こーべ通信:よっしゃ、全身で仕事するか。
2025年最後のお届けです。1年お疲れ様でした🍣
三宮・北野オフィスまでの徒歩通勤は、Audibleやポッドキャスト、radikoを楽しむ貴重な時間になっている。毎週火曜深夜に放送されているTBSラジオ『アルコ&ピース D.C.GARAGE』が大好きで、3年以上続いている明治コラボ・直火ローストのコーナーに毎度爆笑させられている。アーモンドチョコレートと一緒に楽しむと香ばしさが倍増する投稿が紹介されるのだけど、ここでいう”香ばしさ”は「頭がおかしい」「痛い」のようなニュアンスで、軽蔑心と哀れみが笑いに昇華される希有な体験を提供してくれる。ちょうど”嗅覚をあらわす形容詞の意味拡張”がテーマの研究をみつけたのが先週水曜日。耳鼻の水曜。
木曜。通勤路にAudibleで細谷功『有と無:見え方の違いで対立する二つの世界観』を聴く。最初2つの質問をから始まる本。「①30秒で、家の中に”ある”ものをできる限りたくさん挙げてください」次に「②30秒で、家の中に”ない”ものをできる限りたくさん挙げてください」。大半の人にとって、上げる数は前者(家にある)>後者(家にない)となる。しかし当然のことながら、実質的な数でいうと、家の中にあるのは世界中にあるもののうちの極めて限られた一部である。この「人は過度に”ある/有”を重視する」傾向が、ムリ・ムラ・ムダや不正義、意味のない問題設定や問題解決に繋がる。ちょうど支援しているチームの作業課題をどう言語化したものかと悩んでいたのだけれど、この有/無の枠組みに当てるとだいぶこざっぱりして気分が良くなった。有と無の中間状態を抜けられた瞬間が大変気持ち良い。make/createというよりform。眼と手の木曜。
金曜は朝から集中モードでつくるものがあり、ホワイトボードを真っ黒にしてなんとか仕上げきった。昼、たまった澱を雪ぐべく、コンサルファーム・CDIのポッドキャストを聴きながら散歩をする。『自由と規律: イギリスの学校生活』を出発点にする対話を聴いて、いま読んでいる『肩をすくめるアトラス 第二部 二者択一』に感じる気持ち悪さのことを考える。AIの進化が世界の問題を解決するとばかりに喧伝される頭偏重の時代に合って、腹落ち・肚決めなど、結局腹の問題だよなと思いながらラーメン屋に入った。肚金曜。
2008年に書かれた”Thinkism(思考主義)”というエッセイについて、この1週間、ずいぶんと考えてきた。12月頭、企業再生を主業にする会計士の方に「僕たちの仕事ってどうなるんですかね」と問われ、ここ3週間読んでいる『肩をすくめるアトラス』では主人公が知性の重要性を朗々と(数十頁に渡って)語り続けるのを読み、「考えるだけでは不十分」のメッセージをどう受けとめようか、日々の端っこで黙々と噛みしめている。
To be useful artificial intelligences have to be embodied in the world, and that world will often set their pace of innovations. Thinkism is not enough. Without conducting experiments, building prototypes, having failures, and engaging in reality, an intelligence can have thoughts but not results. It cannot think its way to solving the world’s problems. There won’t be instant discoveries the minute, hour, day or year a smarter-than-human AI appears. The rate of discovery will hopefully be significantly accelerated. Even better, a super AI will ask questions no human would ask. But, to take one example, it will require many generations of experiments on living organisms, not even to mention humans, before such a difficult achievement as immortality is gained.
Because thinkism doesn’t work, you can relax.
