神戸から、おはようございます。
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先週ご紹介したCourseraのオンライン講座 “The Science of Well-being”が肌にあったようで、毎日ちょっとずつ見てはふむふむと手元のノートに学びをメモしています。よりWell-beingな生活のために必要なのは充実した人間関係と睡眠、感謝の気持ちなどで、一方で先進国における過度な収入や学歴、体重なんかは科学的に幸福度と相関性が認められていないようで、日々メディアで目にする「痩せよう!」「転職して収入アップ!」のような記事や広告を、なんとなくもにょっとした複雑な気持ちで眺めています。
普段の仕事の場でもままあるのですが、進化心理学の知見に触れると、いかに人間がバイアスにまみれた存在であるか、偏った認知を持つ(持たざるを得ない)存在であるかを改めて感じます。アンカリングやフレーミングなんかは、企業現場での有意性もあって広く知られてきていますが、「人の認知を決定的にブレさせているが本人も他人も認知しにくいバイアス」がまだまだたくさんあります。例えば、
行為者-観察者バイアス(自己奉仕バイアスとも):他人に対してはその行動の根拠を「種類・属性」に求めるものの、自分自身の行動原因は「環境・状況」にあると考える傾向。(例:あの人が遅刻するのはプロ意識が足りないから。私が遅刻するのは仕事が立て込んでいて忙しいから)
後知恵バイアス:物事が起きてからそれが予測可能だったと考える傾向。(例:私はCOVID-19の影響は1年以上続くと前から思っていた)
外集団同質性バイアス:自分の所属する内集団には多様性があると認知するのに対し、所属していない外集団には均質でステレオタイプであると認識する傾向。(例:ラテン系の人は明るい⇔日本人には県民性がある)
などなど。おもしろいですよね。上の3つだけでも良いです、過去1週間で、自分のみの周りでこのバイアスを実感したことはなかったでしょうか。多くの人が経験しているのではと推察します。
(↑を読んで「わかるわかる、他の人はそんなもんだよね(私は違うけど)」と考えるのも、一つのバイアスです。ダニング=クルーガー効果や優越錯覚など)
このバイアス・錯覚は「悪いもの」という文脈で語られることが多いです。が、サピエンス全史などでも扱われているとおり、このバイアスのおかげで私たちホモ・サピエンスは生き残ることが出来ました。バイアス・錯覚があるおかげで、空想や概念を通じて団結し、集団としてまとまることが出来たからです。
とはいえこの団結は、敵の概念を生み出します。上のバイアスで言うところの外集団ですね。本来、内集団も外集団も客観的なものではなく、ただの数字なのに。米国におけるアジア人襲撃の事件なんかを見ていると、その深刻さを感じます。
便利でもあり、問題も引き起こすこのバイアスという荷物。捨てられないので、上手く使いこなしたいですね。バイアスと、ファクトフルネスと、アルゴリズム思考をバランス良く。認知バイアス一般に関心がある方は、錯思コレクションなどがざっとイメージを掴むためのおすすめです。チラ見推奨。
くれぐれも、バイアスをなくそう、等と思わないように。バイアスの存在は、皆さんを皆さんらしくする要素の一つのはずですから。どんなものとも、上手くお付き合いです。
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ここからは、私が今週観たものや聴いたものなんかを紹介していきます。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
物理の世界に5番目の “力”:物理学の教科書で基本とされる4つの力「電磁相互作用」「重力相互作用」「強い相互作用」「弱い相互作用」に加えて5番目があるのではと2010年代中盤から指摘がされてきましたが、the Fermi National Accelerator Laboratoryがその存在証拠を掴みました。素粒子物理学を覆すミューオンの挙動ですって。三体Ⅱ読後なのでワクワクが止まりません。 (Link)
マリオカートから学ぶ、不平等をただす制度設計:「レースで遅れをとっているプレイヤーに最高のパワーアップアイテムを与え、彼らを先頭に押し上げてレースに参加させる」「転落してもすぐその横から再スタートする」など、上手く行動を導いていく仕組みが埋め込まれていると (Link)
コカ・コーラ缶のデザイン変更:5年ぶりに。 (Link)
Appleが運営する2億ドル規模の気候変動対策ファンド:2030年にカーボンニュートラルを目指すApple。投資先の一つは森林管理。ファンドマネジメントはゴールドマン・サックスが担当するとのこと。 (Link)
J-POPが新聞を殺した:『「書を捨てよ町へ出よう」は、捨てるべき書が手元にあるからこそ意味がある言葉。だけど、あまりにも言葉としてキャッチャーすぎるために、最初から書を読む気がない人間にも届いて、このままでいいんだと思わせる力も持ってしまった』そうだ、その通りだ。 (Link)
