神戸からおはようございます。このニュースレターはいま368名の方が登録してくださっています。いつもありがとうございます。暑いですね。さて、vol.135です。
2週前のvol.133でご紹介した「NHK / 徹底討論 問われる宗教と“カルト”」を観て、以来、批評家・若松英輔さんの文章を探して読むようにしています。若松さんが日本経済新聞で毎週土曜日に連載している「言葉のちから」は、陰鬱な政治欄の向こう側にあるオアシス。
映像番組における若松さんの語り口も魅力的なのですが、文章は輪をかけて魅力的です。。下は「言葉のちから」の引用です。
人は、真に試みているものに困難を感じる。私はピアノを弾けないとは思わない。まったく弾けないからである。弾けたらよいと憧れることはあっても、弾けないことに心を砕いたりはしない。だが文章は、毎日のように書けないと感じる。矛盾して聞こえるかもしれないが「できない」、そう感じるところに方法とは呼べない道のようなものが音もなく静かに開けてくる。 … (中略)
方法は自分以外の人から与えられることもあるだろう。だが、道は自分で切り開いていくほかない。フランスの哲学者アランが書いた『幸福論』には次のような一節がある。
「幸福はいつもわれわれから逃げてゆくものだ、といわれる。ひとから与えられた幸福を言うのなら、それは正しい。与えられた幸福などというものはおよそ存在しないからである。しかし、自分でつくる幸福は、決して裏切らない。」(宗左近訳、「四十七 アリストテレス」) (link)
アランの「幸福論」を引きつつ、自らで方法を開拓していく道程の重要性と楽しさを語るこの文章、長さは400文字ほどあるのでほぼ原稿用紙1枚分なのに、まったく負担を感じさせません。こんな風にすっと心に染みる文章を書きたい。
さらに別回では、アランの弟子でもあったフランスの哲学者・ヴェーユの「重力と恩寵」を参照し、答えそのものよりも、それ以前にある問いと応えのプロセスと向き合う大切さを指摘します。
本質とつながらない経験はあり得ない。経験はいつも本質的である。体験は違う。体験の地平を歩くとき人は、懸命になって答えを探す。経験において重要なのは解答めいた「答え」ではなく、応答というときの「応え」である。答えは言葉にもなるだろうし映像化することもできる。だが、応えは違う。その核心は言葉にすることも可視的に表現することもできない。人生に解答などないことは誰でも知っている。手応えのない人生は、ときに耐え難いものになる。 (link)
幸福というよく用いられるが捉えどころのない言葉、体験と経験という似て非なる言葉。若松さんは日常の言葉を丁寧に扱いながら、思推の向こう側をちらっと提示します。こんなに奥深い表現の世界があるんですね。古田徹也さんの「いつもの言葉を哲学する」ではないですが、ここ数年で出てきた流行のビジネス言語を持て囃すより、100年以上続く骨太な言葉の向こうを探したいなと思っています。
推しの表現者を見つけるのがこんなにわくわくすることだとは。このニュースレターも、誰かの力になっていれば良いのですが。
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
君たちはクソ仕事ができるか:ザッポスやブリュードックスの事例を引きながら、飛び込み営業でもなんでも泥臭い仕事をしようよと。同感。クソ仕事ができる人がクソ仕事ができるようになる。 (Books&Apps, link)
リモートワークで新人が楽しく効率的に成長できたプラクティス:ほんまにそうです。 > "報・連・相には、様々なテクニックがありますが、一番大切なのは「相手が判断するために、適切なタイミングで適切な詳細度の情報を伝えること」だと思います。" (Qiita, link)
超富裕層家庭の子どもは名門校に入学できる確率が2倍以上高い:同じ入試スコアで比較して、です。ハーバードの研究者が出したワーキングペーパーで指摘。人種に基づくアファーマティブアクションの廃止は所得によるアファーマティブアクションの導入だとNew York Timesは指摘します。平等や公正、かくも難しい。 (Axios, link)
消費文化小史:「消費者としての人間という概念は、第一次世界大戦前に初めて形作られ、1920年代にはアメリカで一般化した」から始まるエッセイ。経済は止まらないし、止めることも出来ないんだと。自分の性格と生活に深く根付いた消費者としての自己をみつめて生きていきたい。 (MIT Press Readers, link)
研究】布教をロボット/AIに任せるのは時期尚早:シカゴ大の、日本・シンガポール・米国を対象にした研究。教えに対する納得度はやや下がり、寄付金も減少すると。確かにペッパーに愛や救いをとかれてもな… (APA, link)
研究】幼少期のテレビ視聴が大人になってからのメタボと関係?:879人のデータを追跡。5-15歳のテレビ視聴程度が45歳時点での健康状態と関連していたと。なんでもお楽しみはほどほどに。 (University of Otago, link)
オンライン会議疲れのメカニズムとは?:やっぱり対面会議が好きです。新しく採用を進めていますが、東京か神戸でやるぞ。 (gigazine, link)
