神戸からおはようございます。もう12月ですね。
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「道具として使われる “神” の概念」のお話です。
古来から人は(さっそく主語が大きくて恐縮です)、自分の力ではいかんともしがたい不条理や暴力に接した時、神に祈って、あるいは頼ってきました。例えば、雨が降らないのは神が怒っているから、疫病がはやるのは神への捧げ物が足りなかったから、戦争に負けたのは神が自分たちに試練を課したから、などです。日常の論理の外にある物事が起きたときの意味づけ、またはこれから起きることへの心の対処にも、この「神」という概念が登場してきます。
一方で、現代社会で不条理が起きた時、糾弾されるのは政府や特定の人間集団です。政府が上手くやっていればもっと早期に感染拡大は押さえ込めていたはず、自分たちの給料が上がらないのは大企業が下請けを叩いているから、多様性ある社会の実現を妨げているのは既得権を持った男性たちだ、など、新聞を開くだけでも、それに類する主張が見つけられそうです。
本当のところ、これらは誰のせいなのでしょう。誰かのせいだと特定することは、原理的に可能なのでしょうか。
いま「~が起きたのは神の怒りをかったからだ」と真剣に主張すると、多くの人にはあきれ顔をされるでしょう。一方で、「~が起きたのは政府の対応がまずかったからだ」という投稿がSNSにされると、その論理的堅牢性や因果関係の検証度によらず、一定の支持を受けているように見えます。
「飢餓や疫病を乗り越えた人類存在は、不死と至福と神性を目指すことでホモ・デウス(神人)になる」と言ったのはサピエンス全史などでも有名なユヴァル・ノア・ハラリです。思うに、そんなことをせずとも、巷で生まれる不条理の責任を取らされる存在になった、という意味で、人は既に神になっているのです。
…ということを、柞刈湯葉さんの日常系SF作品・未来職安を読んで考えていました。ほとんどのことがAIとロボットによって自動化された世界で、「何か問題が起きたときに責任を取って辞職する」ことのみを職務とする公務員になった人が主人公として登場します(Web連載版がこちら)ユートピアでありディストピア。こういう柔らかいSFが大好きです。
仕事で成長するぞ!と意気込む人にも、仕事つらいやめたいと悩む人にも、みんなにおすすめです。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
なぜタトゥーを彫るのか。それは、タトゥーで救われる人生があるから:私もいつかタトゥー、トライしてみたいなと思っています。身体感覚は、体験しないとわからないところがたくさんあるので。 (Book&Apps, link)
ディズニー 2022年度のコンテンツ投資は3.5兆円超:2022年10月からの1年で、$330億ドルですって。 (Variety, link)
2022年カワサキは電動バイク3種を発表予定:いまKAWASAKI W800に乗っているんですが、電動バイクが出るなら乗り換えても良いなと思っています。 (electrek, link)
2024年パリ五輪では空飛ぶ電動タクシーが見られるかも:約30社のメーカーが参加し、電動垂直離着陸機(eVTOL)を用いたテストを続けているようです。まずは2つの空港を結ぶルートから。Bloombergによると、世界中で65のタクシーハブが計画されています。 (Futurism, link)
メキシコでジャガーの生息個体数が増えている:自然保護戦略が上手くいっていることの証左。 (Positive News, link)
世界にゆっくりしみ出す汎用ロボットという存在:Alphabet参加のXが開発したロボット “Everyday Robots”は、1つのタスクで得られた思考や示唆を他の作業にも転用しはじめています。Googleキャンパス内で様々な学習を進めており、新たな知性の萌芽を感じます。 (The x blog, link)
道具を使うと言語スキルが向上する:フランス/スウェーデンの研究チーム報告。素手での作業グループを対照群として、30cmのペンチを使ったタスクを課した集団は大脳基底核の活性及び言語タスクでの高パフォーマンスが報告されたとのこと。今後リハビリプログラムなどに反映していく意向とのこと。人間の脳の不思議。 (Gigazine, link)
50分で学ぶアルゴリズム:学ばせて頂きました。25日に書籍も出版されるようで、大学学部1年生からこの積極性、畏敬対象です。 (Speakerdeck, link)
SNSインフルエンサーが登場する過程を描く数理モデル研究:原論文がこちら。おいていかれています。 (Nature, link)
