努力の理由はなんでも良いが、自分のものでなくてはいけない。
スラムダンク、努力の理由、消費者ブランド監査、
今日は名作・スラムダンクの話です。未読の人はいったん全巻読んでから戻ってきてください。Kindleにも全巻あるし、最寄りのマンガ喫茶に走っていただくでも、今晩の寝床を最寄りのドーミーインにするでも構いません。まずは最初の陵南戦まで突っ走ってください。
簡単あらすじ】不良中学生・桜木花道は進学した湘北高校で同級生の春子さんに一目惚れ。彼女がバスケ好きだったことから未経験のバスケ部に入部したらキャプテンが春子さんのお兄さんで・・・身体能力抜群の桜木はライバル・流川との争いや名将・安西先生の指導の下で一気に成長し、神奈川県や全国で名をとどろかせていく。全31巻(完全版20巻)、1990-1996年に少年ジャンプで連載。 link
この作品には、才能溢れる選手がたくさん登場します。流川や桜木、陵南・仙道や山王・沢北のように持って生まれたものをフル活用・大活躍する選手もいれば、才能をケガやチーム事情で犠牲にしたキャラクター(三井や翔陽・藤真)もいる。小暮や海南大付属の宮増や神が持っているのは努力する才能だ。
スラムダンクを読み返す度、努力スイッチの多様さと、自分なりのそれを握りしめることの大切さを痛感する。登場人物それぞれがなにをモチベーションにしているのか、改めて書き出してみたけれど、全然被りがない。しかしみんな一流のプレイヤーであり、とんでもない努力をしている。努力に繋がるのであれば、源泉は究極なんでもいい。
桜木(湘北):モテる→悔しさを晴らす→シュート楽しい→期待に応える
流川(湘北):うまくなる→日本一のプレイヤーになる
赤木(湘北):全国制覇する
小暮(湘北):体力をつけたい→頑張っている仲間を応援したい
三井(湘北):恩師・安西先生に報いたい→大学の推薦を取りたい
宮城(湘北):亡くなった兄貴の無念を晴らす
仙道(陵南):バスケ”で”楽しみたい
福田(陵南):褒められたい
牧(海南大付属):勝つ。常勝であり続ける
清田(海南大付属):目立ちたい
森重(名朋工業):バスケで場を支配・蹂躙する
南・岸本(豊玉):恩師が間違っていなかったことを証明する
河田・兄(山王工業):立ち向かってくる相手を叩き潰す
河田・弟(山王工業):怒られないように→もう負けないように。
沢北(山王工業):高みを見据えそれを超える
がんばる理由は交換不可能である。赤木が「目立つために」とプレーすることはないだろうし(それをやりかけて魚住に諭されるのが名シーン『お前は鰈だ。泥にまみれろよ』)、仙道が全国制覇!と叫んだところで周りは着いてこないだろう。モチベーションの源泉は多様であり、さらに変わり得るもので、他人から借りる事の出来ないものである。
難しいのは、同じ理由は一つとしてないことだ。流川と沢北は似たタイプだけれど流川は自分、沢北は相手にベクトルが向いているし、福ちゃんも清田も褒められ好きだが後者は派手好みで前者は泥臭くても点を取ることに強いこだわりを見せる。人間は、性別だなんだの話を持ち出すまでもなく、そのモチベーションからして多様なのだ。自分のことも他人のことも、簡単にわかった気になってはいけない。それくらい、人間というのは可変であり、難しい存在である。(名将・田岡でさえも間違えるのだから)
ひとはみな、自らの源泉を見つめ、自分を日々発見、再発見すべきだ。向上したいなら、自身の体と精神が何によって動かされるのか、俯瞰し捉える理性的能力を持たなくてはいけない。桜木のバスケとの関わり方は半年でどんどん変わっていくが、変化は皆に平等に訪れる。一度も試合に出てない湘北の1年生石井くんが「湘北に入ってよかった・・・」としみじみ呟くのは、三井が4点プレイを決めて王者・山王に逆転できる可能性が生まれてきたときである。彼が湘北バスケ部に入るとき、この瞬間のことが想像できただろうか。マンガの話だと笑うかもしれない。笑う人は、物事に真剣に取り組んだことのない人なんだと思う。
