こーべ通信 vol.46:サウナ帽からワクワクさんに行き着く
「サウナめっちゃいいよ!」とどや顔してくるイキりGuysを滅ぼしたいなと思って早2年。こっちはブームを楽しんでいるわけではないんや。
神戸からおはようございます。ぐっと寒くなりましたね。
このニュースレターはいま159名の方が登録してくださっています。いつもありがとうございます。月曜朝に無料でお届けする登録は↓からです。
1ヶ月くらい前に知人のすすめでサウナ帽を買いました。名前の通り、サウナに入っているときに頭にかぶる帽子で、サウナが日常に溶け込んでいる北欧やロシア等では一般的なアイテムのようです。髪が傷まないようにとかぶる方もいるようなんですが、私が期待していたのは「のぼせ防止」です。
これが効果てきめん。帽子をかぶっていると、無防備な場合と比べて1.5~2倍くらいの時間、快適にサウナを楽しむことが出来ます。この体験を通じて、これまで「もう耐えられん!」と部屋を出ていたときにダメージを受けていたのは体全体ではなく、あくまで頭部のみだったんだと気づきました。(帽子着用で頭までぼやっとあつくなってきてから入る水風呂、気持ちよさが3倍です)
突然ですが、私がずっと好きな本の一冊に「ザ・ゴール」があり、とある工場を舞台に巻き起こる諸問題を制約理論(Theory of Constraint)を通じて解決していく物語です。第46版まで出ており、世界中で100万冊以上売れている名作経営小説です。この本の序盤で、単体では最高の生産性を誇る最新機械が実は工場全体の生産性を悪化させていたというお話があるんですが、この機械は「ボトルネック(あるプロセスの時間や品質などの管理指標を左右する工程)」と呼ばれることになります。
さっきの話に戻ると、私にとって最も重要なのは水風呂体験なんですよね。水風呂に入っているとき、特に朝なんですが、とても頭がさえる。仕事のことや私的なことも、あんなことをしてみよう、こんなことに挑戦してみようというアイディアがどんどんわいてきます。この体験価値を最大化するための重要工程の一つがサウナあるいは熱めのお風呂であり(長く入れば入るほど、後工程の水風呂体験の質が指数関数的に向上する)、この工程で不運にも生まれてしまうのが「のぼせ」です。最近購入したサウナ帽は、この水風呂体験におけるボトルネックを解消する最高の投資だったわけです。
なんてことはない、ただ「サウナ帽かってよかった」「ボトルネック・制約理論の考え方は多くの場面で役に立つ」というだけのカバーストーリーです。
追伸。サウナ帽の形状を説明するのに「ワクワクさんがかぶっていたやつ」と一瞬書きかけたのですが、ワクワクさんがかぶっていたのはただのキャップで全然違うやつでした。思い描いていた人、全然ワクワクさんじゃありませんでした。
追々伸。ワクワクさんは「ワクワクさんチャンネル【公式】」の名前で登録者24万人のYoutubeをやっていたものの2019年で更新が止まり、一方で「【公式】わくわくさんの工作教室」を新しく開設していま動画を投稿し続けているのを発見しました。何があったんでしょう。大人の世界の複雑さにワクワクします。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
「わかりやすいもの」を作るための方法:わかりやすいもので溢れた世界には生きていたくないんですが、わかりやすいものを生み出せる人には明確な需要があるので、わかりやすくできる能力は必須だなと思ったりします。 (link)
プロに「タダでやってくれない?」と仕事を依頼する人:依頼する人がいることはわかる。それに怒る人がいることもわかる。人間社会はそういう構造になっていて、その上で、あなたはどうしますか?こういうところに生き様が出ると思います。 (link)
BALMUDA Phoneが登場する:明日11/16にデビュー予定。Wiredで代表の寺尾さんが「なぜいまスマホか?」「BALMUDA Technologiesって?」に答えたインタビューを掲載しています。"ひとりの欲張りがいないと、ものごとは進まない" ほんまにそうですね。(link)
Pelotonの快進撃もここまでか:コロナ禍の自宅運動ニーズを捉えて成長していたPelotonですが、全社的な売上げ見通しの引き下げの翌日、全部署で新規採用を取りやめたとのこと。この発表を受けて11/5単独で株価が35%下落しています。昨年に3千人超だった従業員は、今年6月には6.7千人にまで拡大していました。 (link)
DeepMindが創薬プロセス刷新に動く:以前このニュースレターでもご紹介したGPT-3関連で楽しい動き。AI創薬を次のレベルに引き上げるためにDeepmindのチームが新しくIsomorphic Labsを設立。ロンドンベースで、 "We’re recruiting several key leadership, scientific, engineering and operational roles, along with biologists, medicinal chemists, biophysicists, clinicians, computational scientists, and machine learning experts."とのこと。 (link)
電動自転車・バイク市場は拡大を続ける:米国のe-bike市場は2019-2020年の一年で145%成長し、年間50万台が売れているとのこと(一方電気自動車は23.1万台の販売に留まる)。デロイトは、世界市場において2020-2023年の間に1.3億台のe-bikeが販売されると見込んでおり、この成長は続きそうです。 (link)
