悪手を減らす
二人零和有限確定完全情報ゲーム、ツェルメロの定理、チャーリー・マンガー、RADWIMPS・正解、東京断面図、ウィンブルドンの芝と花壇、大人の友情、選択肢を捨てよ、脳はないが眠るクラゲ、古本しおりを集める、経済学史、ジェットエンジンを眺める、水中写真展、Die with Zero。6月が終わる。
将棋・藤井聡太六冠が連勝を続けている。3月から13連勝だ。デビュー時に彼が記録した29連勝もとんでもない偉業だが、相手がトップ棋士のみの現記録のほうが達成しづらいはずだ。将棋界の始まりは4月なので、今年の勝率は当然10割である。なんじゃそら。
将棋は有限・完全情報の逐次手番ゲームである。厳密には”二人零和有限確定完全情報ゲーム”。つまり運の要素がない。勝ちは実力で相手を上回ったということであり、負けは実力が足りていなかったということである。結果が直で能力を教えてくれる、混じりっけなし、原義通りの実力勝負だ。言い訳のきかない世界。
将棋における実力とは何か。悪手を指さないことである。
将棋は理論的な最善手が存在するゲームだ。ツェルメロの定理によれば、先述の二人…ゲームには、以下のいずれかが必ず成り立つことが証明されている。
先手あるいは後手が必ず勝つ戦略、つまり必勝法が存在する
お互いが最善を尽くせば必ず引き分けになる戦略が存在する
つまり人間に求められているのは、その戦略を正しく”なぞる”ことである。戦略から外れないこと。戦略のレールの上を正しくまっすぐに進むのが勝利への道である。
しかし人間は愚かであって、悪手を指すのは避けられない。そもそも、とんでもない金額を費やして積み上げた最先端AIやバカみたいな計算能力を駆使しても、将棋の必勝法は発見されていないのだ。1日400kcalで切れ目無く動いてくれる1kgちょっとの計算機(a.k.a脳)は、今日も日本中の対局場で悪手を生み出し続けている。なお、トップ棋士の悪手率は1.5~1.8%程度。人生を賭けて学び、金を稼いでいるプロでも日々ミスを重ねている。
「人は、自分が信じたいことを容易に信じる」 ユリウス・カエサル『ガリア戦記』より
〜人は、たとえ自分のエゴがどう言おうと、事実を吟味してから判断を下すわけではない。自分が真実であってほしいと願うことを前提とし、それに合致する事実だけを取り上げる。賢い人も例外ではない。ただ、自分が既に望んでいることを正当化する論拠を構築するのが上手なだけかもしれない。 link
投資持株会社バークシャー・ハサウェイの副会長を長く務めたチャーリー・マンガーが残したすてきな言葉。投資哲学・人生訓として参考になるし、不確実性に溢れた投資の世界でも、結局は結局は悪手率が勝負を決めるのだと教えてくれる。
人はみな賢くあろうとしている。私は馬鹿にならないように努めている。
それは、ほとんどの人が考えているより難しい。
仕事の現場ではみな、日々賢さを追い求めている。ありそうでない正解の幻想をみて、自分and/or相手に多少の賢さがあれば・・・と嘆く。残念だけど、そんな賢さは存在しない。私たちが手にしている最高の知性は、たった9×9マス・8種の駒で行われるゲームの正解さえ解明できていない。いわんや、仕事や事業、婚活、投資や人間関係の正解を賢さでなんとかしようとは、あまりに浅はかである。将棋において、「勝負手」を指すのは劣勢側で、その多くはうまくいかない。勝負に出なくてはいけない時点で、既に負けている。唯一解を求めるのをやめて、悪手以外を指し続ける事が広義の”正解”なのだ。
私たちはこれまでたくさんの悪手や愚かな振る舞いを積み重ねてきた。歴史の授業で教えられることの多くは成功の物語だが、ニュースは悲劇で溢れており、企業組織は馬鹿と悪手でぱんぱんに膨れ上がっている。私たちは、それを類型化し、分析し、同じことを繰り返さないだけの知性は持ち合わせているはずだ。より賢くあるためではなく、愚かさを諫め、バカな振る舞いを止めるために労力を集中するなら、私たちはより良くなれるはずだ。
自分、他人、歴史、いろんなことの失敗やミスから学ぼう。藤井聡太六冠は悪手を棋士平均の1/3におさめることで一般棋士の30倍稼ぐ。チャーリー・マンガーは馬鹿にならないように努めることで550万%、S&P500比140倍の投資パフォーマンスを生み出した。最高の自己投資は資格取得や人脈づくりではない。自己規律の獲得である。
お便りをお待ちしています。
💼心惹かれたもの
山口大島みかんゼリー:周防大島の直売所でかったもの。みかんが信じられないぐらいぎゅっとしている。口コミをみると仏前のお供え物として活用されている模様。実家に贈り、お盆帰省時に自ら食べるマッチポンプワークが良いのでは。 link