ストレスでハゲるメカニズムが明らかに:ハーバード大学のDr. Ya-Chieh Hsuらの研究で、マウスの毛の成長を一時停止させる主要なストレスホルモンと、ストレス信号の伝達に関与する細胞の種類や分子の解明に成功したとのこと。 (Link)
限界的練習(Deliberate practice)のすすめ:仕事であれ趣味であれ、よりよいパフォーマンスを出すためのHowToは多く研究がされており、そのうち有効なものの一つとされているのが「コンフォートゾーンを少しだけ上回る練習を集中して、かつ継続的に実行する」Deliberate Practice、その実行ガイドです。副題はHow to Be the Best。↓が記事中のサマリ。やっていきましょう。 (Link)
世界中に火種:ウクライナ国境に集結する数万のロシア軍、警官発砲で黒人が死亡したことにより緊張激化・夜間外出禁止令が出されたミネアポリス、イスラエルによる核関連施設攻撃に対する報復を宣言するイラン、 (Link)
📙本
三体Ⅱ 黒暗森林(下):面白かったです、本当におすすめ。三体はもともと第Ⅰ部がなかなか売れずに第II部で完結させるはずだったが、この三体IIが予想外に面白かったので第III部を書くことになったようで、その理由もよくわかります。楽しかった。三体Ⅲ 死神永生は5/25に発売予定で、今からわくわくです。 (Link)
人之彼岸:中国SFをもう一冊。「折りたたみ北京」などで有名な郝景芳の短編集。宇宙やAIのようなSFっぽさあふれる内容も扱いつつ、感情や情動などもテーマになっていて、良さげでした。作家は職業ではなく姿勢である、ということもおっしゃっていて、うんうんとなりました。 (Link)
息吹:テッド・チャン作の中華SF短編集。これも最高。 (Link)
情報の歴史21: 象形文字から仮想現実まで:手元に1冊。一気に読むようなタイプの書籍ではないです。認識を立体化させるための辞書・辞典としてデスクに設置。さっそく、Cobe Associeという名前の認識を豊かにさせてくれる一つの発見がありました。(Link)
🎥観た/観ている
Something Spaces:パブリックアートのプロジェクト。Chromeの新規タブ背景をこの作品群にかえる拡張機能を利用し始めたんですが、グッときます。めっちゃいい。 (Link)
“小さな世界”の大引っ越し「大阪大学外国語学部」:安定のNHKクオリティ。小さな研究室の中に、研究対象の世界が詰まっている。 (Link)
巨大生物集う謎の海 シャチ対シロナガスクジラ:オーストラリア西南にある海域に、多様な生物がある丸ポイントがあるらしい。これもNHK。すごい取材力。 (Link)
隔たる世界の2人:タイムループに閉じ込められた男が、愛犬が待つ自宅に戻る途中で、警官ともめて殺される恐怖を何度も繰り返す。アカデミー賞最優秀短編映画賞ノミネート作品。 (Link)
メルセデス・ベンツの電動セダンが2022年に発売:TESLA市場を食べにいく。
股関節を動かすストレッチ:肩甲骨・股関節周辺の柔軟性にフォーカスする、というのは面白い視点でした。このストレッチ、仕事の合間にやろう。 (Link)
📻聴いた/聴いている
Rebuild: 302: Speculative Life (hak):hakさんのチップのお話、素人が聞いていてもすごく楽しいのはなぜなのか。毎度出てくる寿司アナロジー。カフェイン断ちしてみようかな。 (Link)
🧩感じた/感じている
雑談は尊い。
スクリーンショット管理のGyazo、もう3年早く使い始めておくべきだった、とても便利。
南船北馬、みたいな単語がすっと口から出てくる大人になりたい。
結局、愛と想像力の問題だ。
信号の赤青切り替わりのタイミング、だいたいどこでも上手くできている。
🍵今の関心事
「形式への違和感」と「内容への違和感」をどう区別して伝えるか
東京にいる、雑談をしていて楽しい人をどうやって神戸に引っ張ってくるか
低脂質食生活を安定運行させていくためにできる努力差分はなにか
地味な正しさで人を引きつけるために私ができる工夫はなにか
どこからが芋でどこからが根なのか
🥑活動報告
今週金曜23日に、私が書いた本『情報を活用して、思考と行動を進化させる』がクロスメディア・パブリッシングさんから発売になります。もうAmazonで予約できまして、ナレッジマネジメントカテゴリーの1位にもなっています、有り難いことです。近々Kindle版も出ます。本を書くというのは初めての経験だったので大変だったのですが、いよいよ書店に並ぶのですね。楽しみです。近々本書の「はじめに」部分を公開するので、そのときに改めて皆さんに告知します。
6/15(火) 16時~で、↑の本の内容をご紹介したりするオンラインイベントをビザスクさんが開いてくださるそう(本当にいつもありがとうございます)なので、ご興味に少しでも触りそうな方はお時間をひっそり抑えていただけると。1時間くらいです多分。
本業のリサーチワークはだいぶ手が空いてきました。これから案件を探し、つくっていきます。周りで頭を使ったりファクトを掴んだりストーリーつくったりみたいなところでお困りのチームがいればぜひお声がけください:-)
みなさんの、読んで面白かったものや考えていることなんかも、ぜひコメントやメール、SNSなんかで教えてください。