エゴや悪は退屈である。
「AIどんな風に使っているか?」と以前コメントで質問いただき、手元ミスでとんでもなく短い回答を戻してしまったことを反省しています。ので、冒頭そんなお話しです。
まともに海外生活をしたことはないけれど、面白い情報に触れたい一心で、日々背伸びして英語メディアを読んでいる。大学院では英語論文をもりもり読み、某就職活動用英語試験(a.k.a TOEIC)では結構な高得点を取ったはずなのだけど、The Economist記事を何本か読むと一日に使える脳リソースのほぼ全てを使い切ってしまう。マイナーな非ゲルマン言語話者はつらい。私は雰囲気で英語をやっている。
この負担は、生成AIの進化でずいぶんと緩和された。2年ほど掛けて、自分なりの”メディア読み解きパートナーAI”を育ててきて、最近Gemini3やGPT5.1が登場したことでほぼ完成形となった。使い方は概ねこんな感じ。
記事を開き、ChatGPT/Gemini/Claudeの『自分専用解説Bot』にURL+本文コピペを流す
いったん3チャットを閉じ、自力で記事をさーーーーっと読み大きな論旨とキーワードを掴む
読み終わり次第、AIが出してくれる日本語解説(言っていること、示唆されること、反論、自身価値観との統合まとめ)を読み、いろいろ考える
メリハリ付けを大事に、もう一度記事を読み、いろいろ考える
考えたことをメモする(ここまでで5-15分くらい)
生成AIの結果をただ読むだけでは広がりがない。2→3→4と進んで自分なりの発見をするのが楽しい。毎週このニュースレターで取り上げている記事は、このプロセスのどこかにAha!!があったものである。コメントをくれたTOさん、これが私のAIの使い方です。
先週、“The Asymmetry(非対称性)“をこの方法で読んだ。「なるほど善悪の非対称性のお話か、引用がたくさんあるな」とぼんやりしていると上ステップ3・Geminiが出してきた解説冒頭にぐっと引き寄せられる。
悪はなぜ、いつも退屈で創造性がないのか。そして善はなぜ、常に新しく、驚きに満ちているのか。なぜ優しさが最強の知性であり、愛が宇宙の基本構造なのか。
一から記事を読み直す。下の図と一緒に、『認知的光円錐/Cognitive Light Cone』というコンセプトが出てくる。”主体がどれくらいの広さと長さまで『自分事』として捉えられるか”を光の広がりで表現するものだ。下の図を見てほしい。縦軸は時間、つまりどれくらい先の未来まで考えられるか? どれくらい昔・過去まで学べるか?を表している。一方、横軸は物理空間、自分からどれくらい遠く(他人、社会、宇宙etc…)までを自分事として扱えるか?を示しているものだ。これを下敷きに、善と悪の非対称さを考えてみる。
悪は常に”自分の欲望”という極めて狭い一点に執着する。「自分さえ良ければいい」と考えた瞬間、他人の気持ちや100年後の未来を計算する必要がなくなり、光円錐は自身・エゴという小さな点に向かって急速に縮んでいくからだ。横軸は極めて狭く、縦軸は極めて短く未来に伸びるのみ。知性の幅は広く、その人の生は当然退屈なものになっていく。
一方、善はどうだろう。善を体現することは、他者の苦しみやニーズを、それらをまるで自分事であるかのように認識し、それを解決しようと動くことである。自分の利益だけを最適化するのではなく、自らの計算式に他者を次々と組み込んでいく。そのため計算しなければならない変数が爆発的に増え、その実現のために知能の円錐を巨大化させる・させ続けることになる。横幅は広がり続け、縦軸は過去にも未来にも長く延びる。その人がいるコロニーは大きく広がるだろう。この対比が、冒頭の問いに繋がる。
自分の欲望に閉じこもる悪は、世界を狭く、小さくする。一方で、他者のために無限に心を開く善は、宇宙そのものの広がりへと私たちを導く。優しさを体現しようとする人は必然的に知性を獲得することになる。遠くまで光で照らすこと、愛を表明する人が閉じ往く世界を繋いでいるのだ。
とんでもない長さで難しい概念を解説するこの記事は、非ネイティブの私が丸腰で噛みしめるのは不可能だっただろう。生成AIが進化してくれて良かった。生成AIは私の善を広げてくれる、優しさと愛の存在だと思う。
<お便りをお待ちしています!!>
💼心惹かれたもの
オーダースーツ・KASHIYAMA:来年はかっちり系の仕事を増やしたいなと自宅のスーツを試着してみると、テニス練習の影響かお尻・太ももがパンパン…しっかり採寸いただき素敵な仕立てでやっていただきました。脱・吊るしスーツ。 (link)