いよかんがエース。道の駅の魅力がいっぱいだ。 link 東京断面図:人類の叡智と努力を感じる。都市の地下に鉄道を走らせようぜ!と考えるのも、それを実現し日々運行するのも、その素晴らしさをデジタル空間に再現するのも、全てが人間によるホンモノの仕事だ。安心と安全、ミスの最小化のみに思考を向けた成果でもある。 link
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
ウィンブルドンの最高体験をつくる芝と花壇:本日から一回戦が始まるテニス・英国選手権は、四大大会で唯一の芝サーフェス開催。3会場・88面は厳密に管理され、毎日ボールの跳ね返り具合や表面の硬さをチェックする決まり。さらに、映像映えとグリップ力を高めるため肥料に鉄分を増やしたり、ペチュニアの花壇が午前5時出勤のスタッフ20名によって手入れされたりする。これはスポーツの祭典であり、舞台公演だ。 link
“ウォームカラー”という第三の労働:ホワイトカラー、ブルーカラーに続く第三の労働を、著者は『温かみ』から紐解く。顧客に寄り添い、ケアを感じさせ、温かさそのものを売る仕事である。米国労働者の72%はサービス業に従事しているいま、AIが知識作業・労働を広く深く侵食していくと、最後に残るのは人間による人間向け感情労働になるのかもしれない。農家が作物ではなく農場の空気を売り、SNSを伝うミームが認知の疲れをほどく。感情に値札がつく経済を歓迎すべきなのか、それとも温かさが商品化されることで社会が冷たくなるのか。私の仕事はどこに向かうのだろうか。 link
2063年から振り返るインターネットの記憶:遠い未来から、自分とインターネットの歴史を振り返ってみる思考実験。ポケモンカードに夢中だった幼少期、AOLでコミュニケーションをはじめた10代前半、Facebookに移った10代後半。写真を投稿してはヘイトコメントに傷つき、Instagramで現実と演出の境目が溶けていく。技術は変わり続けるのに、底に流れる感情はひとつだ。見られたい、でも見られるのが怖い。承認の形がどれだけ更新されても、14歳のあの恐怖は消えない。未来からの回想という体裁で、いまの私たちの話で描かれている。読んでみて、未来の視点から、いまの日々を振り返る機会を持ってみよう。今日一日も、貴重な一日だ。 link
大事な顧客はクレームなしで静かに去っていく:生存者バイアスという言葉はだいぶ市民権を得た。元は、第二次大戦中に統計学者が指摘した「帰還した生存機体のデータだけで分析すると本質を見誤るよ」という統計的・論理的な思考の偏りのことである。企業の顧客分析では”逆・生存者バイアス”に基づく分析をしているのかもしれない。クレーム分析や解約メール分析などが対象にするのは特定の顧客群だけであり、そこから立案される施策は静かに去って行く顧客の引き留め施策には繋がらない。 link
大人の友情は静かに消えゆく:失恋はドラマティックである。しかし友情の消滅には、儀式も別れの言葉もなく、ただ虚空に消えていく。インド警察の候補生プラナブ・ジャインは、深夜にかかってきた友人の電話をきっかけに、大人になるにつれ静かに崩れていく友情を見つめる。学生時代の友情は、有り余る時間と物理的な近さが勝手に育ててくれた。社会人になると、その二つが同時に失われる。忙しさのせいだと私たちは言う。けれど核心は、私たちの身体と認知を奪い続ける仕事と社会的プレッシャーである。定期的に顔を合わせる接点が消えれば、どれほど大切な相手でも関係は痩せていってしまう。誰のせいでもないからこそ、悲しみを悲しみと認めることすら難しい。Line/Messengerをひらき、「久しぶり!」とメッセージしよう。情報商材や似非保険業界が破壊してしまった友人同士の信頼関係を、小さなメッセージから取りもどそう。 link
選択肢を捨てた者だけが川を渡る:『選択肢は多いほどいい』経済学入門では当たり前の通念に著者は真っ向から異を唱える。カエサルが退路を断ちルビコン川を渡ったことで勝利したように、人生の幸福や成功は不可逆な決定の向こう側にあることが多い。選択肢の経済的価値を強調する金融オプション理論、人生に持ち込むべきなのだろうか。逃げ道・脇道の存在そのものが苦悩の源になることもある。とある心理学の実験では、取り消せる決定より取り消せない決定のほうが主観的満足度が高いことが示されている。『持ち家より賃貸』『キャリアに迷ったら新卒コンサル/大企業』『お金はあればあるだけよい』…柔軟性を確保したつもりになっている私たちは、川を渡らずこちら側で勝手に苦しんでいる。腹を括れ。賽を投げろ。 link
その他にも…
