こーべ通信

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こーべ通信vol.2:創造なき調和はありえない
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こーべ通信vol.2:創造なき調和はありえない

Cobe Associe代表・田中志がお届けします。

Tanaka Nozomi
Jan 11, 2021
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 先週から開始したこのニュースレターですが、もう30名以上の方が購読してくださいました。ありがとうございます。びっくりです。リンクからいらっしゃった方も、こんにちは。

 全部読んでもらえなくてもまったく問題ないです、気軽につまみ食いしてね。神戸の街は今日も平和です。

オフィス近くに芝生公園あるの、こころもちがとても良いです

 音には「音圧」という単位がありますが、書き言葉についても同じように言葉の圧というものがあるのではないか、と思っています。言圧、でGoogle検索すると2番目の結果が眼圧とはなにかについて説明するところにつながるので、どうも一般的概念ではなさそうです。弾圧、と響きが近くて、不穏ですし。

 とあるきっかけで、コーポレートディレクションというコンサルティング会社の古いニューズレターを見返しており、同社創業者・吉越亘さんが30年以上前に書かれた言葉の一つ一つがいまの自分に突き刺さっています。言葉の圧が高いです。

 第11号「企画力の本質(1989年1月)」で語られる『閉じる世界』と『開ける世界』世界を行き来することの大切さと難しさに強く頷き、第12号「認識の立体化(1989年4月)」で使われる「手に取るようにものごとの凹凸を把握」するという表現を見たときは、いつか自分もこんな言葉を紡げるようになりたいと強く思いました。

 一番のお気に入りは、第1号「経営戦略と日本的思考(1986年7月)」で出てくる「創造なき調和はありえない」という項です。言葉の圧も、そこで語られる内容も、です。

 …我々がしばしば経験することですが、供給側(当該企業)と市場側との不調和、これに伴う社内の甲論と乙駁という連鎖する不調和が、表面的な問題として観察されます。(中略)

 我々の仕事の基本的テーマは、こうした不調和から調和へとシフトする糸口を見いだし、どのようにすれば良いかという仮説(戦略)をつくることです。過去の我々の体験からいえば、不調和を惹起しているAとBとを和算して、その中間をとる、すなわち足して2で割るような考え方は、結果としてなかなか成立し得ない。つまり、戦略としてぴったり落ち着くという感じになりません。

 ぴったり落ち着く場合というのは、コンサルティングのアウトプットである、たとえば事業の基本的経済構造の解明、すなわち分析とロジックでよく理解でき、更にトップ・ミドル・ラインに対する我々のインタビューで把握した日常の商売感覚の中でピンとくるものがあるときです。すなわち、A側寄りか、B側寄りかの比重を別にすると、Aでもない、Bでもない第三の構図(考え方の枠組み)に到達し得た場合です。

 こうして考えてきますと、戦略をつくる、そしてその戦略に基づいて企業の向かうべきベクトル(速さと方向)を変える一連の思考と行動のプロセスには、新たな “創造”がなければならないことになります。戦略的変化(事業の進化と事業の転換)とは、常に “創造のプロセス”がともなうといえます。創造なき調和はあり得ないのです。

 多くの人が「AかBか」の思考にとらわれがちで、なんなら勇気がない人は「AもBも」に逃げてしまう中で、そこで「AとBと」を調和させる別の次元を創造すること。読めば当たり前なんですが、この言葉を言葉として紙に刻める世界線。文章全体に迫力を感じます。

 トップ将棋棋士の丸山忠久九段は、「将棋が強くなるときとは新しい価値観を発見した時だ」といいます。

将棋は抽象的なものですから、 人それぞれにとらえ方が違うと思います。
強くなるときは、 新しい価値観を発見した時です。
将棋にはそういうおもしろさがあります。
新しい手をあみだすというのではなく、
つぎつぎに応用がきく価値観を発見するということです。

 ただ価値観を借りてくるだけではなく、自分自身で、新しい価値観や概念を発見していきたいな、そしてそのことを語るときの言葉の圧力を多様に使いこなしたいなと願う新春です。

✏️読んだ/読んでいる

📃記事

  • ノルウェー、電気自動車が年間新車登録台数の半数超える:2025年までに新車すべてで排気ガスゼロを目指すノルウェー、2020年新車登録数の54.3%が電気自動車。アウディのe-トロン、テスラのモデル3、日産のリーフが人気だったようです。

