おはようございます。今日も神戸からお届けしています。
登録してくださっている257名の方、いつもありがとうございます。各種URLからこちらに行き着いた方、↓から登録頂くと月曜朝に無料でお届けします。
先週の金曜日、痛ましい事件が起きた。無論、世界中で毎日事件は起きていて、失われている人命の数やその悲惨さを数字で比較するならばそんなに驚くことではないのかも知れないが(ちょうどその前日・木曜日に2020年に起きたベイルートでの爆発事件のドキュメンタリーを見ていた)、それでも民主主義を謳う国の元首相が日中・衆目の中で襲われるというのは国民にとっては大事だ。
正直、人間社会は病んでいると思う。書籍・ファクトフルネスで語られるように、少しずつ社会は良くなっている。若くして感染症などで亡くなる人数は減っており、絶対的貧困状態を脱する人も着実に増加、教育の機会も徐々に担保されつつある。しかしこんな事件が起きるならば、決して社会が健全とは言えない。人間社会は、ずっと病み続けている。
あらゆる事件が起きたとき、みな犯人を断罪する。こんなことは許されないと声を上げる。犯人を取り巻く環境の悪さを論う。ある人は怒りの声とともに。ある人は慈愛の言葉とともに。多くの人が、自分は被害者だと、少なくとも加害者ではないと信じながら、強い言葉で正義を語る。
いったい何をしているのだろうか。もし社会が病んでいるのならば、あらゆる人が加害者であるはずだ。もちろん私も。病んだ社会に住まう、一つの細胞なのだ。
なんの本だったか忘れてしまったが、いかに人間社会というものが不安定なものであるか、"たまたま"平穏無事に維持されているのか、というテーマが扱われていた。(その本の冒頭は、冷戦時代、センサーの誤作動であやうく米国から大量のミサイルが発射されかけていた話から始まっていた記憶がある)因果律と縁の両方を信じる私としては、私たち自身が日常取る小さな行動・発言が回り回って社会の病を維持・拡大させていると思っている。
職場で見せた小さな理不尽が、通勤電車で見せる小さな不寛容が、家族に向けた小さな暴力が、SNSに吐き出す小さな怒りが、回り回って社会全体を病ませている。私たちは常に被害者であると同時に、加害者であり、当事者である。
犯人が逮捕され、把握された思想信条の根拠が弾圧され、メディアが正義を謳えば物事は良くなるんだろうか。こんな病んだ社会で。
社会を癒やす特効薬はない。政治に治療を期待する時代は終わった(彼らは選挙の度にそれを謳うけれど)。私たちに出来るのは、誰かに治療を丸投げするのではなく、小さな愛と理性を発揮していくことに尽きる。例え何度裏切られようと。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
関係資本のこと:Taejunさんのメモ。「積み上げるのにはとても時間がかかるのに、一瞬でなくなってしまう。」まさに。御礼をきちんとして、しっかり話して、他人を助ける。どんどんやろう。 (note, link)
「面倒くさがり屋」につけるクスリはあるのか:『本人に「実行制御」の能力の重要性を説き、技術を習熟するまで反復して訓練を施せば、徐々に実行制御に要する知的努力は減り、最終的には「面倒だ」と思わなくなるかもしれない。』それはそうなんですが、習熟のための反復訓練をするのがそもそも難しいんだよな… (books&apps, link)
成り上がり富豪は弱者に厳しい:6月に出た論文。生まれ流れの富裕層と比較して、成り上がりの人たちは貧しい人々への共感、貧しい人々による犠牲の認識、貧困に対する内的帰結、再分配への支持がより少ないと。直感と合う。 (sagepub, link)
米国では薬剤師がコロナ治療薬を処方できる:FDAが先週認可を出しています。医師にかからずとも薬局でぱっと買える、くらいのイメージ。 (New York Times, link)
Theranosの元COOに有罪判決:CEOのホームズはこのCOOに、このCOOはホームズに罪をなすりつけようとしています。いかにも法廷ですね。(Axios, link)
