こーべ通信:よっしゃ、たくさん負けるか。
打席に立たないと空振りは出来ない。シュートを打たないと外すことも出来ない。
昨月22日に将棋の加藤一二三先生が逝去された。神武以来の天才と呼ばれ、名人を含むタイトルを8期獲得し通算勝利数は歴代4位。しかし、先生が持つ記録のなかで、他の人が及ばないのは”最多敗”記録である。プロとして通算1,180敗。60年に及ぶ現役生活、毎年20敗近くしていたことになる。たくさん負けを重ねることの何がそんなにすごいのか。ただ弱いだけではなかったのか。
将棋は興行である。ファンは強い棋士同士の対局に集まり、盛り上がり道中のふるい落とし過程はひっそりと行われ、敗者は静かに去っていく。多くの棋戦では、予選初期で負けたらその年はもう終わりである。ベテラン棋士になると、年間対局数が15局程度の人も出てくる。つまり出来ても年15敗までだ。年度対局数記録で最多89局を指した2000年の羽生善治先生は同年、21敗している。たくさん負ける機会をもらうためには、まずたくさん勝たなくてはいけないのがプロの世界。負けは積み上げた勝利の証明でもあるのだ。
そして加藤先生が特徴的なのは、その圧倒的な現役期間である。14歳で中学生プロ棋士となり、77歳で引退。多くの棋士が60歳前後で引退を決める中、全棋戦にルール上出られなくなるまで指し続けたその胆力。将棋は運のないゲームである。負けることの責任を誰かやどこかに押しつけることは出来ない。負けたのはすべて自分のため。その事実を60年以上引受続け、向上し続けたからこその1,180敗である。たくさん負けられる人は、自分を諦めない人である。自分を諦めない人の強さには粘りがある。14歳でプロ棋士となった天才・加藤先生が初めて名人位を獲得したのは、42歳のことである。
ミハイル・ククシュキンというテニス選手がいる。1987年・ソ連生まれ。2012年に世界のトップ50に入り、自己最高位は2019年の39位である。生涯獲得賞金は750万ドル超。厳しい経済環境のために国籍まで変えた(露→カザフスタン)彼にとって、十分すぎる成績と金銭リターンだと思う。しかし彼はまだ現役バリバリで試合に出続けている。世界ランキングは250位を下回り、主戦場はグランドスラムとはずいぶん距離のある、若手ばかりのチャレンジャー・下部大会を中心にである。ツアーレベルの勝敗は175勝239敗。彼と同い年で先週全豪決勝まで行ったノヴァク・ジョコビッチは1,163勝233敗。ジョコビッチはまさに生きる伝説なのだけど、私はククシュキンこそがその言葉に値すると思う。負けても勝負の場に戻り続けること。勝ちより負けが目立つようになっても簡単に「引き際」を語らないこと。大人になるにつれ、その偉大さが心に染みるようになってくる。
今日も仕事を続けよう。負けに怯まず、責任を引き受け、場に戻ろう。負けから学び、ひたむきに前進し、若手の挑戦を受け続けよう。加藤先生にとっての藤井先生、ジョコビッチにとってのアルカラス。いつか新たな才能が直接引導を渡しにくるその日まで、現役として立ち続けよう。
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🥑素敵
美観にすぐれた207ブランド:家具やファッションから文房具やメカニカルキーボードまで。掲載製品がどれも魅力的。海外製品やっぱりお高いね… link
✏️読
Nature誌はいかに権威ある論文誌になったのか:1869年の創刊当初はハトに関する論評などを掲載するむちゃくちゃカジュアルな定期刊行物だった。しかしユダヤ人科学者への支援や生物科学分野の有力研究者とのネットワーク構築により1万以上の科学誌競争を勝ち抜き、旗艦誌とサテライト誌の区分などでゴタゴタはあったものの、今日のブランドを築いた。どんな成功の背景にも、人物がいるんだなぁを実感する。 link
スポーツ領域での成功を左右する過小評価変数『運』:指導者のレベルが上がり、科学トレーニングや食事管理などが浸透したこともあって、ジュニアレベルから競技者の実力が均衡・均質化し、むしろ勝敗を分ける要因として運の重要性がかつてより高まっている。「実力が均衡するほど運が重要になる」という”スキルのパラドックス”は、目先の練習や試合に汲々としがちな本人・親御さんの心を安らげるものでもあるかもしれない。 link
DNAを切断することなく遺伝子治療を可能にするCRISPR技術:UNSWとセント・ジュード小児研究病院の研究チームが開発した技術は、DNAに付着したメチル基を酵素で取り除くことで休止状態の遺伝子を再活性化させる。化学的タグの除去により遺伝子がオンになり、再付着でオフになることが示され、メチル基が直接遺伝子を制御していることを証明。意図しない変異やガン化のリスクをおさえることが可能にもなった。まずは鎌状赤血球症への応用が期待されている。 link
