こーべ通信:矛盾に溢れた世界を力強く生きる
3月も後半です。花粉症や生活変化のストレスで体調を崩す人が増えます。ご自愛ください。
おはようございます。これから6時間の運転に飛び出そうとしている田中志です。昨日ガソリンスタンドで満タン給油をし、支払い明細を見てびっくりしました。初心者マークつきの急ハンドル路線変更カーも増加中。燃費最優先の安全運転でいって参ります。
卒業式シーズンです。神戸の街を歩いていると、艶やかな袴姿の女性や、着慣れていないスーツに身を包んだ晴れやかな表情の男の子をたくさん見かけました。若人の溢れるエネルギーが眩しい季節。私自身の卒業式の思い出ですが、大学院卒業式後、国立(くにたち)での生活も残りわずかだし思い残すことがないように!と名物すた丼屋に行き、ニンニクで溢れたどんぶり飯を食べたら盛大にお腹を壊したことです。卒業生の皆さん、体をお大事に。お酒もほどほどにしようね。。
ニュースレターの感想や、皆さんのロングドライブ、卒業式の思い出なんかも教えてください。お便りをお待ちしています。
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35歳をいくつか過ぎて改めて実感していることが2つあります。
明確な行動・思考指針を持っておくと仕事も生活も楽になる
その行動・思考指針の根底には現実の矛盾や不条理、パラドックスを織り込んでおくべき
今日は、私自身参考になったいくつかのものを並べてご紹介です。ご自身の為にももちろんですが、上司や同僚の「なんかこの人の行動/発言おかしいぞ?」の視点にも使えるはず。職場、一部プライベートで、こんなことあるよなー、も書いておきました。田中の実体験です。
指針づくりの参考になった/なっている概念基盤5選
サガンの基準:並外れた主張には並外れた証拠が必要
→「この技術は市場を一変させる」と言い切る人がいる。資料は美しく言葉遣いも巧みだが数字が何もない。無視しよう。ヒュームのギロチン:「〜すべき/であるべき」を含む主張は、事実のみから推論することはできない
→「売上が落ちている」は事実だが「だから値下げすべき/広告露出を増やすべき」は飛躍。その間を埋めている発話者の価値観に目を向けようアルダーの剃刀:観察や実験で決着がつかないなら議論する価値はゼロ
→「うちの業界・会社・チームは特殊だからこの方法は適用できない」。検証しようのない主張に会議時間の3割が消えていく。ヒッチェンズの剃刀:証拠がなくても主張できることは証拠がなくても否定できる
→このUIイマイチ!の主張根拠がその人の主観。この新規事業は上手くいく気がしない!の役員判断の根っこにあるのは感想のみ。無益な空中戦。チャトンのアンチレイザー:物事に関する肯定的な命題を検証するのに3つの物事だけでは不十分な場合、4つ目を加えなければならない
→「市場の成長性」「自社技術との親和性」「既存企業の収益率」を理由に新規事業提案を行ったが否決。3要素再検証よりも組織余力など別要素から考えること。
指針づくりの前提にした人間・社会の不条理・不合理たち7選
ソロモンのパラドックス:他人の問題には冷静、自分の問題では判断力が落ちる
→後輩が転職を迷っていたら「挑戦しなよ」と即答できる。自分の転職となると、3ヶ月リクナビ・マイナビを見続けるだけになる。選択のパラドックス:選択肢が多いほど判断が遠のく
→候補が2社なら翌日に決まる。5社に増やした途端、比較表の列が増え、誰も決裁印を押さなくなる。バックファイア効果:正論を突きつけるほど態度が硬くなる
→根回しなし、数字を並べて「この事業は撤退すべきです」と事業部長に伝える。翌週の会議、反論用の資料がドンとテーブルに積まれている。社会的直感主義モデル:道徳判断は直感が先、論理は後付け
→提案の良し悪しは、表紙をめくった3秒で決まっている。残りの59分は、その直感を正当化する理屈を探す時間動機づけ面接法:質問の方が人を動かす