アルゴリズム全盛の時代、絶対にアルゴリズム化できない「自分固有の努力理由」こそが、あるいはそれのみが重要なのだ。人に説明できる必要はないし、わざわざ語るのも無粋である。深淵を見つめる目のみ持っておけばいい。それだけでずいぶん日々が生きやすくなるはずだ。
お便りをお待ちしています。
💼心惹かれた
The Brand Ledger:消費者ブランド監査サイト。オーナー変更や運営方針の変化により、企業理念にそぐわない製品開発がされていたり過去の遺産を食い潰すような取組がされているブランドを避けつつ、一方で未だ価値ある・品質の高いブランドも紹介している。link
承認/Approved:De’Longhi、Miele、Victorinox
避けるべき/Avoid:Everlane、Awara、Oakley
『隠れた逸材』Tシャツ:日々体現していきたい。逸材はギャグだもの。 link
ひたすら、さらに、もっと エネルギー消費の蓄積史:8月下旬発売の書籍で事前予約中。自分の世界観がエネルギー循環を中心に据えたものに変わりつつあることを自覚していて、それがさらに前進・発展しそうなテーマの本。到着が楽しみ。 link
木材から石炭へ、石炭から石油へ、石油から原子力等へ。よく語られるこのようなエネルギーシフトは実際には起きていない。どの消費量も常に増大し、今それは史上最大に達している。シフトの虚史はなぜ拡散し信じられたのか?
イノベーションによる次のシフトが問題を解決するという物語は耳に心地よいが、その根拠の誤りに向き合わずに気候問題を論じることは、本書以降できなくなるだろう。屁理屈と哲学:こちらも事前予約中、小説家・小川哲の反=自己啓発書。屁理屈も哲学も好きなのでじっくり楽しもう。 link
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
中国ブランドがブラジルを席巻する:裕福なブラジル人はBYDに乗りスマホはファーウェイ。ハイセンスのテレビで映像を楽しみ、滴滴・DiDi傘下のフードデリバリーアプリ・99Foodで夕食を頼む。2025年、中国企業がブラジルへ投じたのは少なくとも60億ドル、中国の対外投資全体の1割超で他のどの国よりも多い。フォードが去った北部の工場跡地にBYDが大規模拠点を築き、中国の競合自動車メーカーもメルセデスの旧工場で生産を始めている。中南米と中国の経済的結びつきが着実に強まり、消費者のレベルまで深く浸透しつつある。 link
不法滞在撲滅をとるか、空港の行列を短くするか:昨年後半から導入されたEUの新出入国システム・EESは、パスポートのスタンプを顔と指紋のスキャンに置き換えた。欧州委員会は3万人の不法入国を阻止したと成果を謳うものの、EU圏外からの旅行者の処理時間はほとんどの空港で倍以上になり、ピーク時の行列待機時間は3.5時間に達した。猛暑の中、汗で汚れた指紋スキャナーが読み取りを拒む。当初計画から3年遅れてなんとか導入にこぎ着けたこの取組みは、政治家が国会で語る指標の改善には効いているが、空港体験はしっかりと悪化させている。次の改善計画は誰がどのような責任の下で立案されるだろうか。そしてそれはいつまでに実行されるだろうか。 link
離島版Amazon.comをつくるなら:18の島々が250万km²以上の海域に点在し、多くの島は人口1,000人未満のフランス領ポリネシア。AmazonやAlibabaは配送コストが高すぎるため、事実上サービス対象外となっている。HM Coursier Express という小さな配送会社がハブとなり、FacebookやWhatsAppで受け付けた注文を個別に仕入れ自宅まで配送する仕組みを作り上げた。儲かるわけではないけれど、しっかりと社会を変えつつある。大好きなイノベーションの形である。 link
