神戸から、おはようございます。
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最近、お昼ごはんはオフィス近くに来てくれるキッチンカーで販売しているお弁当を食べることが多くなりました。毎日メニューが変わって楽しいし、対面に立ってくださるお姉さんのちゃきちゃきっぷりも素敵だし、「Tポイントカードお持ちですか?」と聞かれるよりも「今日は少し遅いですね、付け合せはお茶でいいですか?」と問いかけられる方が気持ち良い、というのもあります。
たまに、自分が渡しているこの5百円玉はどこに向かうんだろうと想像してみることがあります。その5百円玉は、お弁当販売が終わる13時頃に、お姉さんが運転する車に乗ってお店に帰るのかもしれません。そのあとはレジに入るのかもしれませんし、翌日のお弁当仕込みのための買い出し資金として、その日のうちにお店近くの八百屋さんの手に渡るのかもしれません。(それくらいアットホームで素敵なお弁当屋さんです)
この「お金の巡りを意識してみる習慣」が私は結構好きです。どんなお金も巡ります。
例えば最近、 “警察官用の宿舎 40億円で新型コロナ軽症者用に改修も使われず”というニュースがありました。「私たちの血税が!」みたいな声がすぐに出てくるんですが、この40億円はこの世から消えたわけじゃなくて、改修を担当した業者にお金が渡っている筈なんですよね。そうすると、40億円はそこから巡り始めます。一部はお給料になるでしょうし、一部はその業者の使う備品や道具代になるんでしょうし、一部は家賃になるはずです。またそのお給料の中から、一部は食品になるんでしょうし、一部は学費になるんでしょうし、一部は車のローンに回るのかも知れません。
もちろん「行政は無駄遣いして良い」みたいな話をしているわけではなくて、巡るものを考えないと、局所解としての善し悪しを判断してしまいそうだな、それではなかなか前進しなさそうだなと感じています。そこだけを点を見ると無駄遣いに見えるから悪、貯金として貯めておくから善、のように。これが自分だけに向けられた視点であればまぁ勝手にやればいいんですが、他人だったり、他社だったり、人のことをあれこれ言い出すと、ややこしくなってきます。
この局所解の考え方は、vol.15「良いリーダー&コーチへの道程」でお届けした、 “勝つか学ぶか”というコンセプトにも近いものがあるかも知れません。その一瞬で捉えると損か徳か、勝ちか負けかがあるかもしれません。しかし時間軸を伸ばしてみたり、地理空間を広く捉えたり、より大きな社会集団で捉えれば、それ自体は中立的なものであり、執着すべき対象ではないはずです。(マルクス・アウレリウス“自省録”を再読して、この考え方の大切さを再認識しました)
お金も、血も、言葉も、あらゆるものは巡ります。
一瞬の何かにとらわれず、大きい円環と、より細かな化学反応と、それぞれに目を向けていきたいなと思う最近です。
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ここからは、私が今週観たものや聴いたものなんかを紹介していきます。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
「オカルト」の魅力:「超能力がないより、あったほうがおもしろい。超常現象が起こったほうが面白い。この世を陰から支配する秘密組織があったほうがおもしろい。」その面白さに人間は抗えない。 (Link)
「行動力がある」とは、いったいどういうことか:これもいい記事。自分で「やる」と決めたことを果たす力が行動力。そう考えると、センスや結果はあとから付いてくるもの。自分で決めたことをやりぬく人、取り組んでいることがどんなにくだらないことであっても、魅力的に映る (Link)
水を叩いて世界を変えるのは難しい:「水を叩いて変形させることは可能だ。手応えもあるし、派手に水飛沫も上がる。でもその変化は一瞬で、すぐに元に戻ってしまう」その通りだ。 (Link)
知的生産のための活動ループ: よりよい学びを深めるために。最近出した自著に近いメッセージを勝手に感じていました。 (Link)
EQという概念がもたらした弊害: 記事の中ではEI(Emotional Intelligence)とされているこの概念、感情労働者や、サービス業において様々手垢がつけられています。怪しげな人たちの、政治の対象になってはいないか。 (Link)
中国の人口がついに減り始める:2013年に一人っ子政策を緩和した中国ですが、元々の政策の力は想像以上に大きかったんでしょうか。2000年にわずか7%だった高齢者比率は2019年には12.3%に。 (Link)
米国陸軍が外骨格試用を開始:ブーツ型のDephy ExoBootを使うと重い荷物を運んでも疲れにくくなるんですって。いろんな作業員の方にユニフォームとして支給すべきはロゴ入りの何かではなくこういうものなはず。 (Link)
水素で動く貨物船がいよいよ稼働:フランスのCompagnie Fluvial de Transport (CFT)が開発した水素を動力にする貨物船が今年後半にもセーヌ川で動き始める予定。 (Link)