たった一晩の睡眠から130 種類の病気を予測:スタンフォード大などが主導しNature Medicine誌に掲載された研究。6.5万人以上から得られた58.5万時間以上の多角的睡眠ポリグラフデータを用いて訓練された世界初の睡眠基盤モデル・SleepFMは、1晩分のデータで認知症や心筋梗塞、乳がん・前立腺がんなど130種類の疾患を予測の一致指数(C-Index)0.75以上の高精度で予測可能。従来の教師あり学習モデルや、年齢・性別・BMIなどの人口統計データのみを用いたモデルを5-17%上回るパフォーマンスを達成。 link
エネルギー技術がいま世界で注目を浴びるのはなぜか:石油やガスのような抽出・燃焼型のエネルギーは、独裁者の気分や市場の気まぐれに価格や供給量が左右されるコモディティだった。しかし太陽光や風力、蓄電池は製造の習熟度に応じてコストが指数関数的に下がるテクノロジーであり、これらが社会を席巻しつつある。太陽光パネルがベニヤ板並みの安さになり、蓄電池が単なるデバイスから社会インフラへと進化する未来は意外と近い。夏の余剰エネルギーでAI学習などの高負荷処理を行う”季節性の回帰”といった新しい生活様式も実現するかもしれない。 link
積ん読のあるべき姿:Design Within Reachのヒット商品・Story Bookcaseは本を積むと「それ自体が消えて見える」棚。本を垂直に高く積み上げるスタイルは、完璧に整頓された図書館のような美しさというより、読書や思考が現在進行形であることを示唆するインテリアとして人気を博している。スヌーピーの名言集の隣に哲学書や詩集を並べる”ハイ&ロー”整理も魅力的。 link
Googleでの14年間で学んだ21の教訓:賢いコードより明快なコードを書くこと。組織でのインパクトはコードではなく人が主導すること。新しい技術の採用を”イノベーション・トークン”という予算として管理すること。正しさよりも合意を優先すること。コミュニケーションは賢くみえることよりも明確さを優先すること。生き残る人は常に良い教訓を伝えてくれる。 link
“熱力学第二法則”エントロピーで考える人生:物理学の熱力学第二法則は、「すべては崩壊し無秩序にむかう」という。その流れに逆らって秩序を見出そうとする私たちは生に意味を求め、「自分が重要である」ことを求める本能(Mattering Instinct)を離そうとしない。これは宇宙の真理に対する抵抗であるという。記事の中では、過酷な状況下でも「素晴らしい人生だった」と語った哲学者ウィトゲンシュタインや、ゴミ拾いをしながら30人以上の捨て子を育てたLou Xiaoyingの例として上げられている。彼らが快楽的な意味で幸福だったわけではないが、圧倒的に反エントロピー的(愛と秩序の希求)であり、それ故に深い意味と輝きを持つ。 link
成功の裏にあるのは失敗か?実験思考のすすめ:「成功か失敗か」という枠組み自体が、私たちの創造性を殺している。科学者が予想外の結果を失敗ではなくデータと呼ぶように、これは上手くいくだろうか?という問いを捨て、「これを試したら、現実はどう反応するだろうか?」と問い直すことを推奨する。リチャード・ファインマンが説いた「発見の喜び」には、仮説が間違っていた時の発見も含まれていたのだ。 link
📙本
大地(三):話しの舞台が都市、そして海外に。いっそう面白い。 link
アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉:あらゆる個人は目的駆動型で生きている。その目的を本人が自覚していることはほとんどない。 link
今夜、すべてのバーで:「アルコール好きが依存症になることは少ない。アルコールを日常をやり過ごす道具と考えている人が依存症になる」なるほど。 link
📻観&聴
全米エアロビ選手権(1989年):歴史を感じる映像。動きのキレがすごい。 link
中国のグリーンエネルギー移行:百聞は一見にしかず。いつか西都視察とあわせて、エネルギーの現場を直接観にいきたい。 link







🧩感
友人や知人の何名かが就職活動(a.k.a 衆院選)を成功裏に終えたようでよかったです。みんな、いよいよ本丸の仕事、がんばってください。
先週人生初の人間ドックに行ってきました。筋量が相応にあるようで、178cmにして適切体重が81kgですって。肝臓の数値がイマイチ、食生活に気をつけます。
次に旅する先は南ア・ケープタウンとパラグアイが第一候補。来年か再来年にも。
🍵関心
来週はバンコク出張。現代美術館とスシローに行くことは決めているのだけれど、他に脚を伸ばすべき場所はどこか。タイでも昨日下院議員選挙が行われて、事後のドタバタがないと良いのだけれど。
選挙を受けて、今日から経済と対中関係がどう動いていくか。まずは株式市場がどう反応するかですね。ここまでの自民大勝を織り込んでいたかどうか。
💼仕事
テニスのハードコートを整備すべく工事業者さんに発注書をおくりました。どかっと投資することが正式に決まってから、コンサル仕事の問合せもなぜか増えています。たくさん稼いで、たくさん有意義なことをしよう。
お便りをお待ちしています。




