こーべ通信:よっしゃ、詩を読むか。
ブルッキングス研究所は"Is Iran on the brink of change?(イランに変化の際にいるのか)"と問う。
2023年夏、イランを旅した。中学や高校で多少なりとも世界史を勉強した人なら、ペルシャに憧れる気持ちを理解してくれると思う。人類の歴史はメソポタミアに始まり、ユダヤ教やキリスト教に繋がる思想核を生み出したゾロアスター教はこの地で産まれ、アケメネス朝ペルシャは人類史上はじめて多民族・多宗教・多言語を束ね、地下水路や駅伝制・通信ネットワーク、基軸通貨前提の貨幣制度などの社会制度を発明した偉大な国家である。芸術の面でも多くを生み出した。あらゆるロマンがペルシャ、つまりイランに詰まっている。大使館でもらったビザ片手に、渋旅先専門旅行会社がつけてくれたガイドと一緒に巡るイランは本当に美しかった。いくつかの国に行ったけど、圧倒的にNo.1の旅だった。









一方で、当たり前のことなのだけれど、実際に訪れてみるとイランはただの、普通の国だった。ショッピングセンターでお菓子を買ってほしいとゴネる子ども、なだめる母親、スマホに夢中の父親がいた。気だるそうにファーストフード屋台を任されている兄ちゃんが居た。スーツ姿で携帯に怒鳴っているビジネスマンがいた。道中、砂漠の中を6時間車移動することがあったのだけど、立ち寄ったガソリンスタンドの光景が忘れられない。トラックドライバーがほとんどで、皆どこからかここにたどり着き、給油をし、水やお菓子を買ってまた目的地に向かうのだ。その目や振る舞いは、高速道路のSA・PAで出会う日本人ドライバーと何ら変わらなかった。
イランはいま、深刻な水不足に見舞われている。ここ5-6年干ばつが続き、首都・テヘランの一部では水が配給制になり、夜間断水が実施されるなど、過去50年で最も厳しいと言う人もいる。背景には水効率の悪い農業や地下水過剰摂取による帯水層の枯渇、隣接するアフガニスタンとの河川水利用を巡る緊張があるとされる。水不足は電力不足につながり(火力・原子力発電は大量の水を必要とする)、水・電力がなければ経済は回らない。生活も苦しくなる。その一つの帰結が、いまも続く民衆の抗議活動であり、政府による弾圧であり、数千名の死者である。
イスファハーンで訪れたサフラン屋のお兄ちゃんと仲良くなった。米国の大学で学び、3年ほど前に帰国して家業を継いだのだという。「日本で売られているサフランは適当に色を付けただけのやつ。うちのは違うよ。品質毎に6レベルあって、最高ランクのモノは鬱なんかに効く医療用なんだ。これをレース前に食べた馬はめちゃくちゃ速く走るよ」と立て板に水説明をされ、最高級品を10g分買った。いまもオフィスに置いてある。彼とはインスタのアカウントも交換した。時々投稿を見ていたのだけど、政権のネット封鎖が厳しくなったいま、更新はない。元気だろうか。同じくイランで買ってきた茶葉にたっぷりの砂糖をいれて飲みながら、この文章を書いている。
イランはルーミー、ハーフィズなど、多くの詩人を生み出し続ける『詩の先進国』である。13世紀の著名な詩人サアディーは、アフリカや中国などを旅し、戦いで荒廃した土地や荒んだ人身をみて、NY国連ビル内の碑文にも記される詩を残した。
アダムの子である人間は
同じ土から創られた
ひとつの体の手であり足である一本の足が痛むと
手も、ほかの足も、安穏としてはいられない他人の悩みに目を向けない人は
人間と呼ぶに値しない (石谷尚子訳) link
いろんな観点から難しいことはわかるのだけれど、できる限り多くの人に、イランを訪れてほしいと思う。もしそれが難しいのなら、最低でも、イランの詩を読んでほしい。磨かれた美しさがそこにある。
💼素敵
こうべおうえん(特別小規模貸付):神戸市が実施している、従業員20名以下の零細企業が借り入れするときの保証料を補助する制度。昨年7月から半額補助→全額補助、上限金額が400万→1,000万と引き上がりぐっと魅力が増しました。神戸よありがとう。 (link)
日清中華 ビャンビャン麺:おいしそうの極地。まとめ買いしたので、今週どこかのランチはこれにします。 (link)
✏️読
生成AIという他人:雑に依頼したら雑に返ってくる。人間もAIも同じ。期待も失望もそこそこに、使えるモノは使うという当たり前の話に返ってくる。人間よ大地に還ろう、ということなのかもしれない。 link
マネジメントから見れば、人間の部下もAIも同じ信頼のできない他人で、成果を出すためには目的を明確にして、進捗を確認してやらなきゃいけない。その上で、人間とAIのどちらが優秀で、どちらがサボリが少なくて、どちらが安いかという話である。マネジメントは完璧なAIを求めておらず、働きもしないのに文句ばかり言って面倒のかかる人間より、少しだけ成果を出してくれればいいわけだ。
30代の人生はよりストレスフルに:晩婚化や高齢化、核家族化などの影響を受け、30代半ばから40代の”確立された成人期”の人々に、育児、キャリアの絶頂、親の介護という人生の重大マイルストンが一度に押し寄せる”マイルストーンの渋滞/人生のラッシュアワー”現象が起きている。その年代にある人のパフォーマンス低下を“個人の気合い”と片付けるのは簡単だけど、休暇・ケア支援を上手く会社制度化できるなら競争力の源泉にもなるかもしれない。 link