2025年、私の仕事を振りかえると、頭(:知識・専門性)のみで出した価値がほとんどないことに気づく。それは経営コンサルタントらしからぬことかもしれない。私にとってより大事なのは顧客の悩みを聴く耳であり、境界を飛び越える脚であり、おかしな兆候やふとした機会を逃さない鼻であり、道具と深く関わり合う手であり、エネルギーを生み出す肚である。
来年はどうしようか。このまま五体の流れに任せて芸人をやっていくのか。あるいは、もっと頭を大きくして理論と原則の体現者になるのか。不惑の年までまだ多少余裕がある。じっくりやっていこうと思う。何なら、耳が従うまであと20年以上あるのだ。
<お便りをお待ちしています>
💼心惹かれたもの
特別栽培米コシヒカリ・金崎さんちのお米:地元・長野県飯山市のめちゃくちゃうまい米。米不足の期間はずっと品切れで困り果てていたので買えるだけで嬉しい品です。1kg毎の真空パックもあり、オフィス常備に最適。 (link)
Macアプリ・Monocle:”Noise-cancelling for your screen(スクリーンのノイズキャンセリング)” 複数ディスプレイや画面分割をしている人はぜひ使ってみてほしいです。作業中の集中力がぐっと上がる感じがします。視界に入る情報がいかに思考分散を招いているかを実感… (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
Z世代は徐々に酒を飲み始めた:ここ数年、『ソバーキュリアス(≒すすんで酒を飲まない/ノンアルで済ます)文化が若者に広がっている!』と多くのメディアが語ってきた。しかし最近の調査によれば、Z世代・ミレニアル世代の約80%が毎週飲酒、なんならこの年末年始は「いつもより多く飲むでぇ」と宣言している。親戚からの質問攻め、プレゼント代の請求書、終わらないパーティー…年末の(なんなら毎日の)ストレスを乗り切るための特効薬は、やはりアルコールなのかもしれない。ドライ・ジャニュアリー(1月を断酒月・休刊月にすること)が徐々に浸透してきたこともあり、12月くらいは羽目を外させて、ということなのかも。私はずっと飲みます。 (NY Post, link)
気候危機による金銭負担は既に現実のもの:ワーキングペーパー「Who Bears the Burden of Climate Inaction?」より。気温上昇や自然災害の増加により、住宅保険の請求額増加、冷房費の増加、および死亡率の上昇に伴う実コストが既に発生している。米国では1世帯当たりの負担金額は年最大900ドルにも。特に西海岸の一部地域やメキシコ湾岸、フロリダ州では負担が大きく、かつ低所得世帯がより大きく負担する逆進性も問題となっている。気候変動ではなく、気候危機なんですよ。あくまで人間の視点で。地球が困っている!のように問題を矮小化してはいけない。 (NBER, link)
英国EU離脱の影響は想像よりずっと悪い:同じくNBERのワーキングペーパー”The Economic Impact of Brexit”。2016年の英国EU離脱は、2025年までに同国GDPを6~8%減少させ、その影響は時間の経過とともに徐々に蓄積してきた/いくことが示唆されている。投資は12~18%、雇用と生産性は3~4%減少と推定。企業は新たなビジネスではなくEU離脱に伴う各種の制度変化対応に忙殺され、不確実性の高まりや経営資源の浪費を招くことになった。当時、専門家の警告は「恐怖を煽っている」と批判されたが、当時の経済予測が設定した”悲観的”シナリオより被害大の経済縮小が起こっている。政治的な決断(あるいは民衆の盲目的追従)がいかに長期にわたり国家の体力を蝕むかを示す、決定的な証拠となった。 (NBER, link)
アンチエイジングとしての外国語学習:欧州27カ国・50代〜90代の8.6万人を対象とした大規模研究で、多言語話者は単一言語話者に比べ『生物学的な老化が加速するリスクが半分以下』であることが示された。過去研究でも、多言語話者は実行機能を司る脳領域・灰白質の密度が高く、アルツハイマー病の発症に対する防御効果・認知予備能があることが知られていたが、今回の研究はその範囲を健康寿命全体にまで拡張。話せる言語の数が増えるほど、老化抑制の保護効果が高まる傾向もみられている。新しい言語を学ぶことは、サプリメントを飲むよりも強力なアンチエイジングかもしれない。 (Ground Truths, link)
決断コスト『時間、集中力、オプション性』は見えづらい:些細な買い物のリサーチに疲れ果てて重要な仕事ができなくなったり、全ての選択肢を残そうとして結局何も得られなかったりするのは、決断の隠れたコスト計算に失敗しているから。どうでもいい決断は思い切ってサイコロや他人に委ねてしまったほうが人生が豊かになるのかもしれない。知的断捨離、決断トリアージは現代の必須活動。 (Joan Westenberg, link)
海運業界の歪んだインセンティブ構造とモラルハザード:2020年に日本の奄美大島沖で台風により沈没し、41名の乗組員が行方不明・死亡した家畜運搬船の悲劇を、資金の流れから再検証したルポ記事。運航会社Gulf Navigation Holdingsは、2018年にこの船を含む4隻を相場より高値で、自社の主要株主の関連会社から購入。船が沈没したことで同社は約30億円規模の保険金を受取り、焦げ付いた負債を全額返済。海運業界の闇と、企業の財務構造が孕むモラルハザードが見える。 (FREIGHT+FORTUNE, link)