  • もし社長との年内最後の1on1が箱根駅伝5区を駆け上りながらだったら。:最近、頭や脳、言葉って過大評価されているなと思っています。→『同じビジョン・ミッションを共有し、真に良い世界を本気で創ろうとする志を共有した仲間と、時には言葉を交わさずに「身体」を伴って何か大きな壁を登ってみること。そこで目には見えない「エール」を交換することは、何か「言語」以上に重要な意味を持っていることを感じざるを得ませんでした。』

  • The 11 biggest space missions of 2021 (and their chances of success):2021年に予定されている宇宙関連のミッション11つを紹介。2月には火星向けの3つのミッション(アラブ首長国連邦、米国、中国で1つずつ)が、10月にはロシアの45年ぶりの月関連ミッションとSpaceXが主導する民間人(含 トム・クルーズ?)のISS滞在ミッションが行われるなど、活発な1年になりそう。

  • Meet the most famous North Korean on YouTube:北朝鮮出身のYoutuber、Jun Heoを取り上げた、個人的に大好きなメディア・Rest of Worldの記事。韓国における北朝鮮出身者への反応が見える、難しい記事でした。”being North Korean is not a curse.”の言葉が突き刺さる。

  • 「匂い」についての知られざる5つの事実とは?:下で紹介するワークマンの書籍の中で、時間帯ごとに店舗内の香りを変える、とのお話があり。ほんとに?→「近年の研究によるとおよそ1兆もの匂いが嗅ぎ分けられるともいわれています」

  • マーケター必読「ブランディングの科学」の基礎を約10000文字でまとめました:積ん読になったままの本、先にAbstractを読む気持ちで。森岡さんの本の中でサイコロの例えがあって、それが秀逸だった記憶。振られないサイコロで多くの面をとるより、よく振られるサイコロに小さくても面を乗せておくほうがいいよね→「狭いカテゴリでNo.1になるより、より広いカテゴリでNo.3を目指した方が売上に効く場合は往々にしてあります。」

  • コンサルファームで守るべきスライドのお作法 ~絶対にこれだけはするな!~:仕事におけるスライドライティング、本当に些末なことなんですが、ちょっとした対応で「できる感」を演出できるのでお得です。

  • OpenAI debuts DALL-E for generating images from text:自然な言葉で説明を入力するだけでAIが画像を書いてくれる世界。昨年大きく話題になったGPT-3を開発したOpenAIチームの次の成果。話はそれますが、GPT-3の独占ライセンス、米Microsoftが取得していたんですね。知らなかった。

  • Finite and Infinite Games: Two Ways to Play the Game of Life:「人生は有限!逆算して無駄のないように!」のような単純な話ではなく、人生観として有限・無限どちらを選択するかで訓練or教育の比率、遊びに対する捉え方など変わるよね、プレイしている人生がゲームとしてどちらなのか認識しようね、という優しいお話でした。今のところ私は無限のゲームをプレイしている気でいます。

  • Does Coconut Oil Deserve Its Health Halo?:「実は健康に良くないけどなんとなく健康に良さそうな食品」として利用されているココナッツオイル、プラセボ効果も含めてその健康効果あるんか?と問いかけるNYTの記事。ファクトフルネスでいこうな。

  • The Way We Make Fitness Resolutions Is All Wrong:なぜ「今年こそ運動するぞ!」という年始の誓いは守られないのか。フィットネスクラブの予約は12-1月で30%増加し、1/19までにはみな運動をやめてしまう。これは、意志の強さの問題ではなく、突然頑張りすぎて燃え尽きちゃうから。ゆっくりいこうね。

  • 3D printed Motorcycles, Quantum Teleportation and Cheap Water Desalination:含塩水の淡水化を効率的に行う手法開発、3Dプリンターで作られるバイク、自動運転配送サービスの開始、などなど。深川市で自動運転バスの定期券発行が始まったことなどをみて、世界は少しずつ動いているぞと感じます。

📙本

  • ワークマン式「しない経営」:ここ数年メディアに登場する機会の増えているワークマン。土屋専務が経営の考え方をまっすぐにお話しされています。製品開発やブランディング等の表面ではなく、それを動かすシステムの描写が面白いです。