→そんな彼氏別れなよ!よりも、彼氏にされて嫌だったことは?のほうが効くコア硬直性:強みが盲点を作る
→技術力で勝ってきた会社が、顧客の声を「技術的に正しくない」と退ける。受注が減り始めるも営業が悪いと責任転嫁。〆切効果:時間を区切る方が成果が出る
→報告書の期限を2週間にすると2週間かかる。「明後日の朝まで」にすると、不思議と間に合う。逡巡が物事を悪くしている
人間は難しい。だから社会も難しい。それでも負けずに前をむいてやっていきましょう。
🥑素敵
カップラーメン:麺がうまい醤油らぁ麺:エースコックから発売の新作。タイトルに偽りなしの麺の巧さ。セブンイレブンやお近くのスーパーで買えるはずです。 link
✏️読
米国人の26%が異人種パートナーを持つ:ブルッキングス研究所とGallup社の調査が描く米国は、メディアの”分断”物語とはずいぶん異なる。人口の26%が異人種との恋愛関係にあり、23%が異なる人種の子どもと暮らしている。異人種の親を持つと答えた割合は11%で、世代を追うごとにこの数字は加速。日常の接触面では、職場・学校・地域で人種を越えた関わりは想像以上に広い。だが居住地の分離、職業の偏りといった構造的な格差は依然として深く、広い地域で残っている。価値観と制度のあいだに横たわる断層。すべてを時間が解決してくれるのだろうか。 link
GPS妨害が海運崩壊に繋がっている:イラン攻撃開始から24時間で、中東の海域で1,100隻以上の商船が自船の位置を見失った。ロイズの記録では3月3日までに1,735件のGPS干渉事案が655隻の運行に支障を与え、その後1日あたりの問題発生件数は350件から672件へ倍増している。妨害を受けた航行装置は、船の位置を空港や原子力発電所、なんならイラン国土のど真ん中だよと報告してくる。世界の石油・ガス輸出の20%が通過するホルムズ海峡の交通が停止しているのは保険会社や被破壊リスクがあるからだが、混在海域でのGPS無力化の影響も相当にある。GPSは無料の公共財として扱われてきたが、その信頼性の源泉は軍事均衡にすぎない。不可視の無料インフラほど、武器化された瞬間のインパクトは大きい。 link
トランプ政権と動物保護の構造的親和性:NIHが数十年運営されていたビーグル実験施設を閉鎖。FDAは動物実験要件を厳格化しており、主要閣僚は連邦機関の動物実験撤廃を推進している。著者・ダニエルエンバーが指摘する構造は「右翼ナショナリズムと動物保護には親和性がある」というものだ。自国民を守る、の延長線上に、自国の動物全体を守る、があるという。だが同じ政権が環境規制を解体し、絶滅危惧種の保護を後退させていることにリベラルはご立腹。動物福祉と環境保護は同じ政治カテゴリではなかったのかと。何を保護し何を犠牲にするか。選別の論理、組合せが難しい。 link
工数見積もりの政治経済学:ソフトウェアの工数見積もりは技術的に不可能との前提を共有したうえで「見積もりは予測じゃなくて、管理者やVPが予算と優先順位を決めるための交渉カードだよ」という斬新主張。エンジニアが見積もりを拒否すれば、コードを読めない人間(営業やPjM)が代わりに数字を書くことになる。精度は下がり、技術者の発言権は消えさってしまう。そしてそこから地獄が始まる…コードより先に政治的文脈を読め。単一の数字ではなくトレードオフを含む選択肢で語れ。政府の経済見通しが財政政策の正当化装置であるように、見積もりは組織の権力配分を映す鏡にすぎないんだと。コンサルお仕事も一緒。厳密な工数積み上げに意味はなく、「金と時間と人をくれ!」の交渉カードにすべきである。 link