7P くるみとチーズクリームのパン:セブンイレブンでパンを買うことがあれば迷わずこれを買ってください。220kcal、タンパク質も6gあります。何よりおいしい。おすすめです。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
ミシュランの星を失うとトリップアドバイザーの評価が上がる:2010年から2020年の英国とアイルランドのレストランデータを分析し判明。①期待値低下の影響が評判低下の効果を上回る②顧客構成が変化する③サービスレベル向上に努めるなど供給側の変化を促す、この3つの原因仮説で深掘り調査をしたところ①が強く作用しているのではとの示唆。つまり、星を失うことで消費者の過度な期待値が下がり、その結果、実際の体験が期待を上回りやすくなったからではと。専門家評価の低下はむしろ経営者にとっては恵みとなるかもしれない。 (PubsOnLine, link)
ファッション界、次の流行は”ボクシング”?:ogueが予言する次のビッグトレンド。ディオールやステラマッカートニー等ハイブランドが25年春夏コレクションでボクシングブーツやグローブにインスパイアされた商品を発表するなど、かつて汗と暴力の象徴だったボクシングギアが、機能美とアグレッシブ・アバンギャルドな美意識の融合を象徴する存在に。 (Vogue Business, link)
大気汚染改善はコスパ抜群の人道政策:大気汚染はHIVやマラリアより多くの命を奪っており、米国国務省の予算削減。今年公開されたシカゴ大学エネルギー政策研究所の分析は、年間数万ドルの少額投資が途上国で国レベルの政策を動かす”超高対効果”な機会であることを実証、数百万人の命を守るインフラになり得る。ガンビアでの新法制定や、コンゴ民主共和国での監視網構築など、少額投資が実際に成果を上げている事例も生まれつつある。(Energy Policy Institute, link)
空の旅は悪くなっているのか?:データ分析の結果、3時間以上の遅延は90年比で4倍に激増。航空会社は予定時間を延ばしてこの遅延を巧妙に隠蔽している。一方で事故率は低下し、運賃も過去10年間で大幅に低下しており、他の物価上昇と比べても割安水準となっている。安くて安全だが、時間効率や信頼性は低下中。背景には管制官不足や空港インフラの限界が。さて、空の旅は悪くなっているのだろうか。 (Maximum Progress, link)
“生産プロセス”が世界を変えてきた:1907年には1個8千円もした電球、数十年でわずか数セントにまで安くなったのは”生産プロセス”が発明されたから。①変換方法②生産速度③投入・産出とコスト④仕掛品・バッファ⑤変動、この5要素をパズルのように組み合わせ最適な”ものづくり工程”を構築することこそ生産プロセスの本質。ガラスを溶かし、型にはめ、息を吹き込むという職人芸が、毎時12万個もの電球を吐き出す巨大な自動機械リボン・マシンへと進化する描写は圧巻。 (Construction Physics, link)
若者のSNSリテラシーが高まっても健全な行動を促すのは難しい:アルゴリズムが情報を操作し、フィルターバブルを生み出すことをよく理解している若者ほど、誤情報の修正や多様な意見の探索に対して消極的。この研究結果は、どうせ巨大なシステムには勝てないんだからという無力感・冷笑主義が行動変容を抑制しているからかもしれない。知識がある者は諦め、ない者は無防備のままSNSと向き合うことになる。自らフィード・タイムラインをつくり、運用する実践だけが人を変えうるのかもしれない。 (NIEMAN Lab, link)
全てが自己ブランディングした世界:コーヒーチェーンの選択やパートナー存在を後悔するかどうかといった日常の些細な行動でさえも、他者からの評価や自分自身のブランディングとして意識せざるを得ない現代の息苦しさ。生活のすべてが”パフォーマンス化”し、SNSを通じて常に監視・採点されているように感じるパーソナル・ブランド不安が一般にも広がっている。一言「うるせぇよ、黙っとけ」を心の掛け軸に。 (Embedded, link)
判断・センスをアウトソースした未来に何が残るのか:「なぜ、世の中には未完成で使いにくい製品が溢れているのだろう?」素早く作って壊す(”Move fast and break things”)文化や指標重視の姿勢により、AIや外部専門家への依存が増え、スピードと引き換えにつくり手の魂・こだわりは消え去ってしまった。品質の高いものは益々希少になった時代では、不合理なこだわりを持つ製品のみが生き残る。記事掲載元企業・Linearは「データより直感」「バグゼロ方針」「未完成品は社内のみ」といった方針を掲げる珍しいソフトウェア企業。どんな時代にも揺り戻しがある。『無名の質』(”Quality Without A Name”)私も大事にしよう。 (Linear, link)
