こーべ通信:『道が開けるままに進め』
おかえりアルテミスII、オーバービュー効果を求める心、映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』、Tennis Home、Jesus Pizza、全粒穀物革命、“誠実な科学”と”面白い嘘”、複雑さが昇進の鍵、ゾンビフロー状態、現代語訳風姿花伝、岩波『世界』5月号、名人戦第一局、東京出張。
おはようございます。この後神戸空港から羽田に向かいます。年度初めで大活況。神戸でもヒノキ花粉がすごいのに、東京は花粉飛散のステータスバーが『極めて多い』に振り切れていて不安です。ただでさえ細い眼が更に開かなくなるかもしれぬ。
2日に打ち上げられ11日土曜に帰還した(おかえりなさい)アルテミスIIが届けてくれている月・地球の画がどれも美しく、惚れ惚れとしています。月にも大地があり、わたしたちの世界は広い。あらゆる国境は空想の産物で、地球の青は圧倒的な現実である。この感覚は「Overview effect(オーバービュー効果)」といわれるもので、宇宙から地球を眺めた人に起こる、万物のつながりを感じ生命の儚さを深く認識する感覚のことです。戦争やAIにあたふたする私たちに一番足りない感覚かもしれません。写真を眺め、映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を観にいきましょう。コナンよりロッキーです。 link
先週も毎日お仕事ブログを書きました。
会社員をしていれば、新入社員や部署異動など4月は自然と変化が訪れます。一方私はしがない独立零細事業者で、待っていても(静かな衰退以外は)何も起きません。正直、停滞やマンネリを感じる瞬間がないと言えば嘘になります。変化は自分でつくるしかない。さて、何をしようか。日々実験です。
『道が開けるままに進め(”Proceed as the way opens”)』、クエーカー教に伝わることわざです。これは進化生物学者が隣接可能性(Adjacent Possible, 現在の状態から一歩だけ進んで到達可能な新しい状態や形態の範囲)と呼ぶ概念とも繋がっています。たとえ先が遠く見えなくても、一歩前進することで新しさを追求すること。どんなときも、決して絶望してはいけませんね。常に何かできることがあり、一つの行動が次の行動へと繋げていきましょう。テニス事業も、書籍執筆も、↑ブログも全部、私にとっては隣接可能性の追求です。せっかく青い芝生が隣にあるなら、お土産片手に、ふらっと呼び鈴を鳴らしましょう。
お便りをお待ちしています。
💼心惹かれたもの
Tennis Home:テニスコート付きの家ばかり紹介している売買・賃貸仲介サイト。夢を実現するのに必要な金額が30億円ほどとわかりました。来世の目標です。 link
JESUS PIZZA:週末はアメリカンなピザパーティでした。直径50cmでほぼマンホール。ペパロニとハニーベーコン。うんめかったです。 link
FとU,C,K,Y,O,Uしかキーがないキーボード:買いました。 link
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
全粒穀物ルネッサンス:バターと白い小麦粉の塊であるクロワッサン、真っ白小麦粉が圧倒していたベーグルやピザ生地などにローカル栽培の全粒穀物がどんどん使われるようになってきている。NY・ブルックリンのGranary and Millは自家製粉した全粒粉でクロワッサンを焼き、カリフォルニアのTehachapi Heritage Grain Project(LA拠点で活動する坂井園子さんが関わっている)は、地元の穀物農家から直接仕入れた素材を焼き上げている。『いつもの構成に15-30%地元の全粒穀物を混ぜるだけで、より深みと贅沢さを加えられる』と。工業化が効率と引き換えに捨てたもの、精製された均一な小麦粉が失った穀物本来の風味を、職人や小さなベーカリーが取りもどそうとしている。>記事を読む