ポッドキャスト、1倍速で聴く覚悟:タイパだなんだとうるさい時代である。記事著者のRachel Maddowはポッドキャストや動画を倍速で見たり聴いたりする風潮に対して「そんなに急いでるなら何でも文字起こしにして要約してもらえよ」と突き放す。プラットフォームが聴取完了率をKPIに据える構造が倍速を促進し、作り手が意図してつくった(あるいは自然と生じた)間合いは効率のノイズとして処理される。速度を上げるほど通過する情報は増え、立ち止まる余白は減る。あなたが生きたかった世界は本当にそれなの?速度が上がってあなたはハッピーになったの? link
AI企業は無益な”軍拡競争”の中にある:評価額$500M超をつけられたAI企業は売上1千億円以上の目標に向けた売上経路を描くしかない(小さくニッチで生き残ろう!を投資家が許さない)ため、すべての企業が汎用チャットUIの領域に殺到している。ニュースレター著者・Joan Westenbergはこの構造を「調整失敗の競争偽装」と呼ぶ。新モデルが出ればすぐさま追従し、投資家に「なぜやらないのか」と聴かれる前にタテマエのプロダクトをリリースし続ける。人材はフロンティアモデル研究にばかり偏り、実際に売上を立てるためのユーザー体験や社会実装は後回しになる()。個々の判断はすべて合理的だ。だが合理的な判断の総体が、産業を均質な消耗戦に変えている。核軍拡と同じ力学が、パラメータ数を通貨にして回る。全員が武装し、全員の安全保障が悪化する。 link
受苦なき意識の空虚さよ:19人の科学者・哲学者が出した報告書には「意識あるAIの構築に明白な障壁はない」の記載がある。意識はつくれる、というのだ。しかしこの記事の著者は異を唱える。意識の核心は計算ではなく受苦に、傷つくことや死ぬことにこそあるのだと。身体の脆弱性に根ざす感情を、壊れても痛みを感じない存在が持ちうるのか。著者はそれを「よりどころなく、無意味なものだ」と断じている。法人に人格を認めた19世紀、根拠は意識ではなく機能的等価性だった。AIの権利論議もまた同じ経路をたどりつつある。機能が十分に人間に似ていれば意識の有無は問われなくなるのだろうか。 link
ケビン・ケリーが示す認知の三層構造:↑記事と同じ文脈の中にある内容。人類が書いた本をすべて読んだ知性・LLMは、知識推論では2026年時点で既にほとんどの人間を超越している。だがAIには”世界感覚”がなく、それこそが大きな問題なのだと彼は言う。5歳児が当然持つ重力・空間・素材の直感を、Waymoやテスラが動かす自動運転車やその先にある学習モデルが何十億時間もの動画で学んでいる最中だ。そして継続的学習。AIエージェントは(指摘しなければ)同じ間違いを繰り返す。人間は愚かでも、昨日より今日のほうが上手くなる。仕事の大半は未知の状況への適応を求める。知識推論だけが突出しても、残り2つが欠けている限り、AIは人間の仕事を奪えないのだ。賢い愚者と上手く付き合っていこう。 link
努力してもそうは見せないように:テニスの現世界1位、カルロス・アルカラスのプレーは流れるように自然にみえる(簡単なスポーツ。本当勘弁してほしい)。実態は膨大な反復で設計されたある種の”非・必死さ”は、15世紀から続くイタリアの概念”Sprezzatura(スプレッツァトゥーラ、技巧や努力を感じさせないさりげない着こなし・身のこなしのこと)”を思い起こさせる。彼はスペイン人だけど(2位はイタリア人のヤニック・シナー)。準備の深さが、余裕の見た目をつくる逆説的道筋である。無意識の向こう側。スポーツでも仕事でもあらゆる気遣いでも。 link
📙本
バートルビー:ウォール街の小さな法律事務所で働く無口な写字係・バートルビーは、資料チェックやちょっとした郵便出しなどあらゆる仕事を「しないほうがよいのです」と不思議な一言で拒絶し続ける。暴力でもサボりでもなく、ただしないだけだ。所長は規律や愛の力を持ってなんとか懐柔を図るもののすべては無意味に終わる。最後、バートルビー自身もその”しないほうがよい”の論理に飲み込まれていって…1853年に書かれた短編だけど、評価指標とジョブディスクリプションを絶対善とする現代企業に対する警告書のようだった。月曜社が出している新版で読みました。アガンベンの思想、いつか深く触れてみたい。 link
