"どんぶり勘定🍜"を実践する。
「これってそんなに良いことか?or悪いことか?」を1日1つ問い直すだけで、あなたの人生はより善いものになります。
いつのまにかネガティブな意味が付けられてしまった文字面普通の言葉がある。例えば『洗脳』。洗顔や洗髪はきれいさっぱりポジティブな印象を放っているのに、頭蓋の奥、脳みそをすっきりさせる洗脳は真逆のイメージを持つ。さらに『伝書鳩』。ペルシャやエジプトで紀元前から活躍していた伝書鳩は、あらゆるリスクを背負って何百キロと飛ぶ勇者だったのに、いまでは無価値な営業マンやプロジェクトマネージャー、中間管理職を揶揄する表現になってしまった。御用学者や天下り、忖度に隠れ蓑。日本語学習者は大変だ。
コンサルタントとしてあるまじき姿勢かもしれないけれど、私は『どんぶり勘定』肯定派だ。この言葉は、昔の職人たちが、腹掛け前部についた大きめポケット(”どんぶり”)を財布や物入れとして雑に利用していたことに由来する。私が働き始めて以来、この言葉を聞くのはほぼ非難の場のみで、職人らしい気っぷの良さ、鷹揚さとは結びついていない。「どんぶり勘定でやっているからダメなんだ」「どんぶり勘定脱却のために…」…どんぶり勘定は危険なものであり、利益を溶かす病でさえあるらしい。
どんぶり勘定否定は、とにかく可視化!とにかく記録!とにかく管理!と叫ぶ。Excelや会計ソフトにデータを集め、個別明細は全て保存・インデックス化し、経営目標をたてて進捗を定期的に見直そう(そのために私たちの製品・サービスが役立ちます)そうすれば未来はバラ色になるらしい…本当だろうか?マネーフォワードやMoneytreeと連携されたあなたの銀行口座は増えているのか?
仕事で普段お付き合いしている企業はどこも、どんぶり勘定からほど遠いところにいる。会計ソフトは基幹システムにばっちり統合され、可視化も完璧、あらゆる分析に対応したアドオン・SaaSが載っている。盤石のガバナンスを体現する稟議システムが隅々まで行き渡り、費用対効果に関する会議がそこかしこで開催されている。どんぶり勘定否定派の夢は「企業はみな大手JTCのように!」ということなのかもしれない。洗脳が成功したら
どんぶり勘定を許す人は、お金はただのお金であって、目標は別のところにあったことを知っている。職人であればより良いモノをつくること、商売人であれば顧客に良いモノを届けることである。どんぶり勘定は利益を最大化する手段ではもちろんないのだけれど、どんぶり勘定の結果立ちゆかなくなってしまうような事業は、そもそもから何かがおかしいのだ。どんぶりの中に電卓と会計ソフト連動の電子決済端末が入っていて「現金取引お断り!」という職人ばかりになったとしたら、できあがるのはおもろない世界である。
先週税理士さんから来年夏までの予定納税予定が送られてきたのだけれど、その金額の大きさにびっくりしてしまった。日々どんぶり勘定でやっている私は、あまり開かない銀行口座の残高を恐る恐る眺め、なんとかなりそうだとホッとする。自分がまともな商売をしていることを、その瞬間に実感するのである。
<お便りをお待ちしています>
💼心惹かれたもの
セレナ エクストラブリュット2020:最近改めて読んだワインマンガ「神の雫」で紹介されていた、山梨・グレイスワインさんがつくるシャルドネと甲州を瓶内二次醗酵させたスパークリングワイン。色んな人と楽しもう。 (link)
平田商店 ハンドメイド皮革手袋:神戸もだいぶ冷え込んできたので、昨冬にオーダーしたオーダー手袋を取り出して愛用しています。標準よりも人差し指が短く市販品を買うと指余りが気になって手袋を敬遠していたのですが、通販ながらきっちりサイジングしてくださる平田商店さんのおかげで快適な通勤路。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
減量薬普及こそ米国最高の公共投資になるはず:米国の成人の40%以上が肥満。その医療コストと生産性損失は年間4000億ドルにのぼり、2060年までに累計20兆ドルを超える可能性さえある。これは米国の財政赤字の最大の要因の一つであり、AIに夢を見るよりも、国の財政を蝕む巨大な爆弾である肥満問題に金を投じた方がよっぽどリターンがよいだろうというのが著者スコット・ギャロウェイ氏の主張。人を動かすいい表現だ。>“米国の二大成長エンジンは怒りと炭水化物だ。AIは前者を収益化し、食品複合体は後者を収益化する。GLP-1はついにこの悪循環を打破するかもしれない” (No mercy/No Malice, link) →関連:GLP-1薬は”世界初の真なる長寿薬”となる可能性