“工場見学の世界”にようこそ:19世紀から現代に至るまでの歴史とその意義を語るエッセイ。フィリップ・モリスのタバコ工場やフォード向上の巨大な生産ラインは産業革命の圧倒的な力と未来を見せつける刺激的なエンターテイメントだった。しかし安全管理や企業秘密保護を理由に徐々に向上の扉は閉ざされていってしまった。著者は、高度に自動化された現場こそ若者に解放すべきだと説く。工場見学は単なる観光ではなく、製造業へ人材を惹きつける最強のリクルーティング手段になるのだ。 (Scope of Work, link)
企業変革は”人”の変革:企業という抽象的な生き物が勝手に変わることはない。組織は人の集合体であり、従業員一人ひとりの考え方やスキル、更には行動が変わらない限り、どんなに優れたテクノロジーや戦略を導入しても、真の変革は起こらない。「DXが進まない」「AI導入が形骸化している」そう語る経営陣や幹部は箱にばかり目を向けていて、実態としての中身、人を蔑ろにしているのかも知れない。人間を変え、自らあるいは他人が変わりたくなる環境を整えよう。 (The Future Does Not Fit In The Containers Of The Post, link)
自らをただの『道具』に貶めてはいけない:私たちは効率性を追求するあまり、アルゴリズムやシステムに使われるだけの存在になっていないだろうか。この記事は、AIをはじめとするテクノロジー全盛の今、私たちが無意識のうちに陥っている”道具化””機能化”の罠を指摘している。効率を求めて最適化された人生は、他人の目的のために機能するだけの部品のような人生である。私たちはもっと純粋な好奇心や創造性に身を委ね、遊ばなくてはいけない。人間独自の魂と視点で勝負しよう。 (Unorthodx Blend, link)
📙本
有と無 ―見え方の違いで対立する二つの世界観:お客さんスタッフにあるべき考え方や思考のエラーについて話すとき、細谷功さんの本をよく引用している。抽象と具体の行き来、どうしても取り払えない非対称性、人間の矛盾。たくさんメモすることがあった。最近よく読んでいるブログの『おい、類推するな』も同じ軌跡の中にある。 (Amazon, link)
極夜行:大尊敬する経営者の方から「2025年一番心にきた本」と紹介頂いた。ただひたすらに真っ暗な中を、自らの身体と世界を信じて歩き続けること。 (Amazon, link)
肩をすくめるアトラス 第二部 二者択一&第三部 AはAである:この週末、26時までかけて全編読み切りました。毀誉褒貶ある作品ですが、私は大好きでした。リアーデン、あなたは私だ。ジョン・ゴールト、あなたも私だ。次のニュースレター冒頭はこの本の感想を書きたいな。年末年始は同著者のデビュー作、1千頁超・二段組みの水源に挑みます。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
まっちそ『僕の町からプロ棋士を』:DMM子会社・ベルリング×福島県国見町で話題になった事件をモチーフに。最後7三桂、美しい決め手です。こんな手をさせるようになりたい。まっちそさんのYoutubeを見始めてから、改めて将棋勉強への意欲が高まっています。目指せアマ四段。まずは矢倉から学び直さないと。リスキリング。 link
🧩感じた/感じている
1~2人くらいでホワイトボードを使いつつ仕事をしている時間が一番好きだ。エキスパートインタビューや資料報告会も好きだけど、ホワイトボードと向き合っているときに生を感じる。やろうと思えば何でもかけるけど、物理的な終わりが必ず来る。しかし物理的な制約があるからこそ、いいアイディアが浮かんできたりもする。書いては消し、消したら一度離れて考える。ペンの太さや色に自分なりのこだわりを持ち、工夫する。Miroなら無限のキャンバスが得られる?そういうことじゃないんですよ。
嘘インタビュー、新年会でぜひやりたい。(>『自分とは違う職業になりきってインタビューにこたえると楽しい』)
腹いせ、の『いせ』ってなんだ?と調べると”居させる”の短縮らしい。八つ当たりをすれば腹が落ち着くって考えるのなかなかのクレイジーさだ。
「腹を居させる」=立った腹・怒りを“座らせて”落ち着かせる、の意味。「腹いせ」は原義では「怒りを落ち着かせる行為」であるものの、現実の用法は「八つ当たり」「仕返し」となっている。
🍵関心事
中央銀行はこれから何と戦うのか。>”中央銀行はもはやインフレと戦っていない。インフレは問題ではない! インフレこそ解決策なのである” (『インフレの主な敗者は中産階級、年金生活者、サラリーマン』)
問題があるのは私たちと歴史、どちらなのだろう。>”我々が歴史から学ぶことは、人々が歴史から学ばないということだ“(ウォーレン・バフェット)
来年の年末年始はどこでどんな風に過ごしているだろうか。そのときの私は、いまよりも優れた人間になれているだろうか。少しでもまともになっていきたい。
🥑活動報告
12月発行の請求書は先週出し終え、入金もすべて確認し、無事に仕事を納めて年を越せそうです。ずいぶんご無沙汰の神戸地銀と半公金融機関は30日まで営業しているはずなのでせっつかなきゃ。やるべきことはたくさんあって、今週は(たぶん)毎日在オフィス。前進あるのみ。がんばります。
📩お便り
分割キーボードにNape Proが良さそうです。私は背中のハリを解消するのに分割キーボードが最適でした。 (徳さん)
全然知らない製品でした!ご紹介いただき嬉しいです。キーボード合間にトラックボール、なるほど。手の動きが少なくなっていいですね。さっそく注文しました。来年の楽しみがさっそく一つ増えました、ありがとうございます:-)
<お便りをお待ちしています>