公衆衛生の大問題・睡眠不足と戦うカリフォルニア:7/1からカリフォルニア州で学校の始業時間を遅らせる法案が試行。米国CDCは睡眠不足を公衆衛生上の流行病と宣言しており、特にティーンエイジャーの問題は深刻。睡眠不足によって米国は年間4,110億ドル(GDPの2.28%)の損失を被っているとの推計もあります。睡眠導入剤やメラトニンの問題も根深く存在。 (vox, link)
How to Show Up For Abortion Access:Google docsによって民主化された何か。 (docs, link)
Apple Watchシリーズ8では体温が測れる:良さそう。私自身、Ouraが計測してくれる睡眠時の体表体温の変化に色んなことを教えてもらってます。 (verge, link)
深刻な干ばつに見舞われるイタリアで緊急事態宣言:北部5州で問題が深刻化。農業生産地域の3割が危機にさらされており、ただでさえ不安定な世界の食糧供給にさらなるストレスを与えることになりそう。 (bbc, link)
Z世代が現金に返ってきた:Z世代の回答者の45%が日常の買い物では現金を好むと答えており、そのうちの33%が現金を使うとよりコントロールしやすいと感じ、25%が借金を増やしたくないと答えたようで。それにしてもさすが米国、55-64歳でも現金派は3割以下。 (bloomberg, link)
ウイルスが宿主の体臭を「蚊を引きつける臭い」に変える:デングウイルスやジカウイルスに感染したマウスは、非感染マウスより10倍多いアセトフェノンを産生すると。すんげぇな。 (gigazine, link)
AIは人間より人気の高い「富の再分配システム」を作成できる:政治の役割の一つは富の再配分な分けですが、それを人間に委ねるのはあまりに心許ないと感じます。AIの活用は、歪んでしまった政治機構への抵抗になると思っています。 (gigazine, link)
フィールズ賞を受賞した4人の数学者の素顔に迫るインタビュー:色んな意味で話題の今年のフィールズ賞。インタビューが楽しい。 (nazology, link)
📙本
現代思想入門:"二項対立の脱構築"をテーマに。意識的に二項対立を使うこと、そこから離れること、どっちもできんといかんなぁと。 (Amazon, link)
心はどこへ消えた?:東畑さんのファンなので。次著が「なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない」で、今この"心の不在"というのが持続するビッグテーマなんだなと。コーチング・カウンセリングのよく言われる差をテーマにした心の次元のお話しはじめ、良いエッセイばかりでした。 (Amazon, link)
TRANSIT 56号 美しき世界の山を旅しよう! :ひっそり運営している公開往復書簡メディア・Correspondenceで友人と山をテーマにやりとりをしていたら、タイミング良くTRANSITが山の特集。あまりに美しい諸々でした。パタゴニアに行きたくなる(二重の意味で) (Amazon, link)
🎥観た/観ている
軍隊 韓国軍2年の兵役:著名なスポーツ選手やアーティストが出てくると定期的に話題となるこの兵役。軍隊という仕組み自体が持つ構造的抑圧や深い孤独に、辛い気持ちに。十字架バックにして歌う韓国式賛美歌、なんというか… (asiandocs, link)
ショック・ウェーブ:2020年8月にレバノン・ベイルートで起きた大爆発事故のドキュメンタリー。当日結婚写真を撮影していたカップル、現場近くの病院現場にいた医師、現場近くで潜っていたダイバーなど、複数の視点で振り返ります。「中東では人が苦しむ姿が当たり前になってしまっている」と語る女性に心打たれる。映像の衝撃が相当に強いので、注意。(asiandocs, link)
渡辺明名人の【作戦術】:プロがどういう研究をしているのか、その研究をいかに対局に活かしているのかが垣間みえる動画。時の名人がこんなに語るのかと。将棋がわからなくても、戦術論として面白く観られるはず。
📻聴いた/聴いている