三大宗教が(リベラル政治と違い)人を惹きつけ続ける理由:心理学者のアダム・マストロヤンニは、「日曜日には必ず〜〜すること!」「〜〜は食べてはダメ!」のような制約、難解な教義を持つキリスト教やイスラム教が世界を席巻してきたのは「難解な理論を固めつつも、誰にでもわかるシンプルな原則として提示する」「核心的な教義は守りつつ、アプローチには柔軟性を持たせること」そんな両立をなんとか実現してきたからだと指摘する。一方で高学歴層が正しさを盾にして大衆を軽視する現代政治(特にリベラル政党)は分断を引き起こすばかりである。私たちは、正しさを土台にしつつも、誰にでも伝わるシンプルな原則と柔軟性をそこに重ねるべきなのだ。 (Experimental History, link)
人口ダイヤモンドから中国貿易戦争を考える:中国(特に河南省浙城県)は世界の合成ダイヤモンド生産の約5割を占める圧倒的なリーダーで、特に半導体ウェーハの切断・研磨、リソグラフィ装置の光学部品など、先端チップ製造に不可欠な工業用ダイヤモンドの供給を支配している。10月に発表された中国の工業用資材輸出規制は世界のサプライチェーン負担を更に重くし、同時に日本や韓国、インド等が代替供給を通じて技術を蓄積する機会にもなるかもしれない。(別文脈:ラボダイヤモンドの価格がどんどん下がっているとは聞いていたけど、いま1カラット2万円とはずいぶん安い) (Chinatalk, link)

賢い人が幸せになれないのはなぜ?:「知能が高い人ほど幸せであるはずだ」という直感に反し、実際にはIQと幸福度の間に相関関係がほとんどない。学校のテストで計測されるのはルールや正解が明確な問題への対応力である一方、結婚相手選び、キャリア、人間関係などの”人生幸福問題”はルールも正解も可変的である。IQ150の天才が陰謀論にハマり、スマホもろくにも使えないおばあちゃんが家族を幸せに導くことができるのは当然で、私たちは改めて真に価値ある「知性」とは何かを考えなくてはいけないのかもしれない。 (Seeds of Science, link)
ジャンクフードの脳へのダメージをランニングで修復する:アイルランドのUniversity College Corkが行った研究によると、高脂肪・高糖質の食事を与えられたラットが、自発的なランニングによってうつ様行動を減少させることが示唆された。ジャンクフードによって減少した気分調節に関わる代謝物(アンセリンなど)が運動により回復、同時に上昇した血中のインスリンやレプチンの水準も運動により低下。ただし、ジャンクフードは新しい神経細胞の生成を阻害することも同時に明らかになり、「運動さえすれば何を食べても大丈夫」ということにはならないぞと。食事と運動に”銀の弾丸”はない。 (Science Daily, link)
製品が『誰向けではないのか』を伝えるのは効果的:マーケティングにおける否定的フレーミング/Negative Framingの効果に関する科学的研究。商品が「誰のためのものではないか(Not for...)」を明示する広告は、「誰のためのものか(For...)」を明示する広告に比べ、ターゲット層がその商品を選ぶ確率が最大48%高くなること、その背景には「対象外」を明示することによる特化訴求と信頼性上昇があると推察される。特にコーヒーや激辛ソースなど、個人の好みがはっきり分かれる商品で効果的。 (Science Says, link)
専門家であることが有害になるとき:エゴは人間をダメにする。専門知識はときとして新たな学びを阻害し、過去の成功体験はときに新しい挑戦の足かせとなるのだ。確証バイアスや陳腐化した情報を抱えて、それでも「私は専門家だぞ!」といきまくおっさんほど見るに堪えないものはない。エゴを捨て、柔軟に、初心者のような好奇心で常に再学習をしよう。 (A Smart Bear, link)
キャリア構築の神話:ビジネス書やSNS等で著名なキャリアコーチなどが広めている「有害な神話」を批判的に紹介。みんな、現実にかえってこような。言い訳はなしだ。 (Leading Sapiens, link)
神話①私は結果をコントロールできる ⇔ 実際、運やシステムの影響が大きい
神話②証明された成功の道筋がある ⇔ 実際、ただの生存者バイアス、再現性は低い
神話③良い結果=良い戦略 ⇔ 偶然の結果を戦略の手柄と勘違いしているだけ
神話④昇進は上から降ってくる ⇔ 上司はあなたのために働いていない 自律しろ
神話⑤生まれつき向いている人がいる ⇔ 大半のスキルは後天的に習得可能
