こーべ通信:よっしゃ、拙速でいこうか。
ぐずぐずせず、ぱっぱと。
先日、休日の大病院で、救急外来受付前のソファに1時間ほど座っていた。自然と耳に入ってくる会話から、ここがいろんな生、あるいは死の行き交う場所だと気づく。
極度の腹痛に襲われタクシーで来院するもけろっと痛みがなくなったんですと訴える革ジャン中年男性(尿路結石症だろうか?)。強い頭痛と止まらない咳で受診した息子が共通テストの再受験ができるかどうかを気に揉む家族(この日は二日目だった)。救急車到着から10分後に響き渡る新生児の泣き声。ストレッチャーを押し奥に入っていくネクタイ・黒スーツ姿の男性2人。
医療の現場は雑踏からずいぶん遠くのところに集中して置かれるようになった。街場のクリニックは重要性・緊急性の選別や処方・治療管理が主たるお仕事で、生き死にに関わることは商業地から距離のある、病院の奥地で静かに淡々と行われている。病院は、街から生と死を隔離するための巨大なバッファの向こう側にある。
小説『シャンタラム』では、豪州の刑務所から脱獄した主人公がインドで藪医者として活動する。もちろん無資格だ。ちょっとした救急キットと薬を手に持ち、一般人に毛の生えた程度の知識でなんとか住民の生を繋ごうと奮闘するのだ。生と死が濃密に入り交じる1980年代のムンバイのスラムで。
私たちは日々、死を少しでも遠ざけるべく生きている。現代の街はその結果だ。仕事で金を稼ぎ、衣食住を充実させ、健康に気を遣い、趣味に没頭することで老病死の存在を脳から追い出そうと必死になる。しかし病院のソファに座っていると、老いも病も死もそのすべてが確実に万人に訪れ、人によっては突然の訪問となることを痛感する。
自然人と違って法人、会社は永続性、ゴーイングコンサーンの原則がその前提にある。自然死は存在せず、経営者が諦めず、必要な支払いが続く限りにおいて、法人は生き続ける。だから、「○年後にこれをしよう」「●をするためにはまず◎から」のように、時間軸を長く考えるのがよいのだろう。しかし個人は違う。命は有限で、終わりは突然訪れる。拙速は、法人にとって悪であり、個人にとっては善なのだ。自身に限った意志決定なら、計画よりも速度である。無慈悲な暴風にさらわれる前に、さっさとはじめるべきなのだ。
お便りをお待ちしています。
💼素敵
NeatoCal:1枚印刷可能な年間カレンダー。シンプル、印刷してオフィスの壁に貼っています。木曜日のアルファベット一文字表記がRだと初めて知りました。link
Flo Monitor Arm:可動域の高いモニターアームをずっと探しています。高いものは10万以上するのだけれど、ハーマン・ミラーが15年ぶりに刷新したこれが最もバランスが良さそう。 link
✏️記事
エネルギーは資源から”技術”になった:太陽光や蓄電池がムーア法則・学習曲線に乗りコストが劇的に下がることで、あらゆる産業構造の土台を変えつつある。「コモディティとして市場価格に左右されるエネルギー」という従来の捉え方ではなく、技術として指数関数的に進化するものとして考えてみると、かつてのソフトウェアのように世界を飲み込んでいくものとして考えられるかもしれない。それを全力でやっているのが中国。 link
私たちを”暖かく”するすべての仕事:先週とりあげた”守人を讃えよ”と同じトーン。私たちが当たり前に享受している快適さやライフラインを維持するために、どれほど多くの目に見えない労働とインフラが存在しているか。地下を走るパイプ、凍える中で働く技術者、全ての人とモノに感謝を捧げます。ありがてぇ。 link
ドーパミンはじっくり出すべき:SNSやショート動画、通知対応や即時決済のような短絡的な快感をもたらす”ファスト快楽源”はドーパミンの過剰供給を生み、組織・個人の注意資源を浪費している。読書や運動など、時間がかかるが深い充足感を得られる”スロー・ドーパミン”を信頼し、あえて時間のかかる快楽を選ぶことで、壊れた神経系をリセットし人生の充足感を取り戻すことができるのではないか。 link
寿命を延ばすなら運動・食事より”睡眠”:オレゴン健康科学大学(OHSU)の研究者らが2019〜2025年の全米データを分析。喫煙を除くと、食事や社会関係よりも睡眠が寿命と強い相関を持ったとのこと。2026年しっかり寝ていきましょう。 link
悪徳としての読書:役立つ本ばかり読むことが読解力向上に繋がるわけではない。もっと個人の情熱や文学的な繋がりに根ざした、何ならタバコやアルコールと同じ感情で向き合いたくなるような読書体験を積み重ねよう。 link
