So it goes.
人はなぜ支持政党を持つのか。ほどけるものは、決して切ってはいけない。自己保存本能、高坂正堯。Elon’s iPhone、OASIS 1、250周年を迎えた米国。核兵器開発、録音デバイス、インド政府のウェブサイト。世界地図で考える、雪を作る話、お金と幸福感。Rebuild.fm、Naval、ウィンブルドン。東京出張。少しだけ順番を変えてお届けしています。
政治関連のニュースを見ないようにしている。
「日本が●●になったのは○○のせいだ」
「□□である限り■■はよくならない」
関わってもどこにも行き着かず、妥当な論理も見えない、受け取る価値がぼやけたものばかりである。まともな提言や議論に繋がっているのを見たこともない。真正直に政治を受けとめる英国民は意味もよくわからないままにEUを離脱し、近年は首相をひっきりなしに取り替えている。
「神戸トヨペットの顧客サービスが悪いのはトヨタの社長が悪いからだ!」これが不正確だし、仮にそうだとしても指摘が何の意味も生まないことを、まともな社会人なら知っている。しかし政治の場では、似たような論理を大声で叫ぶことが有効なようだ。政治家がみなX/Twitterをやる理由である。
まともに論旨検証をしないまま強いトーンで言い切りを続け、何でもかんでもトップに責任を帰すやり方は、新旧を問わず全メディアの得意技である。修理不能の認知バグを抱えた人間の脳には有効な手法なのだろう。卑怯であり、不正確で、愚劣だとおもう。
悪を糾弾するのは気持ち良い行為だ。
駅前で戦争反対の旗を掲げながら現政権をこき下ろすおじいちゃんはマイクを持つやいなや生き生きとし始め、一方その様子を晒しながら「だから野党はダメなんだ」と語るSNS匿名アカウントも文章から恍惚感がにじみ出ている。
居酒屋で「上司はバカだ」と論い愚痴をこぼすサラリーマンは悲壮感なくむしろ笑っており、とあるママ友の空気の読めなさを「だよねー」と共感し合う女性陣も声には勢いがある。
全ての人は自己保存の本能を持ち、故にすべての人が地位や権力を求める。
会社や有名な組織のものではなくても、家庭の中、地域の中、友人関係の中、どこかで人は地位や権力を求めている。
これは理性云々の問題ではなく、生物としての人間に埋め込まれた自然な本能である。この本能がぶつかり合うことで、善や悪が自然に発生する。
一般感覚として、みずからの地位を高めるものは善であり、低めるものは悪と見なされる。だとすると、悪は、異常値たる悪人から生まれるものではなく、人間社会一般の自然な帰結として発生する。地位や権力は相対的なものだからだ。誰かが上がれば自分は下がる。
しかし私たちは自らの地位や権力が”自然に”喪失・低下することを受け入れられない。そのため、仮想の悪人をつくりあげることになる。アルゴリズムの結果を、ごくごく一部の部品に押しつけるのだ。これが日々のニュースで行われていることである。
理由がないことを受け入れられない。人間の弱さを感じる。
悪徳に対する現在の人間の態度は、伝染病の原因がバクテリアにあることを発見した初期の状態にいかによく似ていることであろうか。バクテリアに対する医学の考え方は随分進歩したのに、悪に対する人間の態度はギリシャ時代からまったく変っていないし、ある意味では悪化さえしている。社会のさまざまな疾患の原因をひとつの要因に求め、それを除去することに血道をあげている人がいかに多いことか。戦争の原因は「帝国主義」にあると考え、それを除去しようとして、そのための戦争は正当化しようという人たちはそのもっともよい例である。「帝国主義」が戦争の原因であるかどうかの認識の正しさは別として、戦争という疾患の原因をひとつのものに求め、それを除去することだけを考えている態度は、「微生物の狩人たち」とそっくりである。
高坂正堯 著『世界地図の中で考える (新潮選書)』 p42
このまま「メディアは悪だ!悪人をつくりだすことは悪だ!」と叫ぶなら、私も同じ穴の狢である。くそだせぇ。まぁそういうものだとして受け入れていることにしている。
So it goes.