世界認識を捉え直すための認知バイアス24個:VisualCapitalistはよいビジュアルを纏めてくれています。チームで働く人は必ず、あとはだまされたくない消費者としても、ぜひ知っておきましょう、認知バイアス。 (link)
「この理論は私に当てはまりません。なので間違っています」という否定法:テキサス大の研究チームの報告。心理学のような学問領域では、私はそうではない→理論の方が間違っている、という認知がされやすい。これは社会科学、人文科学一般にありそうな視点。論文タイトルが秀逸ですね。 (SAGE Journal, link)
研究負債とは何か:TeslaやApple、OpenAI等のメンバーが参加する機械学習関連研究メディアのDistillから。原題はそのまま “Research Debt”。よく言われる技術負債と同様、研究にも負債があって、それを取り除く蒸留装置・過程 (distillation) が必要なんだという宣言文章。私も蒸留装置になりたい。 (Distill, link)
📙本
未来職安:柞刈湯葉さんの作品を読んでから、SF全般への関心が高まってしまい、仕事に支障を来しています。良くないことかも知れませんが、良いことかも知れません。 (Amazon, link)
数学独習法:数学四天王は、代数学、幾何学、微積分学、統計学。数学のコンセプトを知って日常に生かす、そのための新書として、親しみやすくまとまっている良い本でした。三角形が全ての基本、に膝を打つ。 (Amazon, link)
あざらしのひと:浅生鴨さんのエッセイ集。「~のひと」がたくさん登場。人間観察が趣味です、と軽々しく言えなくなる、素敵な本。表題のあざらしのひと、大好きな話でした。 (Amazon, link)
異人と同人:大好き同人誌でした。小説とエッセイ、マンガまで混じり合っていて、好きです。とにかく好きです。 (Amazon, link)
雨は五分後にやんで:↑書籍の第2弾。短歌まで出てきた。こちらもとにかく好きです。 (Amazon, link)
東京の生活史:そこら中で話題になっている、全1,200ページ・1.5kgもある大著。150人分の語り。1日1人分ずつゆっくり読んでいます。年末年始にでも、自分の両親に、生活史きいてみようかなと思っています。 (Amazon, link)
ぜんぶ、すてれば:寺田倉庫の代表として様々なアグレッシブな取組を推進してこられた中野さんの語りで進む。人生を背負う覚悟がある方だ、と背筋が伸びる本でした。 (Amazon, link)
🎥観た/観ている
Mobile phone Museum:2,100を超える、過去発売された携帯電話のモデルを全て掲載しているカタログメディア。 “History is Calling”の言葉がファーストビューに。 (link)
NASA | Thermonuclear Art:あまりに美しい、太陽の様子。アート。
財津チャンネル【テーマ:中国デジタル経済】:世界経済を学ぶならこのチャンネル一択。
📻聴いた/聴いている
東京ポッド許可局「おかしのまちおかJAPAN」:夢じゃん。夢の回じゃん。この企画を友達とやりたいです。 (link)
🧩感じた/感じている
人は神にはなれない。神は別次元に存在しなければいけない。人が神になれるのは極度に分断化された世界のみで、そこではお互いに神格化しあう世界も可能になる。
臆病な自尊心と尊大な羞恥心。山月記をいま改めて読み返したときに、誰が李徴を笑えるだろうか。
大事なことは、東京ポッド許可局でだいたい話されている。
おかげさまの精神でやっていきたい。
デザイン思考をするならデザインに取り組むことを避けるべきではないし、SF思考をするならSFに取り組むことに向き合わなければならない。
🍵今の関心事
いろんな国(特にドイツ、ロシア、ホンジュラスなど中米諸国)の中国との距離感がいま変化しているように見えるのはなぜか。
いつ、どのタイミングでSFライティングを再開するか。
面白さの根源にある摩擦をどう生み出すか。どう許容するか。
🥑活動報告
先週11/29週で、大きなプロジェクト2つに目処が付きました。このまま年末までローギアで動いていきたいなと思っているのですが果たして。来年への土作りと称して、たくさん読書と執筆をしています。農家のアナロジー。
先週火曜日に2.5時間のビジネスリサーチセミナーを行いました。好評頂いたようで、これからも続けていこうと思います。調査会社にすぐ依頼してしまうのは悲劇。全てを一から自分の頭で考えてしまうのも悲劇。
12月中に、日本仕事百貨さんで当社Cobe Associeの採用記事が出ます。ありがたい。素敵な2人目社員さん、募集しています。
2022年を通じてコミットする自身・自社のGuiding Principlesを考えて始めています。いま発酵中なので、味がなじんだらこのニュースレターに貼りたいと思います。
今週も、Happy Weekを:-)