美しさの危機:AIが”完全だがありきたりな(平均的)美”を量産する時代に、不完全でも魂を揺さぶる本来の美しさがどこで求められるのか。畏敬を感じるほどのものを探しに行こう。 link
『虚栄指標』を追わないように:ある指標が目標になると、それは良い指標ではなくなる」というグッドハートの法則。数字を追うあまり本質を忘れる、誰しもあるあるです。改めて、あなたが大事にしているSNS指標や、職場で設定されているKPI/KGIの意義を問い直してみましょう。 link
おい、類推するな:考えること、これに尽きる。>”類推しろ。でも、類推を疑え。類推で入って、具体で確かめろ。そして、間違っていたら、断つ勇気を持て” link
📙本
大地(二):土・土地への執着から始まったお話しが、学者・商人・軍人の息子たちに代表される第2世代に引き継がれた。優柔不断で見栄っ張りな長男、儀礼・宗教にはまるその妻、金儲け大好き次男、肝っ玉母さんみ溢れるその妻、軍人としてのし上がる三男。20世紀初頭前後の中国が、ここに登場する各キャラクター個性が混ざり合い発展を目指していたということなのだろう。 link
空気の研究:私のコンサルタント特性の大半は、空気感知・醸成能力に由来するのかも知れない。 link
われわれは常に、論理的判断の基準と、空気的判断の基準という、一種の二重基準のもとに生きているわけである。そしてわれわれが通常口にするのは論理的判断の基準だが、本当の決断の基本となっているのは、「空気が許さない」という空気的判断の基準である。 (kindle no.304)
幸せになる勇気:相手の尊重、運命の否定、自分を超えた存在の受容と肯定。 link
📻観/聴
Benjamin Wolf:ドイツ人写真家。タイルをぱっと見た時点で、惹きつける力がずば抜けていることがわかる。 link
🧩感
40歳・ラストシーズンのワウリンカ。38歳で第4シードのジョコビッチ。シャポバロフをストレートで破った37歳のチリッチ。テニス全豪OPでみな3回戦/ベスト32に進出。トップ層の若年化が進む現代のテニス界でこうなのだから、私もおっさんを言い訳にせず、やらなあかん。
シャンタラム、再読に気合いが必要な合計1,800頁。
私の人生の物語は長く、込み入っている。私はヘロインの中に理想を見失った革命家であり、犯罪の中に誠実さをなくした哲学者であり、重警備の刑務所の中で魂を消滅させた詩人だ。さらに、ふたつの看視塔にはさまれた正面の壁を乗り越え、刑務所を脱獄したことで、わが国の最重要の指名手配犯にもなった。そのあとは幸運を道づれに逃げ、インドへ飛んだ。インドではボンベイ・マフィアの一員になり、銃の密売人として、密輸業者として、偽造者とした働いた。その結果、三つの大陸で投獄され、殴られ、刺され、飢えに苦しめられることになる。戦争にも行き、敵の銃に向かって走り、そして、生き残った。まわりでは仲間が次々と死んでいったが、その大半が私などよりはるかにすぐれた男たちだった。何かの過ちで人生を粉々に砕かれ、他人の憎しみや愛や無関心が生み出す運命のいたずらに、その人生を吹き飛ばされたすぐれた男たちだった。私はそんな彼らを埋葬した。多すぎるほど埋葬した。埋葬しおえると、彼らの人生と物語が失われたことを嘆き、彼らの物語を私自身の人生に加えた。
🍵関心
コスパだタイパだと皆言うのだけれど、分母の費用・時間について話すばかりで、分子の”パフォーマンス”側について語る人が少ないのはどういうわけだろう。
🥑仕事
テニス事業用のインスタアカウントをつくりました。フォローしてね。 link/instagram
アカウント・リンク先にあるECは目下Shopifyで制作中。たっぷり在庫を伴った本格販売は春開始目標。在庫管理や発送オペレーションも考えなくちゃ。楽しい。
設備資金・仕入資金として金融機関2つに融資申込み。久しぶりに事業計画Excelをつくり当社の順調さを知りました。
💌お便りコーナー
いつも楽しみに拝見しております。驚異的なインプット量であり、お忙しい中どんな時間の使い方をしているのか、大変興味があります。いつか取り上げていただけると嬉しいです! (ぴーじゃさん)
朝、オフィスについたらまず米を研ぎ炊飯予約、簡単な掃除をしてからコーヒーとお茶を入れます。その後30分ほどニュースレターや新聞み、仕事を始め、会議や手元作業が早めに終わったら気になる記事・動画に目を通したりしています。日が落ちてからはあまりPC作業や画面読書をしないように。正直、インプット量自体は十人並だと思います。みなさんも1日に読んだもの・触れたものを書き出してみると、意外とたくさんあります。私のも、たぶんそれくらいです。
お便りをお待ちしています。






