神戸からおはようございます。今日は祝日ですが、変わらず月曜日にお届けです。
さて、このニュースレターはいま136名の方が登録してくださっています。いつもありがとうございます。登録は↓からです。
仲の良い方ならご存じだと思うのですが、私は将棋が好きで、いまでもアプリで将棋を指したりしています。一時期は頑張って研究もして将棋ウォーズ内で三段までいったのですが、その後ふわっとしていたら初段まで落ちてしまい、とほほとなっています。
いまのプロ将棋界は実質的な四天王体制でして、そのうちの一人が渡辺明名人です。将棋好きならもちろんご存じでしょうし、漫画が好きな方ならあの「将棋の渡辺くん」の渡辺くんです。ギャンブルとぬいぐるみが好きな人の中で一番将棋が強い人です。(ちなみに先週ご紹介した「みじかい髪も長い髪も炎」の著者、平岡直子さんと同じ1984年生まれです)
そんな渡辺名人がご自身が指した対局(第79期名人戦第3局)を解説する動画が7月末にYoutubeにあがりまして、界隈をざわつかせています。名人本人が、30分の長尺で、オープンな場でかつ無料で自分の将棋を解説する、これはなかなかにないことです。結果、将棋で二十万再生超えです。↓に動画URLを貼るんですが、動画序盤に渡辺先生本人がおっしゃっているように、将棋を相当に指せる人でなければ面白くないコンテンツです。それが何でこんなに人を惹きつけるのか。
ここ数週間はまり続けているPodcast、いんよう!の第139回が「将棋と病理診断と画像と直観」というタイトルで、病理医と棋士の思考法が近いのではないかという仮説をお二人が扱っています。ざっくりまとめると、将棋棋士の仕事を「ただ盤面を解析し打ち手を指すだけ」と捉えるならば、他の医療者などへの説明責任を持つ病理医の仕事とは距離がありつつも、対局後の感想戦や一般に向けた解説まで考えると、比較的近似性が高いのではないかというお話でした。
仮にそうだとすると、この動画で公開されているのは、日本最高峰の病理医が生検を行っているときに頭の中で起きていることを近似しているのかもしれません。そして、動画後半で扱われているAIの活用法や、相矢倉という歴史ある序盤において端歩がついてあるかどうかで優劣が変わるというテーマは、噛み締めがいのある内容だなと感じています。自分も相手もAIで研究し尽くしているという環境での戦いとはなにか、そもそも研究では何をやるのか、将棋のような非確率ゲームにおける研究と麻雀やポーカーのような確率ゲームにおける研究にはどんな差異があるのか、戦略・戦術そのものの進化にこれはどう貢献するか…
自分の中で全く消化できていないのですが、自分の思考・アプローチを進化させるための取っ掛かりになるのではという予感がしています。結論はありません。ただ予兆と、おもしろいぞここはという熱量の共有です。共感してくれる方がいると嬉しいです。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
聖書という鈍器:「聖書のカドで人を強く殴ったら、痛いですよ。」正しいけど優しくない。それでは人は変わらないと痛感しています。 (link)
日本語不思議辞典:大好きなテーマのWebでした。『てんこ盛りの「てんこ」って、何のこと?』すきだ。 (link)
犯罪者には田中が多い:柞刈湯葉さんが2019年に書かれたSF作品。SNSや社会描写のリアルさを感じつつ、田中当人として楽しく読ませて頂きました…これをとりあげたいんよう!のPodcast(第75回かな?)も神回だったのでおすすめです (link)
毒舌屋や皮肉屋は出世しない:ユーモアのない毒舌や皮肉は、ただの害悪だと思っています。心の中で念仏のように唱えるにとどめるんです、大人なら。そして酒か涙と一緒に水に流すのです。 (link)
電子商取引の市場規模: “新型コロナウイルスの感染症拡大の対策として、外出自粛の呼びかけ及びECの利用が推奨された結果、物販系分野の大幅な市場規模拡大につながった一方、主として旅行サービスの縮小に伴い、サービス系分野の市場規模は、大幅に減少しました” 減少幅がなかなか。 (link)
厳しい教育が子どもの脳を縮小させる:カナダ・モントリオール大学の研究。2-9歳の間に怒鳴ったり、揺すったり、叩くなどの厳しい教育を受けた子供の、12-16歳になったときの不安レベルやMRIによる脳変化を調べたところ、幼少期に過酷な教育を受け続けた子どもは、思春期になると、虐待を受けていないにもかかわらず、前頭前野と扁桃体が縮小していたと。 (link)
ワクチン接種を促すナッジの力:カリフォルニアの9万人を対象にした研究。予防接種の対象となった1日後にリマインダーを送信したところ、リマインダーを送信しなかった別のグループに比べて、予約率が6%、接種率が約3.6%上昇したと。ここ2年位、行動経済学の社会実験が各所で行われているようにみえ、今年の後半〜来年くらいに面白い論文がどんどこ出てくるのではと勝手に期待しています。 (link)
Google検索のトレンドはメンタルヘルス状況を可視化しない:主観的孤独とは相関するものの…という味わい深い研究。“Journal of Affective Disorders”なんていうのがあるのね。 (link)
