神戸からおはようございます。
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先日、書店・有隣堂さん主催のイベントで登壇してきたのですが、そこでご一緒したBCG時代の先輩の高松さんから「話している感じと、本で書かれている言葉・文字から受け取る雰囲気が全然違う」と言われ苦笑でした。意図的にやっている部分もあるのですが、そうせざる/ならざるを得なくなっているところもあります。私が入社したときのBCGは1年目の下っ端にも固定席が与えられていたんですが、私の席の脇には入社日数日前から 「TANAKA NOZOMI」というプレートが貼られており、周りの席の諸先輩方に佐々木希クラスの女の子が入社した!というあらぬ期待を与えてしまうということもありました。
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上の話とはちょっとズレてしまうんですが、私には「絶対こっちでしょ!」と思えるような思想やこだわりはなく、だいたいの物事について「まあ強いて言うならこっちでしょ」くらいのもので、かつ周りの人からも、私の意志決定や振る舞いについてそういう風に見て欲しいなと思っています。
仮に前者を強意志、後者を弱意志と呼ぶとすると(弱=悪い、という印象もあるので、堅意志/柔意志といってもいいかもしれません)、個人的には一番そわそわするのは「自分は強意志として発信しているが、周りは弱意志として受け止めている」で、一番落ち着くのは「自分は弱意志として発信して、周りもそう受け止めている」です。
私の弱意志は、だいたいにおいて、2択なら「51/49で前者に軍配が上がった」、3択だったら「34/33/33で1番目の勝利」結果としての意志決定です。100/0でこっち、みたいなものがあるかしら、と考えてみると(ここでキーボードから手を離して数十秒)やっぱりなさそうです。進路だったり、健康だったり、家族だったり、人によって大事な意志決定や決め事みたいなものがあると思うんですが、この51/49思考法(いま名付けました)を多くの場面で使っている気がします。
直感的にこっちだな、という方に1票をまず投じる
「とはいえ…」と言いながら、1票を投じる手を反対側に向けながら(時にはムリしてでも)そうする理由をひねり出す。あるいは調べて見つけ出す
2を100回くらい繰り返す
49/49くらいまで煮詰めて、最後2票をどちらに入れるかふらっとに決める
1で1票を投じた先と、4で2票を投じた先が一致する(してしまう)こともたくさんあります。1で止めれば、比率で言えば100/0、4までいけば51/49です。結果は同じで、後者の方が時間もかかり、自分の意志決定に反対する要素が49も見つかっているので、不安だし、時には不愉快な気持ちにもなります。(3択の場合には66が反対に回ります)それでも、根気強く2~4を続けることが、私の人間としての尊厳であり矜持である、と感じています。
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リサーチやコンサルを仕事にしていると、「どうやったら良い1が見つかりますか!?」みたいなことを聞かれる事もあるんですが、そういうときには、この人とは友達になれそうにないな、と思いながら、生暖かい回答を返すことにしています。
(冒頭お話しした同じイベントで、高松さんから「リサーチのTipsの間に突然個人としての哲学が出てきてびっくりする」とも言われていて、今回のカバーストーリーもそうなっちゃったな、と反省しています。(直す気は今のところなく、直す自信もありません))
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
ワクチンのブースターショットを推奨する声明:バイデン政権として2回目のワクチン接種から8ヶ月後に3回目を接種することを推奨すると発表。米国では9月中旬から開始できる体制とのこと。FDAの承認待ち。人類の叡智、科学をできる限り利用しよう。 (link)
タリバンのアフガニスタン掌握を理解する上で重要な5つのポイント:日本語訳されていますが、元記事は豪州のメディア・The Conversationから。ロイターやBBCの論調を見ると、米国政府(とバイデン大統領のスピーチ)に失望しつつ、中国がどう対応するかに注目しているように見えます。 (link)
人種差別とも祖先の国とも戦った米国日系二世の第二次世界大戦:本当は先週取り上げたかったナショジオの記事です。山崎豊子さんの「二つの祖国」が頭をよぎりました。 (link)
米国では白人がマイノリティになりつつある:先週発表された2020年の米国国勢調査によると、非ヒスパニック・白人の人口比は58%、2010年の64%から低下。全国3,100の群のうち400では既に人種的にも民族的にも少数派になっているとのこと。最も多様性に欠けるのはメイン州、最も多様なのはハワイ。 (link)
人間の認証マーク:小関悠さんのショートショート新作。大好きです。近いことは10年くらいで起きる気がする。デジタル空間ではもう起きている気もする。 (link)
センスを磨くための態度・アプローチ:「知識や経験を積み重ねているはずなのに、なかなかセンスが身に付かないと感じている人は、知識量や経験量に問題があるとみるのでなく、その知識や経験に対する自分の態度やアプローチにどこか問題がないか、点検する必要があるだろう」そうねそうね。リサーチや戦略思考も一緒ですね。 (link)
今の世の中は、「言語化する能力」が高い人が、有利に事を運べる:私がそこそこの忙しくできているのは、私が(能力が高いか低いか別にして)言語化に拘る人間だからだと思います。「「言語化する」という大きなコストを、周囲の人々に支払わせていることに気づいてすらいないことが多い。」本当にそうだ。 (link)
人間至上主義がもたらす被害: “人間至上主義は、幼い頃から人間に教え込まれ、時間を置かずに、人間中心の支配的な文化の無数の条件付けによって人間の心に叩き込まれる” 自然を資源と捉える、そんな人間の価値観。 (link)