休息と無為のあいだ:必要なのは「効率よく仕事に戻るためのピットストップ」ではない。 休息は誰かから買わなくても良いのだ。 link
脳のないクラゲも眠る:かれらも夜には拍動が緩み、刺激への反応が鈍り、私たちの睡眠とよく似た状態に入る。眠りは脳より古いのかもしれない。 link
中国の田舎へ/同じ食卓が祝祭にも平凡にもなる:中国の戸籍制度が農民と都市住民のあいだに引いた線。心にくる文章。link
古本に挟まれた他人のしおりを集める:切符の端切れ、ステッカー、シャツのタグ。人生と物語が見える。私たちは人間である。link
📙本
若い読者のための経済学史:アリストテレスやプラトンの時代から、あるべき経済の形は議論されてきた。アダム・スミスだけではなく、リカードやケネー、ピグーなどの経済学者がどのように経済学を発展させてきたのか。Audibleもあります、おもしろいよ。 link
ドラッカー名著集 マネジメント[上]:名著。なるほど、これは名著である。全ての職業人はこれを読むべきである。もしあなたが、仕事と労働の違い、生産性の定義、利益について考え抜いたことがあるのであれば、ドラッカーの切り口は素晴らしい触媒になりうる。もちろん、生産についても。 link
生産とは、材料にツールを適用することではない。仕事に論理を適用することである。仕事に正しい論理を、より明確に、より一貫して、より合理的に適用していくほど、生産の限界はなくなっていく。ということは、生産の原理というものが存在することを意味する。すなわち、いくつかの基本となるべき原理があり、そのそれぞれが独自の制約条件や必要条件、特徴をもっているということである。さらにこのことは、生産のプロセスは、生産の原理に忠実に設計するほど、より円滑、より効果的、より生産的になるに違いないということである。(p257)
覇者の驕り:ゴーンさんが復帰する?この本で描かれる、輝く日産は戻ってくるのだろうか。 link
📻観た/聴いた
ジェットエンジンを観察する:わくわくしちゃうね。男の子だもの。
水中写真展2026:世界は美しい。地上でせこせこしている場合じゃない。 link
🧩感じた/感じている
この3年ほど取り組んでいるお客さん先のスタッフ育成問題、キーとなる思想は全てドラッカーが数十年前に書いておいてくれている。偉人。そして育成を真剣にやっていると、この言葉が真実だと肚の底から理解することになる。 > “内面で向き合わなかった問題は、いずれ運命として出会うことになる” by C.G. ユング
何か思い通りにならないことがあったとしても、いつもここに還ってこよう。 > “I don’t mind what happens. That is the essence of inner freedom. It is a timeless spiritual truth: release attachment to outcomes, deep inside yourself, you’ll feel good no matter what.” by Jiddu Krishnamurti
「オルカン・S&P500インデックス投資!NISA!これが正解!」の何が面白いんだろうか。
🍵関心事
ウィンブルドンが始まる。芝の上で、今年はどんなドラマが生まれるだろうか。
そういえば、米国・効率化省(DOGE)ってどうなったんだろう。政治パフォーマンスのダメなところが全部詰まっている始まり・終わりだ。 link
累積思考量がAI時代の業務パフォーマンスを決めるとして、今からいっそう積み上げ速度を高めるためには何をすべきか。累積だから積分のお話し。微分の観点で取り組もう。
Die with Zero、どこまで実践しようか。ぼーっとしてたらあっという間に60歳だ。 link
ほとんどの人は人生設計を先延ばしにしている。つまり、人生を意義あるものにするはずの経験を定年退職まで先延ばしにし、いざ定年退職を迎えると、それまで貯めてきたものを楽しむための健康もエネルギーも、場合によっては人との繋がりさえも失っていることに気づくのだ。その結果、使い果たされた多額の余剰資金と、結局実現しなかった何かを待ち続けたという漠然とした虚無感、つまり、もったいないという感覚だけが残る。
🥑活動報告
今月の請求書をほぼ発行し終えて一安心。汗かいて仕事をし、それに見合ったお金をやりとりする。活動の基礎です。
来月末までだったお仕事、8月以降もおわかり依頼がありそうです。目の前の仕事で最高成果を出すことが、最も有効な営業になる。営業とは飛び込むことでは無く、マーケティングとはAIにメールを送らせることではない。
お便りをお待ちしています。