ニュージーランドに眠る古代の超大陸の手がかり: “ニュージーランドの南島とスチュワート島の下に、今から10億年も前の「超大陸」の陸塊の痕跡が隠れていたのだ。” ワクワクが止まらない。 (link)
パイナップルから見る地政学:中国は3/1に台湾からのパイナップル輸入を突然停止。そこでだぶついた生産を対日輸入に振り向け、3-6月の対日出荷は前年同期比で8倍余りの1万6,556トンに急増。世界は巡っている (link)
火星の地下にあると予想された「液体の湖」は凍った粘土の可能性:7/29に科学雑誌『GeophysicalResearchLetters』に掲載された論文。2018年当時に得られた信号と、凍ったスメクタイトでレーダーが反射したときの信号がほぼ同一であることを検証したとのこと。マイナス50度…すごい執念だ。 (link)
研究不正を避けるためのケーススタディ:米国保健福祉省(HHS)と研究公正局(ORI)によって開発された、責任ある研究活動を行うための方策を学ぶコンテンツ。倫理的強度因子。4人の登場人物になりきって、自らを問う。 (link)
No, Simone Biles Isn’t a Quitter:8/1配信のQuartz週末レターでもとり上げられた、米国の女子体操選手・Simone Bilesについて書いた記事。性犯罪と組織的隠蔽と戦うSimone Biles。「米国で発生した1,000件のレイプ事件のうち、975件の加害者が釈放される」という驚くべき事実。アスリートとコンテンツの関係性。最後のパラグラフは圧巻。機械翻訳でもよいので、通読して欲しいやつです。別記事の “great refusal”って表現にもぐっときました。 (link)
AIツールがパンデミックで「役立たず」に終わった理由:「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)との戦いにおいて、AIツールはまったくといっていいほど事態を改善しなかったというのが満場一致の結論だ。」医療現場のAI利用が日本より進んでいる米国から学べることがたくさんある。 (link)
ディープマインドが開発したマルチスキルAI向け道場:XLandというバーチャル遊び場でAIたちが縦横無尽に行き来し、学ぶ姿が浮かびあがります。下の画像から、この遊び場の豊かさを感じており、汎用AIの進化に向けた端緒になるのではと、ちょっとした期待を持っています。 (link)
📙本
知ってるつもり 無知の科学:読み進めています。内容を読んでいくと無知というよりも集団的思考/集合的認知(+その中でのテクノロジー活用)を扱っているように読め、楽しいです。野球選手がフライを取るときの認知の仕組みをトレースしている記述が自分としてはヒットでした。 (link)
それはあくまで偶然です 運と迷信の統計学:ワクチンなどを巡る言説をみていると、人間に統計学は早すぎたのではないか、という気持ちにもなりますが、、 (link)
入門 歳時記:季節がある国に住んでいるので。 (link)
🎥観た/観ている
Corvus One - The World's Best Indoor Intelligence Platform:倉庫の中を飛ぶ、レベル4の自律性を持ったUAV。倉庫会社、物流会社が顧客。 (link)
📻聴いた/聴いている
いんよう!:いろんなエピソードを一気に聞きました。やっぱり楽しい。 (link)
Rebuild 311:Hiroshimaさんが久しぶりに登場されていて、嬉しくなりました。 (link)
どんぐりfm 誰でも「ショートショート」が書けるボードゲーム:買っちゃいました。だれかとオンラインでやりたいです。 (link)
🧩感じた/感じている
「物来って我を照らす」の感覚は「我思う故に我あり」よりも自身に馴染む。
人がみな集団で考えるとすると、自分の思考をアップデートするためには所属集団ごと変えるのが一番良い。そもそも「自分の思考」というのが幻想に近いのかもしれない。
自分自身に同情し始めたら終わり。そのときには何かを終わらせなければいけない。
noteでの往復書簡、私もやりたい。
ポカリスエットは偉大な発明品。偉大な発明品ほど社会に溶け込んでいて、私のような愚民にはその偉大さに気づけるシーンが限定されている。
🍵今の関心事
いかに筆を進めるか
誰と手紙をやり取りすると面白くなるか
ちはやふると火の鳥、いつ全巻買いするか
2 by 2のマトリックスだけでどこまでいけるか
🥑活動報告
2回めのワクチン接種をしてきました。一定程度の副反応が出て、安心しています。
テニスのラケットを変えてみたら好調です。今年中に結果を出せるよう頑張ります。
ショートショートnoteを先週買いました。来週から、このニュースレターの中で書いたものをちらっと公開します。本当に短いやつになりそうですが。
今週木曜12日、BCGの先輩、高松さんと一緒に有隣堂イベントに登壇します。来てね。→ 田中志さん×高松智史さん オンライン特別対談『コンサルタントの調べる技術 変える技術 考える技術』
今週も、Happy Weekを:-)