ハーバードからの贈り物(2013年)
この本を読んだことで、私は大学院進学を決めました。
ハーバード・ビジネス・スクールの教授たちが、授業の最後に学生へ語った人生や仕事についてのメッセージをまとめた書籍。経営戦略や会計といった専門知識ではなく、教授自身の失敗、挫折、家族、仕事上の決断などをもとにした15編の短い講話形式ですすんでいく。
中心にあるのは、「成功するにはどうすればよいか」よりも、「成功を目指すなかで、何を失ってはいけないか」という問い。勇気、誠実さ、思いやり、自分の価値観を守ることなどを通じて、リーダーシップとは能力だけでなく、その人の生き方そのものに表れると説く。仕事やキャリアの節目に、自分が何者であり、何を大切にしたかったのかを思い出すための一冊。
著者は同校卒業生のデイジー・ウェイドマン。原題は『Remember Who You Are』、2004年に刊行。日本語版は幾島幸子訳、ランダムハウス講談社/ダイヤモンド社刊。
いまでも続いているのかはわからないけれど、講義の最後にその教官なりの人生訓を伝える、という慣習は、いかにもハーバードらしいと思う。この本に掲載される15編、つまり15人の教員が扱うテーマはリーダーシップから在庫管理まで幅広いものの、テーマとの相性は別にして、どの話も心に残る。読んだ当初のお気に入りは
ヒマラヤ登山中の滑落経験から生を見つめる『転落から高みへ』
ハーバードMBA取得後の同窓会には絶対に行くな、と諭す『同窓会』
バスケ選手・監督の道が立たれたが故に数学研究者への道が開けた『今という瞬間を生きよ』
の3つ。ある程度経験を経たいま、再読して心に残るのは『ラシュモア山での問い』『まずい食事と真実』の2つ。以下は『ラシュモア山での問い』からです。
何かを達成するたびに視野は狭まり、次に何を目標にするかしか目に入らなくなる。
ある学期の成績が良ければ、もう次の学期に優等生名簿に名前が載るよう策を練りはじめる。
初めてボーナスを手にしたとたん、翌年の収入が気になりだす。
バイスプレジデントに昇進した翌日には、いつコーナーオフィス(重役用の大きな個室) に入れるかが頭から離れなくなる。
成功を求めつづけるうちにそれが中毒になり、次の目標なしにはいられなくなる、といった具合だ。自分の価値を証明するものを絶えず求めずにはいられなくなるのだ。ところがここには、個々の職業上の業績をリーダーシップと混同してしまうという落とし穴がある。
経歴や業績ばかりに気を取られているうちに、自分の周辺に絶えずある、他人にポジティブな影響をもたらす小さなチャンスが見えなくなってしまうのだ。
往々にして目に見える見返りがないため、そうしたチャンスを自分の野心に優先させることは、ますます困難になっていく。だがリーダーシップとは、野心を持つことではない。
ただ目標を達成することとも違う。
リーダーシップとは、他人にモティベーションを与えてやる気を起こさせ、チャンスを与えることである。今一度、成功という言葉の意味を考え直してほしい。高い山の上に巨大な顔が刻まれなくても、リーダーになることはできる。成功したかどうかの尺度を、いかに履歴書を磨き上げるかではなく、あなたが周囲の人びとにどんな影響を与え、その人の生活にどんな変化をもたらしたかに置くことだ。
成功という名の勲章に振り回されるのをやめ、あくまでも謙虚なリーダーでありつづけてほしい。 (kindle no.414)
職場なり家庭なり、誰か/何かに対して影響力を持つことを自覚するタイミングで読むのがおすすめです。善きリーダーたれ。