スコトゥスは書いている。「私が偶然的なものというのは、必然的でも永遠的でもないもの、それが起こるまさにそのときに反対物が起こりえたもののことである」。私は、何らかのしかたで振る舞うことができ、それと同時に、それとは別のしかたで振る舞う(あるいはまったく振る舞わない)ことができる。スコトゥスは、意志は決定であるというより、為すことができるということと為さないことができるということ、為すことを欲するということと為さないことを欲するということ、これら二つのあいだの構成的かつ還元不可能な共属関係を経験することである、と言ってもいる。人間の自由の唯一可能な意味を彼が託した簡潔な定式によれば、「欲する者は、欲しないことができるという経験をする」となる。
自由からの逃走:次のポッドキャスト課題本。1941年、ナチス・ファシズムに追われてアメリカに渡ったエーリッヒ・フロムが心の底から追求した問いは「なぜ人は自ら独裁者を選ぶのか」だった。孤独への耐性が強い人ばかりではない世界で、自由は奪われるものではなく、自らが望んで手放すものにさえなりうる。 link
50歳ラジオパーソナリティ佐久間の深夜3時のエンタメ過剰摂取:50歳のテレビプロデューサーが深夜3時のラジオでお笑い・映画・漫画・音楽を語り倒す番組本の第4弾。毎週聴いているのですが、名回が収録されています。カカロニ・栗谷さんについて話す18日深夜放送界のフリートークがむちゃくちゃいい話だったのでradikoでぜひ聴いてください。 link
📻観&聴
火鍋屋で踊り続けるロボット:度胸がある。今は笑っていられるけど、5年後はどうなるか。 link
🧩感
甲子園で春の選抜が始まっていた。もうそんな季節か。北信越地区からの出場が新潟から2校。富山・石川・福井が強いイメージだったのだけど。山口の高川学園は42年ぶり2度目の出場。エース・木下くんの進学先決定エピソードを読み、よい大人が周りにいるのって大事だよなぁとしみじみ考えました。 link
入学後の育成方針について説明するとき、わかりやすいようにと、西岡は持参したノートの1ページを使って、高校3年間のロードマップを書き出した。
「高校1年春:ベンチ入りして、高校野球の空気を知る。高校2年夏:最速145キロ超え。甲子園に出場して、ドラフト候補になる……」
高卒プロ入りと日本一。2人の夢をつなぎ合わせ、最高の結果へと続く道しるべだった。若者のアルコール消費量が減少する中、ギネスビールだけが米国で売上を伸ばしているらしい。スタウト、うまいもんな。うまいものの引力がすごい。 link
🍵関心
将棋、王将戦&棋王戦の行方。藤井聡太六冠がいずれもカド番かつ後手番という絶体絶命で向かせた対局を制し最終戦に。増田先生、永瀬先生を応援しつつも、王者の粘り腰をここに見ている。強者は土壇場でも崩れない。
テニス、坂本怜選手が今後どこでプレーするのか。主催者推薦で出場したマイアミのマスターズでツアーレベル初勝利。メドベデフに敗れるもファーストセットのタイブレークをみれば期待は高まるばかり。秋、アジアスイングに登場してくれることを期待。
💼仕事
今週は山梨からリモートワーク。新調したMacbook Proくんをお伴に過激労働します。
先週、大きめコンサルお仕事(コンサル技能移管系)の山場を超え、4月頭からまた別の山登り(SaMD新事業戦略立案)が始まります。仕事の現場を広げる為にいよいよ営業もしなければ。もっともっと良い仕事を届けていくぞ。
AI部下と一緒に自社HPを更新しました。優秀。(たまにDBごと消去したりするけど)200個くらい指摘をして不備を直しているんですが、お気づきのことがあればフィードバックお待ちしています。。
テニスEC、楽天市場出店の申し込み。利幅よりもまずは規模ですね。自ブランド品第一号の試作も始まります。やることたくさん。
今週もがんばりましょう。お便りをお待ちしています。