  • 私のウォルマート商法:年間50兆円以上の売上げを誇るウォルマートの創業者、サム・ウォルトンが語る企業立ち上げの物語。成功させるためには、徹底的に調べ、徹底的に実行し、徹底的に振り返る。抜け道はない。それを教えてくれるお話。

  • ユーザーイリュージョン―意識という幻想:読み応え、噛み応えのある本。私たちが感覚だと思っている身体感覚は、生データなんだろうか。それは幻想ではないのか。私と自分の間の区別を考える、深い時間になりました。


🎥観た/観ている

  • 2020, in 7 minutes:リベル系大手メディア、Voxが2020年を7分間で総括する動画を公開。恥ずかしながら、ポーランドの政治混乱などはまったく無知でした。反省。

  • PRIMER 2020:未来に関するカンファレンスとして2017年に始まったPRIMER、その2020年動画がVimeoで公開されていました。まだ全部は見れていないのですが、 “Disparities in Virtual Care”や“Amplifying Voices”などが気になっています。

  • Fictional WATERCRAFTS size Comparison:映画やアニメに登場する船の大きさを比較した約6分の動画。ワンピースで主人公たちが乗る帆船ゴーイングメリー号が25メートル、豪華客船タイタニック号が269メートル、同じくワンピースの魚人島で出てきたノア号はより巨大な2,500メートル。おっきーい。

  • House of Ken Griffin – The Story of Citadel | A Documentary:350億ドル以上を運用する投資ファンド、シタデル・インベストメントの創業者である、ケネス・グリフィンの生涯を描く15分のショートドキュメンタリー。18歳のときに親族や友人から約26万ドルを調達してヘッジファンドを始め、ブラックマンデーを契機に大きく儲け、31歳のときには20億ドルを運用していたと。運、そして胆力と実行力。

📻聴いた/聴いている

  • Succeeding with ADHD:ポッドキャスト。比較的人生が進んでからADHD(注意欠如・多動性障害)と診断された軍所属パイロットと起業家に、どう人生と向き合ってきたかを聴いています。HBRもこういうシリーズをやるんやなぁ。ハードに戦う/戦ってきた/戦っていく人が集まる場所だからこそ必要なシリーズなのかもしれない。

  • 瑠璃色の地球 | 手嶌葵:カバー曲を聞くとその人なりの解釈というか思いみたいなものが原曲との差分としてドバっと触れられるから好きです。

  • ショスタコーヴィチ『祝典序曲』:最初のトランペット部分を聞くたびに、なにか始まる予感がします。始まるよー。

  • ヨハン・シュトラウス『美しく青きドナウ』:無学なのではじめて知りました→「『美しく青きドナウ』の冒頭が演奏されると一旦拍手が起こり演奏を中断、指揮者およびウィーン・フィルからの新年の挨拶があり、再び最初から演奏を始めるのもならわしである(Link)」


🧩感じた/感じている

  • 2時間ごとに軽くお散歩すること。できれば新しい道で。

  • 桂歌丸さん「泣かせることと怒らせることは簡単。笑わせることぐらい難しいことはない」矜持を感じる言葉で素敵。

  • あらゆる人が集まる場には笑いが必要で、そのあとに「実はね…」が出てきてから本物の何かが始まる。

  • 矛盾のないところに真実はない。

  • ワクチンと博打で韻を踏める、ワクチンの成功確率評価が博打のイメージに引っ張られて低く感じられる、みたいなことはあるのかしら

  • 「○○していること」よりも「○○しているように見えること」を重視してしまう人間のバグ。家にいて静かにしているよりもマスクをつけて外出することを選ぶ、車に乗らないことよりもエコカーを買いアピールすることを選ぶ、など。

🍵今の関心事

  • 書き言葉の迫力はどこからにじみ出ているのか、それを感じるアンテナはどう育つか

  • 2024年に米国共和党はどんな形をしているのか

  • スポーツでよく言われる「体の軸」とは何なのか

  • もし全家庭が鍋でお米を炊く文化が浸透しきった社会があったとして、新しく炊飯器の開発に成功した場合、どんな営業・マーケティングを行うのか

  • 5年後に視覚を失うことがわかったとして今から何の準備をするか


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