目につく悪を軒並み排除していけば善が残る、なんてナイーブな考え方をするほど愚かではないつもりだ。
政治ニュースがなくなった世界を求めているわけではない。何でも高市政権・自民党・トランプ大統領・イスラエルなどの性にする人や風潮がなくなってほしいとも思わない。職場の愚痴や友人の悪口も好きなだけ、好きなようになれば良いと思う。政治活動をしている友人も確かにいる。ただ私にも、政治や党派制をフル無視する権利を残しておいてほしい。私は一生無党派層で生きていきたい。権力と地位による問題解決はそれが得意で好きな人に任せようと思う。
多くの企業人が行う分析や行動推奨は不正確で、誤ったものである。日々、偏った善悪基準に由来する情報に触れているからしょうがない。咎め、正し、意味あることを粛々とやり、責任をとるのが私の仕事である。イズムに依らない善悪に基づくからこそできる仕事、生み出せる価値がある。
お便りをお待ちしています。
💼心惹かれたもの
Elon’s iPhone:みなさんがイーロン・マスクだとしたら、UbereatsやAmazonで使える金額がこんな感じになります。ジョークサイトのセンスがいい。 link
OASIS 1:キーボードレスを企図したAI時代の入力特化型リング。2Dトラックパッドを持ちスワイプ・タップ操作が可能でかつマイク内蔵のため小声での音声入力が可能。iPhoneやMacとの連携が可能。出荷はクリスマス時期が目標とのことなので、来年の春頃が現実目標かしら。Pre-order済み、到着が楽しみ。 link
🧩感
最近出会ったシンプルかつ強力な言葉。まずは紐や縄跳びの話として読み、その後人間関係のことを想像してほしい。ほどき上手になろう。
ほどけるものは、決して切ってはいけない。
これは真実であり大前提に起きつつ、誤解が起きる可能性を限りなく最小化し、かつ真摯に釈明をするのが人間たる責任だとおもう。バランスがむずいんだけどさ。 link
他人には私を誤解する権利があり、私にはそれを釈明する義務はない
言語的には明らかに矛盾しつつも誰しも意味がわかる。AIには出来ない技。 link
“Always say yes to a quick 30 minute beer with your friends because that hour and a half could be the best 6 hours of your life”
友達との30分のビールなら、いつもイエスと言え。
なぜなら、その1時間半が人生最高の6時間になるかもしれないから。
茨木のり子、魅力的な詩の一部。心の奥底に静かな湖面をもて。 link
お母さんだけとはかぎらない
人間は誰でも心の底に
しいんと静かな湖を持つべきなのだ
田沢湖のように深く青い湖を
かくし持っているひとは
話すとわかる 二言 三言で
それこそ しいんと落ちついて
容易に増えも減りもしない自分の湖
さらさらと他人の降りてはゆけない魔の湖
教養や学歴とはなんの関係もないらしい
人間の魅力とは
たぶんその湖のあたりから
発する霧だ
🍵興
ウィンブルドン2週目。ディミトロフがむちゃくちゃかっこいい。そして日本人が男女それぞれの世界1位に挑んでいて(大坂なおみvsサバレンカ、望月慎太郎vsシナー)、このニュースレターが配信される頃には結果が出ているはず。起きて結果を確認するのが楽しみです。
米国が建国250年を迎えた。果たして300年を迎えたとき、世界の覇権を持つのは米国だろうか、はたまた中国やインド、ロシア、ナイジェリアだろうか。
✏️読
📃記事
名目と実質で眺める米国衰退論:先週金曜日に誕生250年を祝ったアメリカ合衆国。その成長と現状を数字で振り返るEconomist特集記事。名目GDPで測れば中国より55パーセントも大きい世界最大の経済を持ち、生成AI開発ではトップクラス、世界最大の石油・天然ガス生産国としてエネルギー分野でもリーダーであり続けている。ユーロや人民元に負けず、米ドルは未だ国際決済の中心だ。しかし購買力平価ベースでの経済規模は既に中国に劣後し製造業シェアは15%と中国の半分以下、相対的な支配力は着実に後退している。現政権も優先投資項目に挙げている軍事力は現在のレベルを維持できるかもしれないが、科学や教育分野、移民にとっての魅力度や国際協力経由でのサウス諸国影響力は着実に衰えていくだろうと。50年後の世界、米国はどんな姿をしているのだろうか。link
IT人材、着々と米国を出る:↑の流れそのままに。先月米裁判所は、トランプ政権が定めた”H-1Bビザ手数料10万ドル”を権限外として無効にした。数千人の技術者にとって朗報のはずだが、多くの移民技術者や彼らを雇う企業が受け取ったのは、安堵というより自分/従業員の生活を左右するルールがいとも簡単に変わるという事実の再確認だった。元記事が”不確実性税”と呼ぶのはこのことである。手数料そのものより、次に何が来るか読めないことが、静かに人や企業を追い出していく。カナダ、英国、中東湾岸諸国は「うちは安定しているよ」の言葉で優秀人材を引き抜き、GAFAM等はバンクーバーやインド拠点を徐々に強化している。安定性が強みになるなら、枯れたモノを愛する我らが日本にできることも相当あるはずだ。link
核兵器開発の現場:米国・カリフォルニア州の研究施設にEconomistの取材チームが潜入。地下核実験が止まって三十年。老いていく核弾頭が今も動くと、どうやって確かめるのか。192本のレーザーが水素同位体を一点に圧縮し、爆発なしで爆発を再現する。答え合わせを引き受けるのはスパコン『エル・キャピタン』である。実物を吹き飛ばさずに、シミュレーションと巨大装置で信頼性を担保する。抑止という言葉の裏側で起きているのは、徹底した計算作業。「私たちはつくったものが使われないことを願っています」矛盾したように聞こえるけれど、この仕事に向き合える人は本物だ。 link