自転車都市となった仏パリ:2024年夏季五輪のレガシーとして、合計870マイルに及ぶ自転車レーンがパリ市街に張り巡らされている。全移動手段に占める自転車利用は2020年の5%から2025年に11%へ倍増。主要道路の片側車線がそのまま自転車道に変わった。インフラが行動を変えた典型例である。意識改革でも目先の補助金でもなく、物理的な存在を変えることによる市民の行動変容。都市設計の教科書のような事例だが、驚くほど単純な原理が働いている。行動を変えたいなら、意志やインセンティブよりも環境にアプローチすべきである。 >記事を読む
テックメディアがGoogle検索から消えている:CNETやWIREDなど米国の主要テクノロジーメディア10社は、24年2月からの2年間でGoogleからの月間オーガニック訪問を6,500万回(全体の約6割)分失った。テック系だけではなく金融系のNerdWaleetは▲73%、健康系のHealthlineも▲50%である。Growtikaの分析によれば、この減少はGoogleによるAI概要機能によるものだという。メディアが書いた記事をGoogleが自動で吸い上げ、検索画面最上部でユーザーに直接答える。この構造が続く限り、テックメディアの衰退は加速するだろう。 >記事を読む
サンフランシスコの犯罪はAI技術で激減:SFといえば車上荒らしをはじめとする犯罪が溢れる年だったが、この3年で重大犯罪が4割以上、窃盗に至っては半減している。この変化を生んだのは(この記事を書いているa16z投資先である)Flock社のAIカメラ導入であり、実質的に警官の数が10倍になったほどの監視能力向上が犯罪率を押し下げたとされている。Flockは現在年間70万件の犯罪解決に貢献している。技術による治安改善は、プライバシーとの緊張関係を避けられないが、技術により犯罪抑止・解決が可能だという事実を示したことは大きい。>記事を読む
“誠実な科学”と”面白い嘘”の競争:科学に厳密な人は本来”事実”に忠実であることを是としてきたものの、商業主義が浸透するに伴い、プレスリリースや論文要約(アブスト)まで誇張・Hypeにより汚染されつつある。研究者以外にその論文の紹介者や科学メディアが注目を競っており、発見の意味を誇張して新規性や革新性を過度に強調することが常態化している。このまま行けば科学コミュニケーションは『自信満々な疑似科学』『誇張された自己啓発』に占領されてしまうかもしれず、この記事は、「科学者よ、ペンを持て!少しでも正確で誠実なものを書け!」と迫る。完璧なコミュニケーションなど存在しないが、信頼に足る存在ではあり続けるために必要な態度である。 >記事を読む
「ごちゃごちゃ複雑にするやつが昇進する」この哀しき現実:元記事タイトルは”Nobody Gets Promoted for Simplicity(シンプルさで昇進する人はいない)”。機能Xを50行・簡潔で読みやすく引き継ぎやすいコードで実現したエンジニアに対して、昇進レビューでの記述は「機能Xを実装」の一行で終わってしまう。さて、同じ機能をより堅牢で複雑で拡張可能な仕組みで実装し、数倍の時間をかけた隣席のエンジニアは、自らの仕事複雑さを語り、賢そうにみせ、見事に昇進を勝ち取ることになるのだ。組織の評価システムは複雑さに報酬を与え、単純さを見えなくする。エンジニアリングに限った話ではなく、報告書を分厚くする人、会議を増やす人、プロセスを足す人、あらゆる職種に言えたことである。複雑にする能力は、どの職種でも過大評価されている。削ろう。もっと削ろう。本質以外何も残らないまで削ろう。 >記事を読む
真のキャリアアップの道は、より多くのツールやパターンを学ぶことではなく、それらを使わないタイミングを学ぶことだ。複雑な要素を追加することは誰にでもできる。しかし、それを省くには経験と自信が必要なのだ。