1日は長いが10年は短い:↑を受けてこちら。10年前、サムアルトマンが30歳で書いた、人生のアドバイス36項目。「複利は魔法」「不平を言う人とつるまない」「家族を優先する」など。派手な目標より、関係と健康がものをいうのが10年の戦い。結局、長期のアウトプットはそこに乗っかってくるのだから。 link
ラスベガスは欲張りすぎたのかも:統計家として有名なネイト・シルバーの記事。ラスベガスがF1やスーパーボウルなどのビッグイベントを誘致したことで、入場料はもちろんホテル代などが一気に高騰し、ラスベガス=安く朝まで楽しめる街というイメージは過去のものに。各社がデータ駆動の短期利益最大化を推し進めたことで、顧客の豊かさ感/abundanceが破壊されてしまい、結果として不公平感が顧客に蓄積。最適化が進むほど“人間が感じる公平感”がボトルネックになるよい事例だ。 link
廃空港を都市公園に:ベルリンのテンペルホーフ空港跡地。使われなくなった滑走路や飛行場を都市の公園や庭園へと再利用することで、都市のヒートアイランド現象の緩和や、市民の自由な公共空間としての価値を新たに生み出している。巨大で無機質なコンクリートの塊が、市民の憩いの場や生物多様性の拠点へと生まれ変わる可能性を示唆している。グレーからグリーンへ。 link
出遅れたからこそ愛される日本:外国人から見た日本の住みやすさや安心感が、世界的潮流に”うまく”乗り遅れたことによるデジタル化欠如によって守られているというユニークな批評。2000年代で時が止まったような平穏さ、世界トップクラスの安全性、まだまだ安定した物価、そしてSNS狂騒から一歩引いた独特の文化が、日本の都市が外国人にとっての”デトックス・スポット”たり得ている理由でもある。 link
人間は30以上の感覚で生きている:人間に五感しかないなんて古い話で、体の傾きや筋肉の伸び、血液の酸性度まで脳は完治している。30以上の感覚(平衡感覚/equilibrioception、温度感覚/thermoception、自己受容感覚/proprioceptionなど)が複雑に絡み合い、私たちの世界観はできあがっている。 link
守人を讃えよ:現代のテック文化は”新しさ・斬新さ”ばかりを喧伝し、その背後にある既存インフラを守る地味な努力を軽視していないだろうか。電力や水道のようなインフラはもちろん、基盤技術やOSSで開発されたようなソフトウェアまで、実は一握りの「名前も知らない誰か」の献身的なメンテナンスによって辛うじて保たれている。 link
📙本
文章は、「転」。:近藤康太郎さんの近著。「起」と「承」は事実を描写し整理すればいいのだけれど、そこで自分が何を感じたのかを丁寧に感じ、描写しなければ良い「転」は生まれない。仕事における”仮説”や”ストーリー”も一緒ですね。 link
空気の研究:次のポッドキャスト課題。「いきの構造」に続けて読んでおり、この本で言う”水を差す”はある種の野暮ったさであり、空気とはいきとされる何かが醸すものだとも。感想を語り合うのが楽しみ。 link
大地:そろそろ第二部へ。大陸のダイナミズムを感じる。これは第四部まで一気読みの気配。時間の洗礼を受けてきた作品の”ほんまもん”率よ。 link
🧩感
分割キーボードに体が馴染んできて、ラップトップのキーボードに窮屈さを感じつつある。使い始めた初日は「こんなもん使えるか!返品や!」だったのに。人間の慣れというものは恐ろしい。と、と同時に身体ってすごい。リプログラミングへの柔軟性よ。
“民主”を名乗るけど民主的ではなく、”中道”を名乗るけど中道ではない。政党って面白いですね。賢い人が集まっているんだと思うんだけど、どういう物事の進み方に従うとそうなるんだろうか。
時の流れに身を任せ。人の流れに身を任せ。時と人の流れにたゆたえども沈まず。 link
『人生は、時間・空間的に遠い出来事、さらには他人の意志によって形作られ、自身の決断はほとんど・全く関係ない』ということに、長生きしている人ならば同意してくれると思う。
人生で直面する数々のことは、時に人生に必要な後押しであり、時に立派な計画を粉々に打ち砕く。それらは地底の流れ、あるいはプレートの小さな動きのように、多くのところが隠されている。そしてついに地震がやってくると、私たちは自分を落ち着かせるために学んだ言葉、偶然、まぐれ、そして時には運命を口にするのだ。 (Juan Gabriel Vásquez)こういう表現ができるプロでありたい。
“The universe is not only stranger than we suppose, but stranger than we can suppose.” (J.B.S. Haldane)
🍵関心
神戸に長く住む方々の阪神淡路大震災の記憶は、どう街に馴染んでいくのか。関西にいらっしゃる皆さま30日金曜からのルミナリエにぜひお越しください。
防衛省や軍需産業に従事されている方、言えないことがめちゃくちゃあると思うのだけれど、週末や趣味活動時にどう人格を整理しているのだろう。打ち上げで盛り上がってぽろっと「最近米国がさ〜」とこぼすと大問題になるのだが、それは自制心でなんとかなるものなのだろうか。
🥑仕事
長く働いてくれていたスタッフさん2名が、良いご縁があったとのことで3月末に退職されることに。おめでたい。いろんな人・会社に選んでもらえるよういっそうがんばろう。
1月下旬〜2月上旬までが新事業向け資金調達のがんばりどころ。たまには汗をかきましょう。
お便りをお待ちしています。