ストーリー巧者になりたいならまずは構造を学ぶこと:「ストーリーテリングは芸術であると同時に工学である」と、物語構造を支える4つの基本原則を解説する記事。葛藤というエンジンを積み、因果関係というギアを繋ぎ、進捗というメーターを見せながら、最終的な変容という目的地へ運ぶこと。仕事の現場で必要なお話しもまさにこれだよ。 (World Builders, link)
葛藤/Conflict:物語のエンジンとなる要素。他者、矛盾する信念、時間や金銭などの外部要素とのジレンマを設定し、リスクを高める
因果関係/Causation: 出来事の論理的なつながり。「そして」の連続ではなく、前の出来事が次の出来事を引き起こす連鎖を表現する
進捗/Progress:読者に物語がゴールに向かっていることを可視化させる。人数やアイテムの数、地図上の移動などで進行度を示す工夫を盛り込む
変容/Transformation: 物語の魂をなす要素。一連の出来事を通じてキャラクターや世界がどう変わったか、ビフォーアフターを示す
社会に「潜在能力主義」を:”ポテンシャリズム”でも知られるこの考え方は「すべての人は才能・能力を持っており、それらを発展させ、他者と共有する”権利”と”責任”の両方を持つ」というもの。政治的分断が深まる一方の世界で、システム・制度重視の進歩派と個人を重んじる保守派の二項対立を超え、制度的支援(権利)と個人の主体的な努力(責任)の両方を統合するアプローチとして注目されている。自由・権利と責任、どちらか一方だけってのはないんですわ。 (The Beacon Project, link)
📙本
「いき」の構造:次のポッドキャスト課題本。フランスやドイツで現象学など当時の最新哲学を学んだ九鬼周造が帰国後、日本人が無意識に感じている『いき』という感覚の特徴や由来を徹底的に分析した小論。硬い文体なのにすらすら入ってくる。自分の乾いた部分に染みこんでくるコンテンツでした。 (Amazon, link)
あっという間に人は死ぬから:移動中にAudibleで耳学問。あらゆる人間が避けられない3つの理『死・孤独・責任』、それらから避けようとする非合理なコーピングが浪費感や虚無感に繋がると著者はいう。死があることは人生の大前提であって、さらにまともな大人であれば、孤独や責任も前提にすべき何かである。 (Amazon, link)
肩をすくめるアトラス:米国で聖書の次に売れた本を書いたとされるアイン・ランドの代表作。先月上旬に日経新聞朝刊・春秋で取り上げられており、経済格差が大きく世界を揺るがしそうな向こう10年のことを考えるべく積ん読から引っ張ってきました。アラン・グリーンスパンやイーロン・マスクの愛読書、という前評判通りに面白い。文庫版で合計1,500頁ほどあるので年末年始まで楽しめる。彼女が生み出した思想体系・オブジェクティビズムについても勉強する予定。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
Komitas Antuni - Ruzan Mantashyan, Kirill Gerstein:先週金曜ニュースレターでとりあげたキリル・ゲルシュタインのYoutubeにあがっている、アルメニア人虐殺追悼に捧げられた演奏。6分ほどの短い演奏なのですが、圧倒される美しさでした。
春風亭一之輔@Spotify:Spotifyが落語堪能サービスと化しています。芝浜が沁みる季節が来た。 link
🧩感じた/感じている
朝一番のあおさ味噌汁が脳に効く。
何歳になっても真剣に勝ちに行くアスリートは美しい。ルカ・モドリッチ、ノヴァク・ジョコビッチ。デスクワーカーが「AIに自分の仕事が奪われる…!!」など言っているのは甘え。言い訳せず、高みを目指し続けるのが人間の責務である。
🍵関心事
2026年のGuiding Principleに何を盛り込むか。今週、たたき台をつくろう。
1ヶ月の米国遠征からもうすぐ帰国するスポンサー選手をどう歓待するか。中学2年生にして1ヶ月親元を離れ、かつ真剣勝負を続ける日々は大変だったことだろう。勝ち負け関係なく立派なことである。
🥑活動報告
出版社営業さんが3冊目書籍の販促をがんばってくれている。増版頼んます(気配なし)
<お便りをお待ちしています!!>





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