあげる工夫に時間を割くべきなのだ。場所を変えたら状況すべてが良くなりました!ということもなくはないのだけれど、それは大変稀なことで(環境を語ることのリターンは5-10年後に発現する)、多くの場合「あ、ダメだったのは私自身だったのか」という不都合な現実を突きつけられることになる。昭和おじさん口調で言うと(平成生まれだけど)、結局、あらゆる環境でつきまとう”自分自身”の問題に手を付けること、その自分が向き合っている仕事に全神経を注ぐことが最もお得で有効な選択肢である。
社会人として生活していると、本当に金と肩書と権力にしか興味のないビジネスパーソンが多いことに驚く。仕事にやりがいがないので、そういう指標でしか満足できない。しかし、それらはすべて相対的な指標なので、出世して良い肩書になって権力が増えて金持ちになっても、欲望は留まることはない。
そういう人達は、自分がなぜそれだけの高給に見合うのかと問われたら、自分は高給だから、そして周囲にはもっと高給の人間がいるからだと答えるだろう。トートロジーなのだが、現実に多くの仕事の待遇が、トートロジー的に決定しているように思う。そうやって欲深い業界に欲深い人達が集まり、欲深い待遇を求めていく。金持ちになったら、もっと金持ちにならなければいけなくなるのである。そして、その皺寄せは他へ行く。
そう考えると、やりがいのない人達も不幸ではある。ただ欲望を追い求められているだけ、不幸な中では幸せであって、やりがい搾取が問題視されているのとは異なり、こちらは、当人以外たちは、どうなろうとどうでもいいのかもしれない。
小関遥. 『たよりない話の中でも特にたよりない話』
そしてその社会が生み出したのがサラリーマン幻想だった。学歴社会を勝ち抜き有名企業に入社さえできれば、後は死ぬまで安泰。日本的ムラ社会がそのまま残る「カイシャ」の風土に異論を唱えることはタブーだが、その見返りとして定年までの安定収入が約束される。退職時にはそれ相応の退職金が手に入るだけではなく、年金も入ってくる。 「一度会社に入ったら死ぬまで面倒見てくれるんだろ。家も教育も旅行も全部会社が提供してくれるそうじゃないか。日本は素晴らしい国だ」ケベックの男はそう言った。
真山仁. 『ハゲタカ2』
私は分をわきまえた人間なので、7年でわかることの限界にもある程度自覚的である。サラリーマンを20年やっている人からすると「やっぱりサラリーマンは素晴らしくてさ…」「一刻も早く抜け出すべき地獄の会社があってね…」というのがあるのかもしれないし、独立することで稼ぎも幸福度も30倍に跳ね上がる職種があるのかもしれない。少なくとも私の場合、サラリーマンのときもそこそこに幸福だったし、独立後も変わらずそこそこに幸福である。同時に、働き始めてからずっと変わらず、良い仕事をするために必死の努力を続けてきた(古き良きBCGから素晴らしい教えを授かった)。空想の選択肢に幻想の幸福感を期待するより、良い仕事を目指す過程、あるいはその先にある充実に求める方がよいのだ。
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💼心惹かれたもの
The Map of Human Ideas:コーヒーショップや病院、俳句文化から代数学まで、現代の人間社会を支えるいろんなものがいつ世界のどこで発明されたかを示したマップ。土地表記が現地文字表記になっているのも美しい。日本からは俳句と源氏物語。 (link)
EQX ARC:米国で100箇所以上のラグジュアリージムを展開しているEquinox、新たに”女性特化の高重量トレーニング&筋力強化”プログラムを開始。新たなウェルネスの象徴が痩身→鍛え上げられた体へと変わる? (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
サウジアラビアがテニス界をどう変えるか:男子テニスの最高峰・マスターズ100大会の開催権を獲得したことで、人権問題への懸念をよそに、テニス界におけるサウジの影響力は決定的となった。開催予定時期は2月で、現在は南米シーズンとなっている。情熱的な観客で溢れるブエノスアイレスから、観客のいない砂漠の大会へと有力選手は主戦場を移すかもしれない。ATP/WTAは経済・政治・スポーツの論点が混じり合った複雑なイシューを説く必要に迫られている。 (Athletic, link)