言葉以外のコミュニケーションが減少
ビデオに映したくないものへ配慮
思考や気持ちの切り替えタイミングがない
ディスプレイに映った自分自身の顔を見続けるのがストレス
会話のリズムが対面での会話と大きく異なる
高齢者が詐欺に遭うメカニズム:高齢者に対する詐欺の年間被害額は全米で数億〜数百億ドルに上る。そして、被害に遭った人は早死率が3倍に、介護施設への入所率を4倍にすることが近年の老年医学研究で明らかになったと。 (The Atlantic, link)
徳川家と武田家の仁義なき戦い、長篠の戦いの真相:近年の研究で、"「織田軍の三段撃ち」も「武田軍の騎馬隊」もなかった"というのは知っていたのですが、当時の馬は体高が120cmでほぼポニーだったというの初耳でした。完全に木曽馬のイメージだった。 (Nazology, link)
米国失業率は過去最低レベル:今年初めに「不況がくるぞー!」とメディアが煽っていたのが嘘のよう。17州で6月失業率が過去最低を記録、全米3.6%でサウスダコタでは1.8%。一方カリフォルニアやネバダは昨年より失業率が悪化。各州の労働市場環境、これから始まる大統領選にも大きく影響しそうです。 (Axios, link)
車、機能進化するが顧客満足度は下がり続けている:謎の機能とボタンが増える一方で、カーエアコンやサイドミラー調整の操作はわかりづらさを増している。ほとんど人は、車メーカーの純正機能よりもApple CarPlayやAndroid AutoのUXを好むとの調査結果もあるようです。いろんなプロダクトについて起きている現象にみえる。 (The Verge, link)
米国における自動車生産の趨勢:SUVが台頭しセダン/ワゴンのシェアは過去50年で40%以下に。ピックアップトラックは人気を保ち続けているのが面白い。 (Visual Capitalist, link)
感謝とは:有り難い、と思いながら生きていこう。 > “感謝とは、私たちが呼吸をする度に、何百万もの生命が集い、共に生き、噛み合い、呼吸し合っていることを理解することであり、生きて参加する人間としての生命の根底にある贈り物は特権であり、私たちは無ではなく、奇跡的に何かの一部であることを理解することである” (Grateful Living, link)
📙本
リストから明らかですが、いま言語・表現・文法に関心を持っています。
言語が消滅する前に:短い対談が5本収録された本ながら、あとから数えたらハイライトした箇所が62。孤独と孤立、権威と暴力、貴族と民主制、、、これもゆっくり咀嚼すべき本。 (Amazon, link)
努力論:幸田文さんの文章があまりに素敵なので、お父さんの幸田露伴の文章も読んでみるかと思い手に取りました。「努力している,もしくは努力せんとしている,ということを忘れていて,我がなせることがおのずからなる努力であってほしい」解説まで読み、時代背景まで含めて飲み込むと臓腑に染みこんでくる書籍でした。 (Amazon, link)
言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか:まだ読み始めです。それでも魅力がばちばちに伝わってくる本書。 (Amazon, link)
言葉の魂の哲学:「いつもの言葉を哲学する」があまりに深く刺さったので著者の古田徹也さんの本を連続して手に取りました。とある言葉が他のどんな言葉に置き換えられるかを理解することは、その言葉が他のどんな言葉にも置き換えられないことを理解することにほかならない。この矛盾しているようにも見える関係をどう捉え、自身の中に位置づけるか。職業柄、大事なのです。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
素敵なおうちを探そう “by__need”:よい。やっと賃貸生活から抜け出すので、好きにリフォームするぞ。 (link)
南アの写真家・Thom Pierce:魅力的なポートレートがたくさん。 (link)
🧩感じた/感じている
持つべきものは永遠と一緒に酒を飲める友。新卒同期会、楽しかったです。またやりたい。
美徳は理解によって始まり、勇気によって果たされる。
人間が獲得しうる最高の行いとは、理解することを学ぶことである。なぜなら、理解することは開放されることであるから。
To be great is to be misunderstood./偉大になるということは誤解されるということ。
🍵今の関心事
住所変更の手続きをいかにスムーズにやり遂げるか。クレジットカードや銀行など金融系が以外と鬼門。
並行して相談されているお仕事3案件、どう形にしていくか。
🥑活動報告
やっと折れていた肋骨が回復してきました。
引っ越し先でバイク駐輪場が確保できず、この週末でレブル1100DCTを手放しました。しょうがない、が悲しみ。次はトライアンフ・ボンネビルにしよう。
今年もテニス・ジャパンオープンのチケットを手に入れました。10月中旬の有明、堪能させて頂きます。
今週も、Happy Weekを:-)