“ゾンビフロー”が文化を席巻:一昔前まで幸福状態や最高効率状態の象徴だった”フロー”状態。情報システム研究者のシン・ウーは、Tiktok/ショート動画プラットフォームでだらだらと時間を使ってしまう状態を「パッシブ・フロー」と名付けた。目標なき没頭、自己認識の喪失、時間の変容という3つの特徴が、チクセントミハイが定義したフロー状態と完全に合致しているのである。さて、これは偉大な発見なのだろうか。あるいは、ゾンビ化したフロー状態なのだろうか。 >記事を読む
10年前、チクセントミハイの著作に出会った時、私は人生における最大の挑戦はフロー状態に入る能力だと確信していた。しかし最近、正気を保ち自己認識を維持するために重要なスキルは、むしろゾンビのようなフロー状態から抜け出す能力なのではないかと考えている。「挑戦がなければ、人生に意味はない」とチクセントミハイは書いた。先人たちもそれを知っていた。人生は、適切な種類の困難であるべきなのだ。
スマホで退屈を殺すたび、別の何かが死んでいる:↑記事と一緒に。電車や信号の待ち時間、エレベーター移動の十数秒。退屈が訪れる瞬間を、あなたはスマホで埋めていないだろうか。退屈は確かに居心地の悪いものだが、無意識スマホでそれを解消することで何が起きているか。この記事が問いかけるのは、退屈の不在がもたらす空虚さである。かつて、退屈は創造の前室・控え室であり、内省の入口であり、欲求の信号でもあった。それを遮断し続けると、自分が何を望んでいるのかがわからなくなってしまう。満たされているのに空虚。忙しいのに充実していない。その感覚に覚えがあるなら、スマホを鞄の奥底にしまおう。シンプルな退屈を取り戻すことが処方箋になるかもしれない。>記事を読む
📙本
現代語訳 風姿花伝・三道:次のポッドキャスト課題本。現代演劇の第一人者・岡田利規の新訳で、気軽に”パフォーマー””バイヴス”等が出てきて読みやすい。品位に欠けた粗雑な能は強さではなく、弱いパフォーマンスを幽玄だと褒めそやすのもやめようと。真理は時代に依らないのだ。 link
世界 5月号:購読して本当に良かった。今月号は、冒頭、茨木のり子の詩から始まって中東情勢の分析に至る流れが素晴らしい。紹介の通り、迫力ある誌面。迫力ある仕事がしたいですね。 link
『世界』は、良質な情報と深い学識に支えられた評論によって、戦後史を切り拓いてきた雑誌です。創刊以来75年、総合雑誌として読者の皆さまの信頼に支えられてきました。とりあげるテーマは、政治経済、安全保障、社会、教育にとどまらず、AI、デジタル社会、ジェンダー、気候変動などの分野にも積極的に取り組んでいます。複雑な危機の時代に、それでも知りたい、と考え続ける読者に応えたい。世界と関わっていくための窓であり続けたい――そんな思いから、迫力ある誌面づくりに邁進いたします。
📻観た/聴いた
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』:大好きな小説が、大好きな作品になりました。ライアン・ゴズリングの名優っぷりよ。 link
Rest of World/2026 Photo Contest:”Inherited Innovation”をテーマに40カ国以上から集められた写真のコンテスト。伝統的な干物天日干しと、太陽光パネルでのスマホ充電。 link
🧩感じた/感じている
迫力ある仕事をして、迫力あるアウトプットを生みたい。岩波『世界』の5月号、宣言通り、迫力ある内容でした。見習わなきゃ。
政党の話よりも、パーティで話をしよう。その方が世界が良くなることに貢献できます。
🍵関心事
仕事】スプレッドシート登場以前の世界はどんな姿をしていたのだろう。 link
将棋】糸谷八段が藤井聡太名人に挑むタイトル戦が開幕。糸谷先生の独創性に心打たれる。「途中折れることなく最後まで粘ることができた」と充実して言える挑戦者、本当にかっこいいと思う。
テニス】モンテカルロ・マスターズで準決勝までいったヴァシュロ、めちゃくちゃかっこいいプレイスタイルで魅力的。
🥑活動報告
今週金曜まで東京出張。たくさん話をして、たくさん酒を飲みます。
今週〜来週にも楽天市場への出店承認が下りるはず。商売するぞ。
お便りをお待ちしています。