データで眺める米国の離婚事情:Pew Research Centerの分析によれば、米国における離婚率は1980年代から低下しつづけている。一方で50歳以上の熟年離婚は1990年以降上昇し2008年をピークに高止まり。離婚の40%は結婚10年以内だが、22%は結婚25年目以降に発生(離婚までの中央値は12年)。離婚経験者は既婚者(初婚・再婚者)と比較し、世帯収入・世帯資産の中央値がいずれも大幅に低い。離婚経験者の2/3は再婚するのだとも。日本はいかに。 (Pew Research, link)
あらゆる産業が”金融”で稼ぐ:プリペイド残高20億ドルを抱えるスターバックス、分割ローンや医療用クレカを患者に勧める病院や歯科クリニックなど、米国企業の多くが”銀行のように振る舞う”ことで利益を得る構造をつくりはじめている。製品・サービスと横並びで金融サービスを提供し、本業よりも金融取引で稼ぐ“非規制銀行”となったこれらの企業は、預金保険などの規制を受けないため破綻時には顧客資金が保護されないという問題点も。消費者利益の裏にはしっかりリスクがある。 (JOCOBIN, link)
なぜ人は熱を出すのか:19世紀までは発熱そのものが病気と見なされ、瀉血などで熱を下げようと試みられていた。しかし実際のところ発熱とは、6億年の進化の過程で私たちが獲得してきた重要な生体防御メカニズムである。熱発することで、ウイルスや細菌など病原体が増殖しにくい環境を作るだけでなく、免疫細胞の働きを活性化させ、防御反応を効率化することができる。40度を超える高熱が続く場合は別にして、軽度の発熱であればそのまま任せる方が良い場合もある。進化を信じよう。 (BBC, link)
お金はあなたを幸福にする(ただしお金を気にしない人”のみ”):たくさんの収入・資産が幸福度を高めるのは複数の社会科学研究で妥当性が検証されているが、同時に「他者との比較」「権力欲」「見せびらかし」「自信のなさの克服」といった動機の金儲けが本人の物質主義的価値観を強化し、うつや不安を引き起こし結局は幸福度を低下させることも明らかになった。瞑想のパラドックス(「効果を得よう」と意識する限り効果が出ない)と同じように、追い求める対象である限り、お金は幸福をもたらしてはくれない。お金は、あなたが「お金で幸せになろう」と努力していない時にだけ、幸せを運んできてくれる。残酷な真実である。 (Atlantic, link)
仕事量のおとぎ話、あるいは週休3日制のこと:アイスランド、英国、ドイツなどで行われた週4日勤務制の社会実験では、労働時間を大幅に短縮したにもかかわらず、生産性が低下せずむしろ維持・向上するという結果が一貫して示された。私たちは、「現在の多忙な週40時間労働が成功のために必要十分な仕事量だ」と無意識に信じ込む幻想に陥っていたのではないか。価値とは無関係に活動していること自体を「疑似生産性」として有用だと錯覚し、自らを多忙に追い込む寓話を信じていたのではなかろうか。 (Cal Newport, link)
21世紀の戦略活動『AIを創造インフラに』:AI自体に創造性を期待するのではなく、AIを”自身の創造性を高めるための環境”として再構築するアプローチを提唱。AIは答えをくれない。私たちの思考を鍛え、盲点を暴き出すための”鏡”や”敵対者”として活用することこそ、AIインフラ時代の正しい在り方である。↓では具体的にAIに期待すべき役割・環境が提案されている。さっそく採用してみよう。 (Musings Of A Wandering Mind, link)
視点の牢獄:AIに特定のイデオロギー(例:伝統主義者)を割り当て、自分のアイデアを徹底的に攻撃させ、自身の無意識の思い込みを可視化する
空白地図の作成:ある分野の情報をAIにすべてマッピングさせ、専門家でさえ見逃している空白地帯や隠れたパターンを発見する
アイデアの墓場:過去に自分が捨てたアイデアをAIに学習させ、なぜそれを捨てたのか、今ならどう活用できるかを分析させる
アンチ・ビリーフ:AIにあえて困難な「制約」を作らせることで、デフォルトの思考パターンを超えた思考を生み出す