社会を動かすのは個々人の小さな善意の連鎖:2020年に米国で行われた贈与は合計1兆ドルを超えるが、その多くが少額寄付やボランディア奉仕である。これらの善意は、リーダーなしでも調和して美しい飛行姿をみせるムクドリの群れのように、そこに込められた優しさを含めて確実に社会に影響を広げていく。記事著者のマッケンジー・スコットは、学生の時に無料知慮をしてくれた歯科医や、学生時代にお金を貸してくれた友人への感謝を捧げ、自身もまた慈善家として活動することで社会に優しさを還元させている。私たちが今日する小さな行動が、誰かの人生を変え、やがて世界を動かすかもしれない。「私たちが待っていた救世主は、私たち自身だった」これを寓話ではなく真実にしよう。 (MacKenzie Scott, link)
“地図づくりと実地調査は全然違うもの”:ジムに行く前に最適なトレーニング方法を何週間も調べたり、営業経験を積む前に交渉術の本を何冊もただ読むだけになっていないだろうか。ほとんどの人が、物事のメカニズムを理解することを前進と勘違いし、行動を起こす前に完璧な準備を求めすぎている。脳は理解することでドーパミンを出し満足感を(勝手に)得てしまうが、それは現実を無視して勝手に安全地帯に逃げ込んでいるのに過ぎない。理論やモデルは地図にはなるけれど、実際に物事が起きるのは現実世界である。完璧な理論構築よりも不格好な実践を選ぼう。 (Joan Westenberg, link)
📙本
螢・納屋を焼く・その他の短編:村上春樹の短編集。30年以上前の作品のはずなのだけど、みずみずしく楽しんだ。 (Amazon, link)
反逆の仕事論 AI時代を生き抜くための”はみ出す力”の鍛え方:アクセンチュア・シニマネでありSF作家の樋口恭介さん仕事本をAudibleで耳読書。妄想と現実を行き来してそれぞれの世界を広げるのが人間のお仕事なのだけど、AIが「雑事を適当に処理してくれて」「妄想・現実探検の速度を上げてくれて」「各世界の行き来を助手席で見守ってくれて」となんでもしてくれる世界に生きるなら、私たちは日常に小さな旅をつくりだしたり、あえての違和感をつくりだすことで仕事人として成長できる。 (Amazon, link)
頂きはどこにある?:『チーズはどこへ消えた?』で有名なスペンサー・ジョンソンの続書。「過去に執着せず、しかし結果にはこだわり、行動を続けること」がチーズ〜の教訓なのだけど、この頂き〜のメッセージは、行動を続けたときにどうしても直面する患難苦難期・絶好調期の波をどう乗りこなすか、のお話。順境に奢らず、逆境にめげず。おっさんになるとこういうのの方が沁みますね。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
まっちそ『接待に失敗できない投了代行』:最高の将棋Youtuber。角換りの良い対局、ギャラリーのレベルが高すぎる。
エミー賞受賞の映像製作者によるAI活用方法:ドキュメンタリー制作では、完成尺に対して膨大な量の素材を扱わなくてはならず、各素材の日付や場所、簡易説明などの記録を手作業で行っていた。ティム・バーンズ率いる制作会社Frorentine Filmsはデータベースへの素材取込みを自動化するPythonベースのREST APIをつくって一気に効率化。これぞ人間によるAIの使い方だ。
🧩感じた/感じている
書籍が順調に売れているようで嬉しい。海外での翻訳版出版の打診もきているようで、なるほど実績を積み重ねていくとこうなるのかを実感しています。このニュースレターも、いつかどこかに私を連れて行ってくれる気がしている。
マルセル・プルーストの言葉として度々引かれる「真の旅の発見は新しい風景を探すことではなく、新しい目で見ることなのだ」の出所を探そうとして出会った文章が素晴らしかった。
結局旅行特有のたのしみは、
途上で地面におりたり疲れたときにとまったりできる、ということではなく、
またそんなふうに出発と到着とのあいだの差異を
できるだけ感じられなくすることよりも、
むしろその差異をできるだけ深く感じるようにすることにある。
つまり、われわれの生活している場所から、
希望の場所の中心へ、想像力が飛躍でもって
われわれを連れていってくれたときのように、
二つの場所の距離の差を、思考にあったときのままに、完全に、
そっくりそのままで、もう一度感じ直すことにある。
『失われた時を求めて 第二篇 花咲く乙女たちのかげにⅠ』(井上究一郎訳)
🍵関心事
2025年もあと1ヶ月、やり残したことはあるか。
🥑活動報告
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今週末から東京出張です。寒くなるみたい。インフルエンザに気をつけなきゃ。
<お便りをお待ちしています>