それでも楽観論に立つべきだ:ケヴィン・ケリーが8月上旬に語った内容。「文明には信頼が必要であり、信頼には楽観論が必要だ。つまり文明には楽観論が必要だ」社会の根底には、相互信頼が流れていなくてはいけない。 (link)
フェミニズムが死すべき理由:2014年に書かれた「オタク文化が死すべき理由」のオマージュ。 “フェミニストが自分たちの共感の埒外にある人々へ示す冷酷さ” 人間ですからね、みんなそうね。 (link)
コーヒー中毒?別れを告げるべきか?:大好きで聞いているRebuildでもカフェイン断ちが話題になることが増え、私もひっそり意識しています。「正午に飲んだコーヒーに含まれるカフェインの25%が真夜中に寝るときにも脳内を循環している」そうなの!?オチを含めていい記事でした (link)
怒りの投稿に「いいね」をもらった人は怒りの投稿が激化する:SNS上で、自身の主張が間違っている、論理的に破綻していると頭では理解しながらも引けなくなってしまった人をしばしば目にします。同じ構造かも知れません。 (link)
「植林すると降水量が増加する」とのシミュレーション結果:チューリヒ工科大学の大気気候学研究所のチームが行ったシミュレーションによると、衛星画像から利用可能と判断された土地のうち20%に植林した場合、ヨーロッパ全体における夏季の降水量が平均7.6%増加するとのこと。木の葉からの蒸散や、表面粗が大きい森林による乱気流発生など複数の要因が指摘されています。 (link)
「トヨタ流」アフリカ難民支援 豊田通商、現地で車整備士養成:「これまで百数十人が利用し、約六割が整備士としてディーラーなどへの就職を果たしているという」素晴らしい。 (link)
パラリンピックが始まる:「終わったね」感が出ていますが、これからです。走り幅跳びT44クラスで、マルクス・レームはどれほどの記録を出し、(義足はドーピングか、なんていうくだらない指摘を超えて)どれほどの議論を巻き起こすでしょうか。 (link)
📙本
あの本は読まれているか :1950年代の米国・CIAとソ連を舞台に、半分事実に基づく小説。ビジネスバックグラウンドを持つラーラさんの初作品で、これからどんな作品が出てくるのか、楽しみです。 (link)
森博嗣「的を射る言葉」:大好きな箴言集でした。取り上げられている言葉を定期的につぶやくBotが欲しいです。 (link)
広い世界と2や8や7:一緒にPodcast、Cobe.fmをやっているみきさんから紹介してもらった短歌集。こういう言葉の世界があるんだなぁ。 (link)
ステレオタイプの科学―「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか:Rebuild#216でNさんが無意識の偏見(Unconscious bias)のお話をされていて、タイムリーにぶっささりました。「人間は自分を自律的な存在だと思っているが、実のところステレオタ イプ脅威によって、仕事での成果や学校での成績から、職業や友人の選択まで大きな影響を受けていることだ」本当にその通りだ。 (link)
地球生まれで旅育ち:テルマエしたいです。旅したいです。 (link)
🎥観た/観ている
ドキュメント72時間の食事シーンまとめ:食べることは生活の中心である。しかして、食べることに注目することは、生活を見ることである。(link)
タリバンが掌握した首都のいま:中東情勢については、(英語/日本語に限れば)BBC報道の質が高いと感じています。Youtubeで動画が何本も上がっているので、フォローがおすすめです。女性の数は減りながらも、意外と日常が続いている模様。
松田 素二先生「アフリカから学ぶ人文学」:京都大学 人社未来形発信ユニット「立ち止まって、考える」シリーズより。パラヴァー、しらなんだ。多数決に対する疑問はずっとあって、そのとっかかりを得る機会になりました。
OpenAI Codexのライブデモ:自然言語でやりたいことを書くとプログラムを自動生成してくれるAI、こんな感じで動きます。最初はHello worldから始めるお作法感。映っている人みんな、技術が大好きな感じで最高です。
渡辺明名人による第92期棋聖戦五番勝負の振り返り:誰に強制されることもなく、自身が敗退したタイトル戦を主客バランス良く話すことができる渡辺先生の偉大さよ。
📻聴いた/聴いている
叶姉妹のファビュラスワールド:Spotify、なんというコンテンツを生み出してくれたんだ。第1回は「私達の愛する大切な皆さん、ごきげんいかがでしょうか。」です。 (link)
Rebuild #313:フロリダの現場から。「ワクチンを打たないと言っている人の多くはそれほど強烈な思想があるわけではなくなんか面倒くさいくらいの認識で、法制化直後の車のシートベルトに近いのでは」(意訳)というお話にはなるほどなぁとなりました。 (link)
🧩感じた/感じている
「Twitterは大人が喧嘩をしている場所。だから使わない」若者の感覚は正しい。
(以下、今週読んだ森博嗣さんの箴言があまりによかったので引用です。)
「金儲けをして好き勝手にしたい」ほど明確なビジョンはまずない。
自分のポジションが低いほど、人を見下すことが簡単である。
「完」の回数が、すなわちキャリアである。
人の役に立ちたちといくら願っても、少しも役に立ちやすくはならない。(意気込みが問題を解決することは稀である)
スピーチのないパーティって、種なしブドウより、もっと素敵だ。
🍵今の関心事
アフガンの政治、南欧の火事、エチオピアの内戦、南アの暴動、世界の行方。
10年後、自分が何に関心を持っているのか。
いつ視力回復/レンズ埋め込み手術を受けるか。
🥑活動報告
ショートショートnote、さっそく手が止まっています。今週から再開できるように、習慣変更に着手します。
先週、リサーチに関して公開しているSpeakerdeckがTwitter上で少しだけ広がりました。世の中の無駄な迷いや行動を減らすことができたなら嬉しいです。ビジネス版のOSS活動とか、本当ならやりたい(どうやればよいかはわからない)
ここで文字数制限です。今週も、Happy Weekを:-)