インド英語のユニークな表現12選(お仕事編):言葉、郷に入っては郷に従えですね。Do the needfulは使いたい。Preponeを生み出す独創力。電話コミュニケーションは総じてtelecon。どれも面白い。 (link)
ニカラグアが独裁国家への道を歩む:先週日曜の選挙で4選を果たしたダニエル・オルテガ大統領は、自分に対抗して出馬を計画していた野党候補らを拘束したことで国際社会から非難を浴びています。投票率はわずか2割程度で、国民の78%がオルテガ大統領の再任を非合法だと考えています。隣国のコスタリカは明確に「この選挙プロセスを認めない」と表明しました。 (link)
あなたにとって「アメリカ」の印象は?:Pew Research Centerの調査。技術/軍事/エンタメどれも優れているのに、生活水準やヘルスシステムは平均以下。各国ごとの印象差分も見ていて面白いです。「多くの国は既にアメリカのことを"民主主義のモデル国家"とは思っていない」にはそりゃそーだろと。 (link)
HPVワクチンは過去約10年間で子宮頸がんの発生率を90%減少させた:LANCETに載った元論文がTwitterを賑わせていたのですが読まずに無精していたらGigazineさんが纏めてくれました。ワクチンのインパクト即ち科学の力。「イギリスの最も恵まれない地域に住んでいる少女は、最も恵まれた地域に住む少女よりもHPVワクチンの接種率が56%低い」という部分を見ると、いろんな事に思いを馳せます。この論文などが参考資料とされ、厚労省の審議会は積極的勧奨の再開を了承しました。 (link)
マインドフルネスは一般人に誤解されている:ウォータールー大学の研究。科学的な意味でのマインドフルネスにはストレス要因に積極的に関わりに行くことが含まれている(気付き→受容の中で)ものの、多くの人は受動(Passivity)や回避(avoidance)を解釈として採用してしまい、それによりマインドフルネスの効果は制限されてしまっているのでは、との仮説を提示しています。静寂の中に閉じこもるだけがマインドフルネスではない。 (link)
生物のデフォルトは睡眠状態?:「睡眠は一時的に意識を失うことで脳機能を調整するためのもの」という従来の認識が、脳のない生物(例:ヒドラ)も眠ることが近年の研究で明らかになり、根本から見直しを迫られています(こちらもGigazineさんが日本語記事を)。 (link)
📙本
すばらしい新世界:次のPodcastエピソードの課題本を、じっくり読み進めています。ディストピア小説の金字塔。100年前に書かれたのが信じられない。現代にも続く問題意識の源流。大森望さんの新訳も読んでみたいところ。 (link)
パンデミック日記:作家や芸術家の方々が1週間ずつ日記を記していく連載。日記というフォーマット、もっと注目されて良いのではと思い始めました。 (link)
tattva vol.1-3:今年4月に発刊した季刊誌。"tattva[タットヴァ]という誌名は、サンスクリット語で「それがそれとしてあること」を意味する「tattva」と、日本語の尊ぶ(たっとぶ)からとり、物事をゆっくりと見つめながら共生と共創を目指していきたいという想いを込めています。" (link)
🎥観た/観ている
商用宇宙ステーション・Orbital Reed:Amazon創設者、ジェフ・ベゾスが設立した航空宇宙企業Blue OriginはSierra Spaceと協働で商用宇宙ステーションの開発に取り組んでいます。2020年代後半には稼働させ、研究等の目的で民間企業も活用できる空間を提供するとのこと。 (link)
ナショジオ 「今まさに起きている気候変動、その脅威と希望 写真26点」:モンゴルで原炭(加工されていない石炭)を売る男性の写真が私に突き刺さりました。(link)
📻聴いた/聴いている
BBC World Service/Newshour:英語Podcastです。エチオピアやアフガニスタン、中米の情勢などが頻繁に取り上げられていて、自分の視点を拡げるのに役立っています。 (link)
いんよう!第169回【科学ニュース雑談(番外編)#3】:潰瘍性大腸炎のお話の時にヤンデル先生が放った「染めてぇ」にぐっときました。 (link)
🧩感じた/感じている
将棋、最後詰みの一手に使った駒が「戦略上もっとも重要な駒」だったわけではなく、重要だったことは動的な手の流れだったり、相手に考えさせるような動きだったりする。この実感がない人は、「製品差別化が戦略です」とか言ってしまう。そこにはストーリーはなく、従って有効な戦略も戦術も生まれない。結果として、勝っても負けても何の学びも生まれない。
行き先はデッドエンドだとわかっているのに、目先の前進感に駆られて自身・チームを動かしていくと悲惨なことになる。目を見開いて先を見通さなくてはいけない。
芸術家であり、実務家であり、研究者であり、勝負師でありたい。
ほとんどの場合、なぜを5回繰り返すより、残りの4WのうちWhen/Where/Whoを1回ずつ、Whatを2回使って5回問うほうが有効な解や仮説に結びつく。
結局は熱量の多寡に行き着く。
信号で「青と赤の間に黄色を入れよう」と発案し、検討し、意思決定した人は本当に偉い。
竜王戦第4局豊島藤井戦、王将リーグ藤井羽生戦、今週は2局も令和の名曲が生まれた。
🍵今の関心事
テニス全日本選手権に出場されていた磯村志選手。同じ漢字表記のファーストネームの方をはじめて見ました。これで「こころ」さんと読むんですね…これもご縁です。勝手に応援しています。
🥑活動報告
先週、今年6回目の成分献血をしてきました。採決しやすい血管の場所を自覚できてきました。成長です。
yahoo募金でアフガニスタン難民支援の寄付をしました。こちらです。
今週は一般向けの研修資料、講義資料をたくさんつくる期間です。自然音をBGMに集中してやりきります。
今週も、Happy Weekを:-)