AIはアウトソーシング業を押し広げるのか、むしろ萎ませるのか:パンデミックが明けても新規事業の申請は減ることなく、AIの追い風もあって一人法人・ソロプレナーが増え続けている。ストライプ・エコノミクスの分析では、一人も雇用を行わない代表者だけの法人の増加は、業界ごとのAI導入と正の相関を描く。市場調査も開発もマーケティングも、かつては人を雇って埋めた穴を、AIが数人分の労働を肩代わりすることでアウトソーシングを容易にする。AIネイティブ企業は一般同業他者より25パーセント少ない人数で生まれているという。個人が強くなれば、企業は外注に頼るのか、それとも社内に囲い込むのか。多くの企業がAIを用いた内製強化の夢を見るけれど、現実がどちらに動くかはまだわからない。link
私の前に録音デバイスを置かないで:AIが文字起こしや解析を容易にした影響からか、なんでも録音する人が増えていうる。オンラインならまだわかるのだけど、実世界のコーヒーチャットにまで録音デバイスを持ち込む人までいるらしい。そういう人が使う論理は「記録しますが構いませんよね、後々私のプライベートメモにするだけなので・・・」である。やめてください、とは中々言い出せない。隠し事のある偏執狂に見えるからだ。録音コストがゼロになった世界では、雑談と証言の境目が消失してしまう。人類はずっと、条約や証書のような残る対話と、井戸端会議やタバコ部屋雑談のような消えるものを分けて生きてきた。後者が静かに飲み込まれている。気軽な会話がなくなった世界は、本当に私たちが求めたものなのだろうか。link
完璧な最適化が組織をダメにする:米国のフィギュアスケーターであるアリサ・リウは、オリンピック期間中の朝ご飯にチョコレートケーキを食べていた噂を『本当だよ』笑い飛ばした。一度だけ、朝食の時間に起きられなかったからと。栄養計算された食事を守り続けずとも、個人と団体で二つの金メダルを獲得している。ウサイン・ボルトは北京五輪三冠をチキンナゲット千個とともに走り抜けたという。いずれもアスリートにおける”最適化”の教義からすれば、あってはならない話である。しかしトップアスリートはいい意味での余白と回復力を保っている。組織も同じで、目標やKPIに背く行動をゼロにする潔癖症は必ずしも良い文化に繋がらない。ゆるさは、弱さではないのだ。link
その他にも…
なぜインド政府はまともなウェブサイトを作れないのか:紙をそのままPCスクリーンで再現しました!の悪
カンヌが認めた『広告はクリエイティブでなく配信力勝負』の現実:だから広告業奴が嫌いなんだよ
AIカンニングの時代。自宅試験だと平均96点→対面実施だと48点:そらそうだろう。対面実施の点数分布はどうなっていたんだろうか。Integrityが見える。
投資ファンドがテニス界のスター・ジョコビッチを雇う:ウィンブルドンで輝いているレジェンドおっさんは実業界でも大活躍。
バニラ・アイスが映し出す分断社会:創立250周年を迎えた米国のメディアはノスタルジアがテーマ。
『8時間睡眠が最適』という神話:長すぎても良くないのだ。
📙本
世界地図の中で考える:1968年、まだ30代前半だった国際政治の研究者・高坂正堯が書き下ろした本書。読後、新潮社頁に掲載された書評を読み、改めて内容を噛みしめる。50年以上前、30代の若さにしてここまで見通していた賢人が日本にいたのか。 link
「問題の複雑さを理解している人だけが、中心的な事実を単純化して捉えてもよい」のであり、「ある体制を、時と場所と無関係に、抽象的に判断するくらい大きな誤りはない」。そうした認識に立ちつつ探り続けることで、現実がその背後の構造に遡さかのぼって理解され、時代の目の曇りから自由な、確固たる認識が生まれる。 link
中谷宇吉郎 雪を作る話:次のポッドキャスト課題本。真摯な研究者とは彼のことであり、自然の美しさと驚異をくみ取るための最高の学習素材が雪である。 link
お金があれば幸せになれるのか 幸せな人生を送りたい人への21章:なれません。大事なのは友情です。 link
エビクロスのいう幸福とは、具体的に言うと、彼が「アタラクシア」と呼んだ平静不動の境地、すなわち「魂の絶対的な平安」のことである。この境地に達するためには、思い込みや迷信から来る恐怖心を取り除くこと、基本的欲求[自然で必要な第一の飲求〕を満たすことで満足感を味わえること、そして数ある喜び、快の中から上質なものーーその中で最も重視されていたのは、おそらく友情の喜びであるーーを選択できることが必要である。 p40
📻観・聴
Rebuild 429 Whole Lotta Latte(N):わたしもいつか、ラテアートにハマるかもしれない。 link
44 Harsh Truths About The Game Of Life - Naval Ravikant:定期的に見返し、自身の生活や精神的傾向を振り返る動画。200分の長編ポッドキャスト。一度に全てを受け取らず、そのとき最も心に残る2-3の言葉を持ち帰り、1つ行動を変えるくらいが良いバランス。
🥑活動報告
来週は東京出張です。会食が行ったことのないお店ばかりで楽しみ。東京の宿が高すぎるので宿泊は川崎。大浴場を堪能します。
お便りをお待ちしています。