“科学なくしてスタートアップなし“:ロケットを飛ばすエンジニアも、AIデータセンターを建設する企業も、その根底には、大学の研究室で地道に行われた基礎科学の積み重ねがある。ベ国では、科学者、エンジニア、起業家、VCという4者が、精巧なリレーを通じて未来を創り出してきた。科学への投資削減は、米国のイノベーションエコシステムの危機である。 (Steve Blank, link)
料理に尊厳とアイデンティティを求めて:ガザのフードブロガー、ハマダ・シャクラ氏の、戦時の生活にまつわる痛切なるポタージュ。かつてはガザの豊かな食文化を紹介していた彼は紛争開始後、避難民の子どもたちに食事をつくるように。しかし市場から食材が消え、支援物資を受け取るのも命がけのいま、そのチャリティキッチンも閉鎖されてしまった。いま現地にあるのは、ガザの人々の尊厳とアイデンティティ、さらには文化そのものを抹消する『兵器としての飢餓』である。乏しい援助物資のレンズ豆にわずかの香辛料を加え、子供たちに日常の味を届けようとしたささやかな抵抗の物語。 (the drift, link)
📙本
たよりない話の中でも特にたよりない話:長く購読しているニュースレター「たよりない話」からいくつかが選りすぐって紙化された最高の同人誌。私も、書きたいことを書く場所としてこーべ通信を続けてきたし、これからも続けていくと思う。 (link)
インターネットは恐ろしい場所で、攻撃的なことを書いてウケると、次もまた攻撃的なことを書きたくなる。これまた人間の欲である。世の中の批判をしてウケると、またウケるために批判的なことを書きたくなるし、そのためには批判するためのネタを探してしまう。
私も欲に弱い人間なので、いつそんな風になってしまうか分からない。だからこそ、インターネットでウケてもウケなくても、シェアされてもされなくても、あるいはそもそもウケることを狙わずに、書きたいことを書く場所が必要なのだ。毎週書いている時はそんな大袈裟なことを考えてなかったけれど、こうして「たよりない話」を再編してみると、そう感じる。その上で、こうして一つの本になって、他々な人に読んでもらえるというのは、これ以上ない贅沢ではないかしら。
ハゲタカ シリーズ:1~5まで、登場人物が尽く魅力的。わたしも鷲津のように生きたカネの使い方がしたい。リンのようにパッションを大事にしたい。前島のように全力で仕事がしたい。加地のように理念を持って仕事をしたい。飯島のように何があっても生き残りたい。 (link)
ロッキード:Audibleで耳学問。田中角栄の人生、これぞ昭和。 (link)
📻観た/聴いた
F1のピットストップで2.5秒の内に起きていること:人間の集中力と職人技が見える場所。ドライバーが確認するように信号があるんだ!
🧩感じた/感じている
3年後ロサンゼルスで「セルビア国旗とともに五輪で現役を終えたい」と語ったテニス界の偉人、ノバク・ジョコビッチ。中心が20歳そこそこの若手になったいまも変わらぬ熱意を持ち続けられることそもそもが才能だ。引退時は40歳超えているんだよ…
4連勝で竜王位防衛を決め、5期連続タイトルで藤井聡太先生が早くも永世竜王に。後手番で決めるのカッコイイ。私も将棋のトレーニングしなきゃ…
英断。勇気を持って決定し、それを断固推進すること。この累積量が面構えにでる。
40代は、自分の責任で在り方を決めるべきだ。誰のせいにするでもなく。
> “Be who you are, and say what you feel. Those who mind don’t matter, those who matter don’t mind.“ by Susan Rice
🍵関心事
薦められるままに購入した『肩をすくめるアトラス』いつ読めるだろうか。
🥑活動報告
今週後半は山梨に出張・リモートワーク。長時間ドライブがんばります。
エキスパートインタビューと対話のことを
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いつもニュースレター読むと月曜日だなと思っています。出版おめでとうございます!予約購入いたしました👍 (※本名のため割愛)
人に月曜を知らしめるメール、その善悪について考えています。
<お便りをお待ちしています>