rebuild 338:大好きなNさん/Hiroshimaさん回。米国Roe v Wade問題の根深さを改めて実感。公立学校の廃止ですって…?? 世界、少しずつおかしくなっていている感が。 (rebuild, link)
yama - 春を告げる / THE FIRST TAKE:久しぶりに聴いても素晴らしい。 (youtube, link)
🧩感じた/感じている
正しく歳を取る、というのは存外難しい。
そもそも、という強度の高い問いとまっすぐに向き合える人間は希少。
「とりあえず聴いてみたい」という理由で組み込まれるインタビュー/アンケートにおける問い、自己満足や保身を超える意味があった試しがない。
「コンサルタントっぽいよね〜」とよく言われる人格を持つコンサルタント、概ね苦手です。
以下をそれぞれ真としたら、けっこうしんどい事実が導き出される。
人間は、自分がもつ主語の尺度に沿ってしか物事を認識できない。(あえて主語を大きく取った主張)
主語が「私」「家族」「会社」「社会」くらいの粒度しかない人が一定数存在する
その集団にとっては、その4つでしか世界が構成されておらず、そのうち2つ(家族/社会)があまりに流動的で不確かであるが故に、世界が不安定になりやすい
結論ありきで組み立てられた理論はゴミ箱に捨てるべき(進化における反復説と幼形成熟説を見ながら)
善悪と損得は独立軸にしなければならず、他人の悪を自分の得にしようとする人とは仲良くなれない。
先週から今日まで色んな事件があり、それを使ってアピールする人を見る度、マーケターと名乗る人間集合への嫌悪感ばかりが募っていく(素晴らしい人もいることを理解しつつ)
🍵今の関心事
世代別選挙を実現できないか。
日傘、どれを買うか。
今年後半に起きる世界の激動、どこから火が付くか。
🥑活動報告
7/04月:Cobe.fmの収録で上半期読書の振り返り。この半年はプロジェクト・ヘイル・メアリー等SFと会社という迷宮など経営本の当たり期間だった。
7/05火:6月末に納品した米国リサーチ結果の報告会をして、だいぶ良い反応をもらう。また次の案件に繋がるといいな。お昼ご飯を食べつつ感情・人格心理学の小テストを受けて(無事及第点)、午後はがっつりExcelと戦う。構造が明確なものは楽しい。
7/06水:3週間の助走を経ていよいよ舌下免疫療法本番が開始。来年の春こそ最高パフォーマンスで臨みたい。夕方に2冊目書籍の執筆キックオフ会議。「印税は特にいらないのでよいもの作りましょう」と伝えてみんなでニッコリする。ステークホルダーが多いPJTで誰かが金に拘り出すと途端にギスギスする。
7/07木:先週入れていたこの日の予定が「自分のアレテーを考える」で、これ何をするんだ?と思い悩む。結果、自分の理性や価値観はどこにあるのかを考えながら長い散歩に行く。自分のアレテーは"そもそもを問うこと”かなと仮説立て。
7/08金:感じる、考えることの多い1日だった。今回のカバーストーリーはこの日に書いたものだ。人間に絶望しながら、人間のために仕事をした1日だった。フィールズ賞受賞者のインタビューを見て心を洗う。自分自身を、社会全体としての知性と理性を前進させるための器にしたい。それ以上は望まない。
7/09土:通信制大学講座で丸一日スクーリングをする日。学ぶのは苦しくも楽しい。別講座のレポートも3本書く。
7/10日:事前投票を済ませているので心穏やかな参院選投票日。前日夜にばーっと書き出した経営メモを整理しながら考えをまとめて、2022年後半に備える。激動の半年になりそうだ。
よろしければ、Likeやコメントをお願いします。Twitterのフォローもぜひ。
今週もHappy Weekを✨✨
冒頭のコラムに、ここ数週間私も抱えていたもやもやが掬われた感じがしました。自由に生きる権利がある身として、時には誰かに自由を譲れるスペースとしなやかさをもって生きていきたいです。言葉にしてメッセージとして届けてくださって、ありがとうございます。
他のこーべ通信を読んだ時にも、私が日々の中で言語化できなかった部分を田中さんが代弁してくださることがよくあって、今日を生きる推進力を小さくもらっています。これからもメルマガの配信楽しみにしております!