子供を持つことに対する捉え方は柔軟になりつつある:Modern FerilityとZOLAが共同で行った調査 “"Modern State of Fertility 2021”より。5人に2人は「適切な相手であれば、子供を持つより前に婚姻関係を結んでおくことは重要ではない」と答え、7割の人は「婚外子を持つことはタブーではない」と答えた。 (Link)
中年期の睡眠時間が認知症の発症リスクに関連:夜にすること?寝る一択。これは科学ではなく思想であり、信条です。 (Link)
グラフィックスが“初代プレステ”レベルと話題のJTB製バーチャル空間:絶望と笑いが同時に来ました。 (Link)
📙本
村上春樹、河合隼雄に会いにいく:10年ぶりくらいに読んだんですが、コミットメントだったり、癒やしだったり、他人との関わり合い方だったり、いろんな問いをくれる本でした。 (Link)
大J林:千原Jr先生が編み出した220の語句を厳選。言葉のセンスや笑いへのこだわりからぜひ何かを学び取りたいと思っております。 (Link)
息吹:テッド・チャンのSF作品を引き続き。『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』がめちゃめちゃグッときています。あとがきはこちらで読めます、ぜひ。 (Link)
東独にいた (4):盛り上がってきました。田中家総出で愛するマンガの一つ。 (Link)
🎥観た/観ている
ダニエル・カーネマンとユヴァル・ノア・ハラが語るこれからの人類:カーラ・スウィッシャーを聞き手に。人という種族をメタに見ている2人の巨人の話がめちゃいいです。英語字幕でどうぞ。 (Link)
Yamauchi-No.10 Family Office:任天堂の魂を感じる。 (Link)
100分で名著『自省録』:10年ほど前に読んでぐっと心に突き刺さったままの本書を、NHKのシリーズで改めて解釈をしてみる時間でした。アドラー心理学好き、「嫌われる勇気」で心が動いた人には絶対おすすめ本。言葉のソリッドさが群を抜いています。 (Link)
火星を飛ぶヘリコプター:人類が空を飛んだ二つ目の惑星は火星に。これがどれだけすごいんや?という点はこの記事を。火星の大気は地球の100分の1以上の薄さであるため、「火星の地表でヘリコプターを飛ばす」という行為の難度は「地球の高度3万メートルでヘリコプターを飛ばす」ことに相当。MITテクノロジーレビューの日本語記事もグッとくる内容でした。 (Link)
📻聴いた/聴いている
Rebuild “Killer Contents #5”:サポーターになるべきPodcast #1、Rebuild. (Link)
🧩感じた/感じている
カミュが「ペスト」で指摘したとおり、絶望に慣れることは絶望そのものよりも悪い。
仕事でも何でもLess is more / Small is beautiful派だが、作業用のディスプレイだけはBigger is better.
毎日、辞書の任意の見開きページを開いてそこにある言葉を自分の中に取り込んでいく習慣を続けているんですが、めちゃめちゃ良い。
誰かに対して怒ったり悲しんだりすることは、その相手に対する信頼の欠如から生まれる。
自分の花粉症症状に終わりが見えない。
🍵今の関心事
扱っている道具(包丁やラケット、キーボードやカメラまで)まで自分の身体の一部と見なせる/そう扱えるようになるために近道はあるのか
多様性を計測する次元としてなぜ性別・性的嗜好・人種が選別され、「白人男性のみ」「中年男性のみ」の集団は即座に多様性の欠如を指摘されるのか。また、多様性を計測するベクトルはいかに選定されるべきか
人はなぜ政治に期待し、失望するのか(ジミー・ヘンドリックスは「愛国心を持つなら地球に持て。魂を国家に管理されるな」と言った)
「緊急」という言葉の持つ緊急度は、人々の認知の中で、この1年でどの程度変化してきたか
大量の積ん読をどこで精算していくか
🥑活動報告
今週金曜23日に、私が書いた本『情報を活用して、思考と行動を進化させる』がクロスメディア・パブリッシングさんから発売になりました。本になった経緯をここに書いていて、はじめにはここから読めます。Kindle版、発売されるんですが、まだAmazonに登録されていなくてやきもきしてます。いろんな人に読んでもらえるといいなぁと思っていて、良い内容だったらそう伝えて欲しいし、いまいちだったならその感想もまっすぐに伝えて欲しいです。
3ヶ月毎にリリースしている「社会変化兆候調査」の第5回をSpeakerdeckに上で公開しています。5分でサクッと流し読みできるので、関心の網にかかったところだけ深めて頂けると。次もやるぞ。 (Link)
この週末、献血に行ってきました。この社会情勢の中、企業や団体での集団献血が実施できないようで、輸血用の血液が不足しているとのこと。「できることを出来る範囲で精一杯やる」が信条なので、それに従ってきました。誰かや何かに対して怒ったり批判するときに、そこで終わらずに、自分だったら何が出来るんだっけ、を考えるようになったのは、コーチングを勉強したことの一つの良い効果な気がします。
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