『読書』という思考形式の終わり:本や新聞を読む人が減り、長文を最後まで読む習慣が消えつつある。売れる本は簡単さを突き詰めたもので、AIが”原典を読む必要性”をどんどん削る。一部大学では「読むことを要求するのは不公平」と主張する学生が出てきている今、長く複雑な文章を読めることそのものが特別な存在の要件になっている。私たちは読書を通じて「因果関係を追う」「複数の視点を保持する」「矛盾を受け止める」「抽象化する」「他者の内面を想像する」という能力を獲得してきたが、これらも一緒に消えていくのだろう。そして政治はスローガンや映像、印象やミーム操作がものを言う領域になっていく。わたしたちは読書習慣なしに、長時間・高密度・多段階の推論を自力で維持できるだろうか。人類の次なる挑戦だと、私は思う。 link
少子化・若年層減少→技術革新誘発→一人当たり経済成長常勝:アセモグル、オーター、バーン、スコットによるNBERワーキングペーパーが面白かった。過去70年の世界的な出生率低下は人口増加を鈍らせ平均年齢を押し上げた。ソローの成長モデルによれば、出生率低下→労働人口減少→GDP低下→財政悪化と繋がり、成長は鈍るはずである。しかし実際に複数国・70年間のデータを分析すると、出生率が低い国ほど労働年齢人口1人当たりGDP成長率が高く、TFP(全要素生産性)は高まり、賃金上昇率も高句なることがわかった。女性就業率や教育水準、産業構造変化の要素をコントロールしてもこの効果は残る。少子化を「需要ショック」ではなくイノベーションへの供給ショックとして捉えるべきでは?と訴えかける研究。経済学修了者視点で面白いのは、WW2による戦死者データを用いて自然実験化していること。さすがアセモグル御大だ。 link
知能は決断のためにある:その通り。勉強ばっかりしてる場合じゃねぇぞ。価値観と勇気。価値観と勇気を鍛え、磨く日々を過ごすべきだ。>日本社会の低迷の理由は、2つの能力の低下にある。それは、考える力と、決断する力だ」 link
考える力がなければ、進歩も成長もない事は自明だろう。しかし、たとえ頭が良くて、知識も豊富で判別能力や推理能力が高くても、決める力がなければ、どうなるか。新しいことに踏み出す決断ができなければ、人も組織も社会も、同じところを堂々巡りし、低迷を繰り返すのみになる。あの証券会社だって、もっと早く簿外債務の対策を決断していたら、廃業に追い込まれずにすんだかもしれない。低迷から抜け出したかったら、わたし達の「考える力」と「決める力」を高めなければならない。
スタートアップをとりまく思想:先週読んだもののなかで一番時間をかけて、かつ繰り返し読んだ記事。岩波・世界を読むようになって、スタートアップの力学理解が進んでいるのも、スタートアップに流れる思想が政治化している理由の一つでもあるのだろうと思う。 link
愛するものを最適化する勿れ:好奇心には2つの衝動がある。理解・制御して最適化したいという征服衝動と、愛しているからこそただそのまま味わいたいという美的衝動。重なることはあっても根っこでは相反しているのだ。子賢い人ほど前者の関わりを好み、それを誇る。美的衝動はいつも征服衝動に従属し、遊びの余地はなく、行き着いたのは燃え尽き症候群、灰の状態である。現代社会は前者を過剰に育て、後者を軽視する。豊かになっても満たされない、そんな人ほど最適化という道具を手放すところから。 link
その他
広がり続けるアフリカの巨大都市とその郊外:世界のどこよりも早い都市化進行
学ぶべき唯一のメタスキルは人間の性質理解:人の心がどう動くか、何が注意を引き、何が行動を起こさせるか。生存、アイデンティティ、社会的承認。
📙本
哲人たちの人生談義 ストア哲学を読む:幸福とは、生が順調であること。10年前だったら「そらそうだろう、なに当たり前のことを」と思っていただろうけど、今はよくわかる。いろんなものを順調にしておくって思っているよりも難しいんだよな。 link
出来事が君の欲するように起きることを願ってはならない。むしろ、出来事が起きるがままに起きることを願うのがよい。そうすれば、道が開けてくるだろう。 (エピクテトス『要録』8[下巻 366頁])(126)
狼たちへの伝言:昭和のGOROで連載されていた、落合陽一の父としても有名なジャーナリスト・落合信彦の人生論。さすがの口の悪さ。しかし迫力が段違いだ。令和には生まれない(成長途中でカドがとれるか反社の餌食になる)傑物である。冒頭が最高。 link
いまの世の中は、ブタのような人間ばかりがはびこり、万事”金”のつまらない価値観ばかりがあふれている。若者は、といえば、その風潮にどっぷりとつかり、たかだか数千万円の住宅ローンが、人生最大の冒険、という寂しい生き方に満足しきっている。だが、人生は本当にその程度のものなのか。そうではないだろう。小利口に生きることを捨て、大きなバカとして生きれば、世の中はどんなにおもしろいか。退屈しないか。それだけを伝えたくて、オレなりの人生論を出すことにした。
菊と刀:本の内容もそうなんですが、著者ルース・ベネディクトの人生にグッときました。最優等生として名門大学を卒業するも作家生活はうまくいかず、文化人類学者に転向するも非常勤講師を10年近くやってやっと助教に。軍の依頼を受けてまとめた日本文化研究の本書をまとめてさぁ華やかな学術生活を、と思ったら出版の2年後に61歳で死去。 link
📻観た/聴いた
【うますぎ】川戸ドライブ 念願のランクルでいく郡山BBQ!福島の肉・酒・米を食いまくって飲みまくったらベロベロになった:最高のバーベキューがしたい。飯盒で炊いた米ってうまいよなーーーーー 。
若い読者のための経済学史:Audibleでじっくり聴いている。Podcast課題本の著者ヴァージニア・ウルフが経済学者ケインズと友人に関係にあった、というのを聴いて歴史の網を感じる。『肩をすくめるアトラス』の著者アイン・ランドがハイエクの著作をぼろくそに言っていたのは笑ってしまった。仲良くやれよ。 link
勉強人『「REAL VALUE」を勉強する』:マフィアという名前の通り、家族の構造をフルフルで取り込むあの界隈。苦手なタイプのハックです。そしてこのメディアにスポンサーとして金を出そうをいう会社があることが、資本を中心として巡る経済の幅広さと奥深さを示していると思う。しっかしいいポッドキャストだ。小川哲さんの声が沁みる。 link
🧩感じた/感じている
スペインの大火はどこまで広がるのか。心配。
一気に夏が来た。気持ちの良い夏だ。
ウィンブルドンの車イス部門シングルスで男女ともに日本人が優勝。さらにジュニアU-14男子も日本人がファイナリストに。日本が国として貧しくなるにつれ、世界的スポーツスターは増えていくだろう。好悪はバランスが取れている。
🍵関心事
『「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる』の言葉を、山王工業の選手たちはどう生かしたか。ウィンターカップは確実に山王の独壇場だったはずで、そのときトップパフォーマンスを発揮していたのは確実に深津と松本だろう。
八村塁が移籍したLAクリッパーズ、どんなチームになっていくのだろう。
米イランの煽りを受けて食糧危機や人道問題の深化が懸念されアフリカ諸国、いつ社会に火が回るか。
🥑活動報告
今週金曜まで在東京。神戸では感じられない、都会の空気で肺一杯にします。
お便りをお